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『エミリー・ローズ』

2006年07月22日
仏教と神道がメインの日本において、一般的には受け入れられない運命にあるジャンル。


いわゆる宗教モノというやつ。


“神棚や仏壇に手を合わせてチーン”に慣れ親しんでいる日本人に、キリストがどうとか悪魔がどうとか、はたまた信仰がどうとか言われても、ピンと来ないのも無理は無いのかもしれません。


でも、呼び名はともあれ、目に見えない大きな力や邪悪な存在を全く感じた事が無い人って、居ないんじゃないでしょうか。
と、私は思います。


貧しくも、清く正しく勤勉家の少女、エミリー・ローズ、19才。
ごく普通の大学生活を送っていた彼女は、ある日突然不可解な現象に襲われます。
それは、体の硬直や目に映る恐ろしい影。
自分の中に、何か邪悪な物が入り込んでいると判断した彼女は、西洋医学ではなく、教会と神父に助けを求めます。
しかし、悪魔祓いの甲斐も無くエミリーは死亡。
検察が神父を過失致死で訴え、神父は法廷で裁かれる事となります。
頑なに「真相は法廷で自分の口から話す」と主張する神父。
そして、彼の弁護を担当する事になった女弁護士エリンもまた、徐々に不可解な現象に襲われる事になります。
果たしてエミリーは病気だったのか?
それとも本当に悪魔に取り憑かれていたのでしょうか?



実在の事件に基づいて。
という一文が、映画の冒頭に写し出されますが、そこは映画。
エンターテイメントな訳で、全てを鵜呑みにしない事が肝心です。


映画のラストにも、「エミリー・ローズのお墓は、今も沢山の人が訪れる」というあとがきが出てきますが、元になった事件はドイツ人のアンネリーゼさんと言う人らしいので、


そもそもエミリー・ローズじゃないじゃんって話です。


そんな訳なので、当然女弁護士にまつわる怪奇現象秘密を保持する神父悪魔の恐怖に負けて命を落とす証言者なんかも脚色なのでしょう。


しかしながら、そんなドラマティックな付け足しを差し引いても、この映画で描かれている事件はとても考えさせられるモノですし、悪魔についてのプチ情報も大変興味深いです。


エミリー・ローズが襲われた現象は、作中では病気とも悪魔とも、どちらともとれる様な描かれ方になっています。
焦点は、神父の行動が罪になるかどうか。その一点です。


つまり悪魔憑きの映画のようですが、かなりの割合で法廷モノなのです。


ホラーばっかり観ている訳じゃないですよ!(←各方面に対する言い訳)


自分が悪魔に取り憑かれたと信じる少女。
医学の力に救いを見出せず、神の力に助けを求めた彼女の行動を非難する事なんて不可能でしょう。
人なんて弱いものです。
自分の手に負えなくなった時は、残るは神頼みしか無いのです。
当たり前のようなこの理論も、法廷においてはオカルトちっくな代物としか扱われず、女弁護士は苦戦を強いられます。
今作は“エミリーが取り憑かれていた”寄りに作られているので、攻め立てる検事に対して、
「何てわからず屋なのさ!」
「法廷に悪魔が降臨して全員に見せ付けてやればいいのに!」

はたまた
「お前も蝋人形にしてやろうか!」
なんてヤキモキさせられます。
しかし、インチキ教祖の言葉を鵜呑みにして病気の子供を放置して死に至らせたなんて例が実際に起きている今日に於いては、ただのフィクションとして片付けてしまうのが怖いのも事実です。


責任放棄か尊厳死か。
それを判断出来るのは、本人しかいないのですが、その本人が死んでしまったら一体誰が判断すればいいのでしょうか。


アメリカの法廷モノを観ていると、恐ろしいほど弁護士の力量が全てだと言う事を感じるのですが、今作でも女弁護士が明らかにクロの容疑者を無罪にしたり、その容疑者が釈放後すぐ再犯に及んだりするくだりがあったり、最終弁論では巧みな言葉遣い(同じ単語の繰り返し等)でまんまと陪審員の心を鷲掴みにしたりしていました。


数年後に日本でも裁判員制度が始まりますし、決して対岸の火事では無い話ですね。


そんな法の話の合間に、上手いこと差し込んであるオカルトの部分。
これがまた下品にならす、上手に恐怖を煽っていました。
『エクソシスト』以来、数多の“悪魔憑き”モノが作られましたが、やっと失笑無しで鑑賞出来る優れたオカルトが登場してくれて、とても嬉しいです。
オカルトと裁判シーンのバランスが、とてもいい塩梅で観ていて飽きさせません。


やっぱりホラーじゃなくて法廷モノは面白いなぁ(←ダメ押し)

それにしても、神様ってつくづく“自己犠牲”がお好きなんですね。
苦しい時の神頼み。って、頼んでも助けてくれないのが神様なんだと言う事を、これだけ描き続ける映画界って・・・。

現実は厳しいという事ですかね。
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