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『クワイエット・プレイス』

2018年10月01日
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あらすじ・・・
それはある日突然地球に現れて、音を立てるものたちを消していった。


(※ 以下ネタバレしています)



・ もういっそのこと滝の裏に住んじゃえばいいのに。

・ と言っちゃったら身も蓋もないというか、滝じゃなくても防音スタジオでもぜんぜんイケそうというか。  あ、すみません言い遅れました。 音を出したらどこからともなくすごい勢いでクリーチャーが走ってきて手についた鎌みたいなので一刀両断されちゃうという斬新な世紀末ホラー『クワイエット・プレイス』を観てきましたよ。 音を出したらアウトなので、郊外の農家で静かにほそぼそ暮らす一家のおはなしですよ。

・ 物語はそのクリーチャーが勝手に騒音対策を始めてから89日後のとある昼下がりを舞台に幕を開けます。 おそらくほとんどの人類が駆除されてしまったであろう中、荒廃した街の雑貨店には体調を崩したらしき男の子に薬を与える母、もうふたりの子ども、そして父親の姿がありました。

・ ふたりの子どものうちのひとりは聴覚障害をもっているらしく、幼い弟や父親とのコミュニケーションは手話です。 もしかしたらそれまで「ハンディキャップ」と呼ばれていた部分が、「ギフト」としてノーサイレンス・ノーライフな世紀末を生き残れた理由のひとつになっていたのかもしれません。 このくだりはもう百点満点。 

・ まだたったの4歳で、電子おもちゃの五感が忘れられない弟。 思わず商品棚にあったロケットに手を伸ばす。 このロケットでおねえちゃんを宇宙に助け出すんだ。 空想と現実の垣根が大人以上に低い幼児の危うさに、クリーチャーが出てきていないにもかかわらず手汗がとまりません。

・ おもちゃを取り上げ「音は出しちゃダメだよ、わかってるでしょ?」と子どもを諭し、雑貨店を後にする両親。 その後に続く子どもたちでしたが、あまりにしょんぼりする弟を見かねたおねえちゃんは、電池を抜いたうえでロケットのおもちゃを手渡します。 喜ぶおとうと。 ナイショだよ?とほほえむおねえちゃん。 しかしおねえちゃんは知らなかったのです。 しんがりを務めたおとうとが、このあとこっそり電池も手にしていたことを・・・

・ で、電池をインしておもちゃを鳴らしたおとうとは、クリーチャーの餌食になってしまうのでした。

・ いやぁ、ホントもうここまでは大傑作ですよ!! この時点で両親に対するつっこみは山盛りですけども、家族の関係性や彼らがおかれている状況が最低限の描写で最大限に説明されていて、めちゃくちゃ怖かったですし、緊張しすぎて心臓いたかったですし、椅子の上で岩みたいにかたまっていましたからね。 超よかった! ここまでは!!

・ 場面は変わり、物語はクリーチャーの襲来から472日後に再び幕を開けます。 末弟を襲った悲劇から一年あまり。 農家とその周辺を徹底的に改造した一家は、物音を立てないよう慎重に、しかし穏やかに日々を過ごしていました。 彼らが以前と違っているのは、家族を失ったことで各々が自分自身を責めていること。 家族間のコミュニケーションが不足気味なこと。 そして、母のお腹に新しい命が宿っていること。

・ この状況で! 子作りを! 残された二人の子どもも、いうてもまだまだ幼いというなかで!! 両親はガッツの塊か!!!

・ このあと一家はおねえちゃんとおとうさんが微妙な距離感になったり、おとうととおとうさんが男同士のひみつの打ち明け話をしたり、おねえちゃんがやさぐれたり、おかあさんが釘を踏んだり産気づいたりと、いろいろなことに見舞われるのですが、とにかくわたしはもうこの「臨月おかあさん」というキーワードが強烈すぎてしばらくストーリーが頭に入ってこなくてですね。 

・ いや、入ってくるんですけど、いちいち脳内のひな壇に並んだリトルアガサが「子作りするかあ?この状況で?!」とガヤを放り込んでくるもんで、緊迫感に浸れないんですよ。 予告でおかあさんが臨月なことは知っていたのですが、まさか侵攻後の子作りとはね・・・ 思いませんでしたよね・・・ 

・ なんでだろ? なんで仕込もうと思ったんだろ? 子どもを失った哀しみを癒しあううちにとか? っていうか音出しちゃダメなんですよね? 無音か? 無音で仕込んだのか? 声出しちゃダメなシチュエーションで子作り行為って、なかなかその場の勢いぐらいじゃあイカない行為だと思うんですけど。 あと、鼻息とかすごくなかったのかな? 声の代わりにすげえ鼻息してたんじゃないかな? クリーチャーさんの判定基準がマジでミステリー!!! わたしだったら「なにやってるの?!」って割って入りますけどね! 「ちょっとそこのおふたりさん! 聞こえないと思ってんでしょうけどね! 尋常じゃない鼻息してるからね!」って。

・ ここまで噛みつくトコロでもないのかもしれませんし、ただ単に「話を盛り上げるためだけ」なのかもしれませんが、子ども作る前に今いる子どもをもっと大事にしろよと思えて仕方なかったのですよ、わたしは。 おねえちゃんなんて、自分を責めて、おとうさんの愛情に疑いを持ってしまって、そんな自分をもっと嫌いになって、家庭内に居場所をなくしてしまってるわけじゃないですか。 順番違わないか? 誰のことが一番大事なんだよ。

・ 物音を立てずに妊娠期間を乗り越えて、陣痛と出産の苦しみに耐える、そこまでは母の役目。 作ったからには根性で乗り切る、そう決意したのでしょう。 しかし、生まれた瞬間赤ちゃんは自由に泣き、自由にぐずぐずいう権利を得るのです。得ないといけないのです。 親の都合で泣かせないとか、オレはぜったいゆるさない。

・ 作中、出産後に備えて酸素マスクを用意したり地下室を防音仕様に変えたりという工夫が紹介されていましたが、瞬間でクリーチャーに侵入されていましたし、新聞ペタペタ貼り付けるぐらいで防音できるもんですかね? だったら市街の映画館とか音楽ホールとか、そういうトコに住む方がよくないか? ドア締めちゃえば建物から外に音漏れないですよ?  やっぱりクリーチャーはんの判断基準むずかしおすわ~!!

・ 子どもを亡くした親は子どもを作るべきではないとか、そういうことが言いたいのではないのですよ。 ただ、幼い子どもを守り切れなかった、しかも無残に殺されるところをきょうだいたちに見せてしまった。 今はそのフォローにこそ時間と愛情を費やすべきだったんじゃないか、という違和感は最後まで消えることはありませんでした。 優先順位に対する考え方が、この作品の両親だったり脚本家、監督たちとは違ったということでしょう。 出産、新生児の誕生は希望のメタファー。 そうですね。 でも、今目の前にいる子どもたちがなによりの希望なんじゃないかな。

・ で、ネタにマジレスみたいな勢いでさんざん書いてきたのですが、要はこれ、この作品ってすべてが「子を持つ親の恐怖」のメタファーなんですよね。

・ 親になったその時から、四六時中年中無休で脳裏を横切る厭な想像。 「もしもたまたま子どもから目を離した瞬間事故にあったら」 「もしも出産時にトラブルがあったら」 「もしも生まれた赤ちゃんになにかあったら」 「もしも外に出かけた子どもがいなくなったら」 「もしも子どもと自分だけが在宅中に不審者が入ってきたら」 「もしも幼い子どもをのこして逝かなければならなくなったら」 

・ 子どもを守れなかったらどうしよう、という恐怖。 こんな世の中で、この先子どもはどう生きてゆくのだろう、という不安。 疾風のようにかけてきては、都合よく居座ったり退散したりするクリーチャーは、毎日のように親の心をかき乱す漠然とした恐怖そのものなのかもしれません。

・ ということで、「そっかそっかメタファーですか!了解しました!」と気持ちを切り替えれば、趣きのある良作ホラーと思えなくもないですが、集中しようとするたび細かい部分が引っかかって、「なにがメタファーじゃ釘の始末ぐらいしとけやコラ!」みたいに気持ちがオラオラになってしまったので、いっそのことラストの「補聴器のハウリングとショットガンでクソども全員ぶっころす」母娘共闘のノリをもっと早い段階から初めてくれた方が、細かいことを忘れてたのしめたのになあ・・という気がします。 

・ ショットガンの弾があの家にどれぐらいあるのかとか、結局あの地域にクリーチャー何匹いるのかとか、そういうのはいいんですよ。 「マーズ・アタック!」みたいにトラックのスピーカーからハウリング響かせて母娘で市内を徘徊してほしいんです。 真面目にやるんなら細かいとこまでちゃんとやる、設定ガバガバならガバガバ上等で思い切ったことをする、それがわたしのホラーに対する願いです。

・ 物音を立てない生活ゆえに、お皿やフォークの代わりに葉っぱのお皿で手づかみで食べてるシーンなんか、すごく丁寧でよかったのになぁ。 せめて妊娠がクリーチャー侵攻以前からだったら全く違っていたと思うので、返す返すも残念です。

・ 音響の使い方は秀逸でしたし、役者は大人も子どももみんな優れていましたし、映像も美しくて、気に入る人はとても気に入るのではないでしょうか。 ともかく、映画館でホラーが観られることはしあわせなことです。それだけは確かです。

・ ちなみに、本作の脚本を担当したスコット・ベック/ブライアン・ウッズ両氏ですが、前作『ナイトライト 死霊灯』も「POVってずっとカメラを回しっぱなしなトコがよく批判されるじゃん?だったら視点をカメラじゃなくて懐中電灯にしちゃえばよくない?絶対進行方向照らすじゃん!」というひらめきだけでポイント・オブ・懐中電灯ズ・ビューを実現させたアイデアマン(※すべてわたしの推測)でして、今回のも「ホラーって絶対叫ぶじゃん?だったら音出すの禁止って設定にしちゃえばよくない?叫びたいのに叫べないってさいこうじゃん!」というアイデア一発勝負だったのではないかという推測がとめられません。 いつか細かいとこまで詰められるといいですね! 自由な発想でこれからもがんばってください!!





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