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『クラッシュ』

2006年05月20日
今年3月に発表された第78回アカデミー賞で、見事作品賞に輝いた 『クラッシュ』 を観る事が出来ました。


オスカー予想している時や発表後は、
「 『ブロークバック・マウンテン』 に作品賞を与えないなんて・・


オスカー会員の塩野郎どもめ!  


なんて思っていましたが、実際この2作品を観て見ると、いかにオスカー会員の選択が難題だったか、と言う事が実感できますね。


・・・ごめんね。 オスカー会員のおじいちゃんたち・・・。(いや、お婆ちゃんもいるのか)


『ブロークバック・マウンテン』がの映画なら、『クラッシュ』はまさに
美しい山々に囲まれて、言葉静かに愛を交わす二人を描いた 『ブロークバック・マウンテン』 も、心を打つ、苦しいほどに切ない物語でしたが、現在のロサンジェルスを舞台に、様々な人種を巻き込んで繰り広げられる 『クラッシュ』 もまた、暴力や憎悪に覆われてはいるものの、その底にある人間の愛について、私達に雄弁に語りかける素晴らしい作品でした。


人種のるつぼであるロスでは、憎みあうのは白人vs黒人だけではありません。
黒人vsヒスパニック
ヒスパニックvsアジア
アジアvs中東
裕福な黒人vs貧しい黒人・・・


誰もがお互いを疑い合い、些細な事で憎み合い、命を奪い合う。
9・11以来、他人に対する猜疑心や憎しみが、より深まって行ったアメリカ。
その中で常に三角形のトップにいるとされるのは、やはり白人です。
でも・・・どうして白人だけが偉いのでしょうか?
白人と一口に言っても、アイルランド系、スコットランド系、ドイツ系など、所詮は入り混じった血の筈です。
肌の色や生まれた土地だけで、偉いもへったくれも無いと思うのですが・・・。
同じ人間じゃないですか?
しかし、略奪や殺人の理由が少なからず「肌の色だけ」と言う事がまかり通っているロスでは、そんな事所詮“現実を知らない者のキレイ事”なのかもしれません。
深いです。
どこまでも深すぎる問題、人種差別。


ただ、こんなに重いテーマなのに観終わった後心に希望が残るのは、作品に愛が貫かれているからでしょう。
どんなに憎悪がはびこっても、親が子を想う心 や 子が親を想う心 や 愛する人を想う心 は消えはしないのです。
憎悪の陰にはきっかけがあるように、何かのきっかけで寛容の気持ちに変わる事もある筈。
そんな希望を感じました。


大勢のキャスト達がそれぞれ抱える心の闇を、複雑に絡ませ合いながらまとめていく脚本は、見事としか言いようがありません。
私はロスに行った事もありませんし、実際のロスをどれだけ知っているのやら(大して判っていないのでしょう)・・・。
しかし、ここに描かれたロスはきっとリアルなロス(アメリカ)の姿なのだろうと思いますし、能天気な娯楽作品に映し出された底抜けに明るいロスの太陽は、作り物の太陽のような気がします。


この現実から目を背けていたのでは、憎しみは終わらない。
このような映画が作られるアメリカは、まだ救われる余地がある。
そう思いたいです。


助演男優賞にノミネートされたマット・ディロンが、持ち味をいかした“虫唾が走る”嫌な奴を味わい深く演じていれば、 昨年 『ホテル・ルワンダ』 で主演男優賞にノミネートされたドン・チードルも、心に大きな傷を抱えつつ母親に報われない愛を捧げる“哀しい男”を情感たっぷりに演じ、その脇で 『ハッスル&フロー』 で助演にノミネートされたテレンス・ハワードが、黒人としての尊厳を踏みにじられ苦悩の表情を浮かべます。
よくもまあこれだけ、演技の達者な役者さんばかり集めたものだ、と演技のアンサンブルだけでお腹いっぱいです。
オスカー授賞式で、すっかり浮き足立っていたリース・(ハッピーブロンド)・ウィザースプーンの旦那さま、ライアン・フィリップもしっかりとした仕事っぷりで安心しました。


そもそも 『ブロークバック・マウンテン』 と比べる事が、ばかげた事だったのでしょうね。
どちらがより優れている、なんて無意味な事です。
どちらも愛を描き、人間の本質を描いた、素晴らしい作品でした。
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