『ABC・オブ・デス』
2014年04月18日

5分に一度、人が死ぬ! 国際死にざま選手権、堂々開幕です!
あらすじ・・・
「A・アポカリプス」
地道な殺人計画を企てていた奥さんがやけくそになります。
「B・ビッグフット」
清掃員を隠れ蓑に連続殺人を続けていたおっさんがやけくそになります。
「C・サイクル」
庭先に開いた謎のホールに吸い込まれ増殖してしまった男の人が、もうひとりの自分相手にやけくそになります。
「D・ドッグファイト」
愛犬と意外な場所で再会した喧嘩師がやけくそになります。
「E・駆除(エクスターミネイト)」
部屋で見かけたクモをどうにかして退治したい男の人がやけくそになります。
「F・おなら(ファート)」
世界の終りを目の前にした女の子がやけくそにならずに素直になります。
「G・重力(グラヴィティ)」
やけくそになった男の人が人生最期のサーフィンをします。
「H・水電拡散(ハイドロ・エレクトリック・ディフュージョン)
ストリップ小屋でナチスの女暗殺者に狙われたブルドッグがやけくそになります。
「I・内向(イングロウン)」
必死に助けを求める女の人を前に、男の人がやけくそになります。
「J・時代劇」
切腹の介錯人として処刑場にやってきたお侍さんがやけくそ気味な幻覚を見ます。
「K・不器用(クラッツ)」
どうしても下水へ流されたくなかった排泄物が便器の中から飛び出し、文字通りやけくそな感じで宿主にすがりつきます。
「L・性欲(リビドー)」
アジアのどこかでひっそりと行われている、全アジアやけくそ自慰選手権の模様をお送りします。
「M・流産(ミスキャリッジ)」
スレンダー美人によるやけくそな排泄の顛末をお届けします。
「N・結婚(ナプシャルズ)」
赤裸々な言葉を聞かされ続けたオウムがやけくそになります。
「O・オーガズム」
きれいなおねいさんが窒息プレイによりオーガズムに達します。やけくそです。
「P・重圧(プレッシャー)」
クズなヒモに生活費をむしられながら、三人の子供を育てるおかあさんが、娘の誕生日プレゼントを購入するためやけくそになります。
「Q・アヒル(クワック)」
『ABC・オブ・デス』に参加できたものの、よりにもよって「Q」という無茶ぶりにも程があるアルファベットをあてがわれた監督がやけくそになります。
「R・切除(リムーブド)」
世間が望むままの作品を提供するため身も心も削がれ続けてきた男の人が、やけくそというか、反旗を翻します。
「S・スピード」
死神のような謎の大男から逃れるため、謎の美女が砂漠をやけくそなスピードで疾走します。
「T・トイレ」
トイレでの排泄に異様な恐怖心を抱く男の子が、激しい腹痛に襲われ、こうなりゃやけくそじゃい!とばかりにトイレに駆け込んだ挙句ひどい目に遭います。
「U・発掘(アナースド)」
村人たちが吸血鬼相手にやけくそになります。
「V・産声(ヴァジャイタス)」
スーパー赤ちゃんがやけくそになります。
「W・カオス(WHAT THE FUCK)」
『ABC・オブ・デス』に参加できて「W」というアルファベットをあてがわれたものの、何もいい案が浮かばない監督がやけくそになります。
「X・ダブルエックスエル」
世の中に氾濫する「痩せてないブタはただのブタ」というメッセージに打ちのめされたふくよかな女の人がやけくそになります。
「Y・ティーンエイジャー(ヤング・バック)」
自分を蹂躙した変態に罰を与えるため、とある少年があの世からやけくそな格好で舞い戻ります。
「Z・絶滅」
やけくそです。
・ 一生分の「やけくそ」という文字を入力したような気がしますが、まぁ、だいたいこんな感じの映画です。
・ タイトルが示しているように、アルファベット26文字ぶんの、26通りの死にざまがめくるめく繰り広げられますが、1作品あたり約5分という制約が製作者によっては吉にも凶にもなってしまっているという、非情な仕上がりに。
・ 要するに、「5分なのにここまでおもしろい!」もあれば「5分もこんなことやるの?」もあるというね、そういうのがズバっと伝わっちゃうということですよ。
・ 歳のせいでしょうか、「テンポの良さ」よりも「手数の多さ」に疲労感が増してしまいました。 なんてたって、「D」の時点ですでに「まだDなの・・・?」と思ってましたからね。
・ ただ、それは、「つまらなかった」という意味ではなく、繰り出されるパンチの一発一発がなかなかどうして重みのあるいいパンチで、ボディブローのようにジワジワと効いてきていたから、という意味もあったのだということを、是非に書き記しておかねばなるまいと思う。 たしかに短い作品だけれど、それぞれの中には極限まで凝縮された壮大なドラマが詰め込まれていたのだ。
・ って思ってたんだけど、「F」でおおいにずっこけました。 あまりにひどくて、タイトルが出た瞬間「わあひでえ!」と声が出てしまいましたよ。 滅多にないことだよ。 たいがいの映画は「理解」できなくても「嫌い」にはならないんだよ。
・ 同じく、日本人監督による最終話「Z」も、頭を抱えたくなるほどひどい作品で、ブラックユーモアなのか社会風刺なのか何がやりたいのかさっぱりわからない下劣な映像が延々続くなか、「えっ?まだ1分しか経ってないの?!」と時計とにらめっこをせずにはいられなかった自分がそこに居ました。
・ 【誤解を生みたくないゆえの配慮のコーナー】まぁね、すべての映画がそうですし、以前にも書いたことがあるのですが、結局すべては「相性が合うかどうか」なのですよね。 自分の琴線に触れるかどうか、自分の許容範囲におさまるかどうか、単純に好きな画かどうか。 ですので、「F」にせよ「Z」にせよ、わたしには合わなかったというだけで、この作品そのものを否定するつもりは全くありません。 好きな人はめちゃくちゃ好きでしょうし、嫌いなひとはとことん嫌いになるでしょう。 言うまでもないことですが。 【配慮終了】
・ で、私がとことん好きだったのはどの作品だったかというと、それはもう「R」でしたねぇ。 世界中の映像作家さんは落涙必至なのではないでしょうか。 魂を縛られ、血の吹き出るような想いで生み出した作品を切り刻まれ、作られた名声に弄ばれた人間の苦しみ。 必死の反乱の末つかみ取った自由の、そのあまりの苦さに、絶句してしまいました。 ホントすばらしかったです。
・ 『ホステル』みたいな悪趣味クラブが登場する「L」、炎の美しさが印象的だった「S」、猟奇的な描写は一切ないものの他のどの作品よりも絶望を感じさせる「P」などもよかったですねぇ。 もっとも短いストーリーだった「M」は、その簡潔さが魅力的だったものの、オチが物足りなかったような気が。 あそこまで日常的な光景にするならば、「流産」では残酷さも凶悪さも足りないのではないでしょうか。 (って書いていて我ながらひどいこと言うなぁと思う)
・ それにしても、みんなトイレ好きだなぁ。
・ まとめると、「F」と「H」と「W」と「Z」以外は全部すきです。
・ それにしても、日本からの参加作品がどれもSUSHI TYPHOON関係ってのは、どういうつながりなんだろな。 製作者がなかよしだったとか? もうちょっと違った色合いの作品もあってよかったんじゃかなろうか。
・ 聞くところによると、すでに第2弾の制作も決まっており、『気狂いピエロの決闘』のアレックス・デ・ラ・イグレシア監督や、『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督、『屋敷女』のジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督や『フィースト』のマーカス・ダンスタン監督、さらに日本からは園子温監督の参加も決定しているようで、本作以上にやけくそな映画になるのではないかという期待に平らな胸も膨らむ次第でございます。 マーカス監督は絶対なんかやらかしてくれるはず・・・!

