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『レッド・ステイト』

2013年06月10日
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世の中で何が一番恐ろしいって、「自分が正しいと信じきっている人」ほど恐ろしいものはないと思うのですよね。

「こう言っておけばウケる」とか「こう訴えかけておけばチヤホヤされる」とか「この路線で行けばおぜぜが転がり込む」とか、そういった「損得勘定」があればまだマシで。
そうではなく、利害関係も妙な色気も一切なしで、「自分は世の中を変えたい!いや、変えられる!だって自分は正しい事しか言っていないのだから!」と揺るぎない信念を披露する人にはもう、太刀打ち出来ない。
「彼ら」の耳に、「彼ら以外」の人からの言葉は届かない。
たって「彼ら」は100%「正しい」のだから。


あらすじ・・・
高校の友達が出会い系サイトで女性をゲットしたので、ほんじゃぁまぁご相伴にあずかりましょうか!っつって3人で自宅訪問したら一服盛られて、目が覚めたらキリスト教原理主義者に囲まれててさあ大変。

『クラークス』や『チェイシング・エイミー 』『ドグマ』『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』などでお馴染みのケヴィン・スミス監督が、今までの作品とは雰囲気の異なる「攻めてる」映画を作ったと聞いて以来、ずっと楽しみにしていた『レッド・ステイト』を鑑賞しました。
内容はというと、「狂信的なキリスト教徒がATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)と銃撃戦を繰り広げる」という、ぞっとするようなストーリーだった訳なのですが、鑑賞後ちょこっと調べてみると、アメリカでは実際1993年に「ブランチ ダビィディアン」という宗教団体による痛ましい事件が起こっていたようで、事実は小説より奇なり・・というか、ただ映画を観ながら「ひゃー!おっかねー!」と無邪気にはしゃいでいればよかった時代は遠くなりにけり・・というか、なんだか胃の奥のほうがずうんと重くなってしまったのでした。

いや、本当はずっとずっと昔から、常に現実は想像の一歩先を進んでいたのでしょうけれども。

で、「狂信的な宗教団体も実際いるし、KKKなんかも有名だし、いやぁ、アメリカってこわいなー」と「現実」は「現実」でも「海の向こうの現実」として片付けようと思いつつふと周りを見ると、容赦ない「今ここにある現実」として日本の政治家さんの発言が目に飛び込んできたりして。
たとえば本作において、「カリスマ指導者」として熱弁を奮っていたクーパー牧師のありがたい説教の中に、「ゲイは悪だ!なぜならあいつらは子どもをうまないから!」「スマトラ島沖地震とそれによる津波はゲイにたいする天罰だ!」「神は人を殺すなと言ったけど、ゲイは人じゃなくて悪魔だから殺してもオッケー!」などというギョっとするような一節があったのですが、わーなんだろう!この既視感!
なんかね、誰かが同性愛者に対する蔑視発言を繰り返したり、「東日本大震災の津波は我欲を洗い流すための天罰だ」って言ってたような気がする!元都知事が言ってたような気がするよ!しかも今は現役国会議員だったような気がする!

この国会議員といい、「365日24時間死ぬまで働け」と檄を飛ばす会社会長といい、「弱者は守られなければならないけれど、私が(俺が)認める弱者以外はただのズルっこだから野垂れ死にしてもオッケー!」的な事を言うその他もろもろの偉い人たちといい、彼らの信念や主張は到底納得など出来ようはずもない内容です。ちょっとどうかしているとしか思えない。
もしもその発言の真意が、「支持者の囲い込み」であったり「ブラックさを愛社精神という言葉で誤魔化して儲けよう」という損得勘定からきているものだったら、交渉の余地は残っているでしょう。
だって、「それ言い続けてると損ですよ」と言えばいいのだから。
しかし、そうではないような気がしてならないのですよ。
彼らは「正しい」のです。
「正しい」という事を、微塵も疑っていないのです。
それが何よりも恐ろしい。

人を殺せる道具を手にしたクーパー牧師は、自分の信念を貫く為に、正しさを証明する為に、「人類の敵」を処刑し始めます。
しかし、人を殺せる道具は何も銃火器だけではない。
「権力」もまた、人を殺す事の出来る、しかも自らの手を汚さず、罪悪感にも苛まれず殺す事の出来る道具なのです。
それぞれがそれぞれの「正しさ」を振りかざし、人を殺してゆくストーリーは心底おぞましく、そしてものすごくおそろしかったです。
「正しい」と信じすぎている人に、「道具」を与えてはいけない。
本作を観て、改めて再確認させられました。

でもって、そんなこんなの殺伐とした展開や重いメッセージを全部ぶち壊すような最後の一言が超さいこうで、痺れまくった私ですよ。
あくまで想像ですけども、監督はあの一言を撮りたいが為にこの映画を作ったんだと思うな!
ああ!やっぱりケヴィン・スミス監督だいすき!!



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