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『メリダとおそろしの森』

2012年07月26日
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またメリダと言い争ってしまった。 
どうしてあの子はわかってくれないんだろう。
ああ、今までメリダにかけてきた言葉は、すべてあの子に届いていなかったのだろうか。そんなはずはない。そんなはずはないのだけれど。
あの子のしあわせだけを祈って、よかれと思って、でも、そうではなかったのだろうか。
幼い頃から、あの子は外遊びがだいすきで、野を掛け、森を抜け、それはもう生き生きと。
私にはまるで、大地と愛し合っているかのように見えたものだ。
あの子が男の子だったらなら、きっとすばらしく勇ましい王になっただろう。そんな風に思った事すらある。

ああ、私は間違っていたのだろうか。
将来后となるべき宿命を背負った娘に何を教え、何を説くか、その選択は実に困難だ。
正しかったかどうかの判断が下されるのは、ずっとずっと先なのだから。
私が唯一自信を持って教えてあげられるのは、私自身が歩んできた道についてのみ。
私は、人生に何の悔いもない。
愛する家族、豊かな土地、忠実な家臣、満ち足りた日々。
私が学んできた事を学ばせれば、きっとあの子もしあわせになれるはず。
そう思ってきた。そう信じてきた。
きたのだけれど・・。

・・・
・・・・あの子が帰ってきた。
よかった・・きっといつもの森に出かけたのだろうとは思ったけれど、万が一熊にでも遭遇したらどうなることか、気が気ではなかった。 こんな心配も、あの子にとっては余計なお世話なのかもしれないけれど・・。
あの子はまだ幼い。 
この結婚がもたらす幸福、招きかねない災いについて、何もわかっていない。
もう一度ゆっくり、その事について話してみる必要があるだろう。

メリダ?ああメリダ、今ね、あなたの花婿候補のみなさんにお父様が接待を・・ え・・?このケーキを・・わたしに・・? まあ・・・!ありがとう! 
うれしい・・・やはりメリダはやさしい子だ・・
きっと話せばわかってくれる・・
 
私の気持ちをわかって・・・ 

わか・・  

・・・一服盛りやがったな!あのガキャあ!!!


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(※盛られる前の王女)(※女盛り)

はい、というわけで、「娘と意思の疎通を図ることができず、ちょっとした手違いで一服盛られてしまったおかあさんがクマになってしまってさあ大変!」という殺伐ファンタジー『メリダとおそろしの森』を観てきましたよ。
あちらこちらで紹介されているあらすじを見ていると、
「ははーん、さては娘の自主性をことごとく踏みにじり、ゴリゴリのメス教育を押し付けようとするヒステリックママンがうざったいお話なんだな」
と思われてしまそうな本作。
たしかにメリダのおかあさんはめんどくさい。
人の話を聞きやしない。
しかし、アガサはそんな彼女を「全くもって理解不可能な石頭のママンではない」、と思ってしまいましたので、今回は出来うる限りエリノア王妃をフォローしてみたいと思います。


【正解がない!】
最終目的は「我が子のしあわせ」なんですよね。 それはもう、ひたすらに。
問題はどのような子育てをすれば、そこにたどり着けるのかがさっぱりわからない事。
だからエリノア王妃は、唯一自信が持てる「自分の経験」を元にするしかなかったのではないかと思うのですよ。
ある程度の歳になったらきちんと嫁入り修行をし、国の平安に繋がるような縁談を選択し、子を産み、夫を支える。 
王家の娘として、何も不自然な事などない。

もちろん、当の娘さん(メリダ)にしてみれば「ちょ・・まてよ!」という教育法ですよ。
自分の意志もへったくれもない、敷かれたレールの上を走らされるだけの簡単で苦痛なお仕事ですよ。
アガサも、我が子にこの手の押し付けをしようという気は全く湧かないのですが、それでも、エリノアさんの気持ちもわからんでもないのです。
だって、ホントに、どうするのが正解なのかがわからないから。
よかれと思ってやっている事のどこまでがひとりよがりに過ぎないのか、魔法つかいでも誰でもいいからズバっと教えてくれるものなら教えてもらいたいものですよね! ね、エリノアさん!

【全部ダメって訳じゃない!】
メリダが幼かった頃のエピソードから始まる本作。
エリノアさんはやんちゃなメリダと隠れんぼの真っ最中です。
机の下に隠れるメリダを引きずり出して甘噛み。 はしゃぐメリダ。 「がうがう」とかぶりつくエリノアさん。
その姿を見たアガサは、エリノアさんは結構付き合いがいいタイプなのではないか、と推測しました。
その直後のシーンでも、誕生日プレゼントとしてメリダに弓矢を渡す夫に苦笑いするものの、「そんなもんアカン!」と取り上げるような無粋なまねはしないエリノアさん。
アガサが思うに、エリノアさんによる本格的嫁入り教育が始まったのは、メリダが思春期を迎えた頃からだったのではないでしょうか。
お年頃のメリダに備わっている弓矢の技術や乗馬の腕前からも、エリノアさんが本気でメリダの行動をすべて押さえつけていたとは思えないのですよ。 
きっと「まったくもう・・あの子は・・」ってため息つきながらもある程度は見逃してあげていたんですよね! ね、エリノアさん!

【ホントはわかってたんです!】
「独善的」を「よかれと思って」に脳内変換し、メリダにガミガミ言い続けてきたエリノアさん。
断固として結婚を拒絶する娘との口喧嘩の末、自分が家族への想いを込めて作ったタペストリーを切り裂かれてカッとなり、メリダが大切にしていた弓を暖炉に放り込んでしまいます。
ショックを受けたメリダは部屋から飛び出してしまいますが、エリノアさんもまた、自分がやってしまった事に驚き、慌てて弓を火の中から拾い出し、深い自己嫌悪に陥るのでした。
メリダにとって弓がどれだけ大事なものか、エリノアさんにもわかっていたのですよね。
でも、売り言葉に買い言葉的なアレで、ついやってしまった。
エリノアさんは完璧な母親なんかじゃない。
自信満々に見えても、常に試行錯誤しながら家族を支えようとしていたんじゃないか。
ほんともう、わからんでもないよエリノアさん! よしわかった、今度一回飲みに行こう!!

【自尊心を捨ててみた!】
おそろしいクマの姿にその身を変えられたエリノアさんは、逃げ込んだ森の中、それでもかわらず母で有り続けようと、拙い前足づかいでメリダの朝食を用意します。
でも、外遊びの経験が乏しいエリノアさんには、食用可能な木の実の判別はおろか、ひとりで川魚を捕らえる事も出来ません。
ここで俄然活きるメリダのアウトドアスキル。
教えられるまま川に入り、魚を相手に格闘しているうち、エリノアさんの中で何かが変わってゆきます。
そして、川を後にする時、王妃の冠を置き忘れた(手放した)母が「一国の責任者」としてではなく「ただの母」として娘の気持ちを思いやった時、その心の変化は確実なものとなったのです。
無理矢理に、姿をクマ(非人間)にされたからこそ、無理なく捨てる事が出来たもの。「王妃」としての「自尊心」。
もうこの時点で、エリノアさんの魔法が解ける要素はほぼ揃っていたと言えるのではないでしょうか。

ていうか、婚約者候補が来る直前ではなく、もっと早くから双方落ち着いて将来の事について話あっていれば、意外と簡単に解決してたんじゃないのエリノアさん! 「どうせ反対されるからギリギリまで伏せとこう」っていう作戦は、たしかにアガサも使う事あるけどさぁ! 
わかった、わかったから今度ステーキガストで肉とサラダバーでもつつきながらゆっくり愚痴大会しよう!

・・・いかがでしょうか。
エリノアさんの子育て奮闘記、少しは感じ取って頂く事が出来たでしょうか。
何度も言うようですが、エリノアさんのメリダに対する接し方は、あまり褒められたものではないと思います。
「独善的」と言われれば、返す言葉もないかもしれない。
でも、その裏には、メリダへの溢れんばかりの愛情があった。
だからこそ、ほんのちょっと環境が変わっただけで、ふたりの信頼があっけなく修復されたのではないでしょうか。

一度、鎧のように身にまとった「自尊心」を捨てるのはたやすいことではない。
だからこそ、それをポーンと脱ぎ捨てる勇気を持たなければないらない。
愛する人の心を傷つけてしまう前に。
そんな風に思いながらちびっこたちと手をつなぎ、劇場を後にしました。



― おまけ ―

選びしろ
・ メリダにあてがわれた花婿候補のお三人方。 ・ ・ ・ 選 択 肢 少 な っ !!!

・ なんぼなんでもメリダの性根が曲がりすぎ。 政略結婚がいやで、なんとかおかあさんに考え方を変えて欲しい・・というトコまではわかるけど、森の奥で出会った怪しげな魔女に魔法薬の製作を頼むとかないわー。 もし悪い魔女だったらどうすんのさ。 あと、欲しくもない木彫り人形を大人買いするとかもないわー。 おまえはパリス・ヒルトンか。パパのカードで一括購入か。

・ で、超あやしい方法で入手した魔法のケーキを、なんの躊躇もなくおかあさんに食べさせ、その後おかあさんが体調を崩してゲーゲーやってるのに「なにやってるのママ!」と心配する素振りもないとか、マジ鬼畜ですよね。

・ ちなみにそのケーキがヒトをクマに変える事がわかった後も、そのまま台所に放置させて弟たちに食べさせるとか、本当におそろしいのは森とちゃいまっせ!メリダの腹ん中でっせ!

・ 上にも書きましたが、メリダとエリノアさんの関係修復の段階がえらくあっさりしていたと思います。
 メリダ   「結婚相手ぐらい自分で決めましょうよ。自分の人生なんだし。」
 花婿候補①「いいねー!オレもそう思う!」
 花婿候補②「オレもそれがいい!」
 花婿候補③「んだんだ!」
 メリダ父  「よく言ったわがむすめよ!」
 領主たち  「さすがは姫ねえさま!」
 エリノア  「それでいいのよ・・メリダ・・」
そんなんでよかったのかよ・・・

・ 7歳児までもが「おかあさん、なんかこんかいのピクサーみじかくない?」と漏らしてしまう程、小粒感が否めなかった『メリダとおそろしの森』。 しかし、そのこじんまりとした感じが、「どこの家庭にもありそうな家族間のすれちがい」を表しているようで、アガサはうんうん頷いたり、えーと仰け反ったり、しくしく涙をこぼしながら、たのしく鑑賞しましたよ。  

・ 背景やメリダの髪質の美しさも申し分無し。 『トイストーリー』の新作短編アニメと合わせて、夏のちょっとした息抜きによろしいのではないでしょうか。
 

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