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『マーターズ』

2009年08月23日
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★★★★
救いが無いなんて言わせない。 彼らに救いは、ある。 きっと。


※アガサからのお知らせとお願い ※
・ 本記事はネタバレ全開となっております。
・ 映画『マーターズ』鑑賞にあたっては、出来るだけ事前情報を入れない事をお勧めします。
・ 多分本編を観ない方、もしくはネタバレを経ての鑑賞でも構わない方は、このままお進み下さい。
・ そうでない方で鑑賞を予定されている方は、鑑賞後にまたお会い出来れば幸いです。
・ 近隣で公開予定が無い方には、・・・正直面目ない。







あらすじ・・・
古びた工場から、転げるように走り出した少女がいた。
汚れた下着しか身に着けておらず、体中醜い傷で覆われていたその少女は、背後にまとわり着く恐ろしい何かを振り払うように、必死に足を前へ、前へと繰り出していた。
やがて、無事発見され、施設で保護される事となった少女は、周囲に対し頑なに心を閉ざしていたが、ある一人の友人が出来てからは表情にも変化が現れはじめ、徐々に人間らしさを取り戻していったように見えた。
彼女を支配していた恐怖から逃れつつあるように。

しかし未だに少女は囚われたままだったのだ。
常に自身を取り囲む、恐怖の闇に囚われたままだったのだ。

少女はある決断をしなければならなかった。
自分の人生を取り戻す為に。
たとえその決断が、間違った結果しか生み出さないとわかっていても。


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なんなのこれ! アホなんじゃないの! ていうかアホなの?!

と、映画が終わり室内が明るくなった時、アガサの心が叫んだ。
なんでこんなの買い付けしたの? なんで公開しようと思ったの? ええい! 吐け!吐くんだドコンチクショウ! 
と、入り口にいたスタッフの方を小一時間問い詰めようかとも思ったのですが、あんまりにもイケメンだったのでやめました。
ていうか、むしろホクホク顔でおいとま致しました。


世の中なんてそんなものです。(どんなだよ)



と言う訳で、フランスの最終鬼畜兵器 『マーターズ』 を鑑賞してきたのですよ。

痛くて、つらくて、憐れで、哀しくて、どうしようもなく無力な自分に打ちひしがれる事が出来る、実にパンチの効いた映画でした。


上に書いたあらすじは、本作の題名が表示されるまでのたった8分間弱のあらすじなのですが、このオープニングの編集が非常に秀逸なのですよね。
最小限のシーンによって少女の心と体の痛みを存分に表してくれているお陰で、その後に起こる悲劇の数々をストレートに受けとめる事が出来ます。 

少女が受けた不条理な拷問。
少女が負った心の傷。
少女の体内に巣くった、“罪悪感”と言う名のモンスター。

これらを持ったまま成長した少女が、偶然憎き犯人の居場所を知ってしまったらどうなるか。
そこに待ち受けるのが、凄惨な復讐劇であるのは、至極当然な事なのかもしれません。
が、彼女が築き上げるであろう死体の山は、彼女の心を解き放ってはくれないのです。
なぜなら、たとえ復讐を果たしても、少女の中に潜んでいるモンスターは決して消える事が無いから。
その正体、つまり“罪悪感”が少女の良心と直結している以上、モンスターは少女が生きている限り消える事は無いのです。(もしくは少女が完全な邪悪になるか。)

と言う訳で、のんびりとした平和な日曜日の朝食風景にライフル片手に飛び込んだ少女は、蓄積された憎悪を武器に、自分を拷問した犯人と目される平凡そうなパパ、平凡そうなママを、血の詰まったズタ袋と化させ、残った彼らの子供の腹にも大きな風穴を穿つのですが、心が落ち着くどころか、相も変わらず恐ろしい形相のモンスターに付き纏わられるわ、責められるわ、傷つけられるわでもう散々です。

ていうか既に虫の息です。

で、そんな残念な復讐劇に付き合い、少女の“共犯者”となるもうひとりの少女。
施設時代に、少女の最初で最後の友人となり、彼女の痛みも、怒りも、恐怖も、全て共有してきた(しようとしてきた)少女・アンナは、少女が犯す無慈悲な殺人の免罪符となるのが、たった一枚の写真と、少女の記憶のみだった為、少女をフォローしながらも心のどこかで疑いの気持ちを捨て去る事が出来ません。
でも、少女を見捨てることなど出来ない。
何故ならアンナは少女を愛していたから。
何もかも全部ひっくるめて、愛していたから。

見返りを求めない無償の愛で、なんとか少女を救おうとするアンナ。
消滅することの無いモンスターによって、死へと直走る少女。

血にまみれた山荘で繰り広げられる、この2人の救いの無い密室劇は、とことん苦痛で心底絶望的です。
「アンナくんはなんで、警察とか病院とかに通報しないのかねぇ」
とか、
「いくらなんでも、犯行現場でのんびりしすぎなんじゃないの? ここはおまいら若者がカジュアルに過ごせるユースホステル的な類の宿泊施設じゃないんだかんね!」
とか、そういう突っ込みも無くは無いのですが、ここはひとつ穏便に・・・

・ ・ ・

・ ・

・ ・ ん? 

ホ ス テ ル ?!



と言う訳で、悲劇的なオチへとまっしぐらに突き進んで行く前半戦に引き続き、さらに出口の無い苦痛の泥沼に落とし込まれる後半戦では、かの名作 『ホステル』 で一躍世界にその名を轟かせた営利組織・エリートハンティングの斜め上を行く非営利組織が登場。
いや、非営利じゃないかもしれませんが。
ていうか、無理やり繋げた感もしないでもないですが。

気にしない気にしない! そんなの気にしない! 太陽なんて気にしない!絶対焼かないALLIE!(←特に意味はない)


生きるのをやめる事で不幸な過去から決別した少女。
後半戦では、少女の亡骸の傍らで哀しみに暮れていたアンナが、ふとした拍子に山荘の地下室で落ち武者ガールを見つけてしまう事から始まる、ノンストップ拷問バラエティになっております。
うそです。 
バラエってないです。
むちゃくちゃ陰気です。


まぁそれはさておき、この後半戦に登場する、異様にキャラのたった老齢の女性。
周囲から「マドモアゼル」と呼ばれ、とてつもない存在感を放つその女性こそ、実は本作のもう一人の主役と言える、恐怖の秘密組織のボスなのです。

全国のSっ気くん、Sっ気さん達が、金にモノを言わせて若い血潮を迸らせていた“エリートハンティング”に対し、とにかくストイックなこちらの皆様。
その目的はただひとつ。 「究極の痛みの果てにあるモノを知りたい」、それだけ。

普通の人は全く興味が湧かない様な、極めて特殊な世界に思いを馳せる「マドモアゼル」が、世界中のご同胞を集めて立ち上げたこの秘密組織。
人はどれほどの痛みに耐えることが出来るのか?
また、痛みも苦しみも超越したその先には、一体どんな世界が広がっているのか?
誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいS極のすべてについて教えて貰いたいが為に、人知れず拉致、監禁、拷問を繰り返してきた「マドモアゼル」には、是非パズルボックスを贈呈して差し上げたい気持ちでいっぱいです。

ていうかさぁ、ピンヘッド兄さんを紹介してやるから、もう自分で確認して来たら? ていうかしろ!!

そんな「マドモアゼル」に、若くてピチピチしているという理由だけで新たな試験材料に抜擢されたアンナ。
こう言っちゃあれですが、ホントいい迷惑です。


さて、この後は、延々地獄のような監禁生活が続く事に。
ゲロ嘔吐物のような流動食を与えられ、いかついオヤジにどつかれ、ロングヘアーを散切り頭にされ、キメの悪そうなスポンジで清拭され、またどつかれ、の無限リピート。
とにかく、「人がされて嫌がる事を全部やってみる」がモットーの団体ですので、肌に悪そうとか胃に悪そうとか毛先を傷めそうとか、一切お構いありません。
まさしく恐怖の組織ですね!
先述の落ち武者ガールだって、ホントなにをどうやったらそんなビジュアルに辿り着くのかさっぱりわかりませんもの。
なんなの? 一種の羞恥プレイか何かなの?
落ち武者
(何故そんな装甲なのかと小一時間)

本当に、観ているだけで胸クソが悪くなる(※言葉が乱暴ですみません)ような描写で、しかもどう考えてもその先に希望的展開が予測できない状況な為に、途中退席が頭をちらついたのは1度ではすみませんでした。
もしこれがDVDだったら、停止ボタンを押していたかもしれません。
しかし、その反面、「どうしても見届けなくてはならない」、とも思った。
たまたま地獄に突き落とされた女性たち(アンナと亡くなった少女)の行き着く先が、ただの絶望だなんて許せない。
せめて少しでもいいから、そこに希望を感じ取らせて欲しい・・。
そう思い、画面に映し出される悲惨な光景に耐える事数十分。

スクリーンには変わり果てた姿のアンナがいました。
余りにも無残な姿で、心は既に別の世界に移ってしまっているアンナが。
そうです。 アンナは痛みの限界を超えたのです。

こんな救いの無いオチがあっていいのでしょうか。
ついに「マドモアゼル」が、一切自分の体に痛みを感じることなく、アンナの口から夢見続けてきた世界を聞き取る事が出来る。そんな甘い話がまかり通っていいのでしょうか。
いやだよ・・・いやだよママン・・・。+゚(つД`゚)゚+。


物語は、その後思いもよらない結末を迎えます。
朗報を聞いた全国の有閑マダム&ムッシューたちが、山荘に続々と集まる中、ひとり私室で佇む「マドモアゼル」。
早く“別世界”の話が聞きたくてウズウズしている連中を待たせたまま、「マドモアゼル」は静かに銃口を銜え、一気に引き金を引く。
そしてエンドクレジット。

って唐突すぎるわ!ヾ(゚Д゚#) ノ゙ 


しかし、唐突すぎるこのラストは、驚きと共に少しばかりの溜飲を下げさせてくれました。
イってしまったアンナから、何らかの言葉を聞いた「マドモアゼル」。
作中で明らかにならないその言葉は、一体どんな内容だったのか。
きっとそれは、意味を持たない言葉だったのではないでしょうか。

実際にその世界を見たアンナには意味のある言葉だろうけれど、「マドモアゼル」にとっては不可解な言葉の羅列。
何故なら「マドモアゼル」の人生そのものに、痛みの実体が無いから。
その言葉を理解出来る筈が無いのです。

今まで数え切れない程の試験体を使い、その殆どが痛みに耐え切れず亡くなって(もしくは精神を病んで)しまった、組織の研究。
その過酷過ぎる試練にアンナが耐える事が出来たのは、幼い頃から生活をともにしてきた少女の存在があったからなのではないでしょうか。
少女の口から実際に、どの程度拷問生活について聞いていたかは判りませんが、きっとアンナは愛する少女と気持ちを同化する事で、その悲惨さを追体験していたのではないかと。
アンナは、自分自身が受けた2度目の試練(拷問生活)を、少女と共に闘った。
一人ではきっと負けていたでしょう。
しかし、アンナは勝ったのです。 少女と二人で。 愛を武器に。


「マドモアゼル」の過去にどんな事があったのかは判りません。
よっぽどの事が無い限り、こんなアホな研究に取り掛かろうとは思わないでしょうから、もしかしたらとてつもなく哀しい過去を持っているのかもしれません。
しかし、きっと「マドモアゼル」は本当の愛など知らないのではないでしょうか。
本当の痛みも、本当の愛も、何も実際に手にした事の無い「マドモアゼル」は、人生のほとんどを費やしてきた研究の成果を知り、理解出来ず、絶望し、そして命を絶ったのだと思います。
いや、思いたい。

アンナたちの結末はあまりに悲惨だけれど、「マドモアゼル」の死と、その死が同胞にもたらす絶望を考えれば、少しだけでも救われる気持ちになります。


それにしても、どこの世界(金持ちだろうと貧乏人だろうと)にも、キチガイは存在するし、その不条理な暴力の犠牲になるには特別な条件など必要ない、という事ですよねぇ。
こわいこわい。

みんなもアレな人にはマジで気をつけよう!(←投げやりなまとめ)


決して気分爽快にもならないし、むしろゲンナリとした不快感に見舞われる作品ですが、一見の価値はあるかと思います。


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