FC2ブログ
ブログパーツ

『樹海村』

2021年02月06日
1414747_650_convert_20210205155407.jpg

ちょうど一年前、新型のアレが水際でなんとかできなくなり、もしかしてマジでヤバいことになるんじゃね?という不安がわれわれにひたひたと忍び寄っていた頃、日本の都市伝説トップクラスに君臨する犬鳴峠(旧犬鳴トンネル)を題材にした一本のホラーが公開されました。
その名は『犬鳴村』。
メガフォンをとったのは、大ヒットシリーズ『呪怨』の生みの親・清水崇監督。
わかりやすさとJホラーらしい湿り気と日本人が大好きな因縁を、みんなだいすきかわいいわんこでコーティングした『犬鳴村』は、新型のアレの影響を少なからず受けた割にはスマッシュヒットを記録。
ドウジョウの活きがいいうちにと間髪入れずに発表されたのが、今回公開された新作のタイトルでした。
その名は『樹海村』。
日本の有名な都市伝説を村として紹介しようという、「恐怖の村シリーズ第二弾」です。

もうね、これほどまでに、東映のえらい人のガッツポーズがうっすら浮かぶタイトルがあるだろうか、と思いましたよね。
村か! 村でくくりよったか! いやあ、よかった!そっちにしてよかった!
犬鳴「峠」のまんまにしていたら、「日本のあぶない峠シリーズ第二弾」になりかねないところでしたよね!
なんだよ日本のあぶない峠って! 
急勾配でS字カーブでギリギリ一車線しかないから対向車が来たら詰むタイプの峠か!
日本の田舎道、八割方それやろ!!




あらすじ・・・
幼いころ母に殺されかけた姉妹の前にあやしい箱が現れ、周囲の人々がみんな死にます。



正直、『犬鳴村』は不満の多い作品でした。
「この先、日本国憲法つうじません」という看板や閉ざされた集落、現実に起こった事件など、犬鳴峠にまつわるこわい話は山ほどあるにも関わらず、「犬鳴かぁ・・・ 犬かぁ・・・ よし!いぬのおばけでいこう!とばかりに犬要素を大プッシュ。 
短絡的にもほどがあるだろ。
それでも、中盤まではよかったんですよ。
最近のホラーには欠かせない「YouTuber」で幕を開け、霊が見える少年やいわくつきの旧家、ショッキングな飛び降り描写や高島礼子さん渾身の犬食いなど、興味を惹かれる部分は多かった。
夏休みの自由研究に「犬鳴村」を選んでいる子どもが、「おまえそれどうやって調べたんや?」と思う程の精巧なジオラマを作っているなんてご愛敬。 
失禁シーンを臆することなく描く漢気の前ではご愛敬ってもんですよ。
ただ、村に隠された秘密を紐解くあたりから徐々に雲行きは怪しくなり、電話ボックスからコンタクトすればあっさり入村できるという謎システムに困惑する主人公に明かされたのは、この村で昔行われていた謎の犬肉加工産業と犬信仰。
すべては村をダムに沈めたい電力会社の陰謀なのですが、どうしてそんなまわりくどいことを村人にさせていたのか全くの謎。
そして最大の謎は、電力会社のサラリーマンにいじめられた村人がお犬さまとまぐわった結果、めでたく生まれちゃった犬人ミックス族。 
なんなんだよ。 このサラリーマンの「独自の性癖投影が色濃すぎるいじめ内容」なんなんだよ。
あと、「キバむいてウーウーうなるから犬人ミックス族ね!」ってなんなんだよ。 
ほんで、犬の遺伝子が濃いから「待て!」って言ったら素直に反応しちゃうとか、ヒトの遺伝子もあるから暗黒舞踊を披露するとかどういうことなんだよ。

わたしが観たかったのはそういうものではない。 
普通にわけのわからんド田舎村に迷い込んで、わけのわからん村民に追い回されて、わけのわからん怖い目にあう様子が観たかっただけなのに。なのにどうしてこうなった。

IYn3w3sGZlrHKf07GJBbAht4K5mZwfFYtUAlzGfc8QL8Drca3SUB9NayeLpAvGiZ_convert_20210205172719.jpg
(前作からの続投となったYouTuberアッキーナ。 どっこい生きてた!)

そして今回の『樹海村』。 いやぁ、よかった! よかったですこれ!
ちゃんとこわくてちゃんとトンチキでちゃんと理不尽でした!

yX3j4s_convert_20210205174408.png
(エント*も出るよ!!)(*ロード・オブ・ザ・リングより)

霊が見えることを誰にも信じてもらえず、すっかり心を閉ざしてしまった妹と、そんな妹をただのかまってちゃんだと思い込み疎ましがる姉。
ある日ふたりは幼馴染である友人夫婦の転居を手伝うため、富士の樹海にほど近いとある住居を訪ねます。
アンニュイな表情を浮かべ、新郎に対し恋愛感情があったことをにおわす姉とは対照的に、オカルトレーダー全開で異様な周波をキャッチする妹。
妹が指さす先を調べる一同。 すると、新居の床下には謎の空間が設けてあり、そこに古びた箱が隠されていたのです。

ここからはノンストップで死体祭り。
箱にさわるもの、箱にかかわるもの、箱にそこまでかかわらないものが規則性フル無視で、はねられたり隠されたり落とされたり燃やされたりしてゆきます。 
この「場当たり的呪い」がよかったですね。 
いや、箱目線でいうならば、もっと順序立ってほしいところなんですよ。 
さわって10秒で即死みたいな人もいれば、見てもさわってもいないのに「派手な死に顔をやらせても怒られなさそうだから」という理由だけで転落する塚地武雅さんみたいな人もいると、箱関係ねえじゃんってなりますからね。
けれど、 箱はあくまで見た目のインパクト担当なだけで、箱をもった姉妹にかかわるものが絶滅するシステムなんだと思えば、無秩序なようだった呪いに道筋が見えてくる。
実際、「この箱がおかれた家はみんな死んで家系が絶える」と言われているらしいですし。 え? 誰にって? しらん。 インターネットじゃねえの?

なに?絶滅システムはわかったがちょっと待て、と。 
今んとこ樹海要素どころか村要素もねえぞ?と。 そうおっしゃりたいんですよね? わかります。
実は本作、樹海という有名都市伝説にもうひとつの超有名オカルト話をマッシュアップしておりまして。
それこそがかの有名な「検索してはいけない言葉シリーズ」の雄・コトリバコなのです! 知らない人はググってください!(検索してはいけないけど)

まあね、確かに樹海ってものすごく有名で、過去にアメリカでも『JUKAI 樹海』というホラーが作られてますし、ガス・ヴァン・サント監督マシュー・マコノヒー主演で『追憶の森』という非ホラーも作られるぐらい、人の心をひきつける場所ですよね。
ただ、あまりにいたましい場所としてガチすぎるがゆえに、扱いが難しいことも事実だろうと思うわけで、だったら「樹海そのものがわるいんじゃなくそこに置いてある呪いの箱が度を越えた暴れん坊だということにすれば、やりやすいんじゃね?」と配慮したくなるのも致し方ないのではないでしょうか。 
決してスタッフの「樹海だけでは尺が足りなくなるんじゃねえの」という思惑ではないはずです。 
「有名な奴ふたつくっつけて、よくばりセットにしちゃおうぜ!」ではないはずなのです。
結果、ほぼ箱の話で樹海が顔をのぞかせるのはお気持ち程度と言えなくもないこともないですが、最後は村民がでずっぱりだからいいじゃない! 
ていうか、かろうじて「村」名乗ってるけど、家なんかろくに建ってないしむしろキャンプ地程度だし、村民分布に偏りがありすぎるし(最近入村した若者以外みんな明治初頭?)、果たしてこれを村シリーズにくくってしまっていいのか・・・少なくともあっちの村はちゃんと集落あったけど・・・ なんつう考えがよぎる瞬間も多々ありましたが、いいんですよ!ちゃんとこわかったから!!

2181399_202101090990430001610161233c.jpg
(出てくるだけで画面に緊張感をあたえる男・國村隼)(敬称略)

特殊能力を持つ妹とそうではない姉、その関係をこじらせた原因である母。
貧困ゆえの口減らしとして樹海に棄てられていた障害者たち。
富士の樹海の深い緑に覆い隠されていた悲惨すぎる過去は、前作『犬鳴村』と通ずるニュアンスはあるものの、描き方が真面目なのでまっすぐ胸に迫ります。
先祖の因果が子孫である自分にまで及んでしまうという理不尽さ。
それをせめて我が子の手前で終わらせようという母の覚悟。
村シリーズ恒例(になっちゃったのかな?)である「ゾンビメイクの村民大集合」も、きっと必要なのでしょう。
わたしにとっては完全に雑音でしかなかったですし、ほんと、もうちょっとメイクを控えめにしてくれるだけで、棄てられた人々のいたみが伝わってくるし、呪いの箱もただのビックリボックスではなく禍々しいものになったはずですが、あの「わかりやすさ」こそが前回若者にウケた要因なのだとしたらしょうがない。

チープな部分は残しつつ、想像にまかせてあえて映さない部分と、レイティングを恐れずバッチリ映す部分がきちんと成り立っていた。 それがとてもよかった。
塚地さんのグシャ~!なんか、けっこうエグかったですからね。 
それでも指定は全世代安心のG指定。 
ひとえにゾンビ軍団のふんばりのおかげではないでしょうか。

姉を愛してくれていた人たちは次々と命を失い、肝心の妹はというとあいかわらず姉には理解不能なことを口走るばかり。
「人殺し」「お前が死ね」という罵詈雑言が貼られた家で、たったひとりでおばあちゃんの死を悼む姉のシーンなんて、ちょっとびびるぐらいしんどかったです。
奇怪なホラー描写だけでなく、心理的にも物理的にも逃げ場を塞がれてゆく描写があるだけで、物語は引き締まるしやっぱり観ていてこわいですよね。純粋にこわい。もうどうしたらいいのかわからない、というこわさ。
あとね、直接的なショック表現もうまかったと思います。
主人公の友人が台所で調理しているシーンで、ウィンナーを切っているはずが自分の指を切り落とそうとしていて、「危ない!」と指摘されたら我に返り、血の噴き出る指を慌ててタオルで抑えるんですけど、ちょっと主人公が目を離した瞬間また無表情にもどって包丁を握ってるとことかゾクゾクしましたもん。 さりげないけどえげつない。
あと、樹海で姿を消したのち、木に取り込まれた状態で発見される女性の造形のうつくしさよ。
あれはちょっとすばらしかったです。 
というか、本作は樹海の仕上げ方がめちゃくちゃよかった。 
苔のむし方も枝のはり方も色調も非常に完成されていて、「箱ばっか目が行っちゃってるけどホントは樹海が主役なんすよ!」という誰かの心の声が聞こえてきそうでした。
きっとすごい気合いはいってたんじゃないですかね。 ここは絶対いい画にするぞ、という。

前作がそうでなかったはずはありません(成功していたとはいいがたいものの)が、今回はそれ以上に「ちゃんとこわいものを作ろう」という想いが込められていた。
そして、俳優さんたちのすばらしい演技も、こだわりの詰まった映像も、それに応えていた。

『樹海村』、久しぶりにいい恐怖映画でした。



- おまけ -

・ どっこい生きてたアッキーナ、別人のようにはりきって生配信していたものの、インカメラと外カメラの切り替えがどういう設定になってたのかさっぱりわからん。自撮り棒に切り替えボタンってあるもんなんすか?

・ 冷やかし半分で樹海に入ったネットユーザーたちが、いつの間に入村していたのかさっぱりわからん。 もっと言えば妹がどうやって下山したのかもさっぱりわからん。

・ 樹海村の位置関係、微妙すぎんか。(意外と簡単に行けちゃってない?)

・ 入村の儀ですが、指をカットするのが先なのか入村選考が先なのか結局のとこどうなの? 順番ガバガバすぎじゃない? だいじょうぶ?

・ 箱の役割が、呪いのシンボル的なものに始まって最終的にはちょっとしたお鍋っぽいものに変わってたの、いくらなんでもこわくなさすぎじゃない? 切った指を入れてるだけかと思ったら汁気もあったし・・・謎が謎を呼ぶからくりボックス・・・。 

・ アレかな? 開業以来数十年間、指をつぎ足しつつ受け継いできた秘伝の汁なのかな? その割には最後ザバーってまき散らしてたけど、先代に叱られやしないかな・・・?

・ 姉妹の一族に憑りついていた箱がどうして友人夫婦の家に置いてあったのか、いまだにわかっていませんが、もしかしたら姉妹がくることを察知して先回りしてたのかもしれませんね。 だったら姉妹の家に直行すればいいじゃないか、おい、箱よ。

・ 次作るとしたら、見知らぬ駅に迷い込んだ主人公を身長2メートル40センチの女性が襲う、『キサラギ村feat.八尺さま』とかになるのかな・・・ 次こそはゾンビメイクの村人軍団やめてくんろ・・・! そういうのなくてもこわくできるはずだから! 因果がなくてもこわいことなんて、いっぱいあるはずだから・・・!







     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。