ブログパーツ

『復讐者に憐れみを』

2008年12月12日
復讐
何もかもが “痛い” 映画。


長くなりそうな予感のあらすじ・・・
ぼくは生まれつき耳が聞こえない。
姉さんはこんな僕の為に、いつも全力で尽くしてくれた。
だからぼくは、今度は姉さんの為に何でもするつもりなんだ。
姉さんの腎臓病を直す為なら、何だって。

○月×日。 今日病院で、姉さんとぼくの血液型は違うから、ぼくはドナーになれないって言われた。
移植をするには、まったく別のドナーが現れるのを待つしかないらしい。ショックだったけど、とにかくぼくらは自宅で待機する事になった。

○月△日。 今日会社を解雇された。 不景気だからか? ぼくが障害者だからか? 欠勤が多いからか?でもそれは姉さんの看病の為だから仕方ないじゃないか。

○月×日。 偶然トイレで見つけた張り紙に、「臓器斡旋業」と言うのがあった。 もうこうなったら、正規のルートではなく、こういう闇ルートに頼るしかないのかもしれない。

○月○日。 やられた。 ぼくの腎臓と一千万ウォンを、麻酔が効いている間にまんまと持ち逃げされてしまった。 もう何も残っていない。 どうすればいいのだろうか。

○月△日。 病院から連絡があった。 ドナーが見つかったので、来週にでも手術が出来るのだそうだ。 そんな連絡を貰って、だからって、どうすればいいって言うんだ。 もうぼくには一銭も残っていないというのに・・。

○月×日。 恋人のユンミは、ぼくに「金持ちの子供を誘拐するしかないわね」と言った。 そんなバカな。

○月□日。 ぼくをクビにした工場長の家を偵察に行った。 とてもキレイな服を着せて貰っている子供が居た。 なんだかとても切ない気持ちになった。

○月△日。 もう一度偵察に行ったら、工場長と別の会社の社長が別のリストラ社員に絡まれている光景に出くわした。 そうか・・・、ぼくもあのリストラ社員と同じなんだ。 これで工場長を狙ったら、警察はすぐに、リストラされたぼくを疑うだろう。 どうしよう・・。

○月×日。 結局ぼくは、あの日に見かけた別の会社の社長の娘をさらう事にした。 それなら仕事の関連性もないし、きっとバレっこない。 少女はとても人懐っこくて、姉さんともすぐ仲良くなっていた。 これは上手くいくかもしれない。

○月○日。 最悪の事が起こってしまった。

○月△日。 もう何もかもおしまいだ。 どうしたらいいんだどうしてこんな事にぼくが悪いのかぼくはただ姉さんにああああああああああああああああああああ

○月×日。 一昨日、姉さんが自殺した。 ぼくが姉さんの手術費用の為に少女を誘拐していた事を知ってしまったらしい。 折角大金が入ったのに、もう何もかもが無駄になってしまった。 そして、姉さんの死体を埋めに行った河原で、少女まで亡くなってしまった。 不幸な事故だった。 ぼくのせいじゃないんだ。 でも、もう、みんなもとには戻らない。 ユンミに怒られるかと思ったけど、彼女はぼくに優しかった。 忘れよう。 忘れればいいのか。 何もわからない。

○月□日。 少女の父親が、この事件の捜査に加わっているらしい。 でも、ぼくは既に家を引き払っていたから、何の心配もないはずだ。

○月△日。 だんだん怒りが湧いてきた。 そもそもあの臓器売買グループのヤツラにお金を騙し取られさえしなければ、誘拐なんてしなくても済んだし、今頃は姉さんも手術を終えて元気になっていた筈だったんだ。 アイツらはこの世に居てはいけない。 罰を受けなければいけない。

○月×日。 ユンミに協力して貰って、アイツらの居場所を見つける事が出来た。 姉さん見ててくれ。 ぼくは今日、姉さんの仇を討つ。

○月○日。 ユンミが死んだ。 殺したのはあの少女の父親だ。 どうしてユンミの居場所がわかったんだ? どうしてぼくを殺さずにユンミを殺した? 姉さんの仇を討てたのに、それを祝える相手が居ないなんて・・・。 ちくしょう・・憎い・・ ぼくにはもう、何も残っていない・・。憎い・・。 殺すしかない。アイツを殺すしかない。

○月△日。 今日、全てにケリをつけるつもりだ。 アイツの家は知っている。 アイツが出てくるまでいつまででも待ってやる。 そして何もかも終わらせてやる。 それにしても遅い。 もしかしてアイツは家に居ないのか・・・? だったら一体どこに居るんだ・・?


○月×日。 ぼくは死んだのか? 結局アイツの方が一枚上手だったと言う事なのか? ぼくは姉さんを助けたかった。 その為にはなんでもするつもりだった。 でも、子供を失ってしまったアイツの気持ちも判らなくはない。 もしかすると、これでよかったのかもしれない。 アイツはぼくを殺して、救われたのだろうか? ぼくは? ぼくはこれで救われるのだろうか・・・?


よろしかったら にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ちょいちょいっとお願いします


史上最悪の後味の悪さを誇る 『オールド・ボーイ』 と、それよりはマシだけどとっても救いの無いオチだった 『親切なクムジャさん』 の同監督による “復讐3部作” のトップバッターだった 『復讐者に憐れみを』 。
一番ストレートで、一番虚しい復讐の物語がそこにありました。

なんでも韓国での興行収入は燦燦たる結果だったそうですが、なるほど納得です。
こんな物語、誰も観たくなんかありません。
でも、極端ではありますが、この主人公たちが抱く感情と同じ様なモノは、誰の中にも備わっているのではないかと思います。
だからこういう映画は存在する意味がある。
たとえ気分が悪くなるような残酷描写があったとしても、たとえ一見無意味な人殺しの連鎖が続いていたとしても、これは決して他人事とは言い切れない世界の話だと思うのです。


かけがえの無い存在を喪ってしまった人間は、こうも残酷になれるものなのか? と、自問自答しながらの約2時間。
怒りに任せて、一人の命を奪ってしまったら、その先の複数人の命は軽くなる一方なのか?
「復讐は何も生み出さない」
とよく言うけれど、それ(復讐)が本人にとって生きる為のエネルギーなのだったとしたら、
「そんな無意味な復讐はやめろ」
と言う言葉は、「死ね」と同意語になるのではないのでしょうか?
もしくは、
「復讐しても亡くなった人は生き返らない。だから前を向いて新たな人生を歩んでほしい」
なんて励まし。
よく考えてみれば、それはどれだけ残酷な言葉である事か・・・。
いや、別に 「だから大いにやってしまえ」 と言う訳ではないのですが、他人がどうこう言える問題ではない事だけは間違いないと思います。

で、大いに仕返しする事が認められていない代わりに、法律と言うもので、偉い裁判官と言う人たちが、憎き犯人に罰を与えてくれるのですが、その罰が実に不公平な与えられ方をしている様な気がしてなりません。
「人を一人殺したくらいでは大した罪にならない」 というとんでもない理屈が、常識としてまかり通る世の中。
人一人の命はそんなに軽くない。
だから人を殺してはいけないのです。
そんな事も判らないようなアホに、もしも愛する人を殺されてしまったりしたら・・・。
尚且つ「被害者は一人で前科も無いので・・・」とか言われてしまったら・・・。
私だったら、正気を保てる自信はありません。

いくら愛する人を不条理な方法で亡くしたからと言って、誰でもが即刻「復讐してやろう」という計り知れない負のパワーを持つとは思えませんし、怒りや悲しみを乗り越え、時には憐れな犯人にすら釈明の場を与えて、強く生きて行こうという人も多いでしょう。
いや、そうせざるを得ないのかもしれませんが。
しかし、フツフツと湧き上がる感情のベクトルを間違えて、復讐心に取り憑かれたからといって、それを責める事など出来ないのではないでしょうか。

私は、もしも愛する人をどっかのキチガイに殺される様な事があったら、迷う事無く復讐します。
当然の権利として、それを行使します。
そしてもしも、その相手の身内に復讐されたとしても、それは潔く受け入れるつもりです。
「人を殺す」って、そういう事だと思いませんか。
それくらい重いものだと、それくらいやってはいけない事だと思いませんか。

本作のラストでは、まさにこういう事が映像で表現されていました。
人が人を殺し、怒りや哀しみで我を失った人が復讐し、その残された人がさらに復讐をし・・・。
負の感情の連鎖になんて終わりは無い、だから人はそれを始めないように生きないといけない。
一度始まってしまったら、 「愚かだったから」 だとか 「過失だった」 とかは歯止めの材料にならないのです。

非常に痛い物語で、観ていてとても辛く、触られたくない感情を否応無くかき乱される作品ですので、あまり耐性の無い方にはお薦めできません。
森田芳光の『刑法第三十九条』以来お目にかかっていなかった、無残な“少女の遺体”も出てきます。 (こういうのって普通はオブラートに包むべきシーンだと思うのですが><)
確実に嫌な気分にさせられ、答えの出ない自問自答を繰り返す事になり得る作品ですが、それでも観た事を後悔はしません。
むしろ、これ以上の犯罪抑止効果はないのではないかと思うくらい、“人殺し”の赦されなさ具合について考えさせられる作品です。

もしも気持ちにゆとりがある方は、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。