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『ドリーム・ホーム』

2012年07月25日
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あらすじ・・・
ぜんぶびんぼうがわるいんや!

・ 香港の銀行に勤めるチェンさんはびんぼう生まれびんぼう育ち。びんぼうなやつはだいたいトモダチの薄幸美女です。 建設作業員だったおとうさんは数年前から体を悪くし、おかあさんは既に他界。弟はいるもののまるで頼りにはならず、ひとりで家計を支えています。

・ 昼は銀行でひたすら顧客名簿を片手にセールス電話に励み、夜はアパレルショップの店員としてオシャレ小物を売りさばく毎日。 しかし、働けど働けど暮らしはちっとも楽になりません。

・ 肌を温め合える彼氏はいるものの、妻帯者でケチで情が薄いのでチェンさんの寂しさを埋める要員には到底なりません。 所詮チェンさんは都合のいい女なのです。 わかっている、わかってはいるけれど、そんなクズ野郎の手を振り払う勇気すら湧かないほど孤独なチェンさん。 

・ チェンさんにはわかっていました。 どれだけがんばっても報われないのは何故か、どれだけ慎ましやかに暮らしても生活が上向かないのは何故か、どれだけ愛を求めてもゲスい男しか相手にしてくれないのは何故か、それは、みんなびんぼうのせいなのだ、ということを。 

・ そうだ。ならば、びんぼう臭が一切感じられない高級マンションを買おう。 亡くなったおじいちゃんが夢見て手に入れることの出来なかった、オーシャンビューのラグジュアリーでコンテンポラリーなマンションを買おう。 そうすればびんぼうとはおさらばできる。 惨めったらしいびんぼう人生をリセットし、なんだったらプチセレブと呼ばれるような満ち足りた人生の再スタートを切ることができるに違いない。 いや、そうなんだ。 そう信じるしかないんだ。

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(※ 良心と引き換えにおぜぜを手にし、意気揚々とマンションの契約に向かうチェンさん)

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(※ 売主である老夫婦に契約をドタキャンされ、ショックのあまり具合が悪くなったチェンさん)

・ 1997年の本土返還以降、中国との密接な関係のもと発展を遂げていた香港経済ですが、一方で市民間の貧富の格差はどんどん顕著になり、ブクブクと膨れ上がった住宅バブルに飲み込まれる人たちも少なくありませんでした。 土壇場で欲をかいて売値を釣り上げた老夫婦も、分不相応なマンションを渇望したチェンさんも、どちらもその中のひとりだった。 つまり、なにもかもびんぼうがわるいのです。(←超訳)

・ あと一歩という所でマンション購入計画をおじゃんにされたチェンさんの怒りと絶望は、ごうつくばりの老夫婦や役たたずの不動産屋ではなく、全く別の方向へと向けられました。 「だったら売値を下げざるを得られない状況にしてやんよ」という方向へ。

・ このチェンさんの思考回路が、私にはとても異様に感じられました。 「せっかく金を揃えたのに、さらに値をあげやがって!ゆるさん!」とヒトに対する復讐を始めるのではないのか、と。 肝心なのはあくまで「家」だけなのだなぁ、と。

・ チェンさんにとって「家を買う」ということは、その先にある「幸せ」へ至る為の手段ではなく、ゴールそのものだったのですね。 あまりに極端な考え方ですし、家だけあってもしょうがないのでは・・と思ってしまいそうなのですが、回想シーンを巧みに使ってその辺りの(家に固執するに至った)説明がなされているのでストンと納得する事ができました。

・ ダラリと垂れた糸電話で幼馴染との別離を表したり、びんぼう感満載のボロマンションを高層マンションの影が被ってゆく様で香港経済の偏った発展具合を示したり、狭いビルの隙間、寄せ集まるようにしてタバコをくゆらせる銀行員たちの姿に抑圧された彼らの生活を暗示させたりと、言葉以上に目で物語を感じ取らせてくれるトコロがすばらしいと思います。 なんというか、粋なのですよね、演出が。

・ 粋さ加減は、本作を多くの比重で占める「ゴア描写」においてもキラリと光っており、抜きん出た能力のない「ただの女性」が沢山の人を死に至らしめる為に凝らした創意工夫の数々が、時にユーモラスに、時にギョエーという程の残酷さで描かれております。

・ とにかく、冒頭の「警備員殺害シーン」におけるたっぷりとした時間の使い方だけで、「この監督はただものじゃない・・・!」と、思わず居住まいを正してしまうこと請け合いですよ! 無情すぎてマジ震えたよ!

・ ぽこんと出した目玉は踏み潰されるべし。ぽろりとご開帳したチ○コは切り落とされるべし。というホラーのあるべき姿を追求したおもしろシーンも見ごたえたっぷり。 切り裂かれたお腹から零れ落ちる十二指腸の質感もなかなかのものでした。欲をいえば、もう少し腸がふっくらしている方がよかったですね。なんというか、ホカホカ感がね・・・でもデュルルルン感はばっちりでしたヨ! って何を言ってるんだオレは。なにを力説してるんだオレは。(そしてまた世帯主さまに怒られる)

・ DVDにおさめられていた本作の監督パン・ホーチョンさんと園子温監督のインタビューを見てみると、この「チ○コ切断シーン」には並々ならぬこだわりが込められていたそうで、「転がるチ○コは徐々に萎えて縮んでゆき、それと同時に切断面から赤い血が、先端から白濁した液体がたらりと垂れなきゃダメなんだ!ぼくは最初からそう思っていたんだ!」と熱く語るパン監督の姿に心を打たれました。 ま、そう言われるまで気付かなかったんですけどね!(巻戻して観たら確かに白いの出てた。)

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(※ その後もチ○コ描写の規制について思いの丈をぶつけ合う両監督。 どういう特典映像なんだよ・・・)

・ こだわりといえば、布団圧縮袋を被せられて殺害される妊婦さんのシーンも、とことんリアリティにこだわった非情におそろしい死に様となっておりましたよ。 掃除機をセットして空気を吸い出し始めてからのくだりを俯瞰からのワンカットでとらえていたのですが、これが結構な長さでして。 試しに一緒に息を止めて観ていたら、いつまでたっても画面が切り替わらず「ムゴゴゴー!!」ってなってしまいました。 あの状態で演技までしちゃうんだから女優さんってホントすごいですよね!

・ 美しく、残酷で、愚かで、難儀で、おぞましい作品だったと思います。 人の命を屁とも思わない女性が主人公ですが、彼女が誰かに襲いかかればかかる程「人の命って儚くないんだな」と思わされる(そうそう簡単には死んでくれないので)という、なんとも不思議な仕組みになっておりますので、ただ単にバカスカ人を殺しまくる映画とは一線を画しているのではないでしょうか。

・ ともかく、グロに抵抗の無い方に限り、全力でおすすめします。苦々しいオチも秀逸でしたよ!
   


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