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『ポゼッション』

2013年03月05日
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あらすじ・・・
えっ?ホトトギス鳴かないの? じゃあ鳴かないやつはほっといて、自分の為だけに鳴いてくれるニュータイプのホトトギス、作っちゃえばいいじゃん!おまえだけの理想のホトトギスをさ!

『レボリューショナリー・ロード』『ブルー・バレンタイン』『アンチクライスト』などなど、こじらせ夫婦を題材にした映画作品は数ありますが、それらの中から頭一つ抜け出しているのではないかという、最凶殺伐映画『ポゼッション』を観ましたよ。

見知らぬ土地、初めての出産、身体と心を孤独に蝕まれてゆく妻。とうに限界点は超えているのに、単身赴任中の夫にはSOSを出す事すら叶わない。
一方、妻の寂しさを「理解」していると思い込んでいる夫は、会社を退職する事で家族への愛を証明しようとする。 「ほら、いっしょにいてやるよ。それでいいんだろ、なんの文句があるんだよ」、と。
噛み合わない互いの気持ち。
崩れ始める信頼関係。 
独善的な解釈が、そこにさらに追い打ちをかける。
かくして妻は、「共鳴して(鳴いて)くれない」夫に見切りをつけ、新たなパートナーを自らの内部から生み出す事に。
愛と肉欲と粘液と鮮血が絡み合う、こじらせ界のマスターズ・カップと呼ぶに相応しい最終決戦、いざ開幕です・・・!

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(こじらせすぎて、夫の向かいにも隣にも座らず背中を合わせた角のこっち側に陣取っちゃう嫁。 ・・・隠密か!)

とにかく、本作の「こじらせ描写」は本編冒頭から既にフルスロットル状態。
「どこからか帰ってくる夫の浮かない顔と、それを大歓迎とは程遠い顔で迎える妻のギスギスっぷり」に戸惑っている所にすかさず繰り出される、「うまくいかなかったらしき夫婦の営み」シーン。
妻がマグロだったのか、はたまた夫が中折れしちゃったのか・・・ 真相の程はさて置き、サム・ニール演じる夫が吐き捨てる「おまえなんか抱く気も起こらねえよ」という最悪のセリフに画面の前のアガサの心も凍えます。 おまんはいま・・・ぜったいにいうてはならんことをいったぜよ・・・

サム・ニールの暴言を受け、干上がる寸前だった愛情が完全に枯れ尽きてしまった妻は、夫が出かけている間に子どもを連れて家出を決行。
帰宅したサム・ニールは青天の霹靂とばかりに動揺するのですが、妻目線で言わせていただけるなら「あったりまえじゃん!ばーか!おまえばーか!」ってトコでしょうかね。

その後、実は妻には間男がいた事が明らかとなり、夫としてのプライドをズタボロに引き裂かれてしまったサム・ニールは、妻に先駆けてヤンデレスイッチオン。
「みて!こんなに衰弱したオレをみて!」とばかりに、わかりやすい髭ボーボースタイルでベッドの上をゴロゴロ転がったり、建物の中をウロウロ歩き回るサム・ニール。
ところが、三週間やさぐれてみたものの、妻どころか友達すらも構ってくれません。
すると今度はあっさり気を取り直し、今度は「毅然とした態度」へとギアチェンジ。
家庭をなおざりにしていた妻から息子を取り返し、一気に立場を逆転させます。
・・ていうか、さっきまで精神科に入院してたんじゃ・・・ いいのか・・それで・・・

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(以下、嫁のターン。)

さて、ここまでは割と「青っちょろい顔をしたサム・ニールの七変化をおたのしみください」状態だったわけなのですが、いままでの遅れを取り戻さんとばかりに、以下嫁の猛反撃が始まります。
嫁を演じるのは、エキセントリックな女性を演じさせたら天下一のイザベル・アジャーニさん。
精神を病んでしまった妻の獰猛さ、脆さ、美しさを、持ち前のガッツ溢れる演技で余すことなく表現。 
あのですね、大きな声をあげて髪を振り乱して・・・みたいな「狂気」を表す「いかにも」な演技って、あるじゃないですか。
もちろん、そういうシーンもあるのですよ。 爆発的なシーンもね。
だけれど、アジャーニさんの真骨頂は、地下道でキャシィ塚本をやっているシーンでも、触手プレイで妖しく悶えているシーンでもなく、泣いているような笑っているような絶望しているような顔でじっとサム・ニール(画面のこちら側)を見つめているその姿。 その、はかなげな眼差しなのではないかと思うのですよ。
全身で救いを求めてきている事がひしひしと伝わってきて、でも、どうしてあげればいいかわからない。
もどかしさと無力感に苛まれるのは、サム・ニールだけではないのです。
この、アジャーニさんの、おそろしいまでの「人の心を手繰り寄せる力」ね! 中世だったら魔女っ子認定されるレベルですよ!おーくわばらくわばら!


ショッキングなシーンのつるべうちにもんどりうったり、なぜかくるくる回転しながら登場する謎の間男に困惑したり、すてきにおぞましい触手人間の造形にうっとりしたりと、色んな楽しみ方を堪能する事が出来る傑作だと思います。
あまりに不条理な展開に、サム・ニールさん共々観客までもが正気をガリガリ削られる可能性もありますが、要は「こじらせ夫婦のはざまで子どもが不幸になるお話」ですので、大いに心を痛めつつ、どん詰り状態に身を委ねてみればよろしいのではないでしょうか。
後味最悪ですよ!(←この場合褒め言葉)


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