『インセプション』
2010年07月25日

“レオナルド・ディカプリオと残念な嫁” シリーズ最新作!
※大オチバレはしていませんが、ストーリーの3分の2くらいまでは書いてしまっておりますので、くれぐれも自己責任でお願い致します。 アガサとしては、予備知識無しので鑑賞を強くお薦めいたします。
あらすじ・・・
オレの名前は コブ。
国際指名手配中の腕利き産業スパイだ。
ただ、オレが侵入するのは、厳重にガードされたコンピュータールームじゃない。ターゲットの頭の中なんだ。
どうやって頭の中に侵入するのか、って?
キーワードはズバリ、“夢”さ!
・・・ ・・夢・・ ・・夢かぁ・・ 昔はよく、ワイフと同じ夢を見てたなぁ・・ワイフのモルはそりゃもうナイスバディで・・
・・うおっと! 失敬失敬、ワイフの話はどうでもいいよね。 えーとね、だから、夢を利用してターゲットの潜在意識に忍び込むんだよ。詳しくは企業秘密だから言えないけど、つまりはそういうコト。そうそう、そういうコト。
さて、今回オレが受けたミッションはいつもとはちょっと趣向が違う。
頭の中のアイデアを盗むのではなく、頭の中に別なアイデアを植えつけて欲しい、というのだ。
これはかなり危険なミッションになりそうだ。
何故なら、ただ盗むのではなく、完全に自然な形でアイデア(思考)を植えつける為には、いつも以上に深く潜在意識に入り込む必要があるからさ。
オレは、信頼できる昔馴染みの仕事仲間に声をかけた。
新たに仲間に加わって貰った女子大生も、なかなかの切れ者で一安心だ。
最高のメンバーを集めたとして、このミッションが成功する確率はきわめて低いだろう。
だが、オレはなんとしてもやり遂げなければならない。
なぜなら無事に成功させた暁には、離れ離れだった子供たちに会いに行く事が出来るから・・・。
・・・そうなんだよ・・子供には当分会ってないんだよね・・ 子供・・会いたいなぁ・・子供たちに・・ もう背とかおっきくなったかなぁ・・ 最後に見た時は後姿だったから、あのかわいらしい笑顔が恋しくてたまらないよ・・・ たまらない・・ たまらないと言えばモルだよね・・ モル・・ナイスバディ・・ オレのせいであんな事に・・ モル・・子供・・モル・・・ ナイスバディ・・
・・・んああっ! な、なんでもないよ! 今の独り言だし! ミッションには何も関係ないよ! オレその辺は超クールだもん! なんていうの?公私混同? ノーノー!ミーはいつだってノープロブレムよ!
仕事のメンバーは揃い、ターゲットの情報も徐々に集まり始めた。
慎重には慎重を期すため、オレたちは幾度となく睡眠薬や夢の構図の確認を行いに夢の中に・・
・・・ 夢だよね・・ はい、また夢だよ・・ 夢と言えばモルだよね・・ だって美人だもん・・・ それに、オレの罪悪感ね・・これはマジ重いからさ・・夢・・モル・・ ごめんね・・モル・・ナイスバディ・・
・・・そおい!!だから違うって! 全然そういうんじゃないの! さっきのは個人的な睡眠だからさぁ!ミッションの為に見た夢とは別モノだからさぁ!
うん、いや、まぁ確かに、さっきのテスト睡眠では、モルが女子大生を殺しちゃうっていうアクシデントもあった。それは認める。
だけど、まぁ、夢ってなんでもアリっちゃあアリな世界じゃん? 少々刺されようが撃たれようが、目が覚めたら元通りだし、まぁ夢見が悪いって感覚も人によっちゃあるのかもしれないけど、無い人もいるっちゃあいる訳で・・ あ、ほらほら、そうこう言ってる間に、実行の日が近づいて来たよ! 行こう!本番行こう!
ターゲットがロス行きの飛行機に乗り込んだ。
実は、この航空会社自体オレたちの依頼主である日本の大企業によって買収済みなので、周りの目を気にする必要は一切無し。
5人の仲間たちと共にターゲットに近づき、いよいよミッション開始だ。
あくまで自然なタイミングで、睡眠薬を投入するオレ。
夢の舞台は女子大生が設計したひとつの都市(まち)。
順調に滑り出したオレたちの計画には、街中を走る列車も不可欠・・
・・ん? 列車?! レールも無いのに列車?! 普通街中に列車なんか走ってないよね! それに、列車って言ったらあなた、モルじゃないですか! 夢と言えばモル、モルと言えば夢! おれのワイフはナイスバディ!
・・じゃないんだよ! ナイスバディじゃないんだよ!列車の事もひとまず置いとこうよ!
それよりも、完璧に設計したはずの世界に、武装した傭兵たちが現われた事の方が一大事だよ!
どうやら、ターゲットは予め、こういう事態に備えて“夢泥棒”に対する防衛訓練を受けていたらしい。
この傭兵たちは、ターゲットの潜在意識が生み出した最強のディフェンス機能って訳だ。
雨霰と降り注ぐ銃弾をよけつつ、オレたちは計画を第2階層へと移す事にした。
潜在意識にさらに深く入り込むんだ。
さっき撃たれた仲間の事が気がかりだが、もうこうなったら続行するしかない。
第2階層では、バーに魅力的な女性を配置して、ターゲットに揺さぶりをかけて・・・
・・女性・・か・・ うちの子供も、ひとりは女の子なんだよね・・ ああ・・会いたいなぁ・・ それにやっぱモルの事も忘れられないよね・・ モルがあんな最期を迎えてしまったのは、ひとえにオレの責任だからさ・・ ああ・・モル・・ 愛しいモル・・ ナイス・・バディ・・
・・ごめん!いまボケーっとしてた! なんだっけ?何の話だっけ? ああ、そうそう! 第2階層ね! ええと、揺さぶり作戦、その名は“プロジェクト・ミスター・チャールズ”!
・・オレのワイフはミセス・ナイスバディだけどね・・・
いやぁー! 今日日の女子大生は目が冷たいよね! おおよそ優しさってモノが感じられない目つきだよね!
だいたいこないだもさぁ、オレの夢の中に勝手に侵入してきて、ワイフとの思い出をひっちゃかめっちゃかにしてくれたり、若さという無軌道なパワーの片鱗を感じたよオレは!
もうちょっとなんつーの、イブの半分でいいから優しさが欲しいよね。 って事は、半分の半分だから4分の1か! ほとんど無いに等しいでごわす!
まぁとにかくこっからは本気だよ。 オレ全力で追い込みかけるから。 雑念スイッチ・オフ!
第2階層での揺さぶり作戦も順調に進み、ターゲットは徐々に“植え付け”への下準備を受け入れつつあった。
オレたちはそのまま第3階層へと舞台を移す事に。
・・“植え付け”かぁ・・それにしても、ホントなんでオレ、あの時あんな事しちゃったんだろうな・・・ ああ・・モル・・ごめんモル・・ずっと一緒にいたかったのに・・ ・モル・・ ナイス・アンド・ザ・バディ・・・
ああ詰れよ! 時々心がお留守になってるオレを詰りたいだけ詰ればいいさ! そしてちょっぴり抱きしめてトゥナイト!
第1、第2階層での都会的な景色から一変、一面の銀世界へと放り込まれたオレたち。
第1階層で撃たれてしまった仲間の容態はかなり悪くなり始め、もはや一刻の猶予も許されない。
なんとか傭兵たちを抹殺し、この第3階層で無事ターゲットを父親と対面させ、彼の潜在意識に“アイデア(思考)を植えつける”事を成功させなければ・・・。
ようし、いいぞ・・ 後もう少しで、ターゲットが父親のいる金庫の前に・・ ・・ん?アレ?・・って、モ、モル? ターゲットの後ろに立ってるのって、もしかしてモル? って、またお前かよ!! ・・あぁぁぁゴメン!お前なんて言ってゴメンよぉぉ!モル!モル!モルぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! やっぱり可愛いよモルたん! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!モルモルモルぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん・・ んはぁっ!モルたんのブラウンヘアーをクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!モルモル髪髪モフモフ!カリカリモルモルモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
もう・・ 帰ってもらえませんか・・。
コブの想いよモルたんへ届け!!

心に一度芽生えた想いは、「消そう」と思っても消えるものではありません。
もう忘れよう、もう考えるのはよそう、いくらそう自分に言い聞かせても、なんどもなんども頭の中に浮かび上がっては無防備な心を傷つけたりぬか喜びさせたりしながら、ジワジワと脳全体に根を広げて行くばかり。
それは悪魔が植えつけた自虐の芽のように。
天使が植えつけた、希望の芽のように。
では、そんな目に見えない芽を、どうしたら摘み取ることが出来るのか。
多くの人が、きっと考えた事があると思うこの難問に対する、とてもシンプルな答えを見せてくれたのが、本作、『インセプション』。
つまり、見えないならば、見えるところまで潜ればいい。というお話であります。
人の頭のなか、夢のなか、心の奥の奥のほう、という、とても漠然としたつかみ所の無いトコロを、あくまで現実世界や実際に存在しうる人々を使って現していたのが、とても面白かったです。(※)
防衛機能がそのまま武装集団になってたり、不安定な心理状態が荒廃して崩れ落ちそうなビル群だったり・・。
予告で無重力のシーンを観ていたので、「夢の中だからなんでもありな映像になってるのかなぁ」と勝手に思っていたのですが、そこもきちんと納得できるだけの説明がなされていて、さすがはノーラン監督だなぁ。と唸らされました。
本編開始早々、スピーディに展開されるケレン味溢れるやりとりが、実は夢の中の出来事だった、と明かされるも束の間、さらに現実世界の様に見えていた場所もまた夢の中だったという、パンチの効いたエピソードを挨拶代わりに、物語は観客にダレる隙を与えず、一気に転がって行きます。
巻き込んで行くのは、ディカプリオ演じる産業スパイ・コブが抱えるトラウマと、ターゲットにされた大企業の2代目が父親に抱くコンプレックス。
愛する者を守れなかった苦しみと、愛する者に受け入れられなかった哀しみが、派手なアクションや大掛かりな映像美の中で、地味に浄化され、癒されて行く。
とっても不思議な娯楽作です。
いや、娯楽作って言うと語弊があるのかなぁ。
でも、目に映るものは、眩暈がするほどスペクタクルで、手汗がジットリしてしまうほどスリリングで、胸が苦しくなるほど残酷な人生絵巻だったのですよね。 なので、私は娯楽作だと思いました。
もしかしたら、観る人によっては余り楽しくないかもしれませんね。(ただのアクション大作を期待している人や、レオ&ケンが夢の競演!みたいな煽りに乗っかって観にきちゃった人など)
が、きちんと観ていれば、ストーリー自体はさほど難しい内容でもありませんので、是非この夢現な2時間半弱を大スクリーンの前で体験して頂ければと思います。
そして、憎憎しいほどの余韻を残すラストにああでもない、こうでもない、と身を捩りながら、続きは各自ベッドの中で。
もちろん、実際には夢泥棒なんていません。
催眠療法なんてのもあるらしいけれど、頭の中に植えつけられた、日々の小さなトゲトゲを抜いてくれるような治療方法ではないのだろうと思います。
やっかいな、頭の中の見えない芽。
現実では、自分自身で折り合いをつけるしかないのが、とてももどかしい。
私の潜在意識にも、誰か忍び込んでくれればいいのになぁ。とちょっと本気で願ってしまいました。
その際は、くれぐれもディカプリオじゃなくて、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットかトム・ハーディに潜り込んで貰いたいものですよね!
-以下完全ネタバレ-
・ こんなクソみたいな現実が現実な訳がない! って嘆き悲観する人、去年の年末にも沢山居たんじゃないですか?ほら、あの青い映画で。
・ 結局、ケン・ワタナベがシワシワになりながらじっとりと暮らしていたのって、第何階層だったんだろう。 虚無だったのかなぁ。 だったとしたら、戻ってくるのが簡単すぎるんじゃないのかなぁ。
・ 無重力シーンがワイヤーアクションだったと知って、オレは戦慄した!(飛行機の中で何回もに分けて撮ったのかなぁ・・とか色々考えて観てた! すげえ!これぞプロのお仕事だ!)
・ 後ろ向きに落ちて行く無重力状態の車の中で、終始口の端が上がっていたジョゼフ・ゴードン=レヴィットにグっときた。 なにこれかわいすぎる。
・ 潜在意識を絶妙に操作して、一人の青年の心の傷を癒してみせたイームス(トム・ハーディ)は、偽装師なんか止めて心療カウンセラーになればいいと思うよ。 きっと口コミで大人気になると思うよ。
・ ケン・ワタナベは日本で一番スーツが似合う男。 (絶対スーツ会社から広告の依頼が来ると思う)
・ でも青山とかはるやまはやめて欲しい。なんとなく。
・ 師匠(エレン・ペイジ)とジョゼフ・ゴードン=レヴィットが一緒にフレームに収まっているシーンは、どう見ても恋愛映画の1シーン。
・ モル(マリオン・コティヤール)とコブ(ディカプリオ)が一緒にフレームに収まっているシーンは、どう見ても恐怖映画の1シーン。
・ ていうか、モル怖すぎ。(特にエレベーターの扉に攻め寄ってくるシーン)
・ ディカプリオの、解釈が分かれそうなラストシーンはさておき、その前のミッション完了シーンを現実として受け止めた観客は、大いに胸を撫で下ろした事でしょう。 でも、よく考えたらキリアン・マーフィの会社が一人負け状態じゃね? ケン・ワタナベの会社の一人勝ち状態なんじゃね? マインドコントロール、ヨクナイ!!
・ キリアン・マーフィには、是非お父さんの会社を超えるような大企業を作り上げて、ケンの会社をぶっ潰して頂きたいものですね!
・ それにしても、ディカプリオは「レボリューショナリー・ロード」くらいから、どうも結婚相手に恵まれない状態が続いているような気がするなぁ。 どいつもこいつも幼い我が子をおざなりにして現実逃避という残念な嫁っぷり・・・。 ええい!お前らまとめて実家へ帰れ!
(※) 現実と区別がつかないように設計された夢なんだから当然なのか・・。

