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『恋の罪』

2012年01月23日
恋_convert_20120122162308


あらすじ・・・

水野_convert_20120122165000 「もしもし。ええ、わかったわ」
携帯電話の呼び出し音が、ひとときの逢瀬に溺れる私を現実へと引き戻す。
今回のヤマは渋谷区円山町。 
ラブホテル街の一角に埋もれるように佇む廃墟で起きた、猟奇殺人事件だ。
土砂降りの雨の中、現場に駆けつけた私が目にしたのは、真っ赤なドレスを着せられたマネキンと、セーラー服を着せられたマネキンにそれぞれ接合された女の死体と、壁に大きく書かれた「城」という血染めの文字。
一体これらが意味するものは何なのか。
司法解剖の結果、死体は30代~40代前後の一人の女性のものと判明。
まずはここ数日の間に出された失踪届けを調べる事から、私たちの捜査はスタートした。
それにしても、この街で行方をくらませる女性の、なんと多いことか。
彼女たちの写真はみな、一片の影すら滲ませず平和な笑顔を浮かべている。
しかし、そんな笑顔の裏には、無害な日常から逸脱せざるを得ないような鬱積とした感情が隠されているのだ。
その感情が、彼女たちの目を現実から背けさせ、過激な性へと走らせる・・・ そう・・現実逃避ね・・わかる、わかるわ・・だって私も・・。
後輩_convert_20120122164944 「先輩、今日どうしますか?まだ失踪者あたりますか?」
水野_convert_20120122165000 「もう7時なの? じゃあ帰る!」
雨はまだ降り止まない。 警察署を出て家に向かう私の肩を、冷たい雨が容赦なく叩きつける。
しかし、どんなにずぶ濡れになろうと、私の罪は洗い流されない。
優しい夫とかわいらしい娘と共に暮らす家の中。私は今日も、アイツからの電話に欲情する。
失踪届けを出された彼女たちも、あたたかな家庭に虚ろな何かを感じていたのだろうか。
そして、殺された女性もまた・・・。
後輩_convert_20120122164944 「先輩、今日の捜査プランは?」
水野_convert_20120122165000 「とりあえず失踪者ファイルでも見ときなさいよ!」
死体が発見された渋谷のラブホテル街では、毎日幾多の女性が愛を求めて立ち尽くす。
被害者もきっと、そんな女性だったに違いない。 
愛を求めているのか、体だけを求めているのか。 それすらもわからないまま、ただ自分の存在理由を再認識する為路上に立つ女たち。
なんというかね・・そこらへんって難しいのよね・・ ほら、女性にとって、あくまで「性行為」は「愛」の延長線上って感じがするからさ・・ 完全に「都合のいい女」になっていても気づかないフリをしてみたり・・  あと、性経験が少なかったりするとね、ちょっとおだてられただけで「やだ・・あたしって魅力的だったの・・?」って勘違いしちゃったりなんかして・・ 貞淑な妻タイプなんか特に有りがちよね・・ ほんで気がつくとドッブリ、なんつってね・・  わかる・・わかるわ・・ 私もアイツに初めて道ならぬ関係を求められた時、拒みながらも「まあね、まあね、こう見えてけっこうなフェロモンバディだかんね」って思ってしまったから・・ そしてそれ以来ずるずると・・。
水野_convert_20120122165000 「ねえ、もし私がデリヘル嬢だったらどうする?」
後輩_convert_20120122164944 「え?先輩がですか? まさか!」
水野_convert_20120122165000 「その“まさか”なのが女ってものなのよ!この素人童貞! 定時が来たから帰るわよ!」
帰宅し、リビングの扉を開けた瞬間、私の心臓は激しく脈打った。
主人とのんきにプチ宴会を楽しんでいるアイツ。 いくら主人の後輩だからといって大胆すぎる行動でしょ!何を考えているの!そして、案の定、主人が席を開けた瞬間激しく私の唇を求めるアイツ・・・ ちくしょう・・ こういうサプライズが、さらに私の背徳感に火をつけると知っての狼藉か!!今夜も眠れナイト!
それはさておき、被害者の女性がデリヘル嬢だったと仮定して、何故彼女はあんな風な最期を迎えなければならなかったのだろうか。
もしかしたら、彼女は破滅願望を持っていたのかもしれない。
自分の中の空洞を埋める為、性を求める女性は多い。 
しかし、彼女たちを満たすのはあくまで精液であって愛ではない。
その不毛さに気づいた時には、すでに引き返せない所まで行き着いていた。 
そして彼女は思った。 いっそ壊れてしまいたい、と・・  わかる・・わかるわ・・ ゴールなんてない事がわかっていても、もうどうにも出来ない事ってあるのよね・・ そう・・私のようn
後輩_convert_20120122164944  「先輩、今日はデリヘルの聞き込みですか?」
水野_convert_20120122165000 「そうよ。刑事の基本は現場百回。さっさと行くわよ童貞野郎!」
現場・・現場ね・・  こないだ私も現場に行ったわ・・「城」という血文字が生々しく残る現場・・。
そこに残されていた赤いカーペットに寝転んだら、こんな廃墟で男をとるしかなかった被害者の人生ってどんなだったんだろう、って妄想しちゃったのよね・・・ 惨めな女・・「愛」を与えられる事など無いとわかっていながら、求めるしかなかった女・・。 誰が彼女を殺したのか・・  とかなんとか考えるフリしながら無性に体が火照ってたまらない私は異常なのか・・ みたいなね・・ おまわりさん!へんたいはコチラです!ってわしがおまわりさんやがな!ワオ!スーパーポリスメン!
後輩_convert_20120122164944 「先輩大変です!死体の身元がわかりました!」
水野_convert_20120122165000 「なんですって!すぐ向かうわよ!」
驚くべきことに、被害者は有名な一流大学の助教授だった。
彼女が年老いた母親と一緒に暮らしていた邸宅の中には、切断された遺体の残りの部分と、殺害に協力したとみられるポン引き青年の死体が。
精神を病んでしまっているとおぼしき母親が、目を爛々と輝かせながら語った内容はほぼ私が考えていた通り。
受け入れられる事のなかった「実の父親」に対する熱情を、「男をとる」という形で成就させようとした女。 自分がこの世で一番愛する男を手に入れた女、つまり母親に対する復讐を、「男をとる」という形で果たそうとした女。 「影」よりも濃い「闇」に身を置くことを望んだ女。
そんな彼女の最期に手を貸した女性がいた事を母親から聞いた私は、もうひとりの女性のもとに向かった。
裕福な家庭で幸せに暮らしていながら、ひょんなことからAVに出演し、売春に走り、「闇」に惹かれた女。
完璧に整頓された室内で、神経質そうな夫は失踪した妻を心配する素振りすら見せず、むしろ清々したような表情で「まいったなぁ」と嘯く。
ふと床のカーペットに目をやると、殺害現場に残されていたものと同じペンキがこびりついているのが見えた。
この夫もまた、殺された被害者女性となんらかの関係にあったのかもしれない。
そして、それを知った妻は、何不自由なく自由の無い生活から飛び出し、「闇」に身をゆだねながら今もどこかに立っているのだろうか。彼女自身の足で。

私は、私はどこに立っているのだろうか。



アガサには「女」のことも「男」のこともわかりません。
わかっているのは、「自分」がどういう女なのかということだけです。
なので、本作を観て「女はこんなもんじゃないやい!」などと断言することが出来ませんし、ましてや「そうなんだよねー、女って業深いんだよねー」とこくんこくんすることなど出来るはずもない。
ただ、唯一のものさしである「自分」の主観から一言いわせてもらうならばこう言いたい。
うへえ!感じ悪(わる)!!と。

夫のスリッパを揃えることに生き甲斐を感じていた妻は、いけない事と思いながらAVに出演し、ちやほやされる事を自分への正当な評価と勘違いしてしまいます。 
ここまではわからなくもないのですが、その後、自分の魅力をもっと確認したくなって渋谷を徘徊するわ、行きずりの男とホテルに入るわ、てっきりちやほやされると思いきや突然男に屈辱的なプレイを強要されて泣き濡れるわ、でもそんなプレイに気持ちよさを感じてよがってしまうわ、と「バカな女」っぷりを存分に発揮。
さらに、傷心のままホテルから出てきた彼女は、たまたま通りがかった年増の売春婦を見て「これだ!」となんらかの天啓をキャッチ。 
いっぱしのズベ公ぶっていた自分はまだまだ甘かった、と。 
是非師匠のような立派な淫売になりたいのです! と初対面の売春婦に弟子入りを熱望。
 
どないやねん!  破天荒にも程があるだろ!

どさぐれ師匠のスパルタ売春塾で修行を積んだ彼女が、夫への愛情も帰る家も尊敬する師匠も失い、うらぶれた港町で臭そうなおっさんに二束三文で体を売りながら「自由」を実感するという衝撃のラストのどこに、「女性の尊厳」があるというのか。 
残念ながらアガサにはさっぱり理解できませんでした。

一方、どざぐれ師匠の方はというと、自分が唯一叶えたくて、でも絶対に叶えられなかった「愛(=城)」に辿り着く為、人生経験の少なそうな若妻を手玉にとり、自分の夢を果たそうとする。
その夢とは、愛する人がいる世界へと旅立つこと。
自分で死ぬことは出来なかった。 どれだけ性行為で自分を傷つけても死ねなかった。 だから、同じ地獄を味わった同志に引導を渡してもらおうと思った。
思い通り死ぬことが出来た師匠の魂が、「城」を見つけられたのかどうかはわかりません。
ただ、破滅に向かって突き進むことしか出来なかった師匠の死に様を見ていると、胸の中に苦々しいものが広がり、「女ってこんなに救いようがないのか・・?」という疑問が頭の中でぐるぐる渦巻きまいてしまいました。

抑圧された女。 
破滅するしかなかった女。 
娘の骸を辱める事で人生にケリをつけた女。 
愛する人がいながらもだらしない性生活をすてきれず自滅する女。
誠実な妻と性の奴隷というふたつの顔を持っていないと自分を保てない女。
本作に登場する女は、なぜここまで愚かで、業深くて、出会って2.5秒で合体!みたいな女性ばかりなのか。
なんかね、アガサには「女性がひたすら屈辱を受ける映画」にしか思えなかったのですよね。
対になっているとおぼしき前作『冷たい熱帯魚』も「男がひたすら屈辱を受ける」映画でしたが、あの作品にあった「どうしようもない男たちに対する生暖かい目線」みたいなものが、本作には感じられませんでした。

たしかに女性は罪深い生き物なのかもしれません。
でも、本当に罪深いのは、「愛」や「恋」や「性」ではなく、「いざとなったら簡単に業を捨ててしまえる冷徹さ」なんじゃないかなぁ・・とわしは思う。 どんなに愛に溺れていても、他に収入がよくて落とせそうな男を見つけた時の、あの見切りのよさね!
「性」で鬱憤を晴らすぐらいまだ可愛いよ! 女性の打算に裏打ちされた生き方ほどコワイものはないよ!被害者は園監督のもとに今すぐ集合だ!(そんで、そっち目線の女コワイ映画も作ってもらおうよ!)

と、いう訳で、「どこかにいるかもしれない“女性”の哀しいサガを描いた」物語に、語り手の意地の悪さしか感じなかったアガサだったのですが、鑑賞後色々な媒体に載っていた園監督のインタビューを読んでいると、本作には
「“もっと女性は自由に生きるべきだ”というポジティブなテーマ」がこめられている
との模様。
園監督いわく、本作は「女性賛歌」なのだそうです。

・ ・ ・

・ ・

ど こ が じ ゃ い ! !
(←ますます憤慨した)


― 追記 ―

・ 最初、本作に登場する「神楽坂さんパート」と「冨樫さんパート」は全て水野美紀演じる女刑事の妄想なのだと思っていました。  捜査を続ける段階で、失踪者のファイルを観ながら水野美紀が「こんなだったんじゃねえの・・」「あんなだったんじゃねえの・・」と妄想していたのではないか、と。  パンフレットを読むとばっさり否定されていましたケド。

・ だってさぁ! いくらなんでもスーパーの試食品コーナーでバイトしている最中「アタシのことも、食・べ・る?」ってそこらへんの兄ちゃん引っ掛けるかぁ? 口についたケチャップを指でこそげてペロンってやるかぁ? AVじゃあるまいし!

・ あとさぁ! いくらなんでも自分が働いている大学のキャンパスで堂々と女の人のちち揉むかぁ? 普通に学生が休憩してるベンチの真ん中で! ちちは揉むわ、学生に春を売るわ、構内のトイレのしかも個室ではなく洗面所でピストン運動するかぁ? AVじゃあるまいし!

・ おまけにさぁ! いくらなんでも殺害現場に被害者が使ったかもしれないカーペットをそのまま置いとくかぁ? しかもそのカーペットの上で捜査責任者の刑事が自慰するかぁ? AVじゃあるまいし!

・ 本作の3人のヒロインには、顔に液体をBUKKAKEられるシーンがそれぞれ用意されていました。 それは天井から滴り落ちる雨水だったり、ピンクのペンキだったりするのですが、アガサにはこれがどうしても「顔にアレをナニされる」ことの隠喩に思えて仕方なかったのですよね。

・ 「顔にアレをナニされる」というのはAVではお馴染みのプレイで、男性による支配欲以外のなにものでもない行為だと思います。 だから余計に、「性」によって「愛」を実感しようとする彼女たちの姿が虚しく見えたのです。 どれだけ「性」を貪っても、支配から抜け出すことが出来ない彼女たちの姿が。

・ 余談ですが、アガサはもし自分がコレをされるような事があったら、相手の男に生まれてきたことを後悔させてやります。 余談ですが。

・ どのシーンも意地悪な感じはしたものの「必要なんだろうなぁ・・」と思えるシーンばかりではあったのですが、「自由」になった神楽坂さんが少年の前でやらかすシーンだけは、嫌悪感しかなく必然性も全くわかりませんでした。 なんだったんだアレは。 悪い冗談か。

・ アンジャッシュ児嶋の言葉責めは完全にコント。 静まり返った劇場で笑いを抑えるのに必死でしたよ!ぼくは!

・ 後輩刑事が話す「ゴミ捨てに行ってそのまま家出した主婦」のエピソードが、事件を見届けた水野美紀によって再現されるラストシーン。 息せき切ってゴミ収集車を追う姿が、性行為と重なって見えました。 額に汗をにじませ、どれだけハアハアと息を荒げても辿り着けない「城」。 

・ できることならば、水野美紀にはゴミ収集車に追いついて欲しかったです。 陰惨な事件を経ることで成長した彼女が観たかった。 「ゴミ(業)」をポイーンと捨て、大切な家族に向き直って欲しかった。 しかし、「リバティハウス(自由)」という名のマンションを後にした水野美紀が辿り着くのは、結局くだんの廃墟(愛の地獄)だったのでした。  うへえ!感じ悪!!


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