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『超・悪人』

2012年02月01日
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あらすじ・・・
おい、これを見ているおまえ。これは滅多にお目にかかれへん貴重な映像やからな、しっかり見とけよ。
オレは女が大好きや。 そして、好きになったらもう、どうにもできん。気持ちを抑えられへんねん。
オレは惚れた女の家に入り、その女をズボる。
これはな、いうたらオレの愛情表現や。
ホンマはオレも、好きになった女と仲良くエッチしたいだけやねん。
せやけど時々、女はオレの気持ちを踏みにじる。 暴れてみたり、なんやったら大声出したりする。 これはあってはならない裏切り行為や。
そんな時はしょーがないから、愛用のハンマーで女の脳天を一発。
ポーン。 
ショブって終了や。
まあな。 こんなオレを「悪人」と罵る女もおるわ。 ええやんか。「悪人」。グっとくるわ。
オレは稀代の「悪人」や。 愛を求める狩人や。

今までやむを得ずショブった女は6人。
ズボった女は107人。
そしてオレはこれから、今までで一番惚れた女を抱きに行こうと思うてる。
丁度108回目の、愛の告白や。 
煩悩と同じ百八つやで。ちょっとおもろいやろ。
おい、これを見ているおまえ。 これは滅多にお目にかかれへん貴重な映像やろ。 どうや、108回目のズボり、気になるやろ。 
見たくないか。 
本当は見たくてたまらんのちゃうか。 
おい、どうやねん。
なあ。 おい。



とにかく強烈な映画でした。
全編通して延々と続けられる、不謹慎極まりない行為。
なかでも、冒頭に用意されている「主人公が自らの信条を具体的に説明する犯行ビデオ」は相当にエグく、それはまるで、第1ステージの頭からアルティメットクリフハンガーが登場するSASUKEの如きハードルの高さ。
クリフ_convert_20120201134610
(※ 最初からこんなの出ちゃったら 越 え ら れ る 気 が し な い !!)

「青春H」というパッケージに惹かれ、ついうっかり手にとってしまった方ですと、かなりの確率で脱落する事が予想される、この十数分の冒頭シーン。
主人公である「悪人」が一人暮らしの女性の家に上がり込み、彼女を縛り上げ、粗暴な言葉と暴力によって無理やり「強姦」を「和姦」へとすり替える様が、「悪人」自身が持つハンディカメラに収められるのですが、かくいうアガサも、あまりの惨たらしさに停止ボタンを押して、プレイヤーからDVDを取り出してしまいました。
そして、「自分はなぜ、こんな胸くその悪い映画を借りてしまったのか」「はたして自分はこのままコレを観続けるべきなのだろうか」と自問自答してしまう事小一時間。
「このままDVDを叩き割ってしまえ!」という心の声と闘いながらも、Twitterで励まして下さった方の声に背中を押されながら再びディスクをデッキに入れ、気が付けばエンドクレジットまでノンストップで食い入るように観てしまったのでした。
DVDを叩き割らなくて本当によかった。 
なにより、「ディスカスに弁償」という最悪のシナリオを辿らなくて、本当によかった。(喜ぶトコそこかァ?)

しかし正直に白状しますが、再生ボタンを押すに至るまでの間、実はアガサはネットで『超・悪人』のネタバレレビューを探してしまったのですよね。
もうね、とてもじゃないけど「この先もあんな調子で進んだらどうしよう」という恐怖に、一人では立ち向かえなかったのですよ。
よそさまのブログで見かけた「エグい冒頭から一転、想像もつかない展開をみせる」という一言で、ようやく続きを観る気になれた。
それくらい、本作の冒頭は残酷で、容赦なくて、観るに耐えないシロモノであり、そんなシロモノをなんだかんだ言いながら観てしまっている自分の罪深さにハっと気づいた時、『超・悪人』の真の恐ろしさに震える事となったのでした。
そう、なんだかんだ言って、気になってしまうのですよ。
ディスクを一旦取り出した時、「やめる」という選択肢もあった。 
でも、私はやめなかった。

本作に登場する「悪人」は、自分が107回目にやらかした強姦の映像を、とある実録犯罪系雑誌の編集部に送りつけ「インタビューを受けてやる」と申し出ます。
この時点での編集者の白石とライターのヤエコの状態は、テレビの前に座っているアガサと同じなのですよね。
明らかに凶悪な犯罪者である「悪人」を警察に通報し、挑発的なメッセージを拒絶するという選択肢もあった。
でも、しなかった。

白石監督の作品は、『ノロイ』『オカルト』『シロメ』しか観ていないのですが、前者2作品に共通する「観客をカメラマンの共犯者にしてしまう」技は今回も健在で、というか、ますます力強さを増し、有無を言わさずおぞましく自己中心的な犯罪に加担させてしまいます。
いくらでも「やめどき」がありながらも、「悪人」の話術と危険極まりない行為に魅入られたようにカメラを回し続ける編集者・白石はアガサそのものであり、「自分は見ているだけだから悪くない」という逃げ口上を笑い飛ばすように悪い方へと転がってゆく物語を、共に呆然としながらポカーンと口をあけて見守るしかありませんでした。
しかもタチの悪い事に、おもしろかったのですよね、それが。
白石もアガサも、たのしんでしまっていたのですよ。そんな不快な物語を。

と、こういう風に書いてしまうと「わしゃどんだけ鬼畜な人間なんやねん!」と自己嫌悪に陥ってしまいそうなので弁解しますが、本作はアガサがネットで見かけた一文の通り、酷すぎる冒頭シーン以降一気に思いもよらない方向へと舵を切りまして。
都合の良い言い訳と思われた「オレは好きになってしまっただけなんや」という言葉は、運命の相手と出会った事で真実の心の叫びとなり、似たような孤独と哀しみを経験してきた「悪人」と「被害者」は、あっという間に恋に落ち、お互いの愛を貪り合うように口づけを交わします。
「わかる・・・わかるで・・ずっと誰からも愛されなかったんやな・・ オレもや・・ このワキガのせいでな!


バーン

もうね、なんでここでワキガなのかと。
慈しむような表情を浮かべながら懐からミョウバンを取り出す「悪人」。
それを受け取り、感動のあまり涙ぐむ「被害者女性」。
なんかもうよくわからんけど、とりあえずお邪魔しましたー!
世の中には体臭に悩んでいる方も沢山いらっしゃると思いますし、その皆さんを嘲笑する気持ちは全くないのですが、このタイミングでワキガとか言われたらもう、笑うしかなかったのですよね。白石監督はちょっとばかり卑怯だと思うの!どんな緩急のつけ方やねん!

とまぁ、ワキガの一件は若干ズルいなぁと思うものの、とにかく「悪人」の熱情と「被害者」の純情ががっちり噛み合い、巻き込まれた編集者とライターが完全におミソ状態になってしまうくだりは異常にオカシクて、彼らはどんな結末を迎えるのだろうか・・と、気になって仕方ありませんでした。
「悪人」が吐き散らす胡散臭い関西弁もとても効果的で、ありえないほど滑稽な犯罪の打ち合わせシーンに吹き出した次の瞬間、今度は心臓がキュっと締め付けられる程怖くなるという・・・。
心底おぞましい物語を、こんな風におもしろく感じる作品にしてしまう白石監督をおそろしいと感じると共に、こういう「抜き具合」(笑いどころ)を用意してくれるのは、監督の「世の中の悪人」に対する優しさなのかなぁ・・と思ってしまいました。
なんだかんだ言って鑑賞する事をやめない、アガサのような「悪人」に対してもね。

・・・うーん、でも違うかな!わかんないや!わはは!!
(ドス黒いものに惹かれてしまう人を全部まとめて笑い飛ばしているようなトコロは優しさなのかなぁ・・と思ったのですが、もしかしたらとどめの一発なのかもしれませんね。ザ・混乱!)

とにかくこわい程おもしろい映画でした。
絶対におすすめしませんが、少なくともアガサは最後まで観てよかったと思いましたし、白石監督の他の作品も全部観てみたくなってしまいましたよ!


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(※ 本作で「悪人」を演じていた宇野祥平さん。 苦しみ抜いた後野垂れ死んで欲しいと思うほど憎たらしい。 アガサは冒頭のシーン以降しばらくは顔を観るのもイヤでした。)

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(※ そんな宇野さんの『オカルト』での姿がこちら! うそみたいだろ!同一人物なんだぜ! 和製チャンベールの称号を君に捧ぐ!!)


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