『ハロウィン KILLS』
2021年10月30日

あらすじ・・・
生まれ故郷のイリノイ州ハドンフィールドにブラリと立ち寄ったマイケル・マイヤーズ(御年61歳)さんが出会うものみな傷つけます。
『ハロウィン』だいすきっこのみなさんこんばんは!
待ってましたよね? もちろん待ち望んでいましたよね!
そう、仮装して都会に繰り出し道端で酒を浴びるほど飲む方のハロウィンではなく、でっかい包丁を持った大男が行き当たりばったりで縁故者に襲い掛かる方のハロウィンをね!
と、いうわけで、2019年に日本で公開(製作は2018年)された『ハロウィン』の続編となる『ハロウィンKILLS』が、コロナ禍による海外作品の延期ラッシュを無事乗り越えめでたくの公開されましたので、早速意気揚々と劇場に乗り込んできたんですけども、まあこれがめちゃよかったのなんのって!!
出てくる人間たちはみんなアホの集まりで、「ここまで律儀にアホを貫けるものか」というくらい裏目裏目の行動を繰り返しますし、一方のマイケルおじさんは存外にお利口。
いやね、別にけなしてるんじゃないんですよ。 だって逆だったらみんな助かっちゃいますからね。
もちろんこれでいいんですよ。 ホラー映画としてはこれが正しいんです。
行くなと思う方向に進み、覗くなというドアを開け、立つなという窓に背を向け、刺しとけというトドメは見送る。
これぞホラー。 これぞスラッシャー。
ありがとう人間、今回もアホでいてくれてありがとう。
しかしわたしが本作をとてもすきになった理由はそこではなく、いや、想像以上にアホだったトコロもよかったのですがアホというよりは恐怖を覚えるほどに愚かでもあり、というかまあそこはのちほど述べるとして、今回とてもグっときたのは、なんといっても40年ぶりのリユニオン。
オリジナルメンバーの再結成だったのでした。
※ 以下ネタバレを含みますので、よろしければ鑑賞後にどうぞ
2018年版の直後であり、1978年版(オリジナル)の40年後でもあるという本作。
ハロウィンシリーズの看板女優であるローリー(ジェイミー・リー・カーティスさん)はもちろんのこと、なんとオリジナルに登場し幸いにも生き残っていた懐かしの面々も大集合!
まずはハロウィンシリーズの準レギュラーともいえるトミー少年。

オリジナルのトミー少年です。 ローリーがベビーシッターとして預かっていたトミーくんはマイケルの襲撃をうけますが、ローリーの機転でからくも生還したのでした。

『ハロウィン4』での成長したトミーくん。 トラウマもなくすこやかな高校生になっているようです。 中の人は少年期とは別の俳優さん。

『ハロウィン6』でのひきこもりトミーさん。 すこやかだったのは別の世界線でのトミーくんだったようで、こちらのトミーさんは幼少期の経験からオカルトに傾倒。 中の人はみんなだいすきアリのおいちゃん(ポール・ラッドさん)

そして40年後のトミーおじさん。 なんと申し上げたらいいか、すげえごつごつしてる。 ドラクエに出てくる爆発する岩みたい。
設定としてはオリジナル少年のその後であり、トラウマと闘い続けた半生だったようです。
毎年10月31日には生き残ったメンツで酒場に集まり献杯するのが習わし。
そんなトミーおじさんの招集に応えて毎年追悼飲み会にやってきていたのが、元看護士のマリオンさん。

オリジナルで、ルーミス医師とともにマイケル移送ミッションに挑んでいた勇敢なマリオンさん。
マイケルの急襲に遭いますが、車を奪われただけで助かった幸運の持ち主です。

『ハロウィン2』のマリオンさん。
ルーミス医師の相棒となっていた模様。
またもやマイケルの魔手から逃れた奇跡の看護師。

『ハロウィンH20』(7作目)で三度目の登場と相成ったマリオンさん。
晩年のルーミス医師を支えていたという意外なエピソードののち、数十年の時を超えついにマイケルに刺殺されるというありがたいんだかありがたくないんだかな最期を遂げました。

そして40年後のマリオンさん。 言わずもがななマルチバース設定なのでどっこい生きてるし、マイケルに対して闘志もみなぎりまくっています。 がんばれマリオンさん! まぁほらアレだ、万が一ダメでもまたリブートされるかもし(略
追悼飲み会にはあのリンジーちゃんも参加。

オリジナルのリンジーちゃんです。 みなさん覚えていますよね?
ローリーの友人・アニーさんがベビーシッターをしていたのですが、彼氏と乳繰り合うためローリーに丸投げし、それゆえに命拾いしたラッキーな少女です。
映画の趣味が非常にいい。

時は流れて『ハロウィン4』のリンジーさん。 正直もう記憶が薄いのですが、亡くなってはいない模様。 中の人も変わっています。

40年後にオリジナルキャストで復帰したリンジーさん。 トミーさんと同年代のはずですが、かなりお若いですね!
トミーと仲がいいのはわかるんですが、マリオンさんとはどうやって知り合ったテイなんだろう・・・ 被害者の会とかあるのかな・・
飲み会のメンバーではありませんでしたが、本作にはハドンフィールドの守護神・ブラケット保安官も再登場。

オリジナルのブラケット保安官は、リンジーちゃんのベビーシッターをするはずだったアニーさんの父親でした。
なんだかんだでルーミス医師に振り回されてかわいそうな姿が印象深いブラケットさん、おいしい役どころだったからかロブ・ゾンビ版『ハロウィン』でも存分に存在感を発揮。
そちらの版では、みんなだいすきブラッド・ドゥーリフさんがイケオジ保安官として活躍していましたね。
えっ? すきでしょ? すきですよね? オレ、だいすき!

40年後のブラケットさんは、もちろんドゥーリフさんではなくオリジナルキャストが復帰。
さすがに保安官職は引退し(ちなみに『ハロウィン4』には後任保安官が登場し、ブラケットさんの引退に触れていました)(まあ別の世界線なんですけどね)、現在は病院の警備を担当している模様。
お元気そうでなによりです!
トミーさんを除き、オリジナルそのままの俳優さんで再結成したハドンフィールドの住民たち。
この他にも、前作から引き続き登場するホーキンス保安官には、ローリーと親しい仲だったとされる新事実が発覚したり、オリジナルではほんのちょっとの出演だったものの、時代の空気を見事に再現した秀逸な回想シーンによって「こういうシーンあったかも・・」と違和感ゼロな記憶を刷り込んできたロニーさんが登場したりと、なじみの顔じゃないのになぜかなつかしさの漂う画面に興奮しきり。
熱い。 なんやこれめちゃ熱いやんけ。
だいたいね、昔馴染みが再結成という流れの盤石さなんつうもんはね、世界共通事項なわけでしてね、「殺人鬼の被害に遭い苦しい人生を送ってきた人々」だの「陰惨な事件の記憶が何十年も暗い影を落とし続ける街」だのはホラーによく登場しますが、彼らが手に手を取り合い仇敵に立ち向かう展開は、ありそうでなかったのではないか。
「いやまて、エルム街はわりとカジュアルに焼き討ちしとったんとちゃうか」とか「イットがあるやんけ」とかいう意見はさておき、なかったじゃないですか。
ご長寿ホラーシリーズはいくつもありますが、わたしはこういうのをもっとやってほしいですね。
過去の生存者が全員集合して、一致団結するようなやつ。
絶対おもしろいに決まっとるやん。
で、この再結成以上にすばらしいと思ったのは、このあとの展開でして。
圧倒的ともいえる演説スキルを発揮し周囲を扇動するトミーに対し、最初はやんわりとした同意程度だった住民たちは、マイケルの傍若無人っぷりに怒りを募らせ、警察はあてにならないから自分たちの手でマイケルを捕まえよう、と意識を高めてゆく。
そして、ローリーが搬送された病院に、偶然マイケルと同じ精神病院からの脱走者が迷い込んだことと、トミーが脱走者をマイケルであると勘違いしたことで住民の感情は一気にヒートアップ。
老いも若きも医者も患者も暴徒と化し、逃げる脱走者を鬼の形相で追い詰める。
この狂乱のまあおそろしいこと。
冷静さを促す保安官たちの声も、人違いに気づいたローリーたちの声も、罵声で埋め尽くされた住民たちの耳には全く届かないんですよね。
こういう集団心理の怖さって、全く作りごとではなく、ひどいものでいうと実際数年前に、フェイクニュースを鵜吞みにした人々が無実の人間を焼き殺すに至った事件がありましたし、ちょっとした正義心にネットの情報という燃料をくべられた結果、真偽のほども確かめずだれかれ構わず攻撃するような行為ならそこいらじゅうにあふれています。
こわいんですよ。 本当にこわい。
本当におそろしいモンスターは人間だ~! なんて陳腐なこと言いたかないですけど、自分は正しいと思い込んだ人の暴走は、その「正しさ」ゆえに非常に厄介であり、簡単に止められるものではない。
追い込まれてゆく脱走者の姿と、暴動をとめようとするローリーたちと、なすすべなく迎えてしまう悲劇的な死は、私たち人間が誰でも持つたとえようのない愚かさが招いた結末であり、決して絵空事ではないのですよね。
こういう心理的な厭さを、能天気なボディカウント描写に混ぜ込んでくるの、とてもいいと思います。
これはもう、怖さの表現の満漢全席や・・・!(そこまで品数おおくないか)
聞くところによると、前作と本作はあとに控えている(予定の)『ハロウィンEnds』をもって三部作として製作されているのだそうですが、できれば早めにお頼み申し上げたいですね。
「ローリーの物語は最後ですよー、なんつってもどうせまた10年くらいしたらリブートすんでしょ?」というわたしの中のナメた部分を完膚なきまでに叩きのめすクライマックス、お待ちしております。
それにしても、今回「マイケルは暴力では死なない」、とシンエヴァの碇ゲンドウみたいなことを言われていましたが、一体どうやって引導を渡すつもりなのでしょうね。
愛か。 殺人鬼とも愛と対話で解決する時代なのか。
マイケルが動機をつらつらと語るながーいモノローグでエンディング・・・ それはイヤかも!!
- 余談 -
・ しかし今回ふるってましたね! のっけの消防士11人殺しに始まり、立ち寄る家々すべて皆殺し。 感じの悪い人もそうでない人も平等に殺されてゆくのですけども、使う道具も特にこだわりなさそうだし、なんだったら工程省かれて壁に貼り付けられてるのだけが映ったりするし、あれだよ?殺すの飽きたんだったら無理に数こなさなくてもいいんだよ? っていうかやるんなら真面目にやってよマイケル。 みんなそれぞれに人生があるんだよ
・ 一番びっくりしたのは、三世代そろい踏みしていたローリーの家族が欠けてしまったトコロですね。 ローリーは最後まで温存しないといけないだろうけど、娘が犠牲になるか・・・ そうか・・・ ずいぶん思い切ったなあ・・・
・ 前作の「ガッチャ」には興奮したものの、今回の「ガッチャ」は若干ドヤり気味だったのが癪に触っていたのですが、まさか娘のカレンが退場とはね・・・ っていうか、やっぱり不用心だよねー!! トドメも刺さないしねー! 首のうしろ刺したぐらいで満足するとは生ぬるい! 最低でも首ぐらい切り落としとかないと!
・ ホラー映画はアホであれと書いたものの、全般的に信じられないようなアホが目立つ今作。 警察でも太刀打ちできないのになぜかボコれると思っていきりたつ一般市民とか、超銃社会のアメリカなのになぜか木製バットとか素手とかでマイケルを取り囲むトミーと仲間たちとか、装甲車でもなんでもない普通車に乗り込みマイケル探しに出かける生存者グループとか、全く相手に照準を合わせる気のない発砲とか、おまえらそろいもそろってダーウィン賞でも狙ってんのか! きらいじゃない!そういうのきらいじゃないけども!!
・ 絶対死ぬわけないのに、トミーたちにどつかれて一旦やられた風にしてあげるマイケル、つきあいの良さが社交派陽キャのそれ
・ せっかく出てきた懐かしの面々を惜しげもなく血祭りにあげる監督メンタル、わたしは評価したい。 っていうか、心の中の城オジが「惜しげのない者ばかりよう選んだわい」ってささやいてる。 ロニーなんか最たるものじゃんよ
・ 人間たちがアホな一方、炎が迫りくる中冷静に周囲をチェックし、シャッターのついた銃保管庫に隠れていたマイケルおじさんの判断力よ。 消防士が来たせいで助かったって感じになってるけど、これ気づかれなくても鎮火するまであそこで待ってたんじゃねえの。 かしこいねぇ、マイケルおじさんは。 年の功だねえ
・ ハロウィンシリーズの3以降はなかったことにされてる世界線ですが、『ハロウィン4』のビジランテのくだりとか『ハロウィン3』のマスク三種とか、オマージュのような何かがちらほらみられましたので、次回最終作にきて突然オカルトに全振りされたらどうしよう・・・という
関連感想
『ハロウィン』シリーズ全10作品まとめ
(物語の統合性は低いので、過去作を観ていなくても本作はたのしめますが、オリジナルだけでも観ておくとおもしろさがケタ違いになります)

