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「粘膜人間」 童貞ばんざい。

2009年03月24日
ねんまく


マイミクさまの所で絶賛されていた 「粘膜人間」 が、文庫で500円ポッキリだったので購入してみました。

あらすじ・・・
15歳の利一と14歳の祐二兄弟は、血の繋がらない11歳の弟・雷太の殺害を決意した。
小学5年生にして体重は100キロを超え、身長は195cmという雷太は、人間離れした怪力と、その力を躊躇無く揮える狂気を兼ね備えており、その為一家は弟の暴力に生命の危機を感じながら暮らしていたのだ。
到底力の及ばない弟の抹殺の為、兄弟は村のはずれに住む異形のモノたちに交渉を試みる。
そして、なんとか条件が整い、実行の日を迎えるのだが・・・。


パっと見普通のホラー小説かと思いますが、どっこいエログロファンタジーだったのがこの 「粘膜人間」 。

なんと言っても、兄弟から殺人を依頼されるのは河童。
河童です。
かっぱなのです。
 (大切なので3回言う)

しかし、かっぱと言っても
かっぱ 「フェイバリットフードはきゅうりなのれす
こういうエコノミーなかっぱではなく


kappa.jpg  あぁぁぁ。 グッチャネしてぇぇぇ。
これ系の河童。

まさに河童界のエアフォースワン。

し か も 童 貞 。



殺害を依頼された河童は、見るからに獰猛そうな面持ちをしており、人間ではないので当然人間性のかけらも無い。
無駄に争いたくないので村はずれに居を構えているだけで、その気になれば人間を殺す事など赤子の手をひねるようなもの。
だからこそ、行き詰った兄弟は河童に白羽の矢を立て、後腐れの無い殺しを依頼したのです。
が、さっきも言ったように、この河童が童貞だった事から運命の歯車は狂い始める。
まず、殺しの代償として「思う存分エッチな事が出来るおにゃのこ」を要求。
しかも「可愛い」子で「ナイスバディ」な子。
童貞のクセに生意気な河童ですね。

そして、兄弟が一人の訳アリ少女を用意し、殺害が滞りなく遂行出来た後に河童に宛がう事を約束し、交渉は成立。
しかし、いざ実行の日を迎えるものの、肝心の河童は約束の場所に現れません。
なぜなら童貞だった河童は、女性とのパフパフがどうしても我慢出来ず、約束をブッチして女性の家に突撃してしまったのです。
これだから童貞と河童は信用出来ません。 (いや、全部がそうだとは言いませんけど)

実はこの河童は3兄弟で、依頼を受けてバックレたのは長男のモモ太。
で、その弟のジッ太とズッ太が変わりに任務を遂行しようとするのですが、所詮弟ですし、役不足気味なのは否めません。
それに、言わずもがな、こいつらもまた童貞。
兄に代わって殺しを請け負おうと申し出るクセに、「その報酬としてオレたちにもおにゃのこ用意しろ」だとか、ずうずうしいにも程があります。
もうねぇ、童貞は大人しくエロゲでもやってればいいんですよ。(←暴言)

で、この童貞3兄弟から命を狙われる事となる、巨漢の11歳・雷太なのですが、あらすじにも書いたとおりかなりのツワモノでして、兄の腕力をはるかに上回っているのはもとより、既に父親すら支配下に治めて一家を顎でこき使う日々。
しかし、一家の元に後妻として嫁いできた実の母は数年前に蒸発しており、要するに雷太は完全なるアウトサイダーだったりします。
環境だけみれば可哀想な子なのです。
その凶暴性は不幸な生い立ちが育てたのか、生まれもってのものなのかは判りませんが、精神的にはまだまだ幼い子供。
もうちょっと、なんと言うか、「愛」っていうの? そういうサムシングを与えてあげれば、意外と上手くいっていたかもしれない家族関係なのが残念でなりません。

それぞれがお互いを理解しようとしなかったせいで生まれた亀裂。
そして、言葉の足りなさを暴力で解決しようとした事で生まれた悲劇。

強すぎた雷太が、その知能の幼さゆえに自分の力に溺れてしまい、殺意をむき出しで襲い掛かってくる河童どもを容赦なく屠り、血肉の塊に変えてゆく描写は、久しく味わっていなかった本格的な切株精神に溢れ、もうお腹いっぱい夢いっぱい。
とにかく強い。
雷太、強すぎるよ雷太。
しかも己の強さに酔ってるよ雷太。
もう、映像化する時は範馬勇次郎でいいよ雷太。

小説は、この雷太VS河童2匹が思わぬ結末を迎えたトコロまでが第壱章で、続く第弐章では第壱章の中でモモ太に宛がわれていた訳アリ少女が主役になります。

この少女は濡れ衣を着せられ、軍隊から壮絶な拷問を受ける事になるのですが(※言い忘れていましたが本作の舞台は戦時中の日本っぽい世界なのです)、その拷問描写がまたクドいのなんのって、「イーライ・ロスなんか泣いて謝るんじゃねぇの?」くらいの熱意を持って描かれます。
水責めに始まり、カブトムシ責め、つまんねぇ映画延々リピート責め、そして“食人族でお馴染みのアレ”式公開処刑へとノンストップで展開する少女への鬼畜行為。
この作者は病気なのですか?
それとも、読んでいる私達が病気なのですか?


読んでいて吐き気を催す様な残酷描写。
そしてまた、その哀れな被害者である少女が実は、狂った殺人者でもあったと言う救いの無いオチ。
この第弐章では、第壱章で被害者の様に見えた14歳の祐二もまた、一転狂った本能を剥き出しにして童貞消失に命を懸けるというとびっきりラブリーなエピソードも含まれており、作者の性根の悪さが容赦ない人間観察力が垣間見えます。
ていうか、お前も童貞なのかよ。


と、こんな風に鬼畜な人々がグチャーとかドバーとかやって来た本編は、第参章で再び雷太とモモ太に主役の座を明け渡し、それまでとは少し趣向の異なった友情物語へと変貌を遂げる事に。

第壱章の最後で死んだかに思われた雷太は、脳みそが半分流れ出て、片目は潰れてはみ出した状態だったにも関わらず奇跡的に一命をとり止め、バックれていたお陰で惨劇を回避していたモモ太と知り合います。
脳みそが50%になっていたせいで、全ての記憶を失っていた雷太と、パフパフ未遂から帰ってきたら弟たちが消えていて困惑していたモモ太は、ひょんな事から意気投合。
ちなみに未遂だったので、モモ太未だ童貞。

どうしても弟たちの身に何が起こったのか知りたいモモ太は、現場に居た雷太こそが謎を解く鍵だと予想し、森の奥に済むシシ神さまに雷太の記憶を取り戻す方法を聞きだすのですが、とにかくモモ太は、まさか雷太が自分の弟たちを粉砕したとは1ミクロンも思わない。 だって童貞だから。 あ、素直って意味ね。

記憶を無くしたせいで、角を無くしたラムちゃんのような人畜無害な存在となった雷太。
突然一人ぼっちになり、寂しいし、心細いので、そんな雷太を必死に囲い込むモモ太。
実は敵同士の2人が、お互いの正体を知らないままに打ち解けあい、助け合う姿は、どこか滑稽で、皮肉で、その先に確実に待っているであろう悲劇とは裏腹に、ほのかな笑いを誘います。

しかし、そんな笑いを吹き飛ばすように、この章でも軽快に響く狂気の調べ。
河童は人を裏切らない。
最初から信頼関係と思っていないから、裏切りではないのです。
あちらでもこちらでも、河童と雷太の行く先に死体の山が築かれて、この物語に関わってきた全ての人が赤黒い肉塊に成り果てて、ついに雷太の記憶は呼び戻される事になる。
そして、その時を待ち望んでいたモモ太もまた、同時に自分の大事な弟河童を惨殺した犯人の正体を推し知る事に。

避けられない対決を目の前に、殺意をみなぎらせるモモ太。
眠っていた野蛮な欲望を全身で味わい、既にモモ太の殺害方法を考え始めている雷太。
物語はここで終わっており、具体的な2人の闘いも、その行方も描かれていませんが、どちらが勝つにせよ、大地は再びおびただしい血で覆われ、無残で無慈悲な死体が転がる事には違い無いでしょう。

その闘いに、不謹慎だけどかっこよさを感じるのは、私の中にも野蛮な欲望が眠っているからなのでしょうか?
いいえ、そんなハズはない。
雷太が放っているそこはかとない強さに無条件で惹かれてしまうのは、きっと人間が持つ本能なのだと思いたい。
だからほら、憎たらしいけど人気あるじゃないですか、範馬勇次郎も! ね!ね!


童貞であった事が狂わせた運命の歯車。
人間の欲は果てしなく、狂気へ転がり落ちるには、ほんの少し背中を押されるだけで充分なのかもしれないと言う恐怖。
この小説がファンタジーだった事に、若干安堵のため息を吐き、しかし、どこにでも存在しているであろう狂気の引き金に心が粟立つのを感じながら、私は本を閉じました。

あと、童貞はほんとに、パワーがすごいなぁと思いました。
色んなパワーが。
童貞ばんざい。 (←どんなまとめ方なんだよ)

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