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『マスターズ・オブ・ホラー/ゾンビの帰郷』

2006年12月02日
20061202123213.jpg ジョー・ダンテ監督作品


『グレムリン』は、私の人生を変えた一本です。
初めて小学生の時に劇場で見た洋画が、『グレムリン』でした。
世間ではギズモフィーバーが起こり、学校ではギズモグッズを持った女子が、黄色い声で見せあいっこに興じていました。

ちなみに私は、そんな女子たちを尻目に、ノートにストライプの似顔絵をいかに精巧に描くかに、情熱を注いでいたものでした。
20061202125407.jpg ←ストライプ

可愛い気の無い小学生ですね。
まぁ、こんな所で私の非モテの歴史を紐解いていてもなんですので、話を元に戻します。

80年代はキラ星の如く輝いていたジョー・ダンテでしたが、何故か90年代以降今ひとつパっとしませんでした。
何がいけなかったのでしょうか?
CGが肌に合わなかったのでしょうか?

そんな、すっかりあの人は今状態になっていたジョー・ダンテの『ゾンビの帰郷』。
素晴らしい出来映えになっています。

あらすじ
大統領選を控えたアメリカ。
大義無き戦争で、多くの若い兵士達の命が失われている中、戦争を始めた現大統領への批判も少なからず聴こえていました。
そんな中テレビの討論会で、自分の息子を戦争で失った母親が、大統領の選挙顧問であるデイビッドに問いかけます。
「私の息子は、何故死んだのでしょうか?」
戦争への非難と受け取れるこの質問に、デイビッドはいかにも心を打たれたような表情でこう言い返します。
「私の願いが叶うなら、息子さんに帰ってきて貰いたい。 そうすれば自分の犠牲が崇高な物だと、証言してくれるだろうから。」
はたから聞くと、これ以上ないほど的を得ない返答ですが、大統領陣営は大喜びです。
早速このフレーズをスピーチにも取り込み、“死人にくちなし”を良い事に、選挙を正当化すべく張り切っていました。

ところがその頃、戦争の犠牲者の棺を保管する格納庫で、信じられない出来事が起ころうとしていました。
永遠の眠りについていた筈の兵士たちが、次々と起き上がり、ある場所を目指してヨロヨロと歩き始めたのです。
その場所とは・・・ 投票所。
殆どの兵士が腐乱して話せない中、ハッキリと喋る事の出来る死体がテレビカメラに向かって話しかけます。
「俺たちは大統領選に投票をする為に帰ってきた。 意味の無い戦争を止められる者を大統領にする為に。」

マズいです。
この上なくナズい状況に陥った、選挙事務所の面々。
とりあえずゾンビ兵士たちを、“衛生上の問題”の為捕獲する事にしますが、世論は黙ってはいません。
日に日に劣勢化してくる、現大統領の勝率。
一方そんな状況を前に、「帰ってきて」と最初に言ってしまっていたデイビッドは、苦悩を強いられていました。
彼の兄もまた、ベトナム戦争で尊い犠牲となっていたからです。
兄の死は、犬死ではなかったのか・・?
自分達のやっている事は、正しいと言えるのか・・?
そしてデイビッドは、母の口から信じられない兄と自分の秘密を聞かされる事になります。

そして、追い詰められた選挙事務所は、ゾンビ兵士の投票を認める事にします。
しかし、その裏には、卑怯な作戦が隠されていたのです。
大統領選の行方は・・・?
ゾンビ兵士達の想いは報われるのでしょうか・・?


ゾンビと言われただけで、ロマンチックが止まらないホラーファンの心を、鷲掴みにするタイトル。
判ってらっしゃる。
日本の配給会社の方々は、そこのところをよぉーく判ってらっしゃるのですね。
しかし、この作品のゾンビたちは、脳みそを欲しがりもしなければ腸を引きちぎったりもしません。
投票所に行きたい。
ただそれだけなのです。
そのかわり、頭を吹き飛ばされても死にません。
細切れにされても動きます。
バタリアン風ゾンビな訳ですね。

と言う訳で、選挙事務所の面々は大いに困ってしまう事になります。
特に害のないゾンビ兵士は、むしろヒーローですから。

“マスターズ・オブ・ホラー”なので、ゾンビモノと銘打ってはいますが、作品の中身は果てしなくシリアスで、これでもかと言うほど政治批判満載の本作。
反戦活動家をののしり、大統領陣営に取り入ろうとする女性評論家の車のナンバープレートが「BSH BABY」(ブッシュベイビー?)となっていたり、顔は出てきませんが演説が流れる大統領の声はブッシュにソックリだったり、ゾンビになってまで投票したのにその票が丸々カウントされてなかったり、隅々に行き渡るあからさまなブッシュ批判は、スタッフの誰かgポロニウム210を盛られてもおかしくないような激しさです。
ここがロシアで無くてよかったですね。
しかし、今に限らず、そもそもアメリカと言う物は過去を振り返っても、誰の為か判らないような戦争を仕掛けるのはお手の物だった訳で、この作品でも投票が無効にされていた事を知ったゾンビ兵達の呼び声で、墓場に眠っていた“ベトナム戦争”や“朝鮮戦争”などの殉死者たちが、続々蘇って来ます。

“尊い犠牲”だなんてほざいているのは使った側だけで、死ぬ事に尊いもへったくれも無いのです。
誰もが無念の死を遂げ、誰もが墓石の下で声に出来ない悔しさを抱いている。
正しい戦争なんて無い様に、正しい犠牲なんて無いのです。
そんなストレートなメッセージが、尻尾の先までぎっしり詰まった本作。

こんな作品がきっちり作られるアメリカは、なんと懐が深いのでしょうか。
重ねて言いますが、ここがロシアでなくて本当に良かった。

可愛い気のあるゾンビも素敵な、骨太な反戦映画でした。

・・って、“ホラー”は・・?
『マスターズ・オブ・ホラー』なのに、まだホラー映画を観た気分にならないのはこれいかに・・・?

まぁ・・ 次に期待と言うことで・・・。
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