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『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

2006年12月21日
20061220004837.jpg 2005年製作


ハリウッドきっての渋男、トミー・リー・ジョーンズ。
顔に刻まれた皺のなじみ具合と言ったら、樹齢300年の松の木の表皮のよう。
『指輪物語』に出てくるファンゴルンの森のエント族に、ノーメイクで混じっていても気が付かないのではないでしょうか。

・・・例えがマニアック過ぎて、申し訳ない気持ちで一杯です。
判り易く言うと、木みたいな顔だということです。

・・・全国2万5千人の、トミー・リー・ジョーンズファンの方々を敵に回したような気がして、居た堪れない気持ちで一杯です。

そんな木みたいな顔をした(←懲りてない)トミー・リーの初監督作品にして、カンヌ映画祭最優秀男優賞&脚本賞受賞作品 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』 を鑑賞しました。
トミー・リーの顔にも負けない、渋い作品でした。

あらすじ・・・
メキシコからの不法入国者・メルキアデスが何者かに殺されます。
仕事を共にし、堅い友情で結ばれていたピートは犯人逮捕を警察に求めますが、何故か歯切れの悪い保安官。
それもその筈、犯人は若き国境警備官・マイクだったのです。
身内を庇い、事件をうやむやにしようとする国家公務員たちに見切りをつけ、ピートマイクを誘拐。
一度埋葬されていたメルキアデスの遺体を掘り起こさせ、メルキアデスの故郷・“メキシコのヒメネスという村”へ運ぶ旅に同行させます。

それはメルキアデスが生前、親友ピートに頼んでいた約束を果たす為・・。
異国の地、不法滞在地ではなく、自分の生まれ故郷である美しい土地で待つ、家族達の元で弔われたいという、メルキアデスの遺志を果たす為・・・。


シンプルなこの物語は、登場人物もシンプル。
ピートと言う、孤独で頑固で義理堅い男。
マイクと言う、幼稚で自己中心的で友情も愛も知らない男。
メルキアデスと言う、温厚で心が優しくて寂しい男。
この3人の男(内一人は死者ですが)の内面が、淡々と映し出されていきます。

女性も、
町唯一のダイナーを夫と共に切り盛りしつつも、満たされない体と心(主に体)を補う為、常連客と日替わりで関係を持つレイチェルと、
夫のマイクについて町に越しては来たものの、何の娯楽も無い田舎町にウンザリし、自分を理解しようともしない夫にも失望し、レイチェルと共に主婦売春に走るルー・アン
が人間ドラマに深みを加えていますが、それはあくまで賑やかし程度で、ドラマのメインはとことん
男が人間性に目覚め、友情を果たす旅が全てなのです。

旅の中で、ピートは掘り起こした遺体を外出着に着替えさせ、寝食を共にし、腐り始めた顔に集ったアリを握りつぶし、遺体相手に心の内を打ち明けています。

何故そこまでするの?
どんな出来事を経て、そこまでの友情が育ったの?


そんな疑問が何度も浮かびますが、それに対しての明確な答えはありません。
涙モノの友情エピソードが披露される訳でもなく、ピートが何か胸の内を吐露するシーンもありません。
ただ何気ない、メルキアデスとの出会いや、交わした会話。
それが何度も差し込まれるうちに、自然と伝わって来る二人の信頼関係。
友情って、そういうモノなのかもしれませんね。
ドラマティックなエピソードだけが、友情を厚くする訳では無いのです。
付き合っていくうちに、「この人は裏が無いなぁ」とか、「この人はなんかウマが合うなぁ」とか感じるようになり、それがかけがえの無い友人になって行くものなのかもしれません。
そして、メルキアデスとピートは、2人が心の深い所に抱えている孤独をお互いに感知し、より心を許す仲になったのではないでしょうか。

遺体を運ぶ旅の途中で、そんな孤独なメルキアデスの秘密が明らかになります。
生前ピートに話していた、メルキアデスの故郷・ヒメネスは、存在しなかったのです・・・。

姉さん事件です!ヒメネスが見当たりません!!

と、ピートが言ったかどうかは定かではありませんが(恐らく言って無い)、この事実は何よりもメルキアデスの孤独をピートとマイクに突き付ける事になります。
遠い異国の地で、心を許した友達についたささやかな嘘。
その嘘は、メルキアデスにとってはきっと真実だったのです。
その真実を支えに、孤独で不安定な暮らしを何とか生きていた。
そんなメルキアデスを、誰が責められるでしょう・・。

ピートとマイクは、そのせつない嘘を本物にします。
そうする事で、メルキアデスの願いは本当に叶えられる事が出来たのです。

そして、苦しい贖罪の旅を強いられる事に最初は抵抗し、自分の犯した罪を正当化する事しかしなかったマイク。
彼もまた、旅を続けるうちに色んな人間に助けられ、妻への本当の愛情に気付き、自分の罪と本気で向き合う事が出来るのでした。
人を殺すのは悪い事だ。
と言葉にするのは簡単ですが、その罪の重さを本当に実感する為には、これくらいの苦しみが必要なのかもしれませんね。

皆、少しずつ不幸せで、少しずつ癒されない心を抱えている。
そんな切ない作品でしたが、映画の目線がとても優しく、最後は救われるような気持ちになれる、いい作品でした。

しかし、男連中の自己再生への旅を尻目に、女たちは薄情極まりない行動を繰り広げます。
マイクの妻、ルー・アンは夫に見切りを付けてさっさと町を出ますし、ピートと関係を持ち、愛を打ち明けていたレイチェルは、本気になっていたピートに冷や水を浴びせる一言。

女・・・ やっぱりコワイ!!

ところで、旅の途中に農作業を手伝うピート(トミー・リー)の隣に座っていた老婆が、トミー・リーをそのまま98歳にしたような顔だったのですが・・・。
トミー・リーの本当のお母さんだったのかもしれませんね。
・・やはり男の子は、お母さんに似るものなんでしょうか。
樹齢800年の樫の木のようなお婆ちゃんでした。
つまり木のような (以下略)

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