ブログパーツ

『ぼくのエリ 200歳の少女』

2010年12月28日
let_the_right_one_in-3_convert_.jpg
となりに引っ越してきたのは、吸血鬼でした。

あらすじ・・・
学校ではいじめられ、お母さんはいつも忙しそう。
やさしかったお父さんは、今は家を出て遠くで暮らしている。
心を許せない人たちに囲まれ、どうしようもない孤独にさいなまれているオスカー。
そんなある日の夜更け、アパートじゅうがひっそりと静まりかえる中、一台のタクシーに乗ってその子はやってきた。
オスカーと同じくらいの年齢のはずなのに、学校にも行かず、日中は一切表に出ず、日がとっぷりと暮れた頃足音もなく裏庭を歩いてやってくるその子は、名前をエリと言った。
真っ白な雪の上に裸足で立つエリは、薄いシャツ一枚なのに寒さを感じず、その指先は氷のように冷たかった。
胸の中に、自分と同じ、“孤独”を飼っているような気がした。

なぜか自分と距離を置こうとするエリに困惑するオスカーだったが、見えない絆がエリの警戒心を溶かし始め、2人は友情と淡い恋心を育んでゆく。
そして、事件はおこる。
平坦だった町で立て続けに発生した猟奇殺人事件。 現場に残されたのは、ポリタンクに入れられた大量の血液。
過去に類を見ない事件に、町の人たちが疑心暗鬼になる中、ついに捕まった犯人は、ことの真相を語らぬまま収容先の病院から転落して死亡。

時を同じくして、エリが大量の血を口元から滴らせながら、オスカーのもとを訪ねてくる。
いつもと変わらぬ氷のような指先と、その体温と比例するような深い哀しみをたたえた瞳を受け入れるオスカー。
幼い恋が、すべてを覆いつくしてしまうと思った。
しかし、真実を知ってしまった時、オスカーはエリを拒絶してしまう。

再び孤独の世界に戻ったかのように見えたふたりに、大きな試練が訪れようとしていた・・・。


時々でいいので にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ちょこっと押して頂けるとうれしいです

誰かの“死”なくしては生きられないエリの周りで、たくさんの血が流され、真っ白な雪の上を朱に染めて行くという物語なのですが、消えて行く命以上に、とても濃厚に、“生”が映し出されているのが印象的でした。

“生きたい”という願い。 
“生きてゆく”という決意。
幼いまま時が止まっているエリの精神年齢は、一体何歳なのでしょうか・・。
その、“生”に対する純粋な貪欲さは、幼さゆえのものなのか。 
それとも、数々の出会いや別れや修羅場を潜り抜けてきたからこその渇望なのか。

邦題のみに、「200歳の少女」というサブタイトルがつけられていますが、エリが本当に200年生き続けてきたのかどうかはわかりません。(言及されません)
ただ、決して少なくは無い年月を、誰かの犠牲と引き換えに生き繋いで来たことは間違いないのではないでしょうか。
その狭間で、エリは一体どんな絶望を見てきたのか・・・。
自ら死を選ぼうとした事もあったのかもしれない。
でも、エリは“生きてゆく”ことを選んだ。 
死にたくなるほどつらいけれど、“生きてゆく”ことを選んだ。
その力強さに、心がぐらぐら揺り動かされました。

実は、エリが血を吸ってしまったことによって、作中もう一人の吸血鬼が誕生します。
が、彼女(中年の独身女性)は、誰かの命を犠牲にする代わりに、自ら太陽に灼かれて消滅する事を選ぶ。
この対比がとても面白かったです。
やはり、エリのそれは、幼さゆえの選択なのだろうか・・。

“生きること”対して、エリほどではないけれど、かなり前向きに頑張っているのがオスカー。
理不尽ないじめに遭い、モロに傷害レベルの行為まで受けているものの、母親に内緒にして一人で抱え込もうとするオスカーは、強いんだか弱いんだか。
あのね、たぶんもう一息だと思うんですよね。 
いじめに負けてはいないからさ、心はまだ、折れていないからさ。
そんなオスカーの背中を押すエリ。
押されて勢いづくオスカー。 吸収はええ。(人の意見の)
オスカーは、“死にたい”とは思っていなかったでしょうが、積極的に“生き抜いてやろう”とも思っていなかったようにおもいます。
そんなハッキリしない、“死んでないから生きてゆく”だけの人生を、エリが救い上げた。
そして、救い上げながら、エリ自身もまた、人生に光が差すのを感じていたのではないでしょうか。 
ひたすらに孤独を抱えながら生きてゆくだけの人生に、やわらかい光が差すのを。 
支えあえる相手がいる、という希望の光を。

本作には、エリの保護者となり、食べ物(血液)の確保に奔走してくれる中年男性が登場しまして、彼は、傍から見ても「うはあ」となるくらい仕事(生き血を抜き取る)が雑だった為、あっという間に逮捕されてしまいます。
身元がわからないようにする為、自ら顔を硫酸で焼き、一切エリのことは語らず、こっそり病院を訪ねてきたエリに命(血液)を捧げる男。
究極の愛を貫いたこの男性は、オスカーの果ての姿なのか・・?

なんだか、複雑な心境になってしまいますね。 
ほんとにね、
rightone_indo_309368t.jpg
こんなにかわいいオスカーが、
おじさん2
こんなおやっさんになってしまうのか・・・ってね。 (※なりません)

ところが、原作である「モールス」を読まれたwataruさんによりますと、

ホーカンは元々教師であったが小児性愛者で、学校をクビになりやぶれかぶれになってもう死のうか、という所でエリと出会ってしまいます。


という設定だったらしいですよ奥さん。

なんだよかっ・・・ よくないか。

まあね、ペドって言われちゃうと、ちっともよくはないのですけどね、それを聞くとたしかに色々と納得できる部分はあるわけで。
生き血をポリタンクに入れちゃうとかね。 水道でザザーッとすすいだだけのポリタンクに入れちゃうとかね。 あっちこっちうす汚れたままのポリタンクに入れちゃうとかね。 おい!衛生面気をつけろよ!!(※エリさんにとってはれっきとしたごはんなのだから)
あと、街頭がこうこうと灯っている真下で生き血を抜こうとするとかね。 そりゃおまえ、見つかるだろうよ、と。 お散歩中のわんわんも来ちゃうだろうよ、と。 ていうか、公道だったのかよ。 こっそりやる気ないだろ、おまえ。 忍び失格であります!

むしろ、エリさん一人の方がささっと生き血吸っちゃってささっと逃げちゃうコトが出来るので、危なくないじゃないかと思ってしまいます。
オスカーはもうちょっと繊細な仕事が出来るようにがんばろうな!


昔から、悪い人や何かを突き詰めた人が目指すのは、「不老不死」と相場が決まっていた訳ですが、本作を観ているとあらためて、その目標の虚しさに気付かされますね。
永遠に年をとらず、生き続けるという事は、永遠に誰かと別れ続けなければならないという事。
愛する人とも、想ってくれる人とも、慕ってくれる人とも、喜びや痛みや哀しみを分かち合ってくれる人とも、必ず別れて一人ぼっちにならなければならない、という事。
もちろん、期間限定な私たちの人生にも、出会いや別れは付き物ですし、必ずしもパートナーと共に歩むとも限りません。
しかし、パートナーに限らず、感情を共に出来る誰かと出会えた時、きっと「一緒に時を経て行きたい」と願うのではないでしょうか。
同じように歳を重ねる事が出来ず、つねに置いてけぼりになるしかない“永遠の命”は、“永遠の孤独”を意味しているように思えてなりません。
なんという絶望。 
なんたる虚しさ。 
いらないなぁ。 私は絶対いらないや。

エリの最期がどんな形で訪れるのかは判りませんが、少しでも長く孤独を感じずに生きられますように。と願わずにはいられませんでした。
あ、そうか。オスカーを噛んじゃえばずっと一緒にい(不謹慎なので自重)

静かだけどハッキリとした凶暴さを秘め、「招かれないと相手の家に入れない」(“吸血鬼”におけるこの縛りを始めて知ったのは、キングの「Salem's Lot」だったなぁ)「太陽に当たれない」という言い伝えにもきっちりとした解答を用意するなど、正統派吸血鬼映画としても非常におもしろい作品でした。
血を吸わないと体臭が臭くなる、という設定も興味深かったですねぇ。
あれは、“血(食事)で生気を補っている”というコトなのでしょうか。 飲み続けていないと腐食してしまうとか?
それとも、お腹が減ることで野蛮な血が濃くなるというコトなのか? あの臭いは、獣の臭いだったのかもしれませんね。(そういえば、ガルルルって音もしていたし) うーん、実におもしろい。


ちなみに本作、アメリカでちゃっかりリメイクされているようで、「キックアス」で日本を席捲中のクロエ・グレース・モレッツちゃんがエリ(アメリカ版ではアビー)を演じているとのこと。
AllCharacters_convert_20101228102329.jpg
(※キャラクター比較表)

EliAbbyBlood_convert_20101228102656.jpg
(※新旧対決)

うーん・・・。
クロエ・グレース・モレッツちゃんはだいすきなのですけどねぇ。 
あの、北欧特有の透明感が出せているのでしょうか。 ていうか、そもそも日本で公開されるのでしょうか。
ま、こちらの方もいつか観れるといいなぁ、ということで。


何はともあれ、スクリーンの中の温度を感じることが出来る、とてもすばらしい映画だったと思います。
冬にぴったりの作品ですので、未見の方は是非。




※参考記事
モールス | ULTIMATE ECO DRIVE さま
(原作での細かい設定などが書かれていますので、映画の内容をより詳しく理解することができます。おすすめ記事ですよ)

     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。