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『アンチクライスト』

2011年03月05日
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史上最も過酷な夫婦喧嘩がここに!


【夫婦生活で犯してはいけない7つの大罪】

1・「嫁の日常に無関心」

セラピストとして多くの悩める人間を救ってきた夫は、一番身近にいる妻の悩みには無関心。
今日も
「あーぁ・・山に篭ってゆっくり論文でも書きたいなぁ・・」
とこぼした妻に、
「じゃ行ってくれば?ニックと一緒に。」
と素気無い返事。

そうじゃないでしょ! そこは
「どうしたの?何か煮詰まった?オレが子ども見とくから、ちょっと旅行でも行ってくるか?ん?」
っていうパターンでしょ!! 奥さんひとりの時間を作ってあげなきゃでしょ! さっきのじゃあ、幼い子どもと一緒に嫁を厄介払いしてるようなものですよご主人!マジ気をつけて! 気遣っているように見せかけて突き放しちゃダメ!


2・「嫁の話を聞かない」
ある日、夫婦が夜の営みに夢中になっている間にベビーベッドを抜け出したニックが、窓から転落して亡くなるという事故が起きる。
自責の念から激しく落ち込む妻。 日常生活もままならない為、病院にて心身共に治療を施されていたのだが、セラピストの腕に自信を持つ夫は妻を強制退院させ、自らがカウンセリングを行う事を決意します。

はい!コレまたマズいよね! 「オレ」を押し付けちゃダメでしょ! 病院で処方された薬を飲んで、段階を踏んで前に進もうとしている妻に「そんな薬意味無いぜ!」ってご主人!「オレが一番嫁を理解してるんだぜ!」ってご主人! 根拠の無い自信はダメ!絶対!! もっと、奥さんがどうしたがってるのかってトコを聞いてあげて!


3・「嫁の気持ちを考えない」
かくして自宅に戻った夫婦だが、そこはまさに愛する息子が不幸な死を迎えた場所。 命の痕跡が色濃く残っている場所。
どこを見ても、何をしていても、無情に突きつけられる“息子の不在証明”に、妻はますます精神のバランスを狂わして行く。

ご主人!ちょっとご主人!アナタナニカンガエテマスカー!(※興奮のあまり口調が乱れています)  あなたは確かに、ショック状態の嫁をフォローする為にも、気丈に振舞っているのかもしれない。振舞えているのかもしれない。 がしかし!嫁は違うでしょ! 自分の過失を常に突きつけられるような場所に連れて帰ってどうするんですか! ノンノンですよ! そこは敢えて、現実逃避出来るような遠くの場所、ほら、避暑地的なトコとかさぁ、そういう場所にしなきゃダメでしょ! 荒療治は逆効果ヨー!!

4・「嫁にハードルの高い宿題を押し付ける」
カウンセリングを続ける中、妻の心に巣食う恐怖の根源が、どうやら昨年彼女と息子が休暇を過ごした森にあると知った夫は、嫌がる妻を説得し、“エデン”と呼ばれる森へと向かう。

そうそう、避暑地的なね、遠くの場所にね、 ・・・ってバーカ!おまえバーカ!!   だからそういうコト言ってるんじゃないでしょ! さっきも言ったけど、荒療治は逆効果ヨー!メガリョウジヨー!  「トラウマに向き合う事で、現実を受け入れ立ち直る事が出来る」って、判るけどさあ!意図はわかるけどさあ! 今やることじゃないよね! ハードル高すぎるよね! 自分だけのものさしで物事を考えちゃダメ!


5・「嫁の求めに応じない」
森に対し異常な程怯えている妻に、ひとつづつ課題を出し、恐怖を乗り越える事を強いる夫。
なんとか克服しつつあるように見える妻だったが、心の奥底では何も変化しておらず、不安定さを誤魔化すかのように夫の体に貪りつく。
しかし夫は、カウンセラーとしての役割を優先し、妻が差し伸べる手を払いのけるのだった。

やれやれ!据え膳喰わぬはなんとやらですなあ!  ていうかね、ご主人、ホントちょっといい加減にしましょうよ。 なぜ嫁が自分の体を異様に求めるのか、罪を消そうとしているのか、罪をさらに重ねて、自分を滅してしまおうとしているのか、そういうトコを酌んであげるのが夫の役割じゃないんですか。 いや、これは妻も同じですけどね、体を重ねるっていうのは、ただ単に性欲の解消ではないんですよ! やーい!このへっぽこカウンセラー!! 


6・「嫁を信用しない」
治療を重ねれば重ねるほど、一進一退どころか悪化の一途を辿る妻の容態に、焦りを抱きはじめる夫。
そんな時、偶然入った屋根裏部屋の中で、昨年妻が書いていたと見られる論文と、その資料を発見する。
それは、魔女狩りなどで行われた、おぞましい拷問と殺戮を扱ったもので、女の本質=悪魔と言わんばかりの狂気に満ちた内容だった。
妻が錯乱するに至った原因は、本当に息子の死だけだったのか?
実は妻はずっと以前から、狂気に蝕まれていたのではないのか?
夫の中で、妻に対する不信感の種が一斉に芽吹き始める。

だーかーらー! 言わんこっちゃないね!「根拠の無い自信はダメ」って言ってたもんねオレ! ご主人が「わかったつもり」でいた嫁が、実は「思てたんとちゃうかった!」からって、泣き言いってんじゃねえですよ!ケツの穴のちいさか男たいね! 自分が救うと決意した、誰の手にも任せないと決めた奥さんでしょ! あなたが信じなくて、誰が奥さんを信じてあげるっていうんですか!  死なば諸共で、とことん連れ添ってあげましょうよ! 病める時も!健やかなる時も!


7・「嫁のオシャレ心を理解しない」
完全に精神のバランスが崩壊してしまった妻は、ついに夫に向かい牙を剥く。
乱暴に体を求め、それが叶わないと知るや、傍にあった木材で夫の性器を殴打。
失神した夫の足にドリルで穴を穿ち、そこに砥石を留めつけミッションコンプリート。 
今、ちょっと重めのファッションが新しい・・・!
が、目覚めた夫は砥石の重みと傷の痛みに恐れをなし、妻から脱げ出すべく地面を這いずり、傍にあったキツネの巣穴に隠れてしまうのであった。

世の男性陣の一番ダメなトコ来たね! あのね、奥さんがご主人のファッソンセンスを嘆く理由がおわかりか?かっこよくなって欲しいからですよ! 関心が無かったら何も言いませんて! そこに愛があるからファッソンに口出しするんでしょ! もうねえ、ちょっとばかし足が痛くったって、そこはグっと我慢の子で 「お! 足に砥石ですか?! 斬新っすね!」 とイイネ!ボタンのひとつも押してあげましょうよ! 案外、慣れれば鉄下駄感覚で使いこなせるようになるかもですよ! ならないかもだけど!!

と言う訳で、上記の点に充分気をつけて、みなさんは楽しい夫婦生活を共に白髪の生えるまでお過ごし下さい!
以上、ラースからのアドバイスでした!


という内容では無いんですけどね。 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ  見ようによっては強ちハズレでもないような・・。


“アンチクライスト”というタイトルが現しているように、本作は宗教色が強い作品な為、キリスト教の教義を知っているかいないかで、解釈も変わってくるのではないかと思います。
アガサは、というと、何を隠そう幼少期、日曜学校に通っていた事があるものの、もっぱら「親から献金用にもらった小銭でこっそり駄菓子を買う」為だけに通っていたようなものでしたので、信心らしい信心は持っていませんでした。
残念な子羊で、どうもすみません。

そこで、専門的な解釈はその道の方にお任せして、見たままのイメージから自由に解釈しますと、本作はものすごく悪意に満ちた映画だったような気がします。 あと、超ネガティブな映画だったなぁ、と。

作中で言及されるのですが、「自然は悪魔の教会だ」というのが大きなテーマとなっているようでして、妻がひたすら恐怖を抱くのは、緑豊かな大自然。
アガサの中にあった、「自然とは、厳しくも温かく命を生み出し育むもの」というイメージを真っ向から否定するように、「自然は非情」 「自然は残酷」 「自然マジパネエ」 「自然ちょうこわい」 と、自然がひたすらおっかないものとして描かれています。
ヤバイよ! これC・W・ニコルさんが聞いたらロースハム持って殴りかかって来ちゃうよ!

ただ、確かに、自然ほど「死」にシビアな世界は無いのも事実。
樫の木から雨粒のように降り注ぐどんぐりの実は、その殆どが死に、大きく成長できるのはほんの一部分。
弱い雛鳥は木から落ち、救い上げられる事もなく啄ばまれてゆくのみ。
一秒ごとに命が生まれ、一秒ごとに死んで行く世界。
そこは見ようによっては、悪魔が絶望を教示する場所なのかもしれません。
その事に気付いてしまった妻は、何気ない森の風景に響き渡る架空の赤ちゃんの泣き声(森が上げる絶望の叫び声)を耳にしてしまい、森に対し恐怖心を募らせて行く。
地面を覆いつくすような沢山の裸体で、自然界に横たわる「死」の容赦のなさを表したカットは、夢に出てきそうなほどの禍々しさに包まれ、最高に悪意溢れるシーンだったと共に、そりゃ森の景色がこんな風に見えたんじゃあ心も病むだろうなぁ・・と妻が気の毒になってしまいました。

本作でもうひとつ印象的だったのは、「落ちる」カット。
先程も書いた、どんぐりの実。
宝石のようにキラキラと輝くシャワーの水滴。
ふわふわと舞い落ちる雪の粒。
巣から落下する雛鳥。
机から滑り落ちる、悲嘆、苦痛、絶望、の銅像。
そして、幼いニック。

本作では、実に色々なものが「落ちて」行きます。
それらは「死」そのものを表していたのではないでしょうか。
あるいは、「死」の予兆を。
では、ラストシーンで、丘を「上がって」行く沢山の女たちは何を表していたのか。
それは新たな「生」なのか?
女は、本当にアンチクライストだったのか?

夫婦が森へ向かう列車の窓ガラスに、『エクソシスト』でサブリミナル的に挿入された悪魔の顔さながらの、おぞましい顔が浮かび上がったり、
心を病み始めた(悪魔に取り憑かれた)妻が、息子に靴を左右反対に履かせていたり、
彼らが耽るのが悪魔的堕落の代表である「肉欲」だったりと、何かと「アンチクライスト」を意識させる演出がなされていたのですが、アガサはどうしても、妻が「アンチクライスト」だったとは思えなくてですね。
救いを求める憐れな子羊だったのではないか、と思えてならなかったのですよね。
その声に耳を貸さず、救済を放棄した夫の方が、よっぽどか性悪じゃん、と。
という風に考えるとあら不思議。 妻がアンチクライストから殉教者に早変わり!  いや、ちがうから!ラースさんの「女こえー」的な、超後ろ向きな考え方が気に食わないだけとか、そういうじゃないから! 無理やりとかじゃないから!


とまあ、色々書きましたが、そういうひねくれた考え方から一旦離れて観てみれば、要は本作は

「こじれた夫婦関係が、子どもの死によってさらにこじれ、そのうえ夫がやることなすこと全てが裏目に出て、どえらい夫婦喧嘩に発展する」

という、世の悩めるご夫婦にとって素晴らしい反面教師的な作品だったのではないでしょうか。

とりあえず、奥さんはご主人の、ご主人は奥さんの話をしっかり聞こう!  とりとめのない内容でもきちんと聞こう!


夜のお楽しみはそれからだ!



-追記-

・ 後半に超えげつない自慰シーンがあるので要注意ですよ。

・ そんなにこすったらあかん! パート1(奥さん篇)

・ そんなにこすったらあかん! パート2(旦那さん篇)

・ なまいきシャルロットさんは、何かいやなことでもあったのだろうか・・・。(というくらい自分を捨てた熱演)

・ キツネがシャベッター!!!

・ 「現われると死が訪れる」という3人の乞食は、キリスト誕生の時に現われた3人の賢者のネガティブ・バージョンみたいなものなのか。 いやあーこの映画とことん陰気やでー!

・ そこ切ったらあかん!! (※シャレにならないほどエグいシーンです)

・ それにしても、ほんと、シャルロットはがんばったよ! 今年はシャルロットが優勝でいいよ!

・ 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラストを見た時も思ったんだけど、ラースさんは今回もやっぱり、見せなくていい部分(落下した子どもが地面にぶつかる瞬間)までもを見せてしまっていて、アガサは思いを新たにしたのでした。 オレやっぱりこの人キライ!!! (窓枠と一緒に映っていた子どもがフレームアウトするだけでわかるから。 子どもがどうなるかわかるから。 そこまで映さなくてもわかるから。 なのにわざわざ映すのがラースさん流。 オレ、この人キライ!)

・ キライなんだけど、きっとまた次回作も観ちゃうんだろうなぁ・・。 くやしいっ・・ビクンビクンッ

・ 散りばめられた小ネタの数々のひとつひとつを、何度も反芻しながら観ると、また違った発見や感情がでてくるのかもしれませんので、出来れば何度か観返す方がいいかもしれません。 もしくは、観た人と沢山お話するとかね!  決して楽しくない作品ですが、クセになる作品だと思いました。 オレ・・この人キライなのに・・くやしいっ・・ビ(略)


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