ブログパーツ

『黒く濁る村』

2011年02月15日
こけ


あらすじ・・・
やあやあよくきたのう。 わしがこの村の村長のチョン・ヨンドクじゃ。
まあまあ座りなされ。 田舎の空気はうまいじゃろう、そうじゃろう。
うむ、お父上のことは残念じゃった。 がまあ、年齢のことを考えればさほど不思議ではないと思うがのう。
この後の葬儀の事はわしらに任せておかれるがよいぞ。 
こんな田舎の村じゃてのう。 みな、きみの突然の来訪に驚いておるのじゃよ。いや、迷惑とかではないぞ。もちろんじゃとも。
まあ、じゃあ、埋葬も済んだことだし、お別れ会を設けてあげたでの、たんと食べて都会へおひきとりを・・

なんと? 帰らんと?
まさかこのままこの村に住み着くなどと・・  言うのかね、そうかね。これは甘い驚きじゃのう。スイートサプライズじゃのう。
なんじゃね、何か腑に落ちない点でもあるのかね?
お父上の死亡診断書もきちんと用意してあげたにも関わらず、まだ何か気になる点があるのかね?
村民の態度が気にかかる、とな。
きみはアレじゃのう、まだ若いから、シャイな田舎の老人心というものがわかっておらぬのじゃろうな。
わしらは閉塞的なのではない、内弁慶なだけじゃよ。
まあよいまあよい、居たいと言うなら気が住むまで暮らすがよい。
じゃが、田舎は不便じゃぞ~。 ヘビも出るぞ~。 夜になったら布団にムカデが入り込むぞ~。

しかし困ったことになったのう・・・ あの若造、いつまで村に居座るものか・・・ ぬぬ!ソンマンが崖から転落しておるではないか! くぬう・・ソンマンめ・・早まりおったか・・。 
なんじゃねなんじゃね、わかっておるよ。 確実にあの若造が一枚噛んでおるに違いないわい。
おのれ・・わしの村の大事な村民を・・・。

おお、きみかね。  いや、何も言わずともよい。
ソンマンは死んだ。
きみはまだ村に居る。
と、いうことで、ここはひとつ、都会に帰ってくれんかね。
ダメか。そうじゃろうな。わかっておったよ。

いやまて、ソンギュ。 おまえの苛立ちはわしとて同じじゃわい。
じゃが、あの若造はユ氏の息子じゃて、一筋縄ではいかぬ男じゃぞ・・。 ここはひとつ、事を慎重に運ばねば・・。
って燃えておるではないか! ソンギュの家ではないか!ええい何をしておるのじゃ!早く火を消さんか!!
うぬう・・ソンギュめ・・じゃからあれほど慎重にと・・ええいええい・・無念じゃ・・。
あの若造はどこに逃げたのじゃ!なにおう!ヨンジが逃亡を手助けしたじゃと!
あの女一体なにを考えておるのじゃ! わしらがどれだけあの女やユ氏に善くしてやったと思っておるのじゃ!

まあよい。いや、きみがソンギュの家に火を放ったことも、そこからまんまと逃げたこともわかっておる。
じゃが、あえて、あえてわしはきみを責めない。
そしてあえてきみに問いたい。 
もう、頼むから帰ってくれんかね、と。
ダメじゃろうともそうじゃろうとも。そんなことは全部お見通しじゃ!年寄りなめんな!

おい、なんじゃあの怒声は。あの声はドクチョンではないか。
な・・なにを考えておるのじゃ!わしとドクチョンの20年間を、全部あの若造と若造の友達に話して聞かせるなどと!ばか!ドクチョンのばか!信じてた!わし、信じてたのに!
そうか、わしのせいか。そうじゃな。わしが悪かったんじゃよ。お前の裏切り行為は、すべてわしの不徳の致す所・・・お前にこんな非道な仕打ちをさせてしまったもの、お前のタレコミによってわしが深く傷付いてしまったのも、おまえのかあちゃんがでべそなのも、全部わしが悪いのじゃよ・・ そうでは無いと言うのなら今直ぐすべき事、あるよな?

ああ、きみかね。話しかね?全部話して欲しいのかね?
まあその前にゆっくりご飯を食べさせてくれんか。わしがまだ食べてるっしょ。
ああそうじゃよ、今となっては専らひとり飯じゃよ。なにせ、誰も一緒に食卓を囲んでくれるものなどおらんでな。
ソンマンは転落死。 ソンギュは焼死。 ドクチョンは溺死。 
わしの仲間はもう、誰もおらんよ・・・・・ き み の せ い で な 。
いやなに、怒ってはおらんよ。 きみの父上の話も、聞きたいというのなら全て聞かせてやろう。ただ、真実を受け入れる勇気がきみにあるのかどうかは別問題じゃがな。証人か?証人はおらんよ。これここに居るヨンジくらいじゃて、すべて見てきたのは。他の村民などもうとうにおらんわい・・き み の せ い で な 。
いやいやいや、怒っておるのではないと言うとろうに。父上とわしがこの村を作った30年前からの話、とくと聞かせてやろうではないか。そう、わしらの村、わしの村、わしが村長のこの村。 ただ、もう好きだった村民はおらんがのう・・・・き み の せ い で な 。  ていうか、ホントもう帰ってくれんか。 


■ 天使のような悪魔の笑顔

20年ぶりに再会した父は、亡骸だった。 そんな父が、亡くなるまでの30年を過ごした村には、重大な秘密が隠されていた。
それを息子が暴いて暴いて暴き倒す、というのが本作の大まかなストーリー。
物語の出発点となったのが、キリスト教に基づき祈りを捧げる“祈祷院”だったコトや、キーパーソンである主人公の父が熱心なキリスト教信者だったコトから、本作は
“神になろうとした男(父)と、神を利用しようとした男(村長)”
のドラマなのかなぁ・・と思っていたのですが、よく振り返ってみると、そもそも“神”自体が全く出てこない物語だったような気がしてきました。
“罪”を背負って生きる人々に、“神”の教えを説くユさん(父)。
瞬く間に人の心をとらえるユさんを快く思わない祈祷院の院長は、悪徳刑事に金を握らせ、ユさんを刑務所送りにしますが、そこでユさんを待ち構えていた札付きのワルたちまでもが、過酷なリンチに心折れないユさんの姿に衝撃を受け、改心してしまいます。
行く先々で、人の心を鷲づかみにしてしまうユさん。 自らの体についた傷を物ともしないユさんは、まさに“神”の化身のような聖なる存在なのですが、見ようによっては“バリッバリの悪魔”ともとれるのですよね。
「言葉巧みに人々の心を掌握する」なんて、いかにも悪魔の仕事そのものですし、自分を殺そうとした囚人に向けた眼差しも、完全に天使のそれというより悪魔でしたもん。 ガン睨みでしたもん。 スクリーン越しに呪い殺されるかと思ったね、オレは。
その他にも、お気に入りの少女をレイプした若者たちを半殺しにしてくれ、と刑事に依頼したり、自分を陥れた院長に審判を下そうと目論んだり、自分の思いを蔑ろにした仲間を殺そうとしたり、と、右の頬をうたれたら左の頬を差し出すどころか、全力で仕返しする方向で頑張るユさん。
全然聖人君子じゃないユさん。
むしろ執念深い小悪党っぽいユさん。

というわけで、本作は“悪党どもが小競り合いの末に自滅する”お話なのかもしれません。


■ 空白の20年間

30年にわたって、悪事を積み上げ隠し続けてきた村。 そこに現われたヘグクくん。
父の死に不審な匂いを嗅ぎ取った為、空気を一切読まず探偵ごっこに勤しむのですが、そもそも彼が何故、父親と20年間も音信不通だったのかが判らないので、ヘグクくんが必至に嗅ぎまわる姿が非常にしっくり来ないのですよね。
父の遺影に向かい、「こんな死に方で満足か?!」と吐き出すシーンがありますので、何らかの諍いがあったであろう事は想像できるのですが、たとえば「ユさんが自分の罪を償う為、妻子を捨てて殉教の旅に出た」みたいな過去があったとするならば、最低限お葬式だけ済ませてさっさと立ち去りたいのではないかと思うのですよね。
「自分たちを捨ててまで成し遂げたかった事が何なのか知りたい」という情念もあったのかもしれませんが、それにしたって、夜中にこっそり殺しに来られたり、千枚通しで脇腹をグサグサ刺されたり、火あぶりの刑に処されそうになったりしても尚挫けない、という動機づけには、この1シーンだけではちょっと弱すぎるように感じました。

ま、もしかしたら、たまたま自分が諸事情で家も職も家族も失ってしまってたから他に行く場所もやる事も無かったってだけなのかもしれませんけどね! おい!ヒマな人か!!


■ 一見デキる男風に見えてデキない男

うさんくさい村人に囲まれ、孤立無援で謎を探るヘグクくんの、唯一の心の拠り所になるのが、エリートメガネ検事のパクさん。 
ふたりの馴れ初めは、ヘグクくんに被せられた容疑を調べもせず「おまえの顔は怪しいから有罪」と言い放ったパクさんが、ちゃっかり者のヘグクくんに言質をとられていた為、左遷させられてしまったという事件。 どこがエリートやねん。
ところが、ヘグクくんの無罪を認めようとせず、「おまえだけは絶対ゆるさへんからな!」と憤るパクさんだったのに、ヘグクくんから「ここの村長怪しいからちょっと調べて」と頼まれたら「なんでオレが調べたらんとあかんねん!」と言いながらもそそくさと調査してあげるとはこれ如何に。 なんや、ただのツンデレか。 おまえらつきおうてんのか。 だったらいいのにな。 そうだったらいいのにな。(←個人的な願望)

ただ、調査は部下にやらせて、自分はもっぱらヘグクくんとのチャットに専念する、という程度なら許せるものの、村長の悪事に関わる重大な発言を申し出てきた証人を何の保護もなく村に置き去りにして見殺しにしちゃったり、自白寸前の村長をみすみすひとりきりにして見殺しにしちゃうって・・それはあかんやろ。典型的なあかんパターンやろ。 たとえヘグクくんの事しか頭になかったとしても。たとえだいすきなヘグクくんの事しか頭になかったとしても!(←個人的な妄想)

本日の教訓・仕事と恋愛は切り離して行動しよう。


■ 帳簿多すぎじゃね?

帳簿多すぎじゃね?(隠し帳簿が各戸建に数十冊ずつ。)


■ 純情な感情が空回り

お腹に一物を隠す村人たちは、なんとかヘグクくんを都会に帰そうとあの手この手をつか・・・  わないのですよね。不思議なことに。
ユさんの過去をヘグクくんに問い詰められるたび、
「ふっふっふ・・・その答えが知りたければ父親に聞くがいい・・あの世でな!」
とか
「あれだけは絶対に知られてはならんのじゃ・・!」
とか
「お父さんが被害者だったとか、果たしてあなたに言い切れるのかしら!」
とか、教えたいんだか秘密にしたいんだか煮え切らない態度をとり続ける村人。なんやその思わせぶりな態度は!小悪魔か!愛読書は小悪魔agehaなんか!

いやいやいや、きみたちは結局のトコロ、どうしたいのか、と。
主人公を無理やり帰らせちゃいたいんなら、もっとほら、都会のコネクションを利用し、就職を斡旋して呼び戻すとか、色々手はあるじゃない。 赤毛連盟みたいなアレがあるじゃない。
本気で帰そうとしている割には、いまひとつ確実な手をとらず、「オレたちはただ、村長と共に築きあげた30年間を守りたいだけなんだ・・」とばかりに空回りして自滅しまくる村人たちが、不憫でなりませんでした。

ただ、
「下宿先の雑貨屋に泊まっていることを確かめた上で、夜中にこっそりロープを持ってヘグクくんのおうちに忍び込もうとしたはよいけれど、予定を変更しておうちに泊まっていたヘグクくんと鉢合わせしてしどろもどろになる」
という空回りっぷりだけは、回転が激しすぎてなんのこっちゃわかりませんでしたけどね。
ヘグクくんがよそに泊まってる間に、証拠書類か何かを処分しに来たって言うんならわかるけど、ロープを持って何しようとしてたのか。 完全に殺す気まんまんやないか。 ヘグクくんが居ない筈の家に殺す気まんまんで忍び寄る、ってどういうコトやねん。  ここは村人の空回りというより、監督の空回りだったのかもしれません。 スリリングでいいシーンだっただけに、余計勿体無かったです。

< ※ 以下ネタバレしています。>


■ 共存という生き方

遡ること30年前。 ユさんが牢獄から釈放された頃。
ユさんが周りの人々に与える影響力に目をつけたチョン刑事は、その力を利用して、自分が思い通りに操れるコミュニティを作ることを目論み、ユさんはチョン刑事の実行力を利用して、自分の理想通りのコミュニティを作る決心をします。
いわゆるひとつの利害関係の一致です。
チョン刑事(村長)は、コントロールし易そうな犯罪者に声をかけ、減刑に協力することを餌に入村を指示。
ユさんは、その犯罪者たちに、キリストの教えを説き、更生のための手助けをする。
表面上は同じ方向を向いているものの、心の中では真逆のことを考えている2人。

チョン刑事(村長)とユさんの関係は、コインの裏と表のようなものだったのではないでしょうか。
お金と暴力を使って人の心を掌握するチョン刑事。 
優しい物腰と救済の言葉をもって人の心を掌握するユさん。
正義と悪。
独善と偽善。
やり方は違えど、それに従う人の数や目線は限りなく似ています。
村人たちはみな一様に、村長とユさんを尊敬し、かしずいている。
なんとなく、バットマンとジョーカーのような関係だなぁ、と思ってしまいました。

だから、村長はユさんを殺さなかった。 
自分が生きてゆく為には、ユさんの存在が必要だったから。
ユさんが死んだ瞬間、チョン刑事(村長)が目指した“村”が完成したのだ、という見方もあるのかもしれませんが、本当はチョン刑事は、ユさんに生き続けて欲しかったのではないか。
ユさんの死体を見つけた時の、チョン刑事(村長)の呆然とした表情を見て、そう感じました。
あれは“喜び”でも“達成感”でもなく、“虚ろ”であり“哀しみ”だったのではないか、と。


■ まとめ

ハードルを上げに上げて、これ以上ない程のヘン顔を集めて、幾人もの犠牲者を出しながらも村長たちが守りたかった秘密とは、一体なんだったのでしょうか。

「自分たちの理想郷を作る為に、祈祷院の院長と信者をみなごろしにし、その財産を元手に村を開拓。チョン刑事(村長)は仲間の元犯罪者を使い、あくどい地上げや有力者への贈賄を重ねて絶大な権力を手にし、ユさんは自分の教えが罪人たちの心を救っていると自己満足してきた。」
という、ざっくりとした村の歴史の中、彼らが隠したかったのは、①30年前の大量殺人 ②違法な土地転がし ③贈収賄 の3点だったのではないかと思います。

うん、たしかにコレは悪いですよね。 私利私欲にまみれた悪事の数々です。
でもこれ、完全に隠蔽しようと思えば出来ますよね、たぶん。
①に関しては、証人はヨンジしかいない訳ですし、②に関しては実行犯である仲間の口を封じれば(実際、彼らは互いの過去を握りあっているので口を割れない)問題ありませんし、③に関しては関係書類を燃やしてしまえば立件は不可能。

で、ユさんが死んでしまった今、問題なのは、ユさんに傾倒しきっていたヨンジただひとりな訳ですよ。
ユさんの存命中、「オレたちの言う通りにしなかったら、おまえの大好きなユさんがどうなっても知らないぞ」と脅して、押さえつけていたのですから、ユさんが亡くなったらヨンジがどんな行動に出るかくらい読めなきゃダメですよねー。  甘い! 村長はツメが甘すぎる!!
つまり、ヨンジさえ亡き者にしてけば、20年ぶりにやってきたユさんの息子がしゃしゃり出てきても、「おとうさんは自然死ですよ。おとうさんの土地や財産が村長の名義に変わっているのは、おとうさんが生前贈与してくれただけですよ」と説明するだけで、まるっと収まってた話なんですよねコレ。

それを、さも勿体つけて「いやぁ、その件にかんしてはノーコメントですなぁ」とか「細かい事は気にすんな」とか「ワカチコワカチコ」とか言ってるから、余計に勘繰られて、死ななくてもよかった人たちが死んでしまう羽目に・・・。みんなホントもうちょっと真面目にやろうぜ!

村長とユさんの歪んだ共存関係がとても魅力的だっただけに、ミステリー部分に重きを置きすぎた展開が無駄に思えてなりませんでした。
村長の告白を2日に分けるのも、ヘグクくんが自分に施されるおせっかい(怪我の手当てやカセットデッキ)の数々を追求しない展開も、全く必然性がありませんからね。
ただ単に、ラストの真犯人が明らかになるシーンを活かす為、その為だけの展開ですので。
謎解きシーンを分散させたのも、盛り上がりを欠いてしまう結果に繋がってしまったような気がします。
映画の山場をどこに持ってくるのが一番効果的なのか。
少なくとも、本作のラストショットには、『ユージュアル・サスペクツ』に感じたような全身の粟立ちは感じませんでした。
お・・おまえだったのかー!!!!  みたいなアレはね。

あ、あと、ユさんを監視する為に掘られたという地下道もね。 地下に作る必要、ないですよね。 
監視なら村全体を見渡せる村長の家からでも出来ますし、そもそも構造自体が便利なのか不便なのかいまひとつわかりませんし。(ユさん側の出口に鍵をかけられたらアウト)
なんというか、「閉ざされた村に秘密の地下道があったらおもしろくね?」みたいな発想だけで登場したんじゃないかという気が・・・。 ひねくれ過ぎでスミマセン。


というわけで、村の舞台装置や二転三転させるコトに懲りすぎたトコロが若干気になりますし、“衝撃の結末”を盛り上げる為に用意した展開が足を引っ張り、パンチ力を弱まらせてしまった感もありますが、ダークヒーローである村長が近年稀に見るかっこよさですし、脇を固めるヘン顔の村民も一度見たら忘れられない程強い印象を残してくれましたので、結論を言うと実におもしろい作品でした。

目には目を。
歯には歯を。
罪人たちは自ら招いた地獄を味わい、真の殉教者こそが正義を勝ち取るのである。 というありがたい教えを胸に刻み、これからもまっとうに生きて行こうと誓ったアガサだったのでした。


     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。