『アメイジング・スパイダーマン2』
2014年04月29日

(※ ネタバレしています)
あらすじ・・・
大学生ピーター・パーカーがストーカーになります。
・ みんなだいすき『スパイダーマン』の最新作を観てきましたよ。 イケてる高校生がクモに噛まれてイケてる女子高生と恋仲になるおはなしの続きですよ。
・ みんなだいすきスパイダーマンが、今回もハイになったりローになったりと安心の情緒不安定っぷりで、NYを混乱のるつぼに叩き落とします。
・ 派手なコスチュームを着こんで高層ビルディングの谷間を駆け巡るのだからそりゃまぁテンションも上がるわなぁ・・と、スパイダーマンがハイテンションである理由はわかるものの、ちょいちょい死んだ魚のような目になるのは何故なのか・・? といいますと、そこにはとある事情がありまして。
・ それはつまり、白濁色したクモの糸をビュンビュン飛ばしたあとにやってくるアメイジング賢者タイム・・ な訳ではなく、前作のラストで瀕死の状態だったグウェンのお父さん(おまわりさん)から「もう娘には近づかんとってな・・男同士の約束やで・・・」と懇願されたからなのですよね。
・ 目の前の命を救いたいという純粋な願いと、愛する人を危険にさらすかもしれないという不安な思い。 罪悪感や責任感や危機感や正義感などなど、いろいろな感情でがんじがらめになっているピーター・パーカーさんを見かねたグウェンさんは、答えを言い出せない彼に代わり、涙をこらえて別れを切り出してあげるのでした。
・ っていうか、そういうことは自分から言えよピーター。
・ ところが、一応「破局」は迎えたものの、ちっとも納得できていないピーターさんはスパイダーマンとしての活動の合間にグウェンさんの行動をいちいちチェックするようになります。 いや、むしろストーキングの合間に人助けをしていると言っても過言ではないのかもしれません。 少ない時で一日一度の尾行&監視行為。 行きつけのレストランは当然把握。 これはわたしの推測ですが、使っているシャンプーなんかもチェック済みなのではないでしょうか。 ワオ!アメイジング!
・ いいねいいねーねっとりしてきたねーまるでクモの糸のように粘着してるねースパイダーなだけにー
・ てな具合に、公私混同&精神面グラグラなのも仕方ないと思えるほど、今回は前作にも増して、ピーターさんがヒーローとしてのあり方を自身に問わざるを得ない局面が幾度と訪れるのですよね。 みんなの為に身を粉にしてがんばっているのに、相変わらず世間は賛否両論ですし、中には「なんだったら出る杭は叩いてやろう」みたいな人たちもいたりなんかして、ホント、人って勝手だナァ・・・とピーターさんが不憫に思えてならなかったのでした。
・ というわけで、そろそろ本題に入りますが、本作にはピーターさんをはじめ、さまざまな事情を抱えた「不憫な人たち」が登場いたしまして。
・ ある日突然夫を亡くし女手一つで甥っ子の学費を稼ごうと奮闘するメイおばさんや、ある日突然夫を亡くし女手一つで3人の子どもを育てていたもののさらなる悲劇に襲われるヘレン・ステイシーさん、ある日突然見捨てられたお父さんから10年ぶりに呼び戻されたと思ったら「お前もわしと同じ病気で死ぬから!程なくして!」と無情な宣告を受けるハリー・オズボーンさんなどなど、見ているだけで胃がシクシクしてきそうなみなさんが揃っているのですが、中でも最も気の毒な人物にして、スパイダーマン最強の敵としてエントリーしていたマックス・ディロンさんの悲しい生き様に、わたしはひどく心を打たれたのです。 はい、ここから本題ですよ!
・ 人一倍有能な電気技師だけれど、同僚からも上司からも疎んじられ、一緒に遊ぶ友達もいないマックスさん。 会社でもひとり。家でもひとり。 なんだかもう長いこと、名前で呼ばれていない気がします・・・。
・ そんなある日、偶然事件現場近くを通りかかったマックスさんは、危うく車に轢かれそうになったところをスパイダーマンに助けてもらい、天にも昇る気持ちになってしまいます。 そりゃそうですよ! みんなだいすきスパイディですよ!
・ いくらスパイディがNYで毎日人助けをしているとは言え、犯罪発生率と大学生の活動時間を照らし合わせれば、クモの糸に救われる確率は決して100%ではないはず。 普通におまわりさんに助けられる人や、運悪くがっつり車にはねられる人もいる中、誰からも目を向けられず生きてきたマックスさんが見事、スパイダーマンの目に留まることができた。 それだけでも「オレって特別なの・・・?」と舞い上がらずにはいられない出来事であったのに、スパイダーマンはさらに「きみの助けが必要なんだ・・このNYにはね!」と褒めて伸ばすタイプのコメントをプレゼント。 スパイディにとっては気軽な一言だったのでしょうが、コミュニケーションに飢えていたマックスさんには、一生に一度レベルのご褒美となってしまったのでした。
・ これ見た事あるわー! Twitterで芸能人に声かけまくっていた人が、たまたま一回リプライ返してもらった瞬間「ダチ公」みたいなテンションになってるアレやー!
・ 100人の知り合いがいなくても、ひとりのマブダチさえいればそれでいい。 しかもそれが、みんなだいすきスパイダーマンときたら・・・。 孤独という名の可燃性物質で容量ひたひたになっていたマックスさんのハートに、「フレンドリーな言葉」という名の火花が散らされたらどうなるか・・ それは火を見るより明らかでしょう。
・ コミュニケーション能力に不自由だったせいで、「フレンドリーな言葉」をそのまま「フレンドの証」として解釈してしまったマックスさん。
・ これも見た事あるわー! Twitterで相互フォローしてふぁぼとかも結構しあってたから「あ、これはもうフレンドリーな仲になれたんだな」と思って気さくにリプライしたらメチャクチャ敬語で返されて「やべー!距離感すげー!」って自己嫌悪で穴掘って埋まりたくなるアレやー!
・ いったい誰が、そんなマックスさんを責めることができるでしょうか。 わたしにはできない。 社交辞令と本音に翻弄され、現実世界はおろかTwitterですら気軽に人と絡めないわたしには、マックスさんをただのかわいそうな人として見ることなど、到底できない。 (まぁわたしだったら、のちのち勘違いが発覚して勝手に落ち込むのがこわいので、はなから胸襟は開かないでおきますけどね)
・ で、「友情」の炎により、残っていた「正気」をすべて焼き尽くされてしまったマックスさんはというと、部屋中にスパイダーマンの切り抜きを貼り付けて、一人二役で会話を楽しむというスーパーポジティブな日々に突入。 「やあマックス!元気かい!」「センキュー!スパイディ!調子は上々だよ!」
・ あのね、惨めでも孤独でもなんでもないんですよ。 だってマックスさんは、あくまで「スパイダーマンの代わり」を務めているだけだから。 彼が当然言うであろう言葉を代読しているだけだから。
・ ちなみに今日はマックスさんの誕生日なのですけども、準備も万端ですよ。 忙しいスパイディに代わって自分で作ったケーキと、同じく自分で作ったカードも用意して、あとは定時になるのを待つばかり。

(※ イメージ図)
・ マックスさんの脳内パーティは盛り下がることを知らず、たまたまエレベーターで一緒になったグウェンさん(そう、マックスさんはピーターと縁深いオズコープ社の社員だったのだ)から、「あら?今日誕生日なんですか?」と聞かれたマックスさんは、咄嗟に「そうなんだー有名人とか友達とかいっぱい来て盛大なパーティを開いてくれるんだーいやーごめんなさいねー人気者でごめんなさいねー」と聞かれてもいない自慢話まではじめてしまいます。 これね、強がっているんじゃないと思うんですよ。 たぶんマックスさんは、スパイディがたくさん知り合いとか関係者とかを連れてきちゃってる光景を思い浮かべてたんじゃないかな。 あるいは、「連れてきちゃうこともあり得るじゃないか」、と。 なくはない。 あり得なくはない、だって俺らマブダチだし、と。
・ 結果的に「ひとり」であったとしても傷つかない。 脳内のスパイディは、彼を裏切らないから。 仮にその場にいないとしても、それは裏切りじゃない。 忙しくて顔を出せないというだけの話だから。 ぜんぜん寂しくないし、これっぽっちも虚しくない。 マックスはひとりじゃない。 オレはもう、ひとりじゃない。

(※ 映画鑑賞中のわたしの心象風景)
・ もしかしたらこのまま、二度とスパイダーマンと会えなかったら、マックスさんは彼なりに幸せに生きていけたのではなかろうか。 しかし運命は非情で、マックスさんにこれ以上酷いものはないというほどの試練を与えました。 そうでなくても悪意しか感じられなかった世間から、さらにむき出しの悪意をぶつけられるという試練を。
・ 不幸な事故により、電気を操る能力を得ることとなったマックスさん。 ヒーローサイドに立つことも不可能ではなかったのではないか、と思うほど圧倒的なパワーの持ち主なのに、見た目が若干不審者っぽかったり、芽生えたばかりの力をコントロールできなかったばっかりに「化け物」と罵られ、かっこいい色合いのスパイダーマンと比較され、さっくり「悪者」認定されてしまった彼の姿を観ていたら、なんかもういたたまれなさすぎて号泣しそうになりました。 マックスさんは何も悪くないじゃんか!ちょっと妄想力がすごいのと、コミュ力が足りなかったのと、いろいろこじらせすぎて物事を悪い方にしか受け取れなかっただけじゃんか! あと、本編では描かれてなかったけど、「お母さんからも誕生日を忘れられていた」という裏設定があったみたいですよ! なんなのもう! お母さんあとで小一時間説教な!
・ 「誰かに必要とされたい」という想いに苦しんでいたのはマックスさんだけではありません。 メイおばさんはピーターに(親として)必要とされたいと強く願っていましたし、グウェンさんだって本当はピーターからもっと素直に「きみが必要だ」と言われたかったのではないでしょうか。 死の床にあった父親から呼び戻されたハリーさんも、ただ単に「おまえ死ぬからヨロシク」なんて事実を告げられるのではなく、息子として必要とされていれば、病気に対する向き合い方も違ったのでは。
・ 誰もかれもが「承認欲求」という厄介なシロモノに振り回され、誤解やすれ違いで傷ついたりやけくそになったりしてゆく様は、観ていてホント身につまされるというか、ヒーローだろうとヴィランだろうと、強い人だろうと弱い人だろうと、この世はほんに生きづらいものよのう・・ と思いました。
・ そんな「承認欲求オールスターズ」の中にまさか、ポール・ジアマッティさんが混じっていたとはね!(←全く気付かなかった)
・ エンドクレジットに「ポール・ジアマッティ」と出てもなお、「えっ?! どこに?!」ってピンときませんでしたよ! 「あ、もしかして最後に出てた帽子を目深に被ったおじさんか!」とか思いこんじゃったもんだから、パンフレットを見てひっくり返しました。 なんつうか、ジアマッティさんでなくてもよかったんじゃ・・(モゴモゴ)
・ ハリーの全シーンが美しすぎて悶絶。
・ マックスさんのことばっか書きましたけど、ハリーとピーターの関係についても白飯が進み過ぎておなか一杯になりましたよ! 書くことあり過ぎて書けない!
・ ハリーがクモの毒を接種して緑化してゆくシーンは、おなじみの「グリーンゴブリン」像にどこまで近づけられてしまうのかひやひやしましたよね! よかったーアゴあんまり出なくて!
・ スパイダーマンのリップサービスにもてあそばれ、ハリーの甘言に操られたマックスさんは、明石家サンタに電話すればいいと思う。
・ マックスさんが電気を放電しながらピカピカの御殿を建てるバージョンの「レリゴー!レリゴー!」を誰か作ってください。
・ マックスさんの陰毛ヘアが超リアルですばらしかったです。 『アンブレイカブル』のサミュエル兄貴に匹敵するステキヘア。 社内のシーンでひと房だけ後ろにピローンって浮いていたんですけど、そのピロり具合なんてもう芸術性を感じるほどでしたよ。
・ ちびスパイダーマンで号泣。
・ 「アベンジャーズシリーズとX-Menシリーズとスパイダーマンね、よし覚えた!」と思っていたら、今度ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなんてのがはじまるよって言われて、スパイダーマンにもシニスター・シックスっていう団体名も出てきたりなんかしちゃって、なんだかそろそろついていけなくなる予感がしています・・・。 (そういえばファンタスティック・フォーも作り直すんだっけ・・・)(あっ!DCコミックの方忘れてた!)
関連感想
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