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『まぼろし』

2007年12月28日
まぼろし
ニュータイプ誕生。

“世紀の名作”・ 『タイタニック』 の公開当時、女友達の間でよく話題に上っていた事があります。
それは、
「あなたは恋人を見捨てて生き延びる事が出来るか?」
と言う事。
(ただし、ただの恋人ではなく、運命を感じた一生一人の恋人の場合)

意見は大体、
「彼が身を犠牲に助けてくれた命だもん。彼の分まで幸せにならなきゃ」
と言うローズタイプと
「助けられたかもしれない彼を踏み台にしてまで助かりたくない。彼無しの幸せなんてありえない」
と言うアンチ・ローズタイプに別れていまして、ちなみにアガサは後者でした。

恋人に限らずそれが家族だったとしても、自分が命を捧げてもいいと思うほど愛した人が抜け落ちた人生を、幸せに生きてゆく自信はありません。
苦しみを乗り越えて、その人の分まで充実した人生を切り開いてゆくなんて、とてもじゃないけど出来ません。

私は、卑怯者なのかもしれません。
私は、その人の願いを踏みにじっているのかもしれません。

でも、人間には出来る事と出来ない事があり、思うにローズの様な人生の選択は、私にとっては後者なのです。

あらすじ・・・
マリーは、いつでもジャンに会う事が出来る。

25年連れ添った、唯一の家族・ジャン。
ある夏の日の海で、突然姿を消したジャン。
警察は、ジャンの生存は絶望的だと言っている。
友人は、ジャンの事を忘れさせようとしている。

しかし、マリーはいつでもジャンに会う事が出来るのです。
灯りの消えた家で、いつでもジャンはマリーを待っていてくれる。
そして、疲れたマリーに優しく声をかけてくれる。

だからマリーは、人生を歩み続ける事が出来るのです。
ジャンの“死”とは、すなわちマリーの人生の終わりを意味しているのです・・・。


ここにも居ましたねぇ・・・。
アンチ・ローズタイプが。


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最愛の夫を喪って、現実を直視する事が出来ないマリー。
いえ、直視しているから尚のことなのかもしれません。
とにかくマリーは、夫の“まぼろし”と共に暮してゆきます。
辛い現実も、“まぼろし”が寄り添ってくれるから何とかやり過ごす事が出来るのです。

そんな“まぼろし”は、彼女を過去に縛り付ける足枷なのでしょうか?
それとも、未来を生きる為の支えとなってゆくのでしょうかるのか?
どちらにしても、それはつらすぎる“まぼろし”です。

ジャンはどうして、マリーを人生に置き去りにしてしまったのか。
ハッキリとした答えは出て来ません。
ジャンが生前、うつ病で投薬を受けていた事は明らかになりますが、失踪(自殺)時に薬を飲んでいたのかどうかはわかりません。
せめて、遺書の一つも遺してくれていたら・・・。
せめて、遺体がすぐに揚がっていたら・・・。

お墓の前で泣く事も出来たでしょうに・・・。

色んな事が判らないので、後を追う事も出来ず、ジャンが居た頃と同じ様に人生を歩むしかなかったマリー。
例え新しい恋人が現れたとしても、それはマリーにとっては不倫であり、恋のトライアングルでしかないのです。
そして、ジャンの遺体と対面したとしても、それを受け入れる事はマリーにとっては死刑の宣告と同じ事なのです。

ジャンが居ない人生を一人で生き抜く事は出来ない。
でも、ジャンが居ると思えば生き抜いて行ける。
だからマリーは、生きる為にジャンのまぼろしを作り続けるのです。
きっと、ずっと、いつまでも。


これは
「あなた無しでは生きて行けない」アンチ・ローズタイプ
とは違う、より強い生存願望を抱いた
「あなた無しでは生きて行けない、ならばあなたを作り出そう」というニュータイプ
なのかもしれませんね。

シャーロット・ランプリングは、このニュータイプを「強さ・果敢なさ・危うさ」と共に見事に表現しており、その演技はまさに芸術品です。
そして何より、こんな心をえぐる作品を作り上げたフランソワ・オゾン監督の才能には、激しい眩暈を感じてしまいました。

こうなったら、オゾンさんの全作を観ないと気がすみませんねぇ。
ちょっくらレンタル屋まで小走りで懸け抜けてきます。



※一応注釈・・・ 
冒頭のアンチ・ローズタイプのくだりについてですが、アガサは何も、後追いを推進しているのでも示唆しているのでもありませんので。念のため。
愛する人が居ない悲しみを乗り越えて一人で生きてゆく自信はないので、まずはそうならない様に全力を尽くします。

ちなみにアガサがローズの状況に立たされたなら、まずはもっと平等に(板の上を)交替します。
そして、肉のつき具合を見て、交替の時間配分をさらに平等にします。
ジャックが眠そうになったら、「起きんかコラ──ッ」とハリ手をお見舞いします。
2人で助かる道しか、選ぶつもりはありません。

2人で助かってこその人生ですもの。

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Comment
アガサさん、TBありがとうございました。
私もアンチ・ローズ派です。なんで自分だけ板の上に転がってんねんv-359って思いましたもん。

シャーロット・ランプリングの絵、ソックリですねv-424
唇が薄い女優さんだな〜と思いながらこの映画見てました。だから普通の表情しててもすごく不機嫌そうに見える・・・。
「ふたりの5つの分かれ路」もオススメですよ。
私は「ぼくを葬る」がディスカス待ちです。
ふぉんださん、こんにちは。
こちらこそTBありがとうございます。

そうですよねぇ!
なに今さら笛ピューピュー吹いとんねん! って思いましたよねぇ!(ローズ)
で、彼との事はいい思い出だったわ・・・って許せんi-191!!
本当に命懸けで愛した唯一の人を喪ってしまったら、このマリーの反応の方がよっぽどリアルなのではないかと思います。
心の空白はそう簡単に埋まるものではないし、悲しみを癒せるのも故人でしかなかったなら、空想の世界ででも生きてゆくしかないのではないかと・・。

「ふたりの5つの分かれ路」、今度探してみますね〜♪
私もアンチ・ローズ派です。
「むしろお肉の少ないジャックを板に乗せろよ!」とか言ってみたりもしてました(笑)。

私『まぼろし』は未見なんですが、オゾン監督によると「死の3部作」の1部が『まぼろし』、2部が『ぼくを葬る』で、3部は今後作るであろう「子供の死をテーマにした作品」らしいですよー。

私もアンチローズ派ですね。

そして、ローズの立場になった場合もアガサさんと同意です。それに、私も人のことは言えないですが、どう見てもローズの方が寒さに強いかと…。冷え症?

私事ですが、去年友達が自ら命を絶ちました。全くと言っていいほど自殺なんて無縁な人と思っていたのもありますが、受け入れるのに時間がかかり壮大なドッキリとさえ思いました。今でも信じられないですけど…

その時に彼の恋人、過去に相思相愛ながら結ばれなかった友達…と愛する人を失った人たちを見てきたので、アガサさんのレビューを読んで胸が詰まる思いです。

私も当時は相当厳しかったですが彼女達やご家族の苦しみと言うのは言葉では軽々しく表現出来ないほどだと思います。私も(元)カレのことで色々と悩んでいた時期でもあったので、彼女達を見ていて思うことは沢山ありましたね。彼をずっと想っていた友達が言った「一生好きな人になった」という言葉が忘れられないです。後向きにも聞こえますが、友達は強く幸せにナチュラルに生きてます。

私が亡くなった友達と最後に会ったのは通勤時の駅でした。本当に偶然だったのです。少しだけ言葉を交わしましたが、あれが最後になるなんて…

どうしても毎日通る場所なので友達と背格好が似てる人を見掛けると「なんだ!やっぱり生きてたんだ〜!」と思うこともありました。これも一種の「マボロシ」でしょうかね…

夜中なので?ついつい長文で語ってしまいました。申し訳ないです!!失礼しました〜。
ゾンビで年越ししたい。
「まぼろし」は未見なのですが
皆様のローズに対するつっこみに
ホンマその通りや!と頷きまくりです。アガサ様のように恋人と共に
助かろうとするのが当たり前ですよね。「二人で助かってこその人生」
は「ゾンビは囓ってナンボ」と同じく
名言でございます。
「ゾンビ三部作」が無しになってしまったんですか。ホラーがアカンと言う
人には「クライモリ」のメイキング
映像のスタン・ウィンストン御大のように「作り物だよ、嘘に決まってるだろ。」と爽やかな笑顔で言ってのけましょう。
gddさん、こんにちは。

あのガタイだったら絶対そうですよねぇ(笑)
「ぼくを葬る」、うちの近所のレンタル屋にはなかったようです。
観たいなぁ・・。
子供の死をテーマに。とはこれまた重そうですねぇ・・。まぁきっと観るのでしょうが。
あゆみさん、こんにちは。

コメントを拝見していて、涙が浮んでしまいました。
私は近しい人を失った事は無いのですが、失うかもしれない危機に直面した事はありますので、その恐怖はイヤと言うほど胸に叩き込まれています。
それで、その頃強く思ったのがレビューに書いている気持ちなのです。
「まぼろし」を見るのは決して前向きに生きれていないのではなく、前向きだからこそ必要な支えなのかもしれないと思います。

コメント本当にありがとうございました。
アガサ様

 ほぼアンチローズ派のフレコです。
アガサ派といった方がどんぴしゃですねぇ。
2人で助かる方法を考えたいものです。でも人生何がおこるかわかりませんし、
将来的にも伴侶の死というものをどちらかが迎えることになるのも必至。
その時自分はどうするんだろうと考えますが、答えはでませんね。
その時を迎えるまではねぇ。
 
 今春くらいからアガサさんのブログを訪問させていただいたのですが、
ホントにいろいろ教えていただきありがとうございました。
コメントしたり、お返事コメをいただいたり、こんなに楽しいものだとは
想像もしていませんでした。来年もついていかせて頂きます!
この場をおかりして年末のご挨拶させていただきます。
アガサさんありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。
今年は母がお世話になりました。
アガサさんの言うとおり、バイオハザードではなく
恋空を見に行きました。
で、ちゃんと泣いてきました。

今年1年お世話になりました。
来年も母共々よろしくお願いします。

娘でした★!
亀母さん、こんにちは。

「クライモリ」のメイキング、最高でしたよね〜!
実に楽しそうな現場で、ホラーはこういう人たちに支えられているんだナァ・・と幸せな気持ちになりました。
あの風景を見たら、ホラー好き=異常者みたいな先入観も吹っ飛ぶと思うのですが・・。
しかし、あまりに皆さん「アンチローズ派」で、私の当時の友人に占める「ローズ派」の数を思うと感慨深いものがあります。

アイツら・・・鬼だったぜ、全く。

気の合う皆さんとお友達になれて、本当によかったデス。
フレコさん、こんにちは。

仰るとおり、最愛の人との別れ・・と言うのは、その状況やタイミングなどで受け取る方の気持ちも違いますよね。
闘病の末、不慮の事故、2人で闘えるものもあれば成すすべないものもある・・。
だからこそ、今一緒にいる間は悔いの無いように過ごしたいですが・・それはそれで・・ねぇ・・。

私の方こそ、フレコさんからは多くの事を学ばせて頂き、ありがとうございました。
来年もホラーや非ホラーの世界を精進するべく頑張りますので、宜しくお願い致します!
娘。さん、こんにちは。

恋空、泣けましたか!
正常でなりよりです!
でも、コチラ側へもいつでも大歓迎ですよ!

今年はお母上共々大変ご贔屓にして頂き、本当にありがとうございました。
来年も宜しかったら覗きに来てやって下さいね♪
恋愛モノも頑張ってレビューしますんで。
これは未見ですが…
「スイミング・プール」や「8人の女たち」ってたしかオゾン監督でしたよね?
私、この監督、最初女性なのかと勝手に思ってました。
なんとなくイジワルな視点だったものだから。でもゲイのようですね。
やっぱり〜、という感じです。この作品も見てみたいです。

「タイタニック」ではなんでローズが板の上なんだろうってずっと思ってました。
どう見てもお前の方が皮下脂肪多いだろう、大丈夫だぞ!
ジャックと代わってやれって思ってしまいました。
私は前者タイプかもしれません。せっかく助かった命、無駄にはいたしませんです。
ユキままさん、こんにちは。

そうですか、ユキままさんは前者ですか・・・!
ま、折角生かされた命は、とことん長く太く活かしたいというのも、確かに大切ですよねぇ。
うーん・・・私は意外とチキンなのかもしれません・・><

オゾン監督の作品は、どれも凄く表現が丁寧で好きです。
最新作も早く観たいなぁ・・・

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