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『ジグソウ:ソウ・レガシー』(シリーズ8作目)

2017年11月20日
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※ 以下、全編ネタバレしています。もちろんしますとも。隠す必要もないでしょう、ええ、そうでしょう。



【一行あらすじ】
死後10年経った今、ジョンの五股が発覚しました。

【主なゲーム】
舞台・・・・コンクリート打ちっぱなしのアーバンスタイルなモダンルーム
被験者・・・バイク屋さんのミッチと主婦のアナとジャンキーのカーリーと詐欺師のライアンと身元不明な男性
ルール・・・バケツを頭にかぶせられた状態で、壁に仕込まれた丸ノコに向かって首につながれた鎖を引っ張られます。 助かりたいなら、量の多寡は問わないのでとにかく血を流しましょう

舞台・・・・納屋
被験者・・・ミッチとアナとカーリーとライアン
ルール・・・首につながれた鎖で全員天井へ吊り上げられます。 体内に毒を仕込まれたカーリーが、3つの注射器の中から解毒剤の入った正しいものを選択出来れば全員助かります

舞台・・・・納屋
被験者・・・ミッチとアナとライアン
ルール・・・肥料貯蔵庫に閉じ込められたミッチとアナが肥料で生き埋めになる前に、床下のレバーを引いてドアを解除しましょう。ただしレバーを引くとライアンの足に掛けられたワイヤーがめちゃくちゃ絞められ、もれなく足がカットされます

舞台・・・・納屋
被験者・・・ミッチ
ルール・・・巨大な逆円錐型の入れ物にらせん状に取りつけられたカッターがあります。 逆円錐の入れ物は、昔ミッチが嘘をついて売りさばいたバイクと同じエンジンで回転する仕組みです。 天井から逆円錐の中に吊り降ろされてゆきますので、カッターに気をつけながら底に置いてあるブレーキシステムを作動させましょう。 さもなくば死にます

舞台・・・・納屋
被験者・・・アナとライアン
ルール・・・それぞれ足を鎖で繋がれた状態で放置されています。 ふたりの真ん中に置かれた一丁のショットガンと一発の弾がふたりの命を救います。 自己中心的に生きてきた過去を振り返り、今までとは逆の選択をしてみましょう。 さもなくば死にます

舞台・・・・納屋
被験者・・・刑事のハロランと検視官のローガン
ルール・・・それぞれ、手術用のレーザーカッターが放射状に取り付けられた首輪を装着されていますので、なるべく早めに自分の罪を告白しましょう。 運が悪ければレーザーカッターが起動し、頭をくし切りにされます


【主な登場人物と注記事項】
■ ローガンさん・・・イラク帰りの元衛生兵で現在は検視官/2年前妻を殺される/シングルファーザー
■ ハロラン刑事・・・証拠捏造、ワイロ受け取り、犯罪見逃し、なんでもござれの悪徳刑事
■ エレノアさん・・・ローガンさんのアシスタント/ジグソウの大ファン/ジグソウグッズのコレクター
■ キース刑事・・・ローガンさんの友だち/実は内務調査官
■ アナさん・・・寝ぼけた夫に子どもを窒息死させられた不幸な主婦/ジョンのお隣さん
■ ライアンさん・・・若い頃からありとあらゆる犯罪行為に手を染め生きてきたザ・人間のクズ
■ ミッチさん・・・GOバイク王
■ エドガーさん・・・ジャンキー/ハロラン刑事子飼いのタレコミ屋
■ ジョン・クレーマー・・・ジグソウ流宗家/元祖・説教大好きおじさん/死んでからが本番/五股発覚 ← new!

【お亡くなりになったみなさん】
① 頭を丸ノコで斜めにカットされた男性
② 首に酸を注射され、ほどよく溶けたジャンキーの女性
③ バイクの動力でくるくる回る謎装置でスライスされた男性
④ 首に酸を注射され、ほどよく溶けたジャンキーのカーリーさん
⑤ バイクの動力でくるくる回る謎装置でスライスされたミッチさん
⑥ 割と普通に撃ち殺されてジョンのお墓に入れられたエドガーさん
⑦ 自分だけ助かろうとライアンを撃ったら銃が暴発しちゃったアナさん
⑧ 足まで切ったのに結局餓死しちゃったライアンさん
⑨ くし切りになったハロラン刑事

【生き残ったみなさん】
① エレノアさん
② キース刑事
③ ローガンさん

【「わたしは死者の代弁者だ」って言う人】
ローガン

【補足】
・ 観てきましたよ! みんなだいすき『ソウ』シリーズの実に7年ぶりの新作、『ジグソウ:ソウ・レガシー』を! もう二度と作られることはないだろうと油断していた先の新作公開だったので、ツタヤレンタルで済ますわけにはいくまいと気合を入れて初日に馳せ参じました!

・ 参じたのですが、なぜだったんでしょうね、途中猛烈な睡魔に襲われましてね! うそだろ?!と思うじゃないですか、あんなに愛した『ソウ』の新作ですよ? どこに眠くなる要素があるというんですか! 自分でも「たしかに眠くはなったけど、落ちてはいない」、そう思っていました! ただ、観終わった時わたしの中には「なにこれ・・つまんない・・・」という感情だけが残っていまして。

・ ありえない!と思いました! おもしろさを感じられないだなんてなにかの間違いに決まっている! そうだ、自覚はなかったけどやっぱり寝落ちてしまってたんだ! バカなあたい・・・勝手に居眠りこいて勝手に「つまんない」って決めつけるだなんてサイテー・・・ 説教おじさんに叱られちゃうナ・・・ テヘヘ・・・

・ ということで、まさかのおかわりをキメてきました! 自分でも『ジグソウ』を映画館で二回観ることになろうとは夢にも思っていなかったのですが、見落とした部分はキッチリ拾ってこないとね! そして堂々と、心の底から叫ぼうじゃないですか! 「なにこれつまんない!」と!

・ そうです、観直した結果、変わらずつまんなかったです!オレ、寝落ちてなかった!全部記憶通りだった!記憶のままにつまんなかった!  はいみなさんこれが世にいう「無駄足」ですよー!踏まないで―!この轍は踏まないで―!!

・ ゲームはシンプルながら手の込んだものが用意されており、残酷描写も少なくなく、時間軸を利用したミスリードもあり、ジグソウおじさんの見せ場もあり、「おまえはこれのどこがつまんなかったんだ?」と不思議に思われる方もおられるかもしれません。 気分を害される方もおられるやもしれません。 あくまでわたしにはおもしろさが感じられなかったのだ、という話ですので、気になさらないでください。

・ そう、映画としてはちゃんとしていたのかもしれません。 新たなジグソウのはじまりだ!と歓迎する方が多いのも頷けます。 しかし、わたしは本作に対し、『ソウ』シリーズ終焉から7年後にわざわざジグソウを復活させた意味が感じられなかったのですよね。

・ 過去のシリーズを観ている方なら、ジョンが死んでいることは重々ご承知なわけじゃないですか。 その上での新作とはどういうものなのか。 ジョンが生きていた頃の話なのか、ジョンは関係なくジグソウの思想だけを活かしたゲームなのか、反則技でジョンの双子のきょうだいを出しちゃうのか、どういう内容なのか。 興味わきますよね。 で、出来上がったものを観てみたら、「衝撃!ジョンにはホフマンより前に一番弟子がいた!」なわけですよ。 ふざけてんのか。 もっかい言うぞ、おい、ふざけてんのか。

・ それやったらキリがないって、過去のシリーズで懲りたんじゃないんですか?! シリーズ二作目で、「実はアマンダはジョンの弟子だった!」ってやって、シリーズ四作目で、「実はホフマンもジョンの弟子だった!」ってやって、シリーズ六作目で、「実は嫁のジルもジョンの意志を継がされていた!」って実質弟子宣言しちゃって、収拾つかなくなってきたもんだから最後の切り札ゴードン先生をファイナルに出して終わらせたんじゃないんですか?! 過去のシリーズでなにを学んだんですか・・・まったく成長してないじゃないですか・・・オレ・・カナシイ・・・

・ ファイナルの時、ゴードン先生のそばに豚マスク被った人がもうふたりいましたけど、あれはゴードン先生に師事したゴードン軍団だと思いましたよ。まさかジョンの弟子とは思いませんでしたよ。 もちろん、今回のローガンがあの時の豚マスクと関係あるかどうかはわかりませんけどね。 ちょっとホントどうなのこれ・・・一生「新弟子発掘企画」やるつもりなの・・・?

・ やっているゲーム、映画館で観られた新鮮なグロ、たこさんウィンナーみたいな頭部ご開帳、元気そうなジョンの顔、素直に楽しめればよかったですけど、「新弟子」設定使われたらさすがにゲンナリしますよね。わたしはね。 それだったら弟子じゃなく、単にジョンの思想に感化されて勝手にジグソウを襲名した人ってことにする方が潔いと思います。 まぁ、ジョン(トビン・ベルさん)を出さない『ソウ』シリーズなんて、フレディ(ロバート・イングランドさん)を出さない『エルム街』みたいなものですし、かといってリブートするのも無理な作品ですけどね。(一作目のオチがあってこその人気シリーズだったわけですので)

・ 言ってない!ロバート・イングランドさんも出さずにリブートかましちゃった2010年版『エルム街の悪夢』のことなんて言ってない! 偶然です!例えが重なりましたが、これはただの偶然です!

・ で、ですね。 一晩じっくり眠って考えたのですが、よく振り返ってみたら今回の新弟子・ローガン、すっげえうさんくさくないですか?

・ 今回、「ジョンの本当の一番弟子」だと名乗りを上げたローガンですが、その根拠となっているのって、全部ローガンの回想でしかないんですよ。 

・ 10年前まだ研修医だった頃、レントゲン写真へ貼るお名前シールを間違ったせいで、ジョンの脳腫瘍の発覚を遅らせる原因を作ってしまったローガン。 頭に来たジョンは、赤ちゃんを虐待死させた上にその罪を夫になすりつけた隣人のアナや、ジョンの甥っ子を事故に遭わせたミッチたちと一緒にローガンをさらい、初めて実践したゲームに参加させました。 そこまではきっと真実。

・ で、他の参加者たちがゲームをクリアして移動してゆく中、あわや丸ノコのえじき・・・という瞬間ジョンはローガンを助けに飛び込んできました。 「悪意のないミス(レントゲンのうっかりミス)で死ぬことはない」っていうのがジョンの言葉らしいんですけど、たぶん違いますよね。 睡眠剤を適量投与するはずが見誤っちゃって、ゲームが開始してるのにローガン昏睡中だったんですよ。 完全にジョンのミスですからね、これ。 最初のゲームだから、タイミングあわせて薬盛るの難しかったんだよね? 悪意のないミスって、おのれ自身のことなんだよね? おばちゃん怒らないから正直に言ってごらん?ね、ジョン?

・ ゲームをクリアしたんじゃなく、主催者(ジョン)のミスで参加を取り消されたのがローガンだと思うのですよ。 だから、ローガンはそのままリリースされたのではないでしょうか。 で、3年後にジョンが死に、ジグソウキラーの後継者(アマンダやホフマン)のことがマスコミで取り上げられて、ローガンは自分も同じ立場だったのに・・って思ったのではないでしょうか。 

・ 「自分はジョンに生かされた、特別な存在だったんだ」という想いは、ローガンの中で「自分こそがジョンの本当の後継者なんだ」という想いに変わり、何度も何度も「ジョンとの短いやりとり」や「ジョンがホフマンらと重ねた犯行」を反芻してゆくうち、想像はいつしか現実になった。 「自分もその場にいた」、という記憶に。

・ ジョンの死後、ジルの納屋を探し当て、その中で10年前の自分以外の参加者の末期を見たローガンは、ジョンの意志を継ぐ決意を固めたのではないか。 納屋にライアンとアナ以外(ミッチやカーリーたち)の死体はなかったじゃないですか。 あれはローガンが捨てたんですよね。 自分がやろうとしていることに脳内で辻褄を合わせるために。 

・ あのね、対外的にはあってもなくても同じなんですよ。 そもそもあのゲーム自体、当時公になっていなかったんですから。  なくなった死体と2017年の現場で見つかった死体の状況が同じというのは、映画の中の刑事さんにとっては意味ないんです。 ただの「むごい状態の死体」なんです。 もしくは、「『ジグソウ:ソウ・レガシー』を観に来たお客さんへのミスリード」でしかない。 でも、それではあまりに身も蓋も無さ過ぎる。 脚本家さんも「やめたげて・・・ それはそうなんだけどやめたげて・・・」って言いますよね。 製作側の事情ということは一旦置いておいて、せめてその設定に意味を与えるとするならば、「我こそはジグソウの真の後継者!・・という妄想に取り憑かれたローガンゆえのこだわり」、と思うしかないじゃないですか。

・ そう考え始めたら、いろいろしっくりくるのですよ。 たとえば師弟関係を結んだふたりがいっしょに大道具工作やっている時、ジョンがローガンに「怒りや復讐心だけでは生きられないと、君が教えてくれた」って言うシーンがあったのですが、過去シリーズ観てきたわしらにとってはマジわけがわからないですもんね。 「むしろおまえのゲームに私怨以外の理由があったことがあったのか?!」って話じゃないですか。 

・ 百歩譲ってホントに言ったとしても、ジョンはローガンのどういうところを見て「復讐心以外の生きる意味」を学んだというのか。 戦争で捕虜になって拷問受けて帰還して、PTSD発症して苦しんでいる姿だとでも?  おい!それじゃあただのドSじゃねえか!(まぁ、じっさいただのドSなんですけどね)

・ ローガンはホフマンやアマンダやゴードン先生に知らされていなかったジョンの一番弟子ではなかった。 すべてはローガンの脳内で作り上げられた「願望」だった。 熱情をこじらせて、思い出のゲームを再現して、「我こそが後継者なり!」ってやらずにはいられなかったローガン。 きっかけはきっと、二年前の事件だったのでしょうね。 

・ 悪徳刑事・ハロランが見逃したせいで野放しになった犯罪者・エドガー。 色々な歯車が狂って、起こらなくていいはずだった殺人事件が起き、愛する妻が犠牲となった。 そこからの二年間は、娘の成長にもトラップの準備にも必要な時間だったのではないでしょうか。 恨みや憎しみがローガンの妄想に拍車をかけ、自称・後継者の誕生につながったのだとわたしは思います。

・ 過去のゲームに関わっても立ち会ってもいなかったんだから、最後の「ゲームオーバー」を知るわけないんですよ! アレがないとジグソウじゃないのに! アマンダもホフマンもジルもゴードン先生もみんな言ってたのに、っていうかむしろそれ言うために頑張ってるフシすらあるというのに! 「わたしは死者の代弁者だ!(扉バーン!)」だって! 気の毒だねー! ロ ー ガ ン ほ ん と に お 気 の 毒 だ ね ー !

・ この考えに至った時点でめちゃくちゃしっくりきたので、もうわたしとしては今回の『ジグソウ:ソウ・レガシー』は「ローガンの夢物語」ってことでいいです! っていうか、そういう設定なんだったらおもしろく観られそうです! 狂気が沙汰沙汰していていいですね!

・ ゲームの設定が雑すぎて、なにもかも偶然の産物でしか成り立たない性質のものだったのも、ローガンの夢物語だったんだからしょうがないです。 わざわざワイヤーが仕込んである床を踏み抜くとか、誰が踏み抜くか予想しておいてカセットテープを「ライアン宛」で録音しとくとか、脅しの範疇を超える量の刃物を降らせたりとか、広い部屋のどこを歩くか予想してロープ仕込んでたとか、まったくローガンは想像力がザックリしてるなぁ!!

・ と、いうことで、鑑賞直後はつまんなすぎて心が無の状態でしたが、今となっては自分なりに『ジグソウ:ソウ・レガシー』を受け入れはじめているわたしです。 受け入れているだけで、もうこれ以上はマジ勘弁という気持ちには変わりないので、続編がお目見えしないことをほんのり願っています。 トビン・ベルさん、どうもおつかれさまでした!

・ ただし、ゴードン先生がローガンにお仕置きする話なら観るよ!! 初日に観るよ!!




関連感想・・・『シリーズまとめ』(1~7作目)




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『Banjo』(バンジョー)

2016年11月24日
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最近、血の気の多い映画の感想を書く機会がめっきり減っていたのですが、今回は久しぶりに鮮血がドヴァドヴァ溢れだすタイプの映画をお届けしたいと思いますよ。
なぜかと言いますと、実はこのたび、いつもたのしく拝見させて頂いている人気ブログホラーSHOX [呪]Hiro Fujiiさんと、倉林のはらわた倉林さんのご厚意により、日本未公開の竿竹(※隠語)映画のスクリーナーを鑑賞させて頂きましてですね。
新鮮なビッグマグナム(※隠語)ホラーがノーカットノーぼかしですよ。股間にまっくろくろすけがコピペされているような映倫さまお墨付きのヤツじゃない、ありのままのつくしんぼ(※隠語)ですよ。舶来もののシャウエッセン(※隠語)がオベリスク(※隠語)ってんですから、そりゃもう、「観るか?」っつって聞かれたら「観ます」って即答しますよね。
(※実際はもっと親切かつ丁寧にお声がけいただきました)

と、いう訳で、イギリス生まれトロマヴィル育ちのリアム・リーガン監督が実体験をもとに作られたという『Banjo』の感想、はじまりはじまり~。


あらすじ・・・
あるところに、ペルツァーという青年が恋人のディーツさんと暮らしていました。 
ペルツァーくんは、ロケットみたいなおっぱいを揺さぶり、一晩中でも振りつづけられる強靭な腰を持ち、予期せぬ妊娠に至らぬようきちんとピルを飲み、ペルツァーくんの弱気な発言を心理的・物理的というふたつの方面から戒めてくれる、強いディーツさんのことがだいすきでした。 ビンタ一発食らわせるだけでペルツァーくんの顔面を血で染め上げるような、鋭い手首のスナップもすきでした。 ちょいちょい仕掛けてくる地味な嫌がらせもすきでした。 はたから見たらただのDVだけれど、とにかくすきなのでした。 すきなはずだったのでした。

しかし、愛する彼女と夢の一軒家で同棲という、幸せ絶頂な生活を送っているはずのペルツァーくんの表情は、なぜか冴えません。

職場の上司が超いけすかないゲス野郎で、ことあるごとにディーツさんに色目を使ってくるからでしょうか。 
ちょっと遅刻しただけで、この世の終わりみたいに怒ってくるからでしょうか。
同じく遅刻の常連である同僚のクライドさんに、「今度会社に遅れてきたら死刑だからな!」と常軌を逸した脅しをお見舞いするからでしょうか。
目の前のデスクで、3年前気まずい別れ方をした元カノが仕事をしているからでしょうか。
その元カノの今カレが、支店の平社員であるペルツァーくんとは違い、本社のエリート社員だからでしょうか。
地位を利用し、部下と一緒にペルツァーくんを虐めてくるからでしょうか。
それとも、そのなにもかもが原因なのでしょうか。
会社、虐め、仕事、夜ごとの合体、だいすきなはずのディーツさん、それらすべてのことが原因なのでしょうか。

手に入れたものと求めていたもののズレに苦しむペルツァーくん。
今、彼のもとを懐かしい旧友が訪れようとしています。
彼が本当に求め、手に入れるべきものを与えるために・・・。



みなさんは「イマジナリーフレンド」をいう言葉を聞いたことがありますか?
外国映画などではちょいちょい耳にする言葉ですが、直訳すると「空想上の友達」。
そう、「イマジナリーフレンド」とは心のうす汚れた大人には見えない、天使のごとく純粋な子どもの頃にだけ触れ合うことができる、特別なお友達のことなのです。
実は我が家のちびっこ(現在中学三年生)にも、幼児の頃「メッフェーさん」という「イマジナリーフレンド」がおりまして、ごきげんで遊んでいる時などは頻繁にその名前を口に出していたものでした。
ちびっこ本人以外には見えない「メッフェーさん」。 ちびっこの笑いのツボを把握し、いつもちびっこを愉快にさせてくれていた「メッフェーさん」。語感だけで、勝手にヒツジのショーン的なラブリーな姿を想像していた「メッフェーさん」。ちいさいちびっこの、かわいらしい空想だと思っていた「メッフェーさん」。
しかしある日のこと、何気なくちびっこに「メッフェーさんって今どこにいるの?」と聞いたところ、彼女はなんのためらいもなく当然のようにスっと机の下を指さし、「そこだよ」と答えたのですよね。

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めっちゃ具体的に居場所特定できんのかい。 っていうかマジなやつやったんかい。 っていうかモロわしの足元ちゃうんかい。 なんやったら若干メッフェーさん踏んでるぐらいの位置関係になっとんかい。
もちろん、机の下を指さしただけで、その姿がヒト型だとかケモノ型だとか説明されたわけではないのですけども、もうこの瞬間わたしの中でヒツジのショーンから一転、美内すずえ先生の「白い影法師」になったのでした。メッフェーさんのイメージが。


で、本作の主人公・ペルツァーくんにも、幼い頃からずっとそばに「イマジナリーフレンド」のロニーがおりまして、気弱なペルツァーくんを時に励まし、時に勇気づけてくれていたわけですが、20年前に起きたとある事件をきっかけに、ペルツァーくんはロニーとの別れを決意したのですよね。
それ以来ペルツァーくんはロニーなしで生きてきた。 
しかしそれは、生きてこられたのではなく、生きるしかなかっただけ。
本当は心の奥底で、ずっとロニーの帰還を待ち望んでいたペルツァーくん。
そしてロニーもまた、ペルツァーくんが自分を呼び戻してくれる日がくるのを願っていた。

かくして、ストレスフルな生活に心が崩壊してしまったペルツァーくんは勢いでウィジャボードを使ってしまい、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンとばかりにロニ―参上! 
「おお!待ちわびていたぞ心の友よ!」と言ったか言わないか、大切なペルツァーくんを解放するため張り切るロニー。
レディース・エンド・ジェントルメン、3度のメシより切り株がすきという好事家のみなさまお待たせしました! 首チョンパあり、タテ割りあり、ミドリのゲロありの愉快な血祭り騒ぎのはじまりですよ! 

もうね、無邪気にたのしい! やっている方がものすごく楽しんでいるのが伝わってくるから、観ているこちらもたのしい! なんとも幸せな映画だなぁと思いました。 
しょうじき、アラは多いです。というかアラだらけです。 
とことんチープですし、話がポンポン飛んじゃうので「あれ・・?さっきのアレは・・?」みたいな戸惑いもある。 でも、キライになれないのですよね。 
それはきっと、わたしの中にある「一度でいいからケチャップをブチャーって部屋中にぶちまけて殺人現場を作ってみたい」心がこの作品に共鳴してしまうから。 
美術の授業中、先生の話そっちのけで自分の腕にいかに本物らしい傷をペイントできるかに延々チャレンジしていた、中学生のころのワクワク感がよみがえってくるから。
すきなものを作るたのしさ。 イケないことを題材にして、真面目にふざけることの背徳感。 たまんないですよね。 

子どものように残酷さに鈍感で、大人のように残酷さに無慈悲なロニー。
「イマジナリーフレンド」である彼は、ペルツァーくんが自らのフラストレーションを解き放つため用意したただの空想なのか。
それとも、空想から飛び出した超自然的な存在なのか。
アレだった人がまともになり、まもとだった人がアレになるという混沌のクライマックスを経て辿り着く、そこまでのイカレ騒ぎはなんだったのかと思う程クールなラストシーン。
ホント、なんだったのでしょうか。
そこに映し出されたものに心がザワザワと掻き乱され、ちょっともう一回見直したくなってしまう、とても味のある作品でした。

こんなたのしい映画が日本未公開、ソフト化すらされていないだなんて・・・

・・・・


・・と、嘆こうかと思ったのですが、なんと観れちゃうんです!日本で!しかも完全版が!!


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『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX

場所はサブカルの殿堂・阿佐ヶ谷LOFT A。
開催日は2016年11月26日。 今週の土曜日ですね。
OPEN 24:00 / START 24:30 で、チケットは前売¥3,000 / 当日¥3,500(共に飲食代別)だそうです。

詳しい情報はこちら↓
『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX – LOFT PROJECT SCHEDULE 『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX – LOFT PROJECT SCHEDULE

当日はこの『Banjo』以外にもオモシロ痛そうなとんがりコーン(※隠語)映画が長編・短編あわせてわんさか上映されるそうですので、可能な方はジャンジャン足を運んでみてはいかがでしょうか。
ホントにね、東京ってトコロはこういうよさげな映画イベントがちょいちょい催されていて、超うらやましいですよね。
わたしは遥か彼方の岡山に巣食っているのでお邪魔できませんが、どうぞみなさまたのしんできてくださいませ!

Hiro Fujiiさん、倉林さん、ありがとうございました!



‐ 追記 ‐
・ 本作にはみんなだいすき『ムカデ人間』シリーズのローレンス・R・ハーヴィーさんも出演されていますよ! 不気味オーラを封印し、大きな瞳を潤ませながらかわいそうな遅刻魔クライドさんを可憐に演じるローレンスさん。 歩くシーンにいちいちどんくさそうな「ムギュッムギュッ」という効果音をつけられて、虐められっ子描写がハンパない。 雑すぎる退場の仕方も超気の毒。 役者冥利に尽きますね!やったねローレンスさん!

・ 主役(ペルツァーくん)がそこはかとなく河合我聞。

・ 主役(ロニー)が心なしか柔道の篠原信一。

・ 元カノがみんなだいすき『MAY』のアンジェラ・ベティスさん似で、ホラーファン心をくすぐります。 っていうか全般的にキャスティング絶妙!

・  Hiro Fujiiさんと字幕翻訳家のBrendan Wimsettさんが手がけた字幕も遊び心があっておもしろかったです。 中でも、煮え切らないペルツァーくんに呆れかえったディーツさんが放つ「again!」というセリフが「またか!」に訳されているシーンは、そのテンポの良さといい叫んでいるディーツさんとの表情のコンボといい、妙にツボにはまってしまいすごくすきでした。 女の人のセリフ字幕がおんなおんなした口調になっていないのって、ほんとうは当たり前のことなんですけど、新鮮でいいですね。

・ ペルツァーくんがどれだけ虐げられてもディーツさんにすがり続けていたのがとても謎(元カノの方が優しいしきれいだし未だにペルツァーくんを想ってくれているし)だったのですが、観ているうちに、わたしにはディーツさんと「イマジナリーフレンド」のロニーが似ているように思えてきてですね。 

・ ほお骨の主張が著しい顔の作りも、すっと切れ上がった眉も、性的魅力の過剰さも、攻撃的な性格も、どこか重なるロニーとディーツさん。 もしかしたらペルツァーくんは、自分でも意識しないままにずっとずっとロニーの面影を求めていて、それでディーツさんに一目ぼれしてしまったのではないかなぁ、と。 何が起ころうともペルツァーくんにはロニーが必要だった。 たとえいつの日にか、死が二人を分かつ時がこようとも。

・ まぁ、それはわたしの勝手な解釈ですが、ともかくあれこれ深読みするもよし、手作り感満載なゴアシーンをあっけらかんと楽しむもよし、様々な味わい方ができる作品なのではないかと思いましたよ。 土曜日の晩、お時間とおぜぜに余裕のある方はぜひ!




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『インブレッド』

2013年06月19日
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たぶん政治的に正しいあらすじ・・・
社会奉仕活動の一環として、イギリスはヨークシャー地域へとやってきた保護観察官2名と、社会適応力が不自由な少年3名と少女1名。
その人たちは、まずは宿泊先となる、使われなくなり数十年は経過していると思しき家屋を掃除し、その後、夕餉をとる為近所にあった飲食物を提供することで生計を立てている者が所有する建物へ向かいました。
屋内に入ると、そこには先客として、歯列的にチャレンジされた人々や、ビジュアル的にチャレンジされた人々、はたまた頭脳的にチャレンジされた人々など、異なった能力を持つ人々が多数おり、社会適応力が不自由な少年少女たちをじっと見つめています。
保護監察官たちも屋内の雰囲気に戸惑うものの、なにはともかくも、飲食物を提供することを生業としている水平方向にチャレンジ中の人に、お腹を満たす為の物体を要求しました。
数分の後テーブルに運ばれたレモネードという飲み物は、どこかしら腎臓により生産される液体状の排泄物の匂いがして、人々の満腹中枢を反対方向へと刺激するのでした。
経済的にはじき出された人たちが醸し出す、一種独特の雰囲気に気詰まりした少女は、途中でたまらず屋外へと飛び出しましたが、飲食物提供者の子どもが性的なジョークを披露してきた為、慌てて屋内へと戻るのでした。

一夜明け、2名の保護監察官と4名の社会適応力が不自由な少年少女たちは、宿泊先から少し離れた場所にあるという、廃棄列車置き場へと向かいました。
なぜならその人たちには、使えそうな銅線などを回収しリサイクル業者と呼ばれたがっている人たちが持つ財産と交換することで、経済的に搾取され続けている状況から抜け出したい、という願望があったからです。
まだ勤労から得られる達成感に対し意欲的ではない2人の少年たちは、注意深く見守ることにあまり意欲的ではない保護監察官から離れた廃棄車両の中で、無機物が備えていた本来の形を斬新なスタイルに変えることに熱心になっていました。
そして、もう2人の少年と少女は、列車置き場の近くの民家から黒い煙が立ち上っていることに気づきます。
近くまで行ってみると、なんと燃やされていたのは偶蹄目類の動物伴侶でした。
モウモウとアグレッシブな声をあげる、垂直的にチャレンジされた偶蹄目類の動物伴侶を救い出した2人は、保護監察官へ一部始終を報告する為、廃棄列車へと向かうのですが、そこでは昨晩、カロテンやビタミンAが豊富な緑黄色野菜と自らの性器を関連付けたジョークを披露してきた若齢の市民が、知的にチャレンジされている友人たちと共に、自らの不自由な礼儀作法を公開しようとしていたのでした・・・。


ほんで後は、奇蹄目類の動物の蹄で頭蓋骨が粉砕されたり、固形状の排泄物を限界まで流し込まれることで膨張を続けた消化器の内壁に裂け目が生じ、破裂したのち重力に従い内容物が流れ落ちたり、弾丸と呼ばれる小型の飛翔体を高速で発射する武器より頭頂部が開放的になったりする様子が、歯列的にチャレンジされた人々や、ビジュアル的にチャレンジされた人々、はたまた頭脳的にチャレンジされた人々など、異なった能力を持つ人々によって繰り広げられる訳ですね! まぁ、いつものアレですよ!いつものアレ!!

というわけで、モンティ・パイソンのスケッチを彷彿とさせるような、とことん不謹慎で、めっぽう非常識なドロドログチャグチャコメディ『インブレッド』を観ましたよ。
「イギリス」だからモンティ・パイソンって言っとけばいいや、なんて思っている訳ではないですよ。
こじ付けでもなんでもなく、どこからどうみてもモンティ・パイソンだったのですよ。
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(※ 元祖・裸オルガン奏者のテリー・ジョーンズさん。きゃわたん。)

人間の体がありえないほどブチャーっと爆発したり、いかにもマネキンな手足が車に引かれてペチャンコになったり、おなかが風船のように膨れてパチンとはじけたり、その拍子に目玉がポコンと飛び出したり、というあっけらかんとした人体破壊。
汚い・臭い・金がないという、あからさますぎるカッペdis。
そして、身体的・精神的な疾患を抱えているであろう人々を快楽殺人鬼にしてしまう、という超きわどいキャスティング。
ありとあらゆるタブーを破り、ペッペッと唾を吐いてその上でポルカを踊るような罪深い姿勢が、とってもモンティ・パイソンだったのですよ。
あ、あと動物虐待ネタもきっちり盛り込まれていましたし! 

ただ、姿勢は通ずるものがあるものの、愉快さに於いては全くモンティ・パイソンの比ではなかった、というトコロがちょっと残念でもありまして。
ホントにね、バカな映画なのですよ。
「見世物以上風刺画以下」みたいな、すきものの皆さんがキャッホーと手をたたきながら観るだけの映画なのです。
誰も成長しないし、そもそもろくな人間が出てきませんし、であるからして当然押し付けがましい教訓もない。
主人公である不良少年(と彼らを監督するソーシャルワーカー)なんて、わざわざ田舎にやってきて何をするのかと思ったら、「列車から銅線くすねて小金に換金」ですからね!
どこの元EE JUMPメンバーだよ! おっととっとサツなのか!

物語の冒頭、田舎へと向かう車の中で不良少年が観ているハードゴアな動画。
足首やら生首やらを斧でポンポン飛ばす、その「B級スプラッター」自体が、他ならぬ『インブレッド』そのものを表しているのですよね。
「このあとの人体破壊がおもしれーんだよなー!」と無邪気によろこぶ少年は、私たち、そして製作者自身なのであると。
それはわかっているのです。
「深淵をのぞく時は・・」っていうアレはもう、がってん承知の助なのですよ。
そういう真面目なメッセージはもうさておいちゃっていいから、もっとふざけてくれよ! ・・と思ってしまったのですよね。 
「さあさあ皆の衆!ショーのはじまりだよ!」とさんざん勿体をつけて登場しておきながら、鼻にアスパラを入れて、口ににんじんをつっこんでおしまい!あとは馬にまる投げ!ってなんやねん! ・・と。
にんじんを入れるんなら、口じゃないだろ!
口は口でも、下のお口だr(略)

後半、草原を舞台に繰り広げられた「死にっぷりコンテスト」のようなほがらかさが中盤にも感じられたら、もっとばかばかしくておもしろかったのではないかなぁ、と思いました。
あとね、バーのマスターのメイクがね、夢に出るレベルなのですよね。
なんですか!なんなんですかあなた! ちょっとこわすぎじゃないですか!
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(※ 地獄の黙示録かと思ったよ!)

とまぁ、とても好感の持てる内容&姿勢だったがゆえに、少し物足りなさを感じてしまったりもしたのですが、ともかく、ここまで刺激的な映画が無事日本でリリースされたことは何より嬉しいことですし、まだ44歳だという若き俊英アレックス・チャンドン監督の次回作にも、大いに期待したいものだなぁ・・と思いました。
ごちそうさまでした!



同じ匂いがする映画の感想
『マニアック2000』 ・・・ハーシェル・ゴードン・ルイス監督によるかっぺ殺人モノ。 超ゆかいです。
『変態村』 ・・・ベルギーのユリオカ超特急ことファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督によるかっぺ殺人モノ。 ユーモア度ゼロです。
『2001人の狂宴』 ・・・『マニアック2000』の現代版リメイク。 ロバート・イングランドさんのワンマンショーです。



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『ドリーム・ホーム』

2012年07月25日
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あらすじ・・・
ぜんぶびんぼうがわるいんや!

・ 香港の銀行に勤めるチェンさんはびんぼう生まれびんぼう育ち。びんぼうなやつはだいたいトモダチの薄幸美女です。 建設作業員だったおとうさんは数年前から体を悪くし、おかあさんは既に他界。弟はいるもののまるで頼りにはならず、ひとりで家計を支えています。

・ 昼は銀行でひたすら顧客名簿を片手にセールス電話に励み、夜はアパレルショップの店員としてオシャレ小物を売りさばく毎日。 しかし、働けど働けど暮らしはちっとも楽になりません。

・ 肌を温め合える彼氏はいるものの、妻帯者でケチで情が薄いのでチェンさんの寂しさを埋める要員には到底なりません。 所詮チェンさんは都合のいい女なのです。 わかっている、わかってはいるけれど、そんなクズ野郎の手を振り払う勇気すら湧かないほど孤独なチェンさん。 

・ チェンさんにはわかっていました。 どれだけがんばっても報われないのは何故か、どれだけ慎ましやかに暮らしても生活が上向かないのは何故か、どれだけ愛を求めてもゲスい男しか相手にしてくれないのは何故か、それは、みんなびんぼうのせいなのだ、ということを。 

・ そうだ。ならば、びんぼう臭が一切感じられない高級マンションを買おう。 亡くなったおじいちゃんが夢見て手に入れることの出来なかった、オーシャンビューのラグジュアリーでコンテンポラリーなマンションを買おう。 そうすればびんぼうとはおさらばできる。 惨めったらしいびんぼう人生をリセットし、なんだったらプチセレブと呼ばれるような満ち足りた人生の再スタートを切ることができるに違いない。 いや、そうなんだ。 そう信じるしかないんだ。

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(※ 良心と引き換えにおぜぜを手にし、意気揚々とマンションの契約に向かうチェンさん)

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(※ 売主である老夫婦に契約をドタキャンされ、ショックのあまり具合が悪くなったチェンさん)

・ 1997年の本土返還以降、中国との密接な関係のもと発展を遂げていた香港経済ですが、一方で市民間の貧富の格差はどんどん顕著になり、ブクブクと膨れ上がった住宅バブルに飲み込まれる人たちも少なくありませんでした。 土壇場で欲をかいて売値を釣り上げた老夫婦も、分不相応なマンションを渇望したチェンさんも、どちらもその中のひとりだった。 つまり、なにもかもびんぼうがわるいのです。(←超訳)

・ あと一歩という所でマンション購入計画をおじゃんにされたチェンさんの怒りと絶望は、ごうつくばりの老夫婦や役たたずの不動産屋ではなく、全く別の方向へと向けられました。 「だったら売値を下げざるを得られない状況にしてやんよ」という方向へ。

・ このチェンさんの思考回路が、私にはとても異様に感じられました。 「せっかく金を揃えたのに、さらに値をあげやがって!ゆるさん!」とヒトに対する復讐を始めるのではないのか、と。 肝心なのはあくまで「家」だけなのだなぁ、と。

・ チェンさんにとって「家を買う」ということは、その先にある「幸せ」へ至る為の手段ではなく、ゴールそのものだったのですね。 あまりに極端な考え方ですし、家だけあってもしょうがないのでは・・と思ってしまいそうなのですが、回想シーンを巧みに使ってその辺りの(家に固執するに至った)説明がなされているのでストンと納得する事ができました。

・ ダラリと垂れた糸電話で幼馴染との別離を表したり、びんぼう感満載のボロマンションを高層マンションの影が被ってゆく様で香港経済の偏った発展具合を示したり、狭いビルの隙間、寄せ集まるようにしてタバコをくゆらせる銀行員たちの姿に抑圧された彼らの生活を暗示させたりと、言葉以上に目で物語を感じ取らせてくれるトコロがすばらしいと思います。 なんというか、粋なのですよね、演出が。

・ 粋さ加減は、本作を多くの比重で占める「ゴア描写」においてもキラリと光っており、抜きん出た能力のない「ただの女性」が沢山の人を死に至らしめる為に凝らした創意工夫の数々が、時にユーモラスに、時にギョエーという程の残酷さで描かれております。

・ とにかく、冒頭の「警備員殺害シーン」におけるたっぷりとした時間の使い方だけで、「この監督はただものじゃない・・・!」と、思わず居住まいを正してしまうこと請け合いですよ! 無情すぎてマジ震えたよ!

・ ぽこんと出した目玉は踏み潰されるべし。ぽろりとご開帳したチ○コは切り落とされるべし。というホラーのあるべき姿を追求したおもしろシーンも見ごたえたっぷり。 切り裂かれたお腹から零れ落ちる十二指腸の質感もなかなかのものでした。欲をいえば、もう少し腸がふっくらしている方がよかったですね。なんというか、ホカホカ感がね・・・でもデュルルルン感はばっちりでしたヨ! って何を言ってるんだオレは。なにを力説してるんだオレは。(そしてまた世帯主さまに怒られる)

・ DVDにおさめられていた本作の監督パン・ホーチョンさんと園子温監督のインタビューを見てみると、この「チ○コ切断シーン」には並々ならぬこだわりが込められていたそうで、「転がるチ○コは徐々に萎えて縮んでゆき、それと同時に切断面から赤い血が、先端から白濁した液体がたらりと垂れなきゃダメなんだ!ぼくは最初からそう思っていたんだ!」と熱く語るパン監督の姿に心を打たれました。 ま、そう言われるまで気付かなかったんですけどね!(巻戻して観たら確かに白いの出てた。)

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(※ その後もチ○コ描写の規制について思いの丈をぶつけ合う両監督。 どういう特典映像なんだよ・・・)

・ こだわりといえば、布団圧縮袋を被せられて殺害される妊婦さんのシーンも、とことんリアリティにこだわった非情におそろしい死に様となっておりましたよ。 掃除機をセットして空気を吸い出し始めてからのくだりを俯瞰からのワンカットでとらえていたのですが、これが結構な長さでして。 試しに一緒に息を止めて観ていたら、いつまでたっても画面が切り替わらず「ムゴゴゴー!!」ってなってしまいました。 あの状態で演技までしちゃうんだから女優さんってホントすごいですよね!

・ 美しく、残酷で、愚かで、難儀で、おぞましい作品だったと思います。 人の命を屁とも思わない女性が主人公ですが、彼女が誰かに襲いかかればかかる程「人の命って儚くないんだな」と思わされる(そうそう簡単には死んでくれないので)という、なんとも不思議な仕組みになっておりますので、ただ単にバカスカ人を殺しまくる映画とは一線を画しているのではないでしょうか。

・ ともかく、グロに抵抗の無い方に限り、全力でおすすめします。苦々しいオチも秀逸でしたよ!
   


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『ハチェット アフターデイズ』(シリーズ2作目)

2012年02月06日
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あらすじ・・・
呪われた沼に戻ってきた荒くれ者たちのみなさんが手斧を持った殺人鬼に追い掛け回されて、ギャバーってなってブシューってなってドビャーってなります。

自身2作目の長編映画『ハチェット』で世の中のすきもの達をほくほく顔にさせたアダム・グリーン監督が、置き去り系サスペンス『フローズン』を間に挟みつつ、再びエログロホラーの世界に舞い戻った・・・!
・・ということで、前作から4年の時を経て送り出された『ザ・手斧2』を鑑賞しました。

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(※ 前作のラストで絶体絶命のピンチに陥っていたヒロイン・メリーベスさんが)

かお
(※ 今回はこんな感じにリニューアル・・ お、思てたんとちゃう!!)

失恋のショックを「地獄の沼ツアー」で紛らわそうとした青年が(中略)ミンチにされるという、なんのひねりも無い超オモシロスラッシャーだった『ハチェット』。
今回の続編は、4年ぶりのお目見えだというのになんと前作終了直後という設定でスタート。
ただし、ヒロインの中の人は大人の事情で別のチャンネーにリニューアルされているという、違和感があるようなないような幕開けとなっております。 いや、実を言うと前作のチャンネーの顔はすっかり忘れてしまっていたので、違和感なかったです! ごめん、正直ごめん!

本シリーズの何がすばらしいといって、「出し惜しまない」点が最高に好ましいとアガサは思うのですよね。
脱ぎ要員のチェンネーはあっけらかんとちちを放り出す。
殺され要員のみなさんは趣向を凝らした(かつアリエない)方法で切り刻まれる。
殺人鬼である怪人ビクターは、オリジナリティ溢れる怪奇フェイスをモロ出しで走り回る。
細かい事は気にしない。
よってらっしゃいみてらっしゃい精神に満ち溢れた、ペラい内容。 それが本作の魅力であり、見所であると思うのですよ。
今回もそこいらへんの「出し惜しまなさ加減」はバッチリ健在で、本編が始まって一番最初に映し出されるのは、なんとビクターの超おっかない素顔。 
そりゃもう画面いっぱいにドバーンって。
惜しまないにも程があるわ!というくらいに。
いくら続編だとは言え、他のホラーならば「メインである殺人鬼」のご面相はここぞという時まで温存すると思うのですよ。 
しかし、本作は全く惜しまない。 なんと気持ちの良い連中だろう!

その後、ビクターとヒロインとのちょっとした格闘から、物語はタイトルバックすら出すさないまま一気に核心へと雪崩込み、ヒロインを助けた沼の近所に住むおじさんの口から、「怪人ビクター誕生に一役買っていた悪ガキは、実はヒロインのお父さんだった」という衝撃の事実がさっくり告げられたり、そのおじさんがビクターの急襲に遭ったり、腸を引っ張り出されて「オーエス!オーエス!」風に弄ばれた挙句に首を腸で絞められたり、腸パワーでちぎれた首が宙高く舞い上がったりという頭が悪いにも程があるオモシロ映像が映し出されたトコロでオープニングクレジット。
まさに息もつかせぬ魅せっぷり! 憎いね!日本一!!(※洋画ですケドも)

ただ、今回はこの抜群なオープニングから後半再び沼に戻りてんやわんやするまでの間、結構な時間を費やして「ドラマパート」が描かれておりまして、
「ヒロインの父は、どんな風にビクター誕生に関わったのか」
ですとか
「そもそもビクターのおうちはどんなご家庭だったのか」
みたいな逸話が、ぼくらの頼れる兄貴ことトニー・トッドさんによって涙ながらに語られるのですが、このくだりがホントにもうどうにもならない程退屈極まりなかったのですよね。
前作の時点で、ある程度の「出生の秘密」は説明されておりましたし、よしんば前作のおさらい的な意味合いなのだったとしても尺使いすぎだろ。
やたらと感極まってすすり泣くばかりのヒロインとトニトド兄貴を観ていたアガサの脳裏には、以前アダルト向けビデオについて
「ドラマ部分なんか正直いらんねん!そんなもん全部早送りしたんねん!」
と男らしく語っていた時の世帯主さまの凛とした眼差しが浮かんでいたのでした。 わかる!わかるわーなんとなく!(違うわい!って言われるかもしれないケドも)

新事実として紹介されたポーカスホーカス的ないわゆるひとつの「呪い」要素も・・ まぁ・・設定に説得力を持たせたかったのかもしれませんが、あってもなくてもいいですよね・・ ビクターくんが無駄に不死身なトコ、オレらそんなに気にしてないヨ!
もしかしたら、前回はカメオ程度だったトニトド兄貴をメインキャラクターにする為の工夫だったのかもしれませんが、とりあえずもう次からは新事実なんていらないので、サクッと本題に入ってもらえたらなぁ・・と。

本題に入ってからの展開は切り株描写満載の安心設計となっておりまして、「いかにオモシロく殺されるか」に全力投球するおっさんたちの勇姿に舌つづみを打ったり、トロマ色豊かなビクターくんの造形に胸を熱くするなどして、たっぷり楽しむことができましたよ。
超長いチェーンソーで2人同時に縦割りしたら睾丸がプラーンとか、テーブルに頭をつけて後頭部を蹴っ飛ばしたら顔の上半分だけがテーブルの上をツルルーとか、せっかく「ドラマ部分」で描かれた登場人物のキャラ設定がまるで活かされない殺戮シーンがとても味わい深かったのですが、なかでも「上半身だけになったトニトド兄貴の背骨を持ってエイヤーと引っ張る」シーンは本当にひどい!(もちろんいい意味で)
普通ね、背骨を引っ張ったら、骨だけがぶっこ抜けると思いますよね。 なんだったら、背骨に頭蓋骨がついた状態でスポーンってなるのかなぁ・・くらいの想像をね、するじゃないですか普通。(ホラー愛好者にとっての“普通”)
ところがグリーン監督がしでかしたのは、薄皮だけ残して中身が全部すっぽ抜けるという超大技! 黒人のトニトド兄貴があら不思議!ツルリとした白人に大変身! バーカ!おまえバーカ!!(←グリーン監督に対する最大の賛辞)

ロバート・イングランド、トニー・トッド、ケイン・ホッダーというホラーの三大イコンが顔を揃えた前作に引き続き、今回は『チャイルド・プレイ』のトム・ホランド監督が顔出しで後方支援。 
超有名ホラーサイト「ホラーSHOX [呪]」さんの記事によりますと、トロマの祖ロイド・カウフマンさんや『ワナオトコ』のマーカス・ダンスタン監督もカメオ出演されているとの事です。
なんというかね、『ホステル2』にルッジェロ・デオダート監督がホクホク顔で出ていた時みたいな、和気あいあいとした感じがいいですよね。 
きっとグリーン監督もみんなに愛されているんだろうなぁ。
あのね、ホラーを愛する人って、意外といい人が多いんですよ。ホントだよ。

ちょっとしたヒネリが楽しいクライマックスの展開や、ブチギレヒロインによる大暴走も小気味いいばかりで、ますますグリーン監督の事がだいすきになってしまったアガサだったのでした。
一応製作が予定されている第三弾も大いに期待して待ちたいと思います!


参考記事
映画|ハチェット アフターデイズ|Hatchet 2 :: ホラーSHOX [呪] 映画|ハチェット アフターデイズ|Hatchet 2 :: ホラーSHOX [呪]  ←超くわしくてべらぼうに面白いレビューです!おすすめ!

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