『プロメテウス』
2012年09月13日

あらすじ・・・
ものすごく昔の遺跡を調べていたんですよね!
そしたら共通したモチーフの壁画が何箇所からも発見されて、ははーん・・こりゃ呼ばれてるな、と。
ここに描かれた星座は、我ら人類に対する道しるべだな、と。
「いつの日にか来られるようになったらおいでよ!」「カモンジョイナス!」というメッセージだな、と。
そういう事なんだと思って宇宙船をこしらえて行ってみたら、フルボッコにされちゃいました!どうしよう!
映画好きな人でなくても知っている超有名かつ超面白いSFホラー映画『エイリアン』。
その「前日譚」として企画された・・・と聞いていたのがいつの間にか「そんなんじゃないよ」と別モノ扱いとなり、そっか別なのか・・と思っていたらいつの間にか「でも関係なくもないかもよ」と同じ釜の飯で育ったくさいニュアンスを感じさせてくるようになり、結局のトコロ繋がりがあるのかないのか親子どんぶりなのか他人どんぶりなのかハッキリしないままシレっと公開されていた『プロメテウス』を観てきましたよ。
大きな船に集められた、一見エキスパートには見えない風のエキスパートたちが、こんもりとした謎の建造物の中で(デュロっとした未知の生物との)出会いと別れを繰り返し、時に泣き、時に笑い、時に寄生されながら淘汰されてゆく。
で、あとはなんというか、ボガーン!とかプシャー!とかブワワー!とかなってキラキラ天体ショーがあったりして、SF小説の表紙みたいなキメ絵も満載で、宇宙船の室内インテリアなんかもホントもうセンスさいこう!って感じな映像の連続で、ちょっとした疑問は残るものの、めくるめく2時間強を過ごす事が出来ましたよ。
という訳で、以下その疑問について記しておこうと思います。
(※ただし、早くも続編の製作が決定しているとの報道があったように、これらの疑問に対する答えは次回に持ち越しなのでしょうから、これはあくまでアガサがぼんやりと考えた事をまとめておく為の、備忘録的なアレだと思って一笑して頂けるとありがたいです。)
■ ピューと吹く!ファスベンダー
宇宙船からアンドロイド開発まで、幅広く手掛ける世界的巨大企業・ウェイランド社。
「人類の起源」を辿る為の一大プロジェクトにおいて、最も重要な役割を担わされたのがアンドロイドのデヴィッド(演じるのはマイケル・ファスベンダーさん)なのですが、とにかくこのデヴィッドが素晴らしいわんぱく小僧でして。
「人間」であるクルーがコールドスリープ状態でいる中、ひとり黙々と機内のメンテナンスやクルーの管理をこなすデヴィッド。
アンドロイドだから孤独を感じる事はない。
アンドロイドだから喜怒哀楽もない。
ところが、目的の惑星に到着し、件の建造物を探索し始めたデヴィッドは、どことなくテンションがおかしいご様子。
クルーのみんなが不気味な巨像を見て「やべー!やべー!」と興奮している傍らで、こっそり怪しげな物体をお持ち帰りしてみたり、その物体の中身をこっそりクルーのメンバーに飲ませてみたり、そのメンバーとまぐわった女性クルー・エリザベスの体調変化をワクワクしながら見守ってみたり、勝手に建造物を探検してコントロール室を発見してみたり、起動させてみたり、フエ吹いてみたり。
喜怒哀楽がないどころか、完全に楽しんでいるのですよね、一連の状況を。

(※ 読める!読めるぞ!みたいなテンションになってしまったファスベンダーさん)(※イメージ)
デヴィッドは要するに、何がしたかったのかのでしょうか。
自身の創造主であるウェイランド社長の指示は、「人類の創造主=エンジニアを探すこと」だったはずです。
デヴィッドが2年4ヶ月もの航海の間、古代語をはじめとした様々な語学の勉強に勤しんできたのもその準備のひとつ。
ならば、クルー全員でその目的を果たせばよかったのではないでしょうか。
怪しげな物体を持ち帰る必要など無かった。
なのにデヴィッドがそれをしたのは何故なのか。
アガサが思うに、デヴィッドはエリザベスに興味を抱いていたのではないか、と。
長旅の間、眠っているエリザベスの記憶をちょいちょい盗み見ていたデヴィッドは、「ファーザー・コンプレックス」な点や「子孫を残す事が出来ない」点という自身との共通点を知り、エリザベスに特別な何かを感じはじめてしまったのではないか。
それは、人間で言うところの「恋」みたいなものだったのかもしれませんが、ともかく、デヴィッドはエリザベスに子どもを生ませてみようと思ったのではないかと思うのですよね。
自分が持って帰った「種」を植え、エリザベスの「お腹」で成長させてみたらどうなるだろうか、と。
あとはええと、エリザベスならなんとか生みきってくれると踏んだのかもよ!
ほら、あいつ頑丈そうじゃん!
■ 待ちわびた・・・丹念に育んだ種が時とともに成長し・・・遂にはこの俺に牙を剥く!
本編の冒頭、地球とおぼしき惑星の上空を漂う巨大な円盤が映し出されます。
そこから降り立ったと見られる、山海塾をより一層マッチョにしたような男性。
彼が真っ黒な液体を口にすると、みるみるうちに体は溶け始め、滝壺に崩れ落ちたその残骸が水と混ざり合い、水の中のなんらかのDNAに変化を与えるトコロが描かれるのですが、きっとこれがリドリー・スコット監督が考えた「人類の起源」なのだろうと思うのですよね。(もしくは、「どこかに存在する、とある惑星の、生き物の進化に劇的な影響を与えた要因」なのだと)
進化を続けた生き物は、のちに「人間」となって尽きない好奇心と飽くなき探究心により更なる知識を手に入れ、ついには自分たちが生まれた理由を知る事を欲するようになる。
「どうやら、我々が誕生したのは別の惑星に生きる創造主が一枚噛んでくれたお陰らしい」
「生まれさせる事が出来るって事は、死なせない事も可能なんじゃねえの」
「じゃ、いっちょ行ってみんべ!」
そう考えたひとりの男(ウェイランド社長)。
しかし、やっとたどり着いた惑星で、たったひとりだけ冬眠ポッド内で生き残っていた創造主(エンジニア)は、成長した我が子を思わぬ方法で歓迎します。

(※ 「見て見て!」とばかりに必殺マッハパンチを繰り出してみるも、ムキムキの創造主に「スロー過ぎて眠っちまうぜ・・」と軽く捻られちゃったみたいな状態のファスベンダーさん)(※イメージ)
エンジニアは要するに、何がしたかったのでしょうか。
自分たちに似せた生き物を生み出したのは、その遺伝子の中に特定の惑星の存在を知らせるような情報を残したのは、一体何故だったのか。
人間たちはすくすくと育ち、遥かな宇宙へと赴く術も、特定の惑星を探し出す知恵も手に入れました。
そしてがんばって辿り着いた。
果たしてエンジニアはそこまで予想していたのでしょうか。
特定の惑星が最凶生物兵器の保管場所だったのは、いつか来るであろう人間を滅ぼす為だったのでしょうか。
なんかね、アガサにはこのエンジニアさんたちの行動が、すごく場当たり的に思えたのですよね。
場当たりというか、衝動のおもむくままにというか。
「こんなに優秀なオレの遺伝子なんだから、あっちこっちにばら蒔いときたいわー」みたいな、子孫を残したいという本能のままというか。
で、特定の惑星の星図を遺伝子に残しておいたのは、「おまえらがここに来れるだけの高度な成長を果たせるかどうか・・・見ものだな・・フフ・・」という親心だったような気がするのです。
「こんな遠くまで来られるものか・・いや・・・しかしあいつらならやってくれるかもしれぬ・・・その時こそ、真の最強生物が誰なのかを思い知らせてやりたいものだな・・・アレ・・?・・なんだかオレ・・さっきからあいつらの事ばっか考えちゃってる・・・」
エンジニアさん・・ひとはそれを恋と呼ぶのですよ!
蓄えまくった知識を総動員して、睡眠状態のエンジニアさんを呼び覚まし、褒めて貰いたがっている子犬のように嬉しそうに目を輝かせるデヴィッドを、どこか愛おしいような眼差しで見つめ、「そうかそうか・・・ここまできたか・・・・よしよしイイ子だ・・・イイ子・・グワッ!」みたいに締め上げるエンジニアさんの背中に、オレはオーガを見たね!
■ シャーリーズ・セロンさんは電気羊の夢を見たのか?
ウェイランド社長の一粒種(たぶん)であり、ウェイランド社の幹部兼今回のミッションの責任者であるメレディスさん。(演じるのはシャーリーズ・セロンさん)
整いすぎた容姿と切れ味抜群の知性、そしてなにより100歳超のウェイランド社長に比べ歳が離れすぎている娘、という事から、彼女もまた人間ではなくアンドロイドなのではないかという疑惑がちょいちょいチラつかされていました。
メレディスさんは要するに、どっちだったのでしょうか。
ええとね、たぶんだけど、人間だったんじゃねえの! だってほら、恐怖を感じてたもん! アンドロイドはね、「嬉しい」「楽しい」までは理解出来ても、恐怖までは学習できないと思うんだ! だって死なないから! ちがうちがう!投げやりになってないよ!そろそろまとめに入りたいとか、そういうんじゃないよ!
■ まとめ
・ ひとつずつ画面上に浮かび上がる線。 意味を持たない記号のように見えたそれが徐々に形をなし、 PROMETHEUSという単語が出来上がった瞬間の快感はまさに、初めて『エイリアン』を観た時のそれでした。 テラかっこいい!
・ 会社説明会の時に流れるサントラとか、チ○コみたいな形の椅子に腰掛けたスペースジョッキーとか、宇宙船のクルーのお腹に植え付けられた異物とか、アンドロイドの首もげシーンとか、思っていた以上に『エイリアン』していて楽しかったです。
・ とは言いながらも、実は前半(正確に言うとクルーが寄生虫みたいなのに襲われる辺りまで)かなりの睡魔に襲われてしまいまして、眠気覚ましのミントタブレットをガリガリ噛み砕きながらの鑑賞となりました。 お陰で鑑賞後は舌がビリビリしていましたヨ!
・ ほんで、よくよく考えてみたら、『エイリアン』もフェイスハガーにフェイスをハグされる辺りまでは大体睡魔との闘いになっていた事を思い出したので、まぁ、しょうがないのかもネ!(私の場合はね!)(もっとね、ガンガン闘って欲しいんですよね!)
・ 人類に対してエンジニアがした事と、人間に対してデヴィッドがした事の根っこは同じなんだろうなぁ、と思いました。 この黒い水を飲ませたらどうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば進化はなし、みたいな。 要は「好奇心」なのかなぁ・・と。 迷わず飲ませよ!飲ませばわかるさ!
・ 飲ませてアカンっぽかったら無かった事にしちゃえばいいじゃない!
・ で、誰に飲ませるのかってなった時、わざわざエリザベスの彼氏を選んで一服盛った理由は、やはりその先にあるエリザベスの存在が大きかったのではないかと思う訳で。
・ 創造者と人間、人間とアンドロイド、アンドロイドとエイリアン、という「父と子」の関係性が本人たちの意志とは裏腹に壮絶に拗れぶつかり合う本作は、SFなのだけれどなんだかとっても人間臭くっておもしろかったです。
・ 余談ですが、なぜキリスト教って「神」を「父」と呼ぶのでしょうね。 おい!お母さんどこ行った!
・ 雑な扱いを受けた「母(エリザベス)」がデヴィッドを連れて向かった先で、今度はどんな小競り合いが待ち受けているのか。 2~3年先に予定されている次回作の公開を楽しみにしたいと思います。

