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『KOTOKO』

2013年04月12日
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団地内に響き渡る絶叫! 血塗れたバスタブに全世界が戦慄! 
次に壊れるのは、あなたの隣にいる「母」かもしれない・・・!


というフレーズが脳裏を過ぎってしまった、一見「ホラー」よく見ると「お母さんあるある」な恐ろ哀しい映画『KOTOKO』を観ましたよ。


アガサが最初にその悪夢を見たのは、第一子を妊娠中でした。 

もう5ヶ月を過ぎ、安定期に入った頃だったでしょうか。
生まれて間もない我が子の首が、抱っこした拍子にポロンと落ちてしまう、という夢でした。
プールの更衣室のようなトコロで、わたしはなぜか赤ちゃんをロッカーに入れていて、着替えようと扉を開けると赤子は既に息をしておらず、わーっと慌てて抱き上げた瞬間ポロン、と。

首は床をコロコロと転がって行きました。
首はなぜか穏やかな表情をしていました。

わたしは叫びながら飛び起きました。


2人の子どもを授かり、かれこれ11年が経ちます。
一年のうちのほとんどは、朝起きて、ご飯食べて、笑ったり、叱ったり、いつもと変わらぬ毎日なんですよね。
でも、今でも時折、叫びながら悪夢から目覚める事があるのですよ。
事故や犯罪に巻き込まれたちびっこたちが無残な事になるのをなすすべなく呆然と見ている、という夢から。

coccoの『KOTOKO』は、そんな夢をギュギュっと凝縮したような映画でした。
夢と、夢を見て跳ね起きるわたしが、そこに詰め込まれていました。

死にたいからではなく、生きていることを確かめる為に手首を切るKOTOKO。
周りの人を攻撃したいからではなく、我が子を守る為に拳を振り上げるKOTOKO。
その姿はあまりに痛々しく、直視することが耐え難い。
だので、「メンヘラだなー」とか「彼女はアレですね、完全にアスペですね」とか「マジキチwww」という簡単な言葉で片付けてしまいたくなる人もいるかもしれません。
わかりますよ。 わからんでもないです。 だって、そういった言葉で自分の領域から遠ざけてしまえば楽ですもんね。
「これは自分とは関わりのない世界なんだ」って。 「あたまのおかしい人の話なんだ」って。
しかし、KOTOKOの世界はわたしたちの世界なのですよ。
表現こそ過激でショッキングだけれど、彼女が抱える不安は特別なものではない。
だから、遠ざけるのではなく、少しでいいから想像してみてほしい。
わからなくていい、同情してくれなくていいけれど、「危険厨」みたいなばかげた言葉で蓋をして、見なかった事にだけはしないでほしい。

枯れ枝のように細い腕を振り、KOTOKOがハラハラと舞う姿を観ながら、そう思いました。


「母はつよし」なんつって言いますが、母になったからといって「よっしゃーまかせとけー」と逞しくなる訳ではないのですよね。 
むしろ、圧倒的に弱くなるのではないかと思います。特にメンタル面で。
テレビから“登校途中の児童の列に車が・・”というニュースが流れれば「集団登校させててもいいのだろうか・・・」と惑い、“女の子をねらった性犯罪が・・”というニュースが流れば「えっとえっと、携帯持たせて、GPSで見守って、送り迎えもして、あと、何すればいいの?!いっそ外出すの禁止にするか?!」と思いあぐねる。
「子どもを守りたい! ああ、絶対に守るさ! でも、できないかもしれないよ! できなかったらこの子はどうなるの?!」
確固たる決心はあるものの、不安に打ち勝つだけの自信なんてない。
常に強くて弱い「母」。 

「だいじょうぶ。」 cocooさんやたくさんの「母」たちに向け、贈られた言葉で、映画は幕を閉じます。
その言葉の贈り主が彼女の子どもであった事がなにより嬉しく、心強く、救われたような気がしました。

鑑賞しつづける事は苦痛かもしれません。 けれど、ただ鬱気分を味わうだけの映画ではないと思います。
心にズシーンとくる、とても美しい映画でした。



― 追記 ―

・ 何よりビックリしたのは、こっこさんの演技力でして。 限りなくプライベートフィルムに近い映画ではあるものの、赤ちゃんと共に神経をすり減らしながら暮らすこっこさんは、あくまで「cocco」ではなく「KOTOKO」な訳で。 カメラの前であそこまで自然に神経を磨り減らせるこっこさん、ただもんじゃねえな・・・!

・ お姉さんに預けた我が子に、KOTOKOが久しぶりに会いに行くシーンで、すっかりお姉さんになついちゃった赤ちゃんが機嫌よくしているのをじっとりと眺めるトコなんかもうね! せつなさと嫉妬と哀しさが渾然一体となったあの表情! わかるわー! 出来れば人見知りしてほしい気持ち、わかるわー! 

・ 預けてのんびりしたい割には、なつきすぎてほしくないというね!相反するアレね! まあね、おかあさんなんて勝手なもんなんスよ!

・ こっこさん的には、「演技」というのではなく、当時の記憶を思い出して「感覚の再現」をしていたのかもしれませんが、それこそがまさに演技の真髄・・・! って月影先生が言ってた!

・ あと、火が付いたように泣く赤子を抱きかかえながらお昼ご飯を作るシーンでの、悲痛な叫び&フライパンぶん投げもね、非常に身につまされましたよね。 フライパン投げた事はありませんけど、ああいう気持ちになった事あるお母さん多いんじゃなかろうか・・・。 

・ アガサもね、離乳食時代にせっせこ作ったどろどろ飯をあまり食べてもらえず、裏ごしに使ったザルに詰まったカボチャの繊維をゴシゴシしながら泣いた事、ありますもんね。 いとも簡単に絶望する・・それが「お母さん」・・!

・ 毎日気にしなかったり気にしたりしながら、手探りで挑む子育てですが、実は子どもには「タイムワープ」という必殺技が備わっていまして、気づいたら大きくなってたりします。

・ 「こないだまでオムツだったのになぁ」「つい昨日入園したのに」「いつまでも小学生だと思ったたのに、もう中学校か・・」 なんて言葉をうっかりもらしてしまった事のない親御さんなどいないのではないでしょうか。 そう、それこそが子どもたちの秘技・タイムワープ・・・!

・ 本編のラストで、KOTOKOの息子さんが突然成長した姿で現れるのですが、その直前まで起こっていた事からあまりにかけ離れた展開だった為、実在するのかしないのか困惑してしまいました。 しかし、それもきっと、秘技・タイムワープだったのではないかなぁ・・と。 KOTOKOがどれぐらいの期間入院していたのかは定かではありませんが、息子さんの穏やかな表情とさりげない温かさから、KOTOKOに対する愛情がひしと伝わってきました。 なんかね、すごく嬉しかったです。

・ 子どもたちが秘技・タイムワープを使ってくれる事がどれだけありがたいことか、タイムワープを実感出来る事がどれだけすばらしいことか。 あっという間にすぎてゆく日々というのは、ちょっとした奇跡の積み重ねなのかもしれないなぁ・・と思います。

・ という訳で、おおむね「あるある」と共感しながら観ていたのですが。

・ 以前にも書いたことがありますが、私は子どもが酷い目に遭う映画がどうしても受け付けられなくてですね。 「出来事」としての死ならまだしも、その死に方をまざまざと見せつけたりなんかされたら、もうそれだけでゲンナリしてしまうのですよ。

・ 本作に関しても、直接見せなくてもいいんじゃないか・・・と思わずにはいられないシーンがバッチリありまして。 そこはね、銃声の音と、世界の崩壊を目にするKOTOKOの姿だけで、じゅうぶん伝わるんじゃないか、と思ってしまったのですよ。  もちろん、「子どもを失う」想像を時々してしまうのも事実なのですけどね。悪夢としてね。 ・・でも、やっぱり直接表現はしんどいなぁ・・。

・ そう思う一方、KOTOKOに一目惚れしてしま小説家・田中(塚本晋也監督)がフルボッコにされるダイレクトなシーンは大歓迎してしまうわたしですよ。

・ 塚本監督登場シーンは爆笑につぐ爆笑で、コメディになっちゃったのかと思う程おもしろかったです。 ちなみに田中(塚本監督)も「だいじょうぶ」を連呼するのですが、全然だいじょうぶじゃないわ、だいじょうぶになりかけたらトンズラするわで、ホントもう「おまえゲスいな!」と思いました。

・ 田中は現実する人物だったのか非現実だったのか。 あまりにKOTOKOに尽くしてくれるので、もしや彼も彼女が作り上げた幻だったのでは・・・という考え方もあるようですが、アガサは完全にモノホンだと思います。 田中はたぶんね・・・・ドMだったんだと思うよ!(※なのでKOTOKOが暴力を奮う必要がなくなった途端トンズラした)

・ 手首を切って、そこから流れてくる血のあたたかさに「生」を感じるこっこさん(KOTOKO)の姿は、私たちから見るととても異様だけど、彼女にとっては異常ではないのでしょうね。 そりゃあたたかさを感じて血にまみれて踊ってもみるわーおさげも切り落とすわーわかるわー。

・ たぶんですけど、たとえばわたしたちが、プールとか海とかでお手洗いに行った時にね、「あれ・・・身体は冷えてるのに出てくるモノは意外とあったかい・・・?」と「生」を実感するのと大して変わらないのではないでしょうか。 ほら、「生きてる」って、そういうことじゃん?ちがうか!ちがうのか!

・ まぁ、でもできれば身体を傷つけずに実感できるようになるに越したことはないですけどね。 こっこさんが今でもその確認方法を採用しているのか定かではありませんが・・。  

・ 願わくば、彼女と彼女の世界がずっとずっと「だいじょうぶ」であるように。



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