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『シャッター アイランド』

2010年04月11日
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「ゾンビになんてなりたくねえよ!」 (戸田奈津子氏による超字幕より)


なんだか自暴自棄になっているかのように、「“謎解きミステリー”の新境地!」だの「このクライマックスは誰にも言わないで下さい」だのと、自らのハードルを上げまくっている 『シャッター アイランド』 。
そんな風にしゃかりき頑張っている姿を見ていると、無性に胸キュンがハードなノンストップ状態になってしまうアガサなのですが、まぁこちとら「言うな」と言われれば言われるほど言いたくなってしまうものなんですよね、人間だもの。

いやだって、まさかあんな仕掛けがあるとはねぇ・・・。
冒頭に出てくるパラマウントのマークの山の麓に、真犯人のイニシャルが隠されてた。 だなんてねぇ・・・!


・・・

・・

う そ で す よ ? 
 (※いちおう念押し)


とまぁそういう事で、今回はうっかりオチを書いてしまわないよう、手短にお送りしようと思います。あと、ネタバレなしです。


あらすじ・・・
オレ刑事! 刑事ディカプリオ!
今回の任務は、凶悪な犯罪を犯した精神病患者ばかりを収容している隔離島で起こった、謎の失踪事件を解決に導くこと!
でもホントはね、それとは別の目的があるんだよね!
実はオレのかみさん、2年ほど前に放火事件で亡くなってるんだけど、その犯人がこの島に収監されてるらしいんだよね!
なんつーの、あわよくば復讐?みたいなね! そういう方向で行ってみようかと!

ところが、船酔いに悩まされながらやっと到着した島では、周りの職員や収監者から謂れの無い嘲笑の眼差しや、執拗な監視を受け、もう感じ悪いったらないんだよね!
しかも、船旅の影響がモロ出ちゃってるのか、尋常で無い頭痛に襲われるしね!

そんな中、怪しい雰囲気の院長やナチスあがりのマッドな医者と渡り合いつつ、患者に聞き込みを行っていたオレに、なんと「失踪していた患者が見つかった」との報告が!
無いよね!
上映時間的に無いよね! じゃなくって、まだ何の謎も解いてないのに、ここじゃ終われないよね!
活躍らしい活躍もしてないしね!
まんじゅうみたいな顔してなにやってんの?って言われちゃうよね!

よし! きっとこれは、何かの策略に違いない!
オレは絶え間なく続く幻覚症状などに惑わされることなく、必ずやこの失踪事件の真相を突き止めてみせる!
そして、愛する妻の仇を討ってみせる!
だって、眉間の皺は出来る男のしるし! 
イエス!病みたてフレッシュ!ダーク・ディカプリオ!


最後の2行は勢いです。 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ うそです、全部勢いです。

先にも書きましたが、とにかく本作の最大の失敗は、事前の誇大広告というか、自虐的なハードル上げにあるのではないかと思うのですよね。

ポスターからチラシから予告からTVスポットまで、様々な媒体を使い総力をあげて観客に与えられる「ビックリするよ思うよ!」というプレッシャー。
あまつさえ、本編開始前のスクリーンには
「お前ら、絶対騙されるかんな! 登場人物の一挙手一投足に至るまでつぶさに観察しておかないとムリだかんな!」
というメッセージまで映し出される有様で、もう、観ているこちらは呆れるやら戸惑うやら。

そこまでハードルあげて、どうしたいねん、と。
合コンだって
「あのさ、今日来る女の子物凄くクオリティ高いからね! ホントもう超美人だから! たぶんキミの予想の範疇を遥かに超える、衝撃の超絶美女なんだから!」 
とまで言われたら、たとえその後来たのが沢尻エリカでも
「なあんだ、こんなもんか」
って思われちゃうんものなんですよ。
逆に
「うーん、なんだろう・・ ま、可もなく不可もなく・・? いや、かわいくないことは無いんだけどさ・・・ 例えて言うならハリセンボンの痩せた方?」
って聞いていて、その後堀北真希が来たら
「うぉおおおおい!!」
ってなるでしょ?人間の心理というものは、そういうものなんですよ。

なので、本作を観て「思てたんとちゃう」と言う人がいても、それはディカプリオやスコセッシの責任ではない。
しいて言うなら戸田奈津子のせい。(←前述内容完全無視)


ともかく、ヘンに「すごいトリックがあるんでしょ」「予想もつかないどんでん返しがあるんでしょ」と構えずに鑑賞すれば、なんの問題もモヤモヤも無く楽しめるのではないかと思いますので、もしこれからご覧になろうと思われている方がいらっしゃいましたら、是非肩の力を抜いて劇場に向かっていただけたらと思います。
若干やりとりが平坦だなぁ、と思った点も実はあるのですが(特に前半)、後半はどんどん混乱の渦に叩き込まれてゆき、ペースもアップしてゆきますので、たぶん大丈夫ですよ!(何がだよ)

ディカプリオが陥る幻覚世界の描写はとても美しく、そこと現実との合間で彼がもがく姿はそのまま、映画を観ながらどこまでが真実なのかわからず困惑する私たちと重なり合います。
目に映るものすら、完全に信じることの出来ない不確かな自分自身という存在。
何が真実なのか。 誰にとっての真実なのか。 自分が幸せなら、偽善すら真実と呼んで構わないのだろうか。などと、まんじゅう顔と共に身を捩じらせる2時間強は、私にとって非常に有意義なひとときでした。
そしてその後、不幸ゲージ満タン級の悲劇が加わることで、さらに自分にとっての幸せとは、生きてゆくという事とは、と自問自答させられ、やっぱり「謎解き」うんぬんのハードルは不要であったなぁ・・と、再確認させられたのでした。
ホントに、物語そのものに沢山の思考スイッチが散りばめられていますからねぇ。
最初からそこに感情移入しないように(謎解きの側面ばかりに目が行くように)宣伝するのは、どう考えても間違いだと思いますよ。

ディカプリオが精神衰弱してゆく様がとても素晴らしく、クライマックスでの慟哭にはハっと息をのんでしまいました。
もともといい役者さんだと思うのですが、今回も観る者の胸を振り絞らせる素晴らしい演技だったと思います。まんじゅう顔とか言ってごめん。
 
脇を固める、若手の雄マーク・ラファロ、ザ・悪人顔のベン・キングスレー、メリン神父ことマックス・フォン・シドー、囚人役者の第一人者となりつつあるジャッキー・アール・ヘイリーも、みなさん濃すぎず薄すぎず絶妙にディカプリオを守り立てていて、スコセッシの采配の妙を堪能。
ジョン・キャロル・リンチ(『ファーゴ』の旦那さんでお馴染み)がいつもの「敵かな~味方かな~」というあやしさを醸し出していたのが、キャロルたん好きのアガサにはたまらんかったです。
出てきた瞬間に「ああ、この映画アタリだな」と思いましたもんねー!

原作も一度読んでみたいものですね! (まさか文庫版は袋綴じじゃなかろうな)


と言う訳で、手短な感想はこれにて終了です。 ね、割と手短だったでしょ?(※アガサにしては)


では最後に、ネタバレを含む徒然を以下反転で。 (かなり下までスクロールしてください)













・ とかなんとか褒めたんですけど、子供が死ぬ姿をこってり映す映画はどうしても苦手なんですよね。 なので本作もホントはキライ。大キライ。

・ だいたい、ディカプリオ初登場シーンから額に絆創膏が貼ってあるのが、いかにも訳アリっぽ過ぎ。怪しいって!(きっと獄中のジャッキー・アール・ヘイリーとすったもんだした痕なんだろうなぁ)

・怪しいと言えば、そのディカプリオが搭乗している船の背景も怪しすぎ。 ていうかCGが安っぽ過ぎ。 それくらいロケしようよ。

・ それはさておき、鑑賞前に散々「一挙手一投足に・・」って言うから、全神経を集中させて観ていたのですよ。

・ するとディカプリオが尋問しているおばちゃん患者に怪しい兆しが。

・ 人払いしておいて水を要求するおばちゃん。 持ってきたお水を一気に飲み干す仕草をするも、その手にはコップが握られていない!

・ 勢いよく、机に空のコップを置くおばちゃん!さっきコップ持ってなかったじゃん!

・ しかも次のカットでは、コップには水が並々と注がれているまま。

・ 怪しい! これは絶対なんかある!

・ 何もなかった!

・ (ノ`Д)ノ:・'∵:.┻┻

・ 一人の更生成功例を出す為に、島をあげての総力戦。 しかも精神患者も監視官も医者も全員綿密な打ち合わせをしての壮大な計画。  やりすぎじゃね?

・ 強制収容所時代のディカプリオの回想シーン。 「自殺を図って失敗したドイツ人将校」と言われていた死体の傍に、木の板みたいなのが転がっていたような気が。もしかして彼に致死傷を与えたのもディカプリオだったのだろうか。

・ 「モンスターとして生きるより、善人として死ぬ方がいい」という一言がズシンと来た。  奥さんもディカプリオも、きっととても愛し合っていて、こんな悲劇は避けられたハズだったんだろうなぁ。 ほんの少し、ボタンが掛け違っただけ。 
愛するものを全て失って、その責任を一身に背負い込んでしまった時、人は正気を保ったまま生きては行けないのだろうか。
家族の愛というのは、あまりに重すぎる。 もちろん軽くちゃいけないものだと思うけれど、やはり重すぎる。 
そして、重いからこそ、見失ったり軽んじたりしないように、その重みを実感しながら生きてゆかなければいけないのだろうなぁ。

・ 見ごたえのある、すばらしい作品だったと思います。 (キライですけどね!)

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人間の心こそ最大のミステリー。何分で仕掛けに気づくか、同伴者と競うも良し。ラストについて、自説を語るも良し。または肩ひじ張らず、素直に観てしっかり騙されるのも楽しいお薦め作品だ。

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