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『ノーカントリー』

2008年03月31日
ノーカン
そら確かに、これ持ってアクションは出来んわなぁ。


映画は映画館で観るのが一番好きなアガサです。
あの迫力、あの暗闇、あの一体感。
なにより、作り手もあのスクリーンでかけられる事を前提に映像を作っている筈ですし。
しかし、映画館には魔物が棲んでいるのもまた事実。
そう・・・ “バカ客”という魔物が・・。

今日、はるばる隣の市まで出かけて、念願の 『ノーカントリー』 を鑑賞したのですが、アガサの隣の席に座っていた若い兄ちゃん2人組が今回の魔物でした。
本編が始まっても喋る喋る。
半分くらいを過ぎた辺りから 「なげぇな~、なげぇな~」 とぼやく。
ラストカットが終わった瞬間 「(笑)全く訳判らんわ!」 と大声でのたまう。

で、案の定エンドクレジットで余韻に浸るアガサの視界を遮って退場。

バカ! バカ! お前らバカ!!(`Д´)ノ

内容について行かれなかったのはまぁ仕方が無い。(というか理解しようとしてないだろ、お前ら)
ただ、判らないなら判らないなりに、そのクソったれな口に蓋をするくらいしたらどうなんだ?!(←S・キング風)
「オスカー受賞作って看板に騙されたなぁ」 って、だったら家に帰って 『恋空』 でも見てろこのおたんこなす!

と、久しぶりに毒を吐いたところで、本作のあらすじ・・・
なんとなく一狩りしに出掛けたベトナム帰りのモス(妻帯者・無職)は、人気の無い荒野で麻薬絡みの銃撃戦の成れの果てに遭遇してしまいます。
ゴロゴロと転がる死体の中を進むモスは、持ち主を失った黒いカバンを見つけ、その中には200万ドルのキャッシュが・・・。

さて、迷う事無くカバンをゲットしたモスでしたが、うっかり現場に立ち戻ってしまった事から組織に存在を知られる事になってしまいます。
慌てて妻を実家に帰し、自分はカバンと共に当ての無い逃避行に出掛けるモス。
しかしその頃、組織は一人の凄腕始末屋を手配していたのでした。
彼の名はシガー。
史上最強のおかっぱ・シガーによる、200万のカバンとネコババ星人・モスの追走劇が今ここに始まろうとしている・・・。

あと、老保安官・エドも追走劇に参加されるらしいので。 
・・ちょっと注意しておいてあげて下さい。


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これはスゴイ。  これはスゴイ。
観終わって、「スゴイ」という単語しか浮びませんでした。
これ程までに暴力に満ちて、それでいて反暴力を訴えかける映画があったでしょうか?
(日本語、変ですか?)

殺人(や暴力)と言う物には理由がある筈だ、と私たちは考えます。
欲、恨み、歪んだ愛・・・、納得できるか出来ないかは別にして、とにかくそこには何かの理由がある筈だと。
しかし、この作品の殺人者・シガーはなんの理由も必要としません。
誰に頼まれたでもなく、憎い訳でもなく、勿論それによって何の得がある訳でもなく、シガーは無差別に人の命を奪って行くのです。
いい人も悪い人も、偶然シガーと出会ったせいで、無情に脳髄を吹き飛ばされる事になる。

シガーは悪魔なのでしょうか?
それとも死神なのでしょうか?
どんな過去を持ち、どんな思想をもっているのでしょうか?
老保安官・エドは、あまりに読めないシガーに対し「あいつは幽霊なのかもしれない」とまで発言してしまいます。
もちろん、シガーは生身の人間で、怪我をすれば血も出ます。
私たちと同じ、赤い血が。

しかしシガーの心は誰にも読めません。
ある時は無表情に、ある時は薄笑いを浮かべて、またある時は一心不乱に人の命を奪うシガーは、いつ私たちに降りかかるかも知れない「理由無き暴力の脅威」そのものなのではないでしょうか。

現実の社会に於いて、「そこにいたから」 「ただ殺したかったから」 という説明にならない説明付きで、繰り返される理不尽な暴力(殺人)。
きっとこの世の中から無くならない、暴力。
どうしてこんな世の中になってしまったのか・・・。
ゲームが悪いとか、映画が悪いとか、マンガが悪いとか、そう言う事ではなくて、もっとどうにも出来ないレベルで狂って行っている様な気がします。
そして結局、私たちはそんな世界から逃げ出す事も、変える事も出来ない。
この作品の登場人物たちがどこに隠れようとも、決してシガーからは逃げられない様に・・・。

さて、そんなシガーを演じて見事オスカーを受賞したハビエルは言うまでも無いのですが、本作はそのほかの役者さんも実に素晴らしい演技を魅せてくれます。
ネコババ大王・モスを演じるジョシュ・ブローリン
アガサの青春の代名詞だった 『グーニーズ』 ではただのマッチョな兄貴だったのに・・・、あなたはいつのまにこんな渋い中年になっていたのですか?><
全編ほぼ出ずっぱりで、最強おかっぱに拮抗する狩り能力を披露するモスの姿は、彼が本作の主役と言ってもいいほど素晴らしい。
荒みきった現実に理解度がついて行けない正義の人(保安官)を演じるのは、皺にさらに磨きがかかったトミー・リー・ジョーンズ
本作での演技を観ると、もう二度と缶コーヒーのCMが見たくなくなる(←才能の無駄遣いだから)程素晴らしい。
先の無いばくちに敢えて挑もうとするモスを、心の底から信頼し、全身で支えようとする妻を演じたケリー・マクドナルドも、ラストで見せる悟りの演技が何気に素晴らしい。
シガーの同業者で、組織のルールに反した無差別殺人を繰り返すシガーを始末する為送り込まれる、凄腕の殺し屋を演じるウッディ・ハレルソンも・・・
・・いや・・まぁ・・、ウッディはそうでもないか・・(←暴言)

一時も気を抜く事が出来ないくらい、全編に渡って張り詰める緊張感。
こんなに恐怖を感じる日常会話の風景を、いまだかつて観た事がありません。
とことん感情を排した殺人シーンと、そこから感じ取られる「人の死」の重み。
誰かがあっけなく殺される程、逆に消された命の重さを痛いほど感じるこの映画を観て、シガーの真似がしたくなる人は居ないはずです。
髪型はちょっと真似したくなりますが。(えー)

「世界を変えられるという考えなんて、それはただの思い上がりだ」
と、老保安官の叔父が呟いた言葉が胸に突き刺さります。
たしかにそれは思い上がりでしょうし、絶対に不可能な事です。
でも、自分は変えられる。
世の中の暴力に対して無関心になるのはよくない事ですが、危険から身を遠ざける事は、決して卑怯な事でもなんでもないんです。
私たちは、「こんな時代だから」と言って世を儚んでばかりもいられないじゃないですか。
だって生きているのだから。
実際に、大事な人や守りたい人と同じ空の下で生きているのだから。

うーん・・・思っている事がうまく伝えられません><

とにかく、 「死」 や 「暴力」 と言うものが、どれだけ無慈悲で、どれだけ誰に対しても平等で、どれだけ重いものかと言う事がひしひしと伝わってくる、恐ろしいほど力のある映画でした。
これは本当に、1800円払ってでも観る価値のある映画だったと思います。


最後に、絶望ばかりが詰め込まれた本編のラストで老保安官が語る「昨日みた夢」。
昔に亡くなった父との、愛情溢れるやりとりを夢にみた彼の心にだけは、少しの平穏が訪れたのだと願いたいです。

今回は(も?)、かなりまとまりの無い内容になってしまって、どうもすみませんでした。

あ、最後にもう一言だけ。
ジョエルとイーサンはやっぱり天才でした。
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