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『嫌われ松子の一生』

2006年12月28日
20061226005521.jpg   オールスター


あなたは覚えていますか? “渋谷系”なる音楽を・・!
カーディガンズ、ピチカートファイヴ、フリッパーズ・ギター、ラヴ・タンバリンズ、スパイラル・ライフ、そしてカジ・ヒデキ・・・!
当時のロゴは、“カジ”の後ろが火がボーボーになっていたカジヒデキ
田舎の中学生のようだったカジヒデキ
彼は今でも半ズボンなんでしょうか?
今でも「カローラⅡに乗って~」と口ずさめる私は、果たしてマニアなのでしょうか?

そんな自問自答はさて置き、当時の若者たちは、ジャケットもオシャレ・サウンドもオシャレ・アーティストのファッションもオシャレ、オシャレオシャレのオサレ地獄に夢中になっていたものでした。

そんな“渋谷系”も全盛期を過ぎ、下火になりつつあった頃、最後の起爆剤として投下されたのがボニー・ピンク、略してボニピン
渋谷系北欧支店を支え続けた男、トーレ・ヨハンソンが満を持して世に放った最強ロックシンガーです。
予測の付かない複雑なメロディラインと、澄んだ歌声、ショッキングピンクのショートボブで、一気にオリーヴ少女のハートを鷲掴みにしたボニピン
私も大好きでした。

そんなボニピンが、久しぶりに表舞台に出て来たという。
どうやら歌もヒットしているらしい。
「どれどれ・・・」と歌番組を見ましたら、
・・・だ・誰?このキャバ嬢・・
違う・・・ 
私が知っていた中世的な魅力のボニピンは、こんなケバい艶女(アデージョ)じゃない・・!
ちょっと見ない間に、オリーヴ少女は大人の階段を登って、新宿一のキャバ嬢になっていたんですね・・・。
そんなボニピンが、一流トルコ嬢に扮した『嫌われ松子の一生』。
後味の悪さは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』並みです。

あらすじ・・
平凡な(筈だった)中学校教師・川尻松子の、
 盗難の濡れ衣を着せられ退職→家出
 同棲相手からのDV→相手が自殺
 不倫相手をストーキング→破局
 人気トルコ嬢になり→裏切ったヒモを殺害
 自殺を止めてくれた理髪店主と同棲→逮捕・投獄
 出所後美容師に→教え子と再会・同棲
 教え子はヤクザだった為投獄→出所を出迎えるが捨てられる
 自暴自棄になり引きこもり&過食→通りすがりの中学生にリンチに遭い、死亡
と言う、とっても濃い人生を振り返る、とっても明るいミュージカル。


やたらとどぎつい色調と、画面を彩る原色の花々、CGでヒラヒラと舞い踊る蝶や花びら、突如始まる陽気なミュージカル・シーン。
それらがこの、どん底ストーリーをすくい上げているのかと思いきや全然そんな事は無く、どこまで行ってもツイてない、どこまで行っても男運の無い、どこまで行っても不幸続きの松子の姿にコチラの気分もどん底です。

病弱な妹が居た為、幼い頃から両親の愛情に飢えていた松子。
成長してからも、“男”無しでは自分の存在理由が見出せないのは、そのせいなのでしょうか。
ロクデナシに尽くしては、たかられる・殴られる・捨てられる。
そしてまた新たなロクデナシへ・・。
非モテから見ると、「ふざけんじゃねぇコンチクショー」と言いたくなるような優良物件・松子ですので、本気で探せばもっといい相手が見つけられると思うのですが、わざわざガラクタばっかり捕まえてしまいます。
「いい女ほどダメ男を掴んでしまう」という恋愛暗黒法則を、体を張って証明してくれる松子。

よい子のみんなは絶対マネしちゃダメだよ!

物語の中で、「人生の価値って、人に何をしてもらったかじゃなく、人に何をしてあげたかで決まるんだよね」
という台詞があり、監督はこの台詞が気に入っていたのか(原作でも肝だったのか)、作中何度か繰り返されます。
しかし、私は「してあげる」と言う言葉が好きではありません。
「してあげる」「作ってあげる」「買ってあげる」・・。
“あげる”と言う言葉の裏には、常に表裏一体で“見返り”の影がチラつくように思えるからです。
「こんなにしてあげたんだから、私もしてもらえるハズ」
そう思うじゃないですか、普通。
で、見返りが無いから腹が立つ。
松子の献身的で盲目的な愛も、その裏に「これだけすれば私も愛されるハズ」という気持ちがあったのでしょう。
だから、男たちに裏切られる度に
「(あんなにしてあげたのに)どうして・・・!?」
と打ちのめされる松子。
ロクデナシな男たちの中でただ一人、ヤクザの元教え子だけは、松子の献身的な愛こそが“神の愛”だと、“自分を救ってくれる”のだと気付きますが、結局松子の愛に向き合うのではなく、愛ゆえに身を引く事を選びます。
・・・ダメじゃん。
しかもグーで殴るか?別れ際に。


自分の中に“愛されたい”という飢えがあった為に、その飢えを埋める為にダメ男を愛した松子。
最後の最後まで、その男たちからは愛を与えて貰える事がなかった彼女の飢えを満たしてくれたのは、結局家族の愛だけだったというのは、何とも悲しい結末ですね。
でも言い換えれば、家族からの愛で彼女自身が救われる事が出来たのですから、ハッピーエンドといえばそうなのかも知れませんが。

極彩色のミュージカルナンバーや、豪華出演者の皆さん、中谷美紀の美しさや、心を打つ「まげてのばして」に惑わされてはいけません。
こも作品の非情さは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のそれに匹敵しているのです。多分確信犯的に。

そんな凄惨ミュージカルだった『嫌われ松子・・』ですが、ラストシーンで、生前誰からも「おかえり」と言われる事のなかった松子を、天国の入り口で彼女の妹が出迎えてくれます。
「お姉ちゃん、おかえり。」
「・・ただいま。」

そう応える松子の表情はとても幸せそうで、男に裏切られ、愛に飢え続けた人生がやっと満たされた瞬間に思えて、涙がこぼれました。

この救いが、監督の持つ優しさなんでしょうね。
・・ラースは確実に絶対零度の男でしょうが。

ちなみにボニピンは歌っていただけでした。
“渋谷系”からは程遠い姿でしたが、彼女の持つロックな魂はそのままだったような気がしました。








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 波乱万丈転落人生、でも松子は神や天使のような存在。だって相手の男が、クドカン、劇団ひとり、荒川良々etcだもん・・・恋なんて嘘だな・・・
中島哲也はCMの世界の巨匠である。業界には彼を崇拝している人も多いし、実際素晴しい仕事を多く残している。長編映画三作目となった前作、「下妻物語」もエキセントリックな映像に彩られた快作だったと思う。15秒という

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