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隣の家の元少女は食人族の生き残りでした。 「ザ・ウーマン」 読感

2012年10月05日
ウーマン

弁護士の父クリス、料理上手な母ベル、思春期の弟ブライアン、天使のように無邪気な妹ダーリーンに囲まれ暮らす高校生ペグの毎日は、申し分ないはずだった。 
万事順調、のはずだった。
その「女」と出会うまでは。


ウンバボー!(←合言葉)

はい、ということで、全世界のすきもの諸君が首を長くして待ち望んでいた、鬼畜帝王ジャック・ケッチャムの人喰い小説『ザ・ウーマン』がついに発売になりましたよ。
自身の処女作である「食人大家族物語シリーズ」の最新作、しかもマブダチであるラッキー・マッキー監督との共著ということで、ペンを握るケッチャムさんの腕にも自然と力が入っていたのではないかと思うのですが、力が入っていたのはファンである我々とて同じこと。
タイトルとなっている「ザ・ウーマン」。
過去の作品で、強さ、荒々しさ、母性本能、そしてカリスマ性を存分に魅せつけてくれたウーマンの新たな物語とはどのようなものなのか?
否が応でも高まる期待。
あれ・・? でも彼女って、前作『襲撃者の夜』でお亡くなりになってたような・・・?
1作目『オフシーズン』のクライマックスで死んだと見せかけ、どっこい生き残ったウーマンが、また今回も同じ方法で再登板するなんて、まさかそんな反則スレスレの手を使うわけありませんよね・・・

・・まさかそんな・・・

・・そんな・・

・・・・そうなのか・・!


いいんだよ

なあんてね!そうです、いいんですよ、細かいことなんて!
いや、べつに細かく説明出来ない訳ではないですけどね? なんだったら説明してあげましょうか? あのね、細かく言うと「生命力がハンパなかった」んですよ。 はい、終了!

致命傷を負ったと思わせ、実はナイフの傷と銃弾1発しか受けていなかったウーマンさんは、持ち前のガッツで狼の巣を奪い取り、二度目のおひとりさま生活を始めます。
山の小川で水を浴び、捕った魚で滋養を蓄え、体の傷を癒す日々。
しかし、そんな生活は危険な「文明人」の手によって脆くも崩れ去ってしまう。
そしてまたもや始まる「ヒト」対「ヒト」の壮絶な闘い。

『オフシーズン』の段階にして既に「危険なのは野蛮な食人族なのか?文明人と食人族の間の壁は、そんなに高いものなのか?」という疑問をがっつり提起していたケッチャムさんの目線は、『襲撃者の夜』でさらに食人族寄りになり、今回の『ザ・ウーマン』に至っては「むしろウーマンさんこそ自由の象徴なんすよ!」くらいな勢いにまで変化しております。
そして、信じられない事に、眉をひそめながら読んでいたはずの読者まで、いつしかそのテンションに同調してしまっているのです。
物語の終盤、追い詰められた登場人物のひとりがウーマンさんに対してある行動を取った時、あなたはきっと、心の中でガッツポーズを決めてしまうはず。
「さあ姐さん!存分にやったって下さいよ!」と。
その先に待ち受けているのが、吐き気を催すほどの凄惨な人喰いカーニバルだという事が判っているにも関わらず、です。

赤く染まっているのは、ウーマンの手なのか。
それとも、小説を持つあなたの手なのか。
ケッチャムさんがニヤリとほくそえむ姿が目に浮かぶようです。

されども、そんなケッチャムさん、ただいたずらに読者に後味の悪さや罪悪感を植えつけるだけではなく、「惨たらしく死んでくれる事を祈らずにはいられない」ほどの悪役を毎回きちんと用意してくれるという、気配り帝王でもありまして。
本作で女どもを肉体的・精神的な檻に閉じ込め、欲を貪る極悪人クリスのクズっぷりときたら、過去のケッチャム作品のイイトコどりと言ってもいいのではないかという程、ホントにもう、なんというか、100回死刑にしても足りないような畜生野郎なのですよね。
性根がそっくりな息子のブライアンも、おとうさんに負けず劣らずのゲスいガキで、読者が同情の欠片も抱くことが出来ない程、彼らの手による鬼畜な行為をたっぷり書き込んでくれたケッチャムさんにマジで感謝!
しょうがない! 動物以下のけだものだもん! これはもうしょうがないよ!
(と、思わされてしまうのも、まんまとケッチャムさんの計算通りな訳ですけどね)

冒頭、バーベキューパーティに興じるクリス一家の描写の、その行間から漂う、彼らの冷え冷えとした関係や死んだ魚のような眼差し。
常識ではありえないような父クリスの決断に、堂々と反旗を翻すことの出来ない腑抜けた一家に隠された秘密の数々が明らかになるとき、冒頭に感じた違和感や異様な緊張感に合点がいくと同時に、あまりのおぞましさに目眩がしました。
なんとおそろしい小説。
これぞケッチャムさんの本領発揮。
「一般的な本」が好きな私の母や父には世界がひっくりかえってもお薦めできませんが、待ちにまったファンのキワモノ欲は十二分に満たしてくれる事でしょう。
超胸くそ悪くて超不謹慎な、自由と尊厳の物語。
すきものの皆さんは、今すぐ書店へ直行だ!



― おまけ ―

・ 「なんぼなんでもそりゃないだろ」と思えるラストですが、尋常ではないレベルのゲスい男連中が存在する事によって「まあ・・ね・・・どうせどちらも生き地獄なら、自由に生きる方がいいよね・・・」となんとなく納得してしまう不思議。

・ だからって人肉は食べたくないんだけどさ!

・ 先生が超不憫

・ 同時収録されている短編「カウ」は、『襲撃者の夜』に出てくるカウではなく、二代目カウの物語だったのですね。 ほどよく従順になるタイプの男だって、よく見抜いたなぁ。さすがウーマンさん!スカウトの天才やで!

・ この調子でいくと、いくらでも食人大家族物語シリーズ作れそうですね。 がんばれケッチャムさん!いっそのことライフワークにしちゃえ!



― おまけ2・忘れちゃっている方向け「過去2作品の簡単なせつめい」 ―

『オフシーズン』
人喰い一家の家族構成(総勢17名?)・・・
・男1(世帯主/赤いハンターシャツ着用)
・男2(弟/180センチを越すスキンヘッドの大男)
・男3(末弟/小柄でガリガリに痩せている)
・女1(年上で太っている)
・女2(若い。赤シャツのお気に入り)
・女3(臨月)
・子ども1(約11歳/妊娠中)
・他、子ども約10人

あらすじ・・・
繁忙期を終え、静けさを取り戻した観光地・デッドリヴァー。 数週間の休暇を過ごす為、NYからやって来た編集者カーラは、妹カップルや元彼カップルを招待し、快適な別荘生活を堪能しようとしていた。 しかし、その別荘が実は、「人喰い大家族」にとっても別荘として使われていたもんだからさあ大変。 ちょうどいい滋養食として目をつけられたカーラたちの明日はどっちだ!

人喰い一家の死に様・・・
・男1(赤シャツ)→銃殺
・男2(大男)→片手首を銃で吹き飛ばされる→銃殺
・男3(ガリガリ)→性器損傷→腹部をほとんど吹き飛ばされ死亡
・女1(太っちょ)→散弾を浴びせられほとんどまっぷたつに
・女2(若い)→腹部を撃たれ死亡
・女3(臨月)→頭のてっぺんを撃たれ死亡
・子ども1 →胸を撃ち抜かれ死亡
・子ども2 →頭を吹き飛ばされ死亡
・子ども3 →火かき棒で頭を割れ死亡
・子ども4 →壁に投げつけられ頭がメロンのように割れる
・子ども5(一番大柄な少年)→マグナムで撃たれ死亡
・子ども6 →銃で殴られて首が付け根から折れる
・子ども7 →流木で殴られ首の後ろから鎖骨が飛び出す
・子ども8 →ポンプガンを左目に押し当てられ、顎を残して頭部が吹き飛ぶ
・子ども9 →腕を折られ口にショットガンを入れられ射殺
・子ども10(約11歳/妊娠中)→ショットガンの台座で背骨を叩き折られる

文明人の生存者・・・
 カーラの妹・マージ

おおまかな流れ・・・
 人喰い一家が民家に侵入 →  何人かさらわれる → 住処である洞窟に監禁 → 仲間のひとりが助けに行く → 洞窟内で大乱闘 → 警察到着 → 皆殺し → → →
_人人人人人人人人_
>どっこい生きてた!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

感想・・・
 人喰い一家は成人男性3人を含めた大所帯。 和気藹々と暮らしています。人を食べる事に特別な意味などなさそうで、要するに魚や動物を捕って食べるのと同じ。ただ、味が格別なので、出来ればもっとニンゲン食べたいなー♪ みたいなノリです。 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』なオチが適度な後味の悪さを残し、誰得とも言える「ニンゲン調理法」も 微に入り細を穿つ説明がなされており「オエー」度満点。


『襲撃者の夜』
人喰い一家の家族構成(総勢11名)・・・
・ウーマン(世帯主/26歳/前作時15歳/右の乳房のすぐ下から腰のすぐ上まで、ショットガンで撃たれた時の幅広の瘢痕がある/左目の上から耳の三センチほどうしろまでやはりショットガンで撃たれた時の傷跡)
・ファースト・ストールン(男性/22歳/オフシーズン事件の1ヵ月後、11歳の時に海岸でウーマンさんにスカウトされる)
・セカンド・ストールン(女性/17歳/5歳の時ウーマンさんにスカウトされる)
・ガール(少女/10歳/ウーマンとファースト・ストールンの子ども/誰かの死体から剥がした乳房のミイラを胸に巻きつけている/オシャレさん)
・ボーイ(少年/6歳/ウーマンとファースト・ストールンの子ども/産まれてすぐの頃左目をスズメバチに刺され、現在右目しか機能していない)
・ラビット(少年/7歳/ウーマンとカウの子ども)
・アースイーター(少女/ファースト・ストールンとセカンド・ストールンの子ども/お腹がすくと土まで食べる)
・赤ん坊(女の子/セカンド・ストールンとカウの子ども)
・ふたご
・カウ(成人男性/本名フレデリック/種付け専用男子)

あらすじ・・・
メイン州デッドリヴァー。人里離れた古民家で、夫でゲームデザイナーのデイヴィッドと生後三ヶ月になるメリッサと共に幸せな日々を送るエイミー。 今週は、DV夫との離婚問題で疲弊している親友のクレアと彼女の8歳の息子ルークを迎え、心地よい休暇を楽しんでもらう予定だった。 しかし、そこにクレアの夫スティーヴンを含めた十数人の招かれざる客がやってきたもんだからさあ大変。 情け容赦の無さには定評のある人たちに目をつけられたエイミーたちの明日はどっちだ!

人喰い一家の死に様・・・
・ウーマン →カウに背中を刺された上、警官隊から一斉砲火を浴び「自分の体が十数箇所で破裂」するのを感じながら海へ落ちる
・ファースト・ストールン →目を撃ち抜かれ死亡
・セカンド・ストールン  →胸を撃ち抜かれて死亡
・ガール →銃殺
・ボーイ →銃殺
・ラビット →ツリーハウスから転落死
・アースイーター →首筋を撃たれ死亡
・女の赤ん坊 →ウーマンと一緒に崖から転落
・ふたごの少女 →銃殺 
・ふたごの少年 →燠火(おきび)に顔を押し付けられ焼死
・カウ →ウーマンに首を絞められた末、一斉砲火を浴びつつ崖から転落

文明人の生存者・・・
エミリー、クレア、ルーク、メリッサ、もと警察官のピーターズ

おおまかな流れ・・・
 人喰い一家が民家に侵入 →  何人かさらわれる → 住処である洞窟に監禁 → 人喰い一家に負けないくらいゲスい男参戦 → 仲間のひとりが助けに行く → 洞窟内で大乱闘 → 警察到着 → 皆殺し → → →
_人人人人人人人人_
>どっこい生きてた!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

感想・・・
前作のラストから11年後という設定。 唯一の生き残りであるウーマンさんが、誘拐したり産んだりしながら作り上げたニューファミリーを引き連れ民家を襲います。 前作では「蛋白源のひとつ」くらいにしか思われていなかった「人肉」は、スピリチュアル方面に開眼したウーマンさんによって「特別な食べ物」と化しました。 中でも、赤ちゃんのお肉は「霊的なパワーが超強い」という事で一族をより強くする為の必須アイテムになっている模様。 ウーマンさん一家、ややこしい事情を抱えたクレア一家、そこにがっつり巻き込まれたエイミー一家の三者三様な絆が物語に深みを与えており、子どもが殺されまくるという鬼畜描写の末に訪れるまさかの大団円に、これまたまさかの大満足という、「オレはヒトとしてどうなのか・・」と自問自答せずにはいられなくなる大傑作。

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