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『スモーク』

2008年09月10日
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(ポール・オースターを愛するTさんに、感謝やお詫びや言葉にならない色々な想いを込めて。)




物凄く感激する出来事がありましたので、居ても立っても居られず鑑賞。
ポール・オースターの短編を基にした(脚本も自身で担当)良作 『スモーク』 のgdgdレビューです。

あらすじ・・・
ブルックリンの交差点で毎朝同じ構図、同じ時間の写真を撮り続ける煙草屋・オギー。
最愛の妻が強盗に巻き込まれ死亡して以来、筆を措いたままの小説家・ポール。
12年前自分を捨てた父に会いに行こうとする少年・ラシード。
妻の死に責任を感じ、息子から逃げ出した父・サイラス。
危険な道に入り込んでしまった娘を助け出す為、18年ぶりにその父であるオギーの元を訪ねる母・ルビー。

少しの嘘が、沢山のタバコの煙と共に、人々の心を繋いで行く・・・。


アガサはこの映画が大好きです。
数年ぶりの鑑賞でしたが、今回もまた再生ボタンを押した瞬間、ブルックリンの何気ない風景にすっかり入り込んでしまいました。
彼らの日常はさほどドラマティックでは無いけれど、観る者の心を捉えて放しません。

毎日は、同じ様に見えても、同じ日なんて一日も無い。
そんな事は勿論判っていますが、現実私たちは、日々を早送りにでもしているかのように消費し、今日出来ることを“明日”や“いつかそのうち”に押し付けて、駆け足で“人生”のページを捲って行く。
そしてある時ふと立ち止まり、振り返り、取り返しのつかない事をしてしまったと言う事実に気付くのですが、取り返せないのでまた次のページに進む・・・。

一日一日がどんなに大切で、どんなにかけがえの無いモノか、諸事情から骨身に染みて判っている筈のアガサですが、やはりページを捲る手は駆け足です。
そんな現状を何とかする心の余裕も無いのが現実ですので、一日の終わり(布団に入り、電気を消した瞬間)には、毎回後悔の波が押し寄せます。
しかし、それはそれで、仕方の無い事だと思います。
決して理想論を唱えるつもりはありませんし、朝から晩まで「世界のみんな!今日という日をありがとう!」などと言う、ちょっとアレっぽい教訓を胸に生きるつもりもありません。というか無理。

ただ、一日のうちで一瞬でもいい。
それはありふれた光景でいいので、大切に感じた瞬間を、目に焼き付けておきたいとは思います。
優しさに触れた瞬間、愛しさを感じた瞬間、特売品をゲットした瞬間、笑ってしまった瞬間・・。
ページに焼き付けられた、たわいもない様々な瞬間は、自分達が過ごした貴重な一日の証になるだろうから。
記念写真用の笑顔より、フレームの端に偶然写っていた微笑の方が胸を打つように。

さて、最初に「さほどドラマティックではない」と書きましたが、実は結構波乱に満ちた本作。(の登場人物)
18年前の痛い恋愛から、“結婚”という選択肢を捨てたオギー。
その前に現れ、“わたしたちの”娘を救って欲しいと懇願するルビー。
何故かアイパッチ。 
しかも黒。
パイレーツ・オブ・何ビアンやねん。 

幼い頃に自分を捨てた父の目撃証言を聞き、長年抑え続けてきた衝動が抑えきれなくなったラシード(本名トーマス)。
実は街のギャングの金をくすねており、彼らから追われる身でもあったラシードと、そんなラシードを実の息子とも知らず雇う羽目になるサイラス。
何故か義手。
しかも鉤爪。
だから、何レーツ・オブ・カリビアンやねん。(※フック船長は出てきません)

妻を喪ったショックから長年措いていた筆を、ある事がきっかけで再び執る事になったポール。
車に轢かれそうになった所をラシードに助けられ、不思議な友情で結ばれる事に。
行く当てのないラシードを匿ったせいで、ギャングにブルボッコにされるものの、一方そのラシードの機転のお陰で素敵な恋人をゲット。
・・・
・・
・・・そうそう海賊ネタなんか無いわい!(←なら書くな)

彼らはあちこちで沢山の嘘をつき、つかれた嘘を信じ、小さな幸せを守ります。
嘘はよくない。 
果たしてそうでしょうか?
人を傷つける嘘は勿論よくないけれど、人を守る為の嘘は必要なのではないでしょうか。
「たった一人でも信じる人がいれば、それは真実になる」
・・・アガサもそう思います。

事実、本作に出てくる嘘の数々は、どれも人を傷つけません。
子供っぽい作り話から、大人の痴話話まで、あちこちで飛び交う嘘が人々を包み、現実のショックを和らげたり希望を抱かせたり・・。
一箇所だけ、真実を告白するシーンがあるのですが、その顛末だけがなんだか晴れ晴れとしない、息苦しい空気を醸し出していたのが印象的でした。

一応書いておきますが、別に表面を取り繕って、嘘偽りで固めた欺瞞に満ちた生活をおくるべし! と言いたい訳ではありませんからね。
要は、人生には嘘も必要だと言う事です。ユーモアが欠かせないのと同じで。
そしてこの映画は、そんな人生に散りばめられた優しい嘘が、素晴らしく心地よい作品だと言う事です。(回りくどくてすみません)

映画は人生を豊かにする、と言いますが、本作はまさにそのお手本の様な作品なのではないでしょうか。
さりげない日常と、その中に潜む喜びの見つけ方を教えてくれる、とても温かい映画でした。
これでまた安心して切株に戻れr(モゴモゴ)

それにしても本作の登場人物たちと言ったら、なんとおいしそうにタバコを燻らす事か。
タイトルが“スモーク”ですから、それが物語の重要なアクセントになる事は当然なのですが、それにしても実に魅力的に映し出される喫煙行為。
NYの路上で軽やかに立ち上る紫煙には、時代の大らかさを感じてしまいました。(※本作は1995年公開)

・・・ええと、・・禁煙中の方や禁煙をお考えの方は、鑑賞を見合わせた方がよろしいかもしれませんね!




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