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『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

2008年12月31日
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たぶんツンデレなんだと思うよ。

今年もいよいよ最終日。
しまっていこう!

と言う訳で、各レビューサイト様で大絶賛を喰らっていた 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 を滑り込みでなんとか今年中に鑑賞。
なるほど、確かにこれは傑作だお!


あらすじ・・・
稀代の勝負師であるダニエル・プレインビューと言う男が、家族を求めるんだけどどうしても本物の家族には恵まれなかったり、感じ悪いヤツらに絡まれたり、真っ黒な石油を浴びたりしながら、とにかくお金を稼ぎまくるお話。

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のちに石油王と呼ばれるプレインビューが、ひたすら貪欲に金儲けに奮闘し、周囲の人間を傷付けながら孤独と引き換えに巨額の富を手に入れる一代記。
と聞くと、どうしても重く重厚なドラマを想像してしまう。
おまけに上映時間は2時間30分強。
観たいとは思っていましたが、なんとなく腰が引けていた部分(寝オチしてしまうんじゃないかと言う危惧まで)もあり、今日まで鑑賞を先延ばしにしてアホなホラーとかにうつつを抜かしていた自分を、ボウリングのピンでめった打ちしてやりたい衝動に駆られる程の傑作でした。

まず、全然堅苦しくない。
主役がダニエル・デイ=ルイスだからとっつきにくいんじゃないかと言う先入観を抱いてしまいますが、さすがはオスカー常連者。
このおっちゃん、見た目の割にはぜんぜん怖くないから大丈夫だよ。
時にコミカルに、時にシニカルに、不器用にも程がある無骨な男の悲哀を、これでもかとばかりに怪演しています。

そしていかにもオスカー受賞作品っぽい、長ーい上演時間もちっとも苦にならない。
舞台が20世紀初頭のアメリカで、しかも石油採掘物語だから堅苦しいんじゃないかと言う先入観を抱いてしまいますが、さすがはポール・トーマス・アンダーソン(出来る方のPTA)。
このおっちゃん、今までの作品も上映時間が長い作品が多かったけど、語りが上手いから間延びさせないんだよ。
時に喜劇的に、時に悲劇的に、ホラー映画かよ?!と言う様な不快な音楽と共に、一人の男の一本筋の通った半生を魅力的に描ききっています。


ダニエル・プレインビューの人生の目的は「お金を稼ぐ事」ただそれだけ。 実にシンプル。
「人付き合いなんて大嫌い。 稼ぐだけ稼いだら隠匿生活を送りたい。」 ただそれだけ。
でも、ダニエルは本当に誰にも心を開きたくない訳じゃない。
本当は誰よりも“家族”と言うものを求めていた。
勿論彼の人生はイコールお金なのだけど、その人生を共に過ごす“家族”も実はとても大事に思っていたのです。

だから、石油採掘を始めて間の無い頃に仲間を事故で無くした時、その一粒種を何の迷いも無く引き取り、自分の息子として育てる事を決めた。
その心のうちには、「今後の商売において、幼い息子を引き連れていれば信用度も交渉成功率も上がるだろう」と言う目論みもあったでしょう。
で、当然周りにもそう思われていましたし。
しかし、プレインビューは彼なりに血の繋がらない息子を愛していた。
ゆくゆくは自分の事業を任せる為、石油採掘から仕事のノウハウまで、手取り足取り伝授していた。
そのぶっきらぼうな眼差しには、紛う事なき“父親としての愛”があった。

石油事業が波に乗り、息子も10歳まで物判りよくすくすくと育っていたある頃、プレインビューの元に一人の男が現れます。
男はヘンリーと名乗り、なんとプレインビューの腹違いの弟を自称。
大昔に捨てた家族(プレインビューの父親)の訃報を知らせにきたと言う自称・弟は、普通に見ればどう考えても「金の匂いを嗅ぎ付けた詐欺師」です。
しかしプレインビューは、その弟を無下にあしらうどころか仕事仲間として招き入れる。
息子と共に自分の小屋に住まわせ、これまた打ち解けた態度で暖かく接します。
その後、息子が採掘現場の事故に巻き込まれて聴力を失ったあとからは、弟を自分の腹心としてあちこちの会合に同行させるまでに。
その心のうちには「今後の商売において、障害を持つ身となってしまった息子の代役として身内を引き連れていれば信用度も交渉成功率も上がるだろう」と言う目論みもあったでしょう。
で、当然周りからもそう思われていましたし。
しかし、プレインビューは自分が蓋をしていた(でも大いなる愛情も持っていた)自らの過去を知るただ一人の人物として、自称・弟を大切に思っていた。
その憎まれ口の陰には、思いがけず出会えた“家族”への信頼があった。


プレインビューは、決して人間嫌いなどではなかったのではないかと思うのです。
いや、基本的には嫌いなんだけど。
うーん・・、嫌いというよりはどうでもいいのかも。
とにかく、「他人を見れば敵と思え」が信条で、金儲けだけが生きる目的だった事には違いないのですが、“家族”と言うものだけは別だったのではないか、と。
だからこそ、息子や弟を見るプレインビューの眼差しは明らかに優しく、暖かいものだったのではないかと思うのです。

で、そんなプレインビューの思いは、彼自身の思惑とは裏腹にことごとく裏切られる事に。
思いやりのある言葉を素直に吐けないプレインビューの不器用さが招いた事態なのかもしれないし、不幸な偶然だったのかもしれないけれど(特に息子の事故)、乱暴な態度の裏で追い求めていた“家族”をいとも簡単に失ってしまうプレインビュー。

聴力を失った息子は、プレインビュー(父親)と意思の疎通が図れなくなった事から情緒不安定となり、小屋に火をつける騒ぎを巻き起こす。
父親であろうとしていたプレインビューだったが、金儲けもそれに負けないくらい大事だったので、とりあえず専門家の手に委ねる事を決意。
母親もいない現状では、そんなに酷い仕打ちとは思えないけれど、息子の父への愛は裏切られる事となり、絶対的な溝が生まれてしまう。

そして自称・弟もまた、ちょっとした会話の瞬間にプレインビューの心に疑惑を芽生えさせてしまい、その疑惑が確信に変わった時、プレインビューは彼の嘘を許すことが出来なかった。
自分の中の大切な部分(思い出)を踏みにじられたプレインビューは、裏切りを認めて情けなくうな垂れる自称・弟に向って引き金を引く。
その無情とも思える殺害は、プレインビューの《実在していたかもしれない本物の家族》に対する思いの深さの表れなのではないか思います。

自称・弟を葬った後、プレインビューは再び息子を自分のもとに呼び戻します。
しかし、息子はすでに父親との間に大きな壁を築いており、仕事のパートナーとして長きを過ごすのですが、成人して家庭を持ったのを機に、父親からの巣立ちを宣言します。
独立して自分の事業を始めたい。 プレインビューとはただの「親子関係」に戻りたい。
そう願う息子に、プレインビューは餞の言葉の代わりに口汚い罵倒を浴びせるしかなかった。
「お前なんかホントは赤の他人だ! 孤児だったのを拾ってやっただけだ! バーカバーカ!」
思いがけない出生の事実を知った息子からは、嘆きの言葉や悲しみの言葉が出る事は無く、
「そっか。 アンタなんかと血が繋がってなくてよかったよ。」
と言う無情な一言だけ。

ここで「今までゴメン」とか「商売敵になるとか言わんといて! ずっと一緒にやってこうや!」とかが口が裂けても言えないプレインビューの哀しさたるやいかほどか。

お前はツンデレか! デレがないからツンツンか!

プレインビューの生き方は、とてもじゃないですが尊敬できません。
自ら招いた自業自得な孤独人生だと思います。
しかし、感情移入する事を抗えない魅力があるのです。
もうちょっと言葉が上手ければ・・・。
もうちょっと思いやりを素直に表現できていれば・・・。
本物の家族を捨て、偽者の家族を追い求めていたプレインビューの打ち捨てられた想いが、なんだか心に突き刺さりました。


本作のもう一つの柱に、プレインビューと神の手下との確執があります。
まぁこれは素晴らしいサイトの方々の素晴らしいレビューがわんさかありますので、今更アガサがくどくど言ってもしょうもない事この上ないのですが、この怠惰な神の手下を完膚なきまでに叩きのめすラストは、宗教そのものに対する果たし状みたいで実に爽快です。
ごちゃごちゃ大層なお題目唱えてないで、自分の手で何かを生み出してみいや!!
と言うプレインビューの姿勢は、一本筋が通っていてステキです。
額に汗して働く事の尊さは、むやみやたらに神さま頼りで嘆いているより、よっぽどか人生において大切なんじゃないでしょうかねぇ。

そして、血が流され、プレインビューの人生は終わる。
いや、終わらないんだけど。
人生に於いてやり遂げないといけない事は、全て終えたのでしょう。
なんと言うブレない人生。
かっこいいよアンタ。


という事で、後半は頭がボーっとした状態で書きましたので多分支離滅裂ですが、この際大目に見てください。(現時刻AM3時50分)
最後の最後に素晴らしい傑作を鑑賞できて、今年も本当に実りあるいい年でした。

皆さんもどうぞ良いお年を!!

ああ眠い!!
ヤベぇ! 弁当作れるかなぁ!!(泣)

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