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『アウトレイジ』

2010年06月16日
アウトレイジ
戦国ヤクザ絵巻。

私が生まれ育った町には、ヤクザがいた。

いや、まぁそりゃどこの町にもヤクザはいるだろうけど、ともかく私の実家の近所にはヤクザがいた。
その事に気付いたのは、まだ少し後になるのだが。
ともかく、ヤクザがいる、という事は、ヤクザ候補生も沢山いる、ということだったのか、ガラが悪いと評判だった私の母校には、ビーバップハイスクールの登場人物をコピペした様なご面相の子供がうじゃうじゃ居た。
気に入らない事があると、机を足で蹴り倒したり、壁を殴りつけたり、三白眼で睨みつけたり、巻き舌で怒鳴りあげてくる彼らが、私は大嫌いだった。
シャレっ気を出して、ちょっと制服の第一ボタンを外しただけで、「おめぇ生意気なんじゃ」と言いがかりをつけてくる、彼らのガールフレンドも大嫌いだった。

暴力で、他人を支配しようとする彼らが、とにかく怖くて、大嫌いだった。

でも、ある時彼らが身を寄せ合って「〇〇(仲間の一人)が〇〇組の〇〇さんに言われたみたいでの・・」とヒソヒソ話しているのを見た時、目から鱗が落ちるように、彼らがまとっている皮の正体に気がついたのだ。
怖いのは彼らなんかじゃなかったんだ!
そのもっと上にいる、ヤクザだったんだ!

当時、自分が身をおいていた教室。 その教室を仕切るスケバン。(言い方が古いのは昭和だから)
教室の集合体である中学校。 その中学校を仕切る彼ら。
世界はそこで終わりだと思っていた。 だからものすごく怖かった。 でも、世界はもっともっと広がっていた。 
彼らを仕切る、町内のチンピラ。
チンピラを仕切る、地域のチンピラヤクザ。
チンピラヤクザを仕切る、中規模ヤクザ。
中規模の上には大規模が。 大規模の上には総括が。

彼らがいい気になってまとっていた皮の、なんとちっぽけで、なんと儚いものか。

という事で、それ以来私は彼らの事が怖くなくなった。
もちろん、その上にいるヤクザは怖い。 でも、彼らは怖くない。 いきがっているだけの、ただのバカな中学生だ。
お前らバックがついてないとなんも出来ないくせに。 だいたいそのズボンなんだよ、だっせーな。 なんでそんなにタックが入ってんだよ。 飛ぶのかよ。 ムササビの術の時に使うのかよ。ニンニンって言ってみろよおい。
と、心の中で蔑んでは、くすりと笑った。 

中学校を卒業して、高校に通い始めたある日、近所のヤクザの家の前で、一心不乱に黒塗りの車を磨いている彼らを見た。
“怖くなれよ”、と心の中でエールを送りつつ、自転車のペダルを思い切り踏んだ。



と、いうような記憶が、劇場の明かりがついた瞬間ザザーっと蘇ってきた 『アウトレイジ』 。
チンピラがチンピラヤクザにシメられ、チンピラヤクザが中規模ヤクザにシメられ、中規模が大規模に、大規模がさらにトップクラスに、と、どこまでもシメられ続け、誰も欲しがってないのに指が飛ばされ、テニスのラリーのようにお金が行き交う、とても滑稽なお話でした。

北野作品は、『その男、凶暴につき』と『あの夏、いちばん静かな海』と『菊次郎の夏』くらいしか観ていませんので、過去の作品と比較する事が出来ないのですが、勝手に抱いていた “難解” “3度の飯よりヤクザ” という印象とは程遠く、とても判りやすくて面白い映画だったと思います。
暴力がどこまでも馬鹿馬鹿しく描かれていたのもよかったですね。
落とし前をつけに来た小規模ヤクザが、相手の事務所で指を詰めるの詰めないと揉めるシーンでの、
「そんなに詰めろ言うんやったら詰めたるさかいに、道具もって来いや!」
「はいどうぞ」
「そうそう、このカッターでサックリとね・・って詰めれるかー!(ノ゚Д゚)ノ:・'∵:.┻┻
 みたいなノリツッコミが秀逸でした。 さすがは世界のキタノだよ!

そして、どこまでもキッチリと区切られた縦割り社会。
ここで描かれる様々な苦労は、ヤクザだけのものではなく、他の組織も全く同じなんですよね。
ただ、黒ベンツやチャカや指詰めが出てこないだけで、学校も政治も会社もPTAも一緒。 下っ端が居て、中堅どころが搾取して、トップは彼らを弄んだり振り回したり。
もっと遡れば、戦国時代から全然変わっていない。
本作で、ヤクザ組織を牛耳る会長が殿様のように描かれていたのを観て、「あー、マジ昔から変わんねえよなー」と、まるで安土桃山時代を見てきたかのように思ってしまいました。
新品のジャージを着て会長の身の回りをお世話する若くてイケメンのチンピラなんて、完全に小姓ですものね。しかも見目麗しいときたもんだ。 衆道砲発射!

本作のキャッチコピーも“下克上”となっており、クライマックスではまさに本能寺の変の様な小気味いい反乱が起こるのですが、願わくばかの人が明智光秀のような三日天下に終わらず、暫くの間頂点を堪能出来るといいなぁ・・と思いました。
ま、腹心が優秀だから、結構な期間は安泰かな。
そして、また、歴史は動く。
組織の形は変わらず、歴史は動き続ける。 無様に動き続ける。


中学時代の記憶に再び思いを馳せ、あの後彼らがどんな道を歩んでいったのだろう、と考えた。
その時近所にあったヤクザの家は、今ではお弁当屋さんになっている。
世知辛い世の中、堅気ではない組織の中で、夢中で頑張るキミへ、エールを。

ま、もう何がしかの施設に入ってるのかもしれないけどな。




以下、面白かったところ。 (※ネタバレ含む)

・ 井口作品でお馴染みの島津健太郎さんが、知的メガネヤクザで出ていたよ! 超スマートなヤクザだったよ!
machine_girl__convert_.jpg shimazu00.jpg
(↑「片腕マシンガール」                ↑「アウトレイジ」ではこんな感じ)
(てな感じの事をtwitterに書いていたら、なんとご本人からリプライを頂きました! 島津さん出演シーンで印象に残っていた、“人殺しの後ものすごく普通に靴を履くシーン”の事もお聞きしてみたら、演出ではなく島津さんのアドリブだったとの事。 すげえ! 久しぶりに言っとこ。 けんたろうけっこんしてくれ!)

・ 主役級の人はともかく、脇のヤクザさんも良キャラ揃いだったよ!
・ 三浦友和の初登場シーンが、とにかく黒くてビックリした。 顔も黒いけど、腹の中も真っ黒だ! 黒さが筒抜けだよ! 百恵!エマージェンシーですよ百恵! 
・ チョロ中野英雄の巻き舌がすごかったよ! 本日の巻き舌大賞だよ!
・ 親父ぃ!ラーメンに指入ってるじゃねえかコノヤロウ! (それにしても、あの中華料理屋の店主さんがホントは関係してなかったら、桔平どうするつもりだったんだろう。 売人が勝手に取引場所に使ってただけで、そんな事が行われていたなんて知らなかったら?  と、ハラハラしました。)
・ 小姓はみんな、お揃いのジャージなのな!
・ どこで買ってるんだろう。>ジャージ
・ 「車は黒」って、決まりでもあるのだろうか。
・ ヤクザになった時点で、マニュアル本買わされてるんだったりして。
・ 石橋蓮司が本当にすばらしい。 親分なのに弱い!画期的な弱さ!
・ 売春マンションで、さりげなく一番可愛い子(えいひたん)の肩に手を回す桔平。 加瀬きゅんは女性に手を触れず。
・ えいひたん!かわいいよえいひたん!!
・ えいひたんとちゃっかりイイ仲になってる桔平。 加瀬きゅんは女性の影なし。
・ 生きる術に長けているコヒさんと加瀬きゅんは、この先も絶対生き残るだろうな。 あ、ちなみに加瀬きゅんはまだ女性の影なし。
・ 会長から「加瀬きゅんの面倒みてやれよ」と声を掛けられる友和。 少し恥じらい気味についてゆく加瀬きゅん。
・ なんだかんだあって、天下をとる友和。
・ 隣で微笑む加瀬きゅん。

・ ・ ・

・ ・


お い お い お い !! タ ケ シ !!! 

思わず劇場で、身を乗り出してしまいましたよ。
まさか北野作品でこんな展開があろうとは!
ていうか、え、え、何? 他の作品でもこういう事ってあったの? 初めてじゃないの? 優しくしてくれるの?(←錯乱気味)

新品のジャージに身を包んだトモトモ(もうこう呼ぶしか無い)と、それを優しく見つめる加瀬きゅん。
あー、あの伏線はここに行き着いたのか、と。
たぶん、一目会った瞬間に、トモトモの気持ちは決まっていたんだと思いますよ。
やっぱね、人生にパートナーは必要だよね。 特にこんな殺伐とした世界ではね。
二人の将来に、幸あれ!! (なんだこの締め)

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