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『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』

2010年12月02日
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あらすじ・・・
とある、

大金持ちで、頭脳明晰で、機転が利いて、気さくで、服装と髪型でイケメンになりうる17歳の男子が、
転校先の高校であっという間にみんなの心を掴んで、可愛いクラスメイトとも相思相愛になって、パーティーに次ぐパーティでさらに人気者になって、友達の信頼を得まくって、彼女のお父さんにも気に入られて、自分の天職に目覚める

という、見ようによっては超リア充物語。


よし、わかった。 責任者ちょっと表でろ。


WOWOWで録りっぱなしになっていたのをふと思い出したので観てみました。
さっきの冗談です。 責任者は表出なくていいです。 すごく面白かったです。
・・ただちょっとね、学園モノを見てると、己のそれを思い出して、そしたらしょっぱい汁が目から垂れてきちゃうよね・・・ って、それだけなのですよ・・・ はいはい、しょっぱい話はこのくらいにしておいて。

アメリカの学園生活モノ、というコトで、勝手に『ナポレオン・ダイナマイト』や『スーパーバッド』のような“モテない・サエない・パッとしない”男子が一念発起する話なのかと思い込んでいたのですが、本作の主人公・チャーリーは、体格こそひょろのっぽのギーク系なものの、社交スキルが高く、誰にでも物怖じせず明るい笑顔で話しかける、どっちかと言うと学園の人気者タイプなのですよね。
そんなチャーリー。 転校初日こそジャイアン系統の男子にボコられますが、すぐその対応策を講じ、豊富な資金源(ママのクレジットカード)と巧みな会話術(かかりつけ精神科医とのやり取りで身に着けた)と潤沢なお宝(精神科医からちょろまかしたクスリの数々)を武器に、あっという間に校内一の人気者へと上り詰めます。
“人気者になりたい”という渇望だけを原動力に。

学園生活に於いて若者達に突きつけられるのは、“生きるか死ぬか”ではない。“人気者か人気者でないか”の2択なのだ。 というチャーリーの強迫観念にも似た願いは、大人になった私から見ると
「いや、人気なんてなくてもなんとかなるから」
とか
「友達100人出来るかな、ってアレ、ウソだかんね。そもそも1学年1クラスしかない学校なんて同級生かき集めても30人強だし」
みたいに水を差したくなってしまう様なモノなのですが、実際自分の学生時代はどうだったのかというと、やはり結構重要だったような気もしまして。
「人気者になりたい」とまではいかないものの(それが高望みだという身の丈くらいは知っていた)、お昼にお弁当を一緒に食べる友達、体育の授業で組みになる友達、文化祭の時一緒にドーナッツを売る係になってくれる友達・・・。それらを果たして、こんな自分に見つける事など出来るのだろうか? 何気なく話しかけるコトが出来るのだろうか? という点は、結構大きな課題だったわけで。
その他にも、親のコトや恋愛のコトなどなど、大人から見れば一笑に付されてしまう様な悩みに悶々とし、どこに活路を見出せば良いのか判らず震える15の夜や、夢見がちなオレがセンチなため息をつく17歳の地図を手探りで進むしかない学生時代。 あ、現役ハイティーンのみんな!昭和のネタだけどドンドンついて来てね!

“対人に関する不安” というのは、要するに “自分は誰かに必要とされているのだろうか” という不安でもあるわけで。
チャーリーに関して言うと、脱税で絶賛ムショ暮らし中の父親に代わって鬱病の母親の世話をしなければならない、という“責任”を受け入れているものの、その反面、子どもなのに完全に子どもでいられない、という寂しさに、常に苛まれているのではないか、と。  
“誰かに認められる”という満足感で、なんとかその穴を埋めようとしているのではないか、と思うのですよ。
もちろん、母親には自分の存在は欠かせない。 だけど、“保護者”としての自分ではなく、たった17歳ぽっちの学生としての自分は、誰かに必要とされるのだろうか。 そんな不安に押し潰されない為にも、チャーリーはひたすら“人気者”になるコトを願う。

周りのみんなが、自分達よりも抜けて大人びている(保護者としての役割を担っているからしょうがない)チャーリーを頼りにし、閉塞した学校生活を打ち破る救世主のごとく熱狂する様を見ながら、どこか寂しげな表情を浮かべるチャーリーは、結局、願うモノは手に入れたものの、その先にあった不安を解消する事は出来なかったのですよね。
だって、子どもとして認められていた訳ではないから。
子どもであるチャーリーを受け入れて貰えた訳ではないから。

いや、やっている事はどうしようもなく子どもじみているのですけどね。
精神科医を騙して手に入れたクスリを、見よう見まねで学生にばら撒く(売りつける)とか・・・ マジ死人が出るですよ!!
転校する前の私立学校を退学させられるきっかけになったのも偽造免許書の作成でしたし、なんかもう、相手が望むモノを手段を問わず提供して支持を得る、という無責任極まりないやり方が、とってもガキです。 今さえよければそれでいいじゃんいいじゃんスゲーじゃん。

で、そんなチャーリーの不安を救うコトになるのが、これまた“不安でいっぱいな大人”なトコロが実に素晴らしいのですよ。
大人その1。 歴史の教師として生徒の信頼を得ていたものの、ある日校長に抜擢され、ストレスから酒びたりの日々。 おまけに妻にも逃げられ、自棄になって銃を振り回すというドン底生活を経て、なんとかカウンセリングと投薬で通常生活に復帰した校長先生。 実は、チャーリーにとって初めてのガールフレンドとなったスーザンの父でもあり、娘をとられた腹いせに、にっくきチャーリーを呼び出して恫喝するという大人気ない攻撃を仕掛ける。 
大人その2。 何不自由なく暮らしてきたある日、頼りきっていた夫が脱税で収監され自立を余儀なくされた母。 ショックから鬱病になり、カウンセリングと投薬でなんとか通常の生活を送っている。 おおらかで優しくて世間知らず。
この2人が、チャーリーの子どもとしての未熟さや早計さや純粋さを認めるコトで、自分の中の不安と少しばかり折り合いをつけ、同時にチャーリー自身の心も包み込んでしまう、という裏技を披露。

不安というものを、完全に拭い去るコトは不可能だと思います。 人生は、不安との闘いの連続だと思うから。 時に勝ったり、時に挫けたりしながら、成長してゆくものなんじゃないかと思うから。
ただ、その闘いの途中に、ぽふ、と背中を押してもらえると、何倍、何十倍もの兵力になって自分を支えてくれるコトがあるんですよね。
年上でなくてもいい。 えらい人でなくてもいい。 カウンセラーでなくてもいい。 
同じ不安を抱えるもの同士が、ただ相手を認めてあげるだけで、人生って随分と楽になったりするものなんじゃないでしょうか。

最後にスーザンが父に向けて歌う曲の「なろうと思えば何にだってなれる。しようと思えば何だって出来る。」という歌詞がダメ押しのカウンターパンチとなって、明日への活力になること間違いなしのステキな作品でした。

リア充になれるもなれないも自分次第。
ただ、なろうと思って一歩踏み出せば、誰にだってなることが出来るんだ、というコトだけ知っておけばいい。
あきらめたら、そこで試合終了ですよ!


―おまけ―

・ 時々おっさんみたいな7:3ヘアーになるチャーリーも心をくすぐるのですが、私はもう圧倒的に校長先生役のロバート・ダウニー・Jrに共感しまくりでして。
中間管理職ならではの苦悩から酒びたり、娘を思う親心から酒びたり、理不尽な人生の仕打ちに冷静になり切れず酒びたり、などなど、実生活での経験をフルに活かした精神不安定演技が最高でした。
大人もさぁ、たいへんなんだよな! わかる!わかるよ!!


・ 本作でチャーリーが売りまくるリタリンという薬は、日本でもナルコレプシー(睡眠障害)や18歳未満の注意欠陥多動性障害(ADHD)患者に使われている(最近は小児用の薬はコンサータやストラテラという薬のほうが主流なのかも)中枢神経刺激薬で、チャーリーも精神科医にADHDであると診断(誤診でしたが)され、この薬を処方されていました。
ADHDは、脳内“シナプス”の間にあるドーパミンなどの神経伝達物質の濃度が低く、伝達の効率が悪いことが原因なのではないかと考えられており、中枢神経刺激薬を服用することでドーパミンの濃度を高めてやろうというのが、この薬の目的な訳ですが、ドーパミンが出るというコトは興奮する、というコトでもあるのですよね。

劇中、チャーリーがハイになれる合法ドラッグとして売りまくった結果、ラリった高校生が裸で躍りまくるパーティシーンがありまして、かなりヤバいなぁ・・という印象を受けました。 実際問題、リタリンは依存性を指摘されたコトもあるようですし。(今は専門医の登録制での販売となっているようです)

・・・・「ナルコレプシーや注意欠陥多動性障害の治療を目的にした中枢神経刺激薬」・・・

・・・「興奮作用がきわめて強い」・・

・・「依存性」・・かぁ・・・どっかで聞いたような・・・


・・・・!!

みんな逃げてー! クールジュピターよー!!
(※「ダブル」に登場する新型ドラッグ)



と言う訳で、この映画を見た後は是非、リタリンそっくりな新型ドラッグが登場する深町秋生先生の傑作小説「ダブル」を合わせ読んで頂ければ、ドラッグの恐ろしさを痛感すると同時に、“容量・用法をまもって正しくお使いいただくこと”の重要性を再認識して頂く事が出来るのではないでしょうか。
チャーリー・・・ おまえ鬼やな!!


チャーリー・バートレットからヤクを仕入れてハイになっていたみんなが、その後元気に暮らした事を強く願いつつ、今回の感想は終了させて頂きたいと思います。


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