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「アンダー・ザ・ドーム」 綿摘み野郎の声をきけ!

2011年05月23日
アンダーザドーム

あらすじ・・・
平凡で幸せな生活を送っていた主婦のマイラ・エヴェンスが、裏庭でかぼちゃを収穫しようとしていた時、
優秀な医師助手のラスティ・エヴェレットが、14歳の少年のふくらはぎに刻み込まれた15cmの裂傷と対決していた時、
元陸軍兵士のデイル・バービーが、コックの職を辞し自発的に町を立ち去ろうとしていた時、
頭に(文字通りの)爆弾を抱える特別警察官のジュニア・レニーが、初めての殺人を犯そうとしていた時、
人気の無い林道で、一頭の牝鹿が柔らかな若芽をはんでいた時、
それは起きた。

人口2千人ほどの小さな町・チェスターズミルを突如包み込んだ、透明な障壁。
はるか上空から地中奥底まで続くその障壁は、わずかな空気とごく微量の水以外のものをチェスターズミルから遠ざけ、かわりに、有り余るほどの不安と絶望を注ぎ込む。

一切の謎が解き明かされないまま、底知れない狂気に支配されることとなった小さな町で、人々に生きる術は残されているのだろうか・・・?


おかあさん!キングがひさびさにやりおったよ!

正直、ここ数年のキング作品はいまひとつノレないものが多く、出だしこそ抜群の吸引力だったものの後半からもにょっとした雰囲気になり最後は「アレー?」となってしまった『セル』、引っ張りすぎて途中で回想に興味がわかなくなってしまった『リーシーの物語』、そして、おもしろったもののこれまた引っ張りすぎて「なげえよ!」と叫びたくなった『悪霊の島』の3連発で、「もしかしたらもうぼくはキングさんの世界には没入できなくなってしまったのかもしれない・・・」と楽しかったあの頃を思って枕をぬらしたりしていたのでしたが、今回の『アンダー・ザ・ドーム』はスピード感もエゲつなさも段違いですよ!
上・下巻それぞれ700ページ弱というお祭りサイズなのですが、読み進めるのがもうつらいのなんのって奥さん。
とにかく、本作に出てくる悪党がゲスい! ウルトラド級のゲスさ!
物事はすべて、悪いほうへ悪いほうへと転がってゆき、それだけでも頭を掻き毟りたくなるようなフラストレーションに襲われるトコロへ、さらに「これでもまだ最悪じゃない」という文字が飛び込んできた日には・・ね・・。心も折れそうになるっちゅうねん。いや、結局読まずにはいられないんだけどさぁ・・。

ひとつの町にぽとりと垂らされた狂気のしずくが、周りを大きく染めて行き、人々の善と悪の心を弄ぶ。 
という物語は、キングの作品によくあるパターンなのですが、今回の「脱出不可能なドーム」という設定が今まで以上に焦燥感を煽り、読んでいて胃が痛くなる事もしばしばでした。
上巻を読み終えた時は、本気で脱落しようかと思いましたし。 まだまだ続くと思われるゲスの饗宴に、つきあいきれる自信がなかったのですよね。
その昔、『IT』を読んでいた頃毎晩悪夢を見るようになって、2週間ほど読むのを中断したコトがありました。
そこまでではないものの、ページを開けばその都度「最悪の事態」が更新される、という状況は心底しんどかったです。
しかし、だからこそ、巻末に待ち構えているであろう大団円(もしくはちょっとしたカタルシス)を味あわないと、自分が救われない気がして、本当にその一心だけでチェスターズミルと首っ引きになっていました。
このゲス野郎(町の有力者ビッグ・ジム)が、地べたを這いつくばってザラザラの砂利を口に頬張らざるを得ないコトになるまで、どうしても途中下車する訳には行かなかった。
ま、キングの小説は大団円がない事もしょっちゅうなんですけどね!スティーヴンこのやろう!

透明な障壁「ドーム」の発生により、外の世界から完全に孤立してしまったチェスターズミルを統治下に治めようと画策する中古車ディーラーのビッグ・ジムは、完全な邪悪などではなく、ムワっとなるほど人間臭い小悪党です。
敬虔なクリスチャンでありながら、堕落した生活に身を委ね、ちっぽけな虚栄心で大きな体を覆い、時には自分を神に重ねたりする程の身の程知らず。
うーん・・・どこかで見たことあるような気がするなぁ・・ ほら、「天災」を「天罰」だっつったり「震災被害」に対して「ざまあみろ」とか言っちゃう人がいませんでしたっけ!ほら、関東の方に!
この手のゲスい権力者は、小説の中のみならず、現実世界でもごくありふれた存在だと思います。
そして、そんな権力者を「諦め」という便利ワードで放置せざるを得ない人々の存在も。
もちろん、ゲスさを個性として寛大にも受け入れ、愚かさを愛嬌として笑い飛ばして支持を表明する人々の存在も。
非現実的な舞台設定を使いながらも、とことん現実的なキャラクターによって生々しい危機感を与えるキングの筆力に圧倒されます。
本作と現実がもうひとつリンクしている点。 「予想もしていなかった状況に直面した時、人はどれだけ簡単に判断力を失うか」という点もまた、私たちはこの数ヶ月の間にイヤというほど目にし、耳にしてきました。
少し待って状況を見極めれば何でもないような事。 愚の極みとしか思えないような差別。
「ふつうならありえない」ような事も、「ふつうでないなら当たり前になる」という可能性は、本を閉じてもなお、常に私たちに突きつけられ続ける恐ろしい現実のうちのひとつだと思います。


『ザ・スタンド』を彷彿とさせるような「善」チームと「悪」チームの対決。
そして、『ニードフル・シングス』も裸足で逃げ出すような大破壊。
クライマックスは、物語のスケールの大きさとは対照的な、小さな、そしてありふれた痛みが散りばめられ、「たったひとつの何気ない命が存在する」という事はどれほど奇跡的な事か・・・というキングのメッセージが力強く謳い上げられます。
人は脆い。
命は儚い。
だけど、心は強くなれる。 
弱さを受け入れ、みっともなくても、這いつくばってでも、ひたすらに「生きよう」とする人々の姿に、思わず涙がこみ上げてしまいました。

真に恐ろしいのは、「出られない」ことではなく、「入って来れない」ことなのだ。
という目からウロコな語り口で、1200ページ強もの壮大な物語を一気に紡ぎ上げたキングの巧みさに舌を巻き、これからもずっとキングの小説を追い続けようと心に誓ったアガサだったのでした。

超おすすめですよ!




-おまけ-(※以下ネタバレ)


・ 志村うしろー!(特にラスティ)

・ 「一人で行ったらダメですよ」というフラグを忠実に回収するベテラン女性陣

・ 熟女ばんざい!

・ ジュニアもまた、完全な悪ではない、というトコロがおもしろかったし、悲しかったです。 グリーンマイルのコーフィさんが吸い取ってくれればよかったのになぁ。

・ ま・・・まさかの・・・っ! ・・焼き土下座オチ・・っ!!!

・ いつだって、「いじめ」に理由なんてない。だからこそ、唐突に始まり、唐突に終わる。必ず、終わりは来る。 ほんのちょっとの勇気と、ほんのちょっとの想像力で。 



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