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『ムカデ人間』

2011年09月30日
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(※ 完全にネタバレしていますのでご注意ください)



【ムカデ人間】あらため【雑仕上げ王選手権】まとめ

雑ポイント・その1 「計画が雑」

思い続けてきた夢を現実のものとしようと決めた時、あなたならどうしますか?
そうですね。 計画を立てますよね。 しかも綿密なね。
長年、優秀な外科医として、多くのシャム双生児の分離手術を成功させてきたヨーゼフ・ハイター博士もね、最初はそう思っていました。
自身が抱き続けた、「離すのではなくつなげる」という夢をいきなり人間で実現するのではなく、まずは愛犬で試してみるくらい、慎重に慎重を期した壮大な計画だったのです、最初は。
しかし、手術の成功に酔いしれたのも束の間、犬たちは泉下の犬となる。
この事で、一気に気持ちをかき乱されてしまった博士は、なんかもうウワァァっとなって、プシュルシュシュ~ってなって、とりあえずその辺に居たトラック運転手のおじさんを被験者にするべく麻酔銃を構えてしまうのでした・・・。


あのね、博士に一言いいたいのですけどね、これからやろうとしているコトの大きさを考えたら、もうちょっとほら、目撃者的な問題とかね、そういうのに注意しないとダメだと思うんですよね。 どこの世界に幹線道路の真横で白昼堂々麻酔銃を構える人さらいがいるというのですか。 雑そうに見えるソーヤー一家だって、もうちょっと色々考えてさらってますよ、たぶん。いや、そうでもないか。  あと、他の被験者とのつり合いとかね、そういう点も予め考えておく方がいいですね。 人さらいは計画的に!

雑ポイント・その2 「チョイスが雑」

トラック運転手のおじさんを自宅に連れて帰り、新たな被験者探しについて思案していた博士。
そんな時、抜群のタイミングで、道に迷ったアメリカ人観光客の女性2人組がハイター邸の門戸を叩きます。
質問の結果、彼女たちに血縁関係は無かったので少し躊躇したものの、新たに人をさらいに行く手間が省ける千載一遇のチャンスとばかりに、つい勢いで一服盛ってしまう博士なのでした・・・。


まぁね、これは判らなくもないのですけどね。 「人里はなれた一軒家を訪ねたら、そこはソーヤー一家だった!」なんてのは、田舎コワイ系のお話にはよくあるシチュエーションですし。  ただ、博士は自分が先にさらって来ていたのが、メタボ体型のおじさんだという事を失念してしまっているような気がして、そこはホントよく覚えておかないとダメじゃないのか、と。 ニューヨーク在住のナイスバディなチャンネーと、おなかたぷたぷのおじさんとを繋いだ時のイメージをね、一旦冷静に考えてみる必要があるのではないかと。  で、案の定、ビジュアル的な開きがありすぎる為、一度も繋がれる事無く殺処分されてしまうおじさん。 おい!勿体ないことするな!うっかり博士!

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(断末魔をあげるおじさん。 せめてギャルのおしりの穴くらいは・・見たかっ・・た・・ガクッ)

雑ポイント・その3 「くっつけ方が雑」

さて、女の子2人に、新たにさらってきた日本人青年を加え、いよいよ博士の壮大な人体実験のスタートです。
人生に突如舞い降りた真性のアレな人を前に泣き叫ぶ女の子たちと、ひたすら口汚く罵倒する青年を尻目に、博士の名調子は続きます。
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「つまりですね・・おしりとくちをこうね・・・くっつけてですね・・」
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「はがれないようにね・・・ ちょこっと切れ目をいれたりなんかしてね・・」


いや、言わんとする事は判るのですけどね、どう繋げてどう排泄されるのかはうっすら判るのですけども、くっつけ方雑すぎじゃね?!  いちおう、頬の皮膚の一部を剥して、そこにお尻の一部を縫い付けるみたいな工夫はしているようなのですが、なんかもういきなりマジックで「この辺かなぁ・・・ 大きさは・・これくらいでいっか・・」とフリーハンドペインティングを始めるとかね、おまえそんな目印で大丈夫か?! と。  稼動させる為にはお互いの体重を支えあう必要があるのですから、そんなあなた、皮膚をバチバチホッチキスで綴じたぐらいじゃあね・・。 ほんと、ヨーゼフはなんでそこ雑に済まそうとするかねぇ・・まったくもう・・。

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(で、やっぱり動き難くてあわあわなる始末。包帯くらいでサポートできるかー!ヨーゼフ!バカヨーゼフ!)

雑ポイント・その4 「術後のフォロ-が雑」

ついに、「人と人の繋がりを大切にした新種の生き物・通称ムカデ人間の製作」という悲願を達成した博士。
回復期もそこそこに、いきなり日常生活にトライさせるものの、繋がれた3人は現実を受け入れる事が出来ず、絶望に暮れ、博士の言葉にも耳を傾けようとしません。
とりあえず、脅したりすかしたりしながら、前から絶対やってみようと思っていた「新聞を持ってこさせる」にチャレンジするものの、先頭に配した日本人青年による凄まじいの抵抗に遭い、飼い犬ならぬ飼いムカデに脚をかまれる始末。
ならば餌付けにチャレンジとばかりに、青年に餌を与えるものの、その残りカスしか流れてこない後ろの2人に栄養が行き渡るはずもなく、特に最後尾のギャルは日に日に衰弱してゆくばかり・・・。


ホントにね、見れば見るほど、ヨーゼフは本当に医師免許を持っているのか疑問になってくるのですけどね、おまえ点滴の量少なすぎだろ!  ちょっと考えればわかることでしょ! ひとは、排泄物だけでは、生きてゆけませんよ! 小学生でもわかるくらいの問題ですよ。まぁ、小学生に聞こうとは思いませんけどね!! あと、傷の処置も相変わらず適当ですよね。 抗生剤、ちゃんと入れてあげていますか? 小屋生活なので衛生状態も悪そうだし・・・。 イラっとするわ!この博士マジうつけだわ! 

雑ポイント・その5 「おまわりさんの扱いが雑」

明らかに実験失敗の香りが濃厚になってきたある日、博士の家のチャイムが鳴り響きます。
来訪者は2人の刑事。
近隣地域で頻発する失踪事件と、ハイター邸から女性の悲鳴が聞こえたという通報を受け、博士に事情を聞くべくやってきたのです。
地下の実験室にムカデ人間を隠し、平常心を保ちつつ受け答えしようとする博士でしたが、大声で助けを求め続けているであろう先頭青年と、痛いトコロをツッコミ続ける刑事たちに苛立ちが抑えきれず、口角泡を飛ばし激昂した挙句、勢いで一服盛ってしまうのでした・・。


自分が法を犯してしまっている時、一番気をつけなければならないのは何かというと、ズバリ「職質」ですよね。 ここで冷静さを欠いてしまったが最後、どんなに緻密に練り上げた計画も無に帰してしまうのが世の習いってもんじゃないですか。まぁ、ヨーゼフはちっとも緻密じゃなかったけども!終始行き当たりばったりだったんだけども!  で、計画が雑なら対応も雑なのがヨーゼフ的ライフスタイルな訳で、こともあろうに、やってきた刑事をムカデのパーツに加えてしまおうと考えてしまうのですよね。 おい!ヨーゼフおい! 特技は「一服盛ること」ですか! ノーモア自転車操業!!
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(余裕綽々と見せかけて・・)
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(アバババー ってなっちゃうヨーゼフ。 情緒不安定か!)


雑ポイント・その6 「ツメの部分が雑」

博士の対応のあまりな不自然さに、正式な捜査令状を持って再訪問すべく、一旦家を後にする刑事たち。
自爆行為で一気に窮地に立たされた博士は、愛するペットを連れなんとか逃亡を計るべく地下室に駆け込みますが、そこで待っていたのは、今まさに反旗を翻そうとしていた荒ぶるムカデ人間。
博士が刑事の応対に追われていた間、先頭の青年の機転により凶器を手に入れた彼らは、一瞬の隙をつき博士の脚をメスで切り裂いて、さらに喉元の肉を食い千切って逃走します。
無理な運動で開きかけた傷からは血が滴り落ち、最後尾のギャルは今にも息絶えそうな極限状態ですが、残された最初で最後のチャンスに賭け、一心不乱に地上への階段を登る3人。
そしてついに、下界へと続く窓ガラスへと辿り着き、鈍器でガラスを打ち破ろうとしたその時、彼らの耳は、満身創痍となった博士が体を引きずりながら、愛するペットが自由になるのを阻止すべく、歩み寄ろうとする音を聞きつけるのでした・・・。


うん、そっかそっか、メスで脚に深手を負わせて、喉元のお肉を食い千切って、そんで、そのまま置いて来ちゃったのか、博士を。 目の前に「刺して下さい」と言わんばかりに、無防備に倒れているにも関わらず、とどめも差さずに背中を見せて逃げて来ちゃったのか。うん、なるほどね、なるほどなるほどってアホか―――!!
お人よしか!人情味溢るる下町生まれHIPHOP育ちか――!!
 
いやね、そりゃ多くは望みませんよ、大変な時ですから。 しかし、この状況でのこのツメの甘さはマジありえない。スーパーガッカリイリュージョンにも程があります。  ソーヤー一家だってここまで雑な仕上げ方はしませんよ。いや、するか。



【結論・今回の雑仕上げ王 日本人ヤクザのカツローさん】
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(悪そなヤツは大体トモダチのカツローさん。 女性陣を率いて奮闘しましたが、雑だったせいであと一歩及ばずの巻。)



と言う訳で、巷で話題騒然だった新世紀のカルト映画『ムカデ人間』を鑑賞しましたよ!
どこにだしても恥ずかしくないヘンタイの極みのような内容で、鑑賞後のお客さん同士が「うへぇ・・・」と心を一つにする事が出来る、貴重な映画だったと思います。
上記のあらすじ(というか雑ポイント)は、大体の方のお察しの通り、かなり茶化して書いておりますが、実際の作品は尋常でない緊張感に包まれ、登場する博士の“マジモン”じみた眼光と、恐れや不安や憤りや絶望をまくしたてるカツローの“生きた日本語”とが相まって、それはそれは“笑えない”作品となっておりました。
どう見てもやりすぎな部分や、あまりにもありえない展開に対し、最初は「バッカでぇ・・・」とクスクス笑いを漏らしていたものの、徐々に「あ・・ええと・・これ、笑ってもいいんだよね・・・」と心がざわざわしてしまう、そのバランス具合がすごくアレだなぁ、と思いました。なんというか、攻め上手だなぁ、と。
ソーヤー一家のお話(悪魔のいけにえ)で例えるならば、森の中をチェーンソーを持ったスーツ姿の大男が追いかけてくるというシーンにおける、耳元に迫るチェーンソーの轟音の恐ろしさと、そのへんてこな扮装のちぐはぐさ。
もしくは、頭がおかしい一族が勢ぞろいして食卓を囲むシーンに感じた、閉鎖された空間を満たす圧倒的な狂気と、よぼよぼのおじいちゃんがトンカチを持っては落とすというコントのようなやりとりの異様さのような、「怖さ」と「アホらしさ」の絶妙なバランス。
どちらかに傾いていない分、鑑賞中は気持ちがぐちゃぐちゃとかき乱され、「なんかもうとんでもないのを観てしまったよ・・・」という強い印象を植え付けられてしまうのですよね。
怖いだけの映画も、バカなだけの映画も沢山ありますが、こんな風に「弄ばれる」系の映画はホントたちが悪いと思います。 
お陰でまた、忘れられない映画が一本増えてしまったではないか・・。
しかも、メガフォンを撮ったトム・シックス監督によると、このシリーズは全3部作をもって完結する一大叙事詩になる予定とのことなのですよね。
な、なによ・・このヘンタイ! 続編なんて、ぜ、絶対に観てあげないんだからね!


てな具合に、なんだかんだいって大いに楽しく鑑賞させて頂いたアガサなのですが、ちょっとだけひっかかった所がありまして。
クライマックス、囚われの身だったムカデ人間の皆さんはハイター博士との死闘を経て、鍵のかかった邸内からの脱出をはかるのですが、あと僅かの所で深手を負った博士に追いつかれてしまいます。
ここで、先頭のヤクザ青年による最後の闘いが繰り広げられるのかと思いきや、なんと彼は、自ら死を選んでしまうのです。
背後の博士に向き直り、とうとうと思いの丈をぶちまけた後、「人間のままでありたい」と言い残しガラスの破片で喉元を掻き切る青年。
アガサには、この展開が物凄く唐突に感じられてしまったのですよね。

本編は、それからまたさらに刑事と博士がすったもんだやりあった後に、一人残された真ん中(ムカデパーツの)の女性が鏡に映った我が姿を見て、そのあまりのおぞましさに慟哭する画で幕を閉じます。
もしかしたらカツロー青年も、博士に向き直った瞬間、鏡を見てしまったのかもしれない。 そして、もはや人間とはいい難い形状になってしまった自分の、魂だけは人間のまま死にたくて命を絶ったのかも。
しかし、もしもそういう事だったのなら、そこに至るまでに彼らが自らの姿を見てしまうシーンが無い方がよかったのではないかなぁ・・と思ったのです。(※テンションの上がった博士によって、手術直後からバンバン鏡を見せられたり写真を撮られまくっておりました)
薄々気付いてはいたものの、具体的に自分たちがどうなってしまっているのかを知らないからこそ、必死になって生き残ろうとし、でも、そんな努力も虚しくなる程の現実を目にしてしまった為、尊厳を保ったまま命を絶つ。
そういう事だったら、カツロー青年が選んだ最期も、強い説得力を持って心に響くと思うのですよ。

あるいは、あの選択は、「ペットのままでは死なない」という、博士に対する最後の反抗でもあったのかもしれません。
そうだったとしても、彼らに追いついてきた博士のあの「堂々たる死にかけっぷり」を目にしてしまうと、「絶望するにはまだ早い!」と思わずにはいられないのですけどね・・。
なんかもうアレなのかな。 トムは「ジャパニーズ!サムライ!ハラキリ!」ってやりたかっただけなのかな・・と思ってしまったり。
いい意味で予想外の展開だっただけに、なんかちょっと残念でしたねぇ。

まぁね、全編にぎっしりと詰め込まれているツッコミポイントに比べれば、ちっちゃい問題ですけどね!そんなこたあ! 
そっか、気にしたら負けか! よし、忘れよう!

真人間のお友達や知り合いにはちょっぴり紹介し辛い、個性豊かな作品ですが、少々のことなら大らかな気持ちで見守れる、違いの判る大人の方にはどんどんお薦めして行きたいものですね。
あと、「ホラーなんかにメッセージ性もへったくれもあるもんか」とお怒りの皆様には、是非この作品をご覧頂き、「スペアタイヤのつけ方くらいは覚えとこうよ」という教訓を受け取って頂けたらと思います。
あのね、たぶん車の後ろの方に入ってるから。
ギコギコ持ち上げるヤツとクルクル回すヤツとセットで、まず大抵の場合入れてあるから。
「タイヤを替えるのは男性の仕事」などという甘い時代は終わった!
時代はDIYですよ奥さん!




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