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『貞子』

2019年05月27日
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あらすじ・・・
虐待を受けていた子どもに共感した貞子が現場に復帰します。


■ 「くる」
ついにくるか! 
日本中にJホラー旋風を巻き起こした古典にして原点『リング』シリーズの最新作、しかもメガフォンを執るのはこれまたオリジナル1作目と同じ中田秀夫監督という一報を聞いたわたしは、色めき立ちました。
『貞子3D』はスーパーガッカリイリュージョンだった。
『貞子vs伽椰子』はおもしろかったけどあくまで外伝だった。
『ザ・リング/リバース』はなにをいまさらな内容だった。
どこまでいっても原点を超えられない上に、貞子というキャラクターがひとり歩きをはじめ、その歩き方がコミカル一直線だったせいですっかり「怖さ」が消えてしまった『リング』シリーズが、ふたたび「怖いホラー」としての地位を取り戻す時がついにくる!
公開された、Youtubeの配信動画風予告を観ても、その思いは変わらないどころか、少なくない手ごたえすら感じていました。


■ 「きっとくる」
映画が始まり、冒頭いきなり映し出されたのは井戸でもテレビでもなく団地の一室。
「団地といえばクロユリ団地・・・」と中田監督とあっちゃんの愛の結晶に想いを馳せつつ観ていると、その部屋にはチェーンで封じられた一角があり、さらにその中のクローゼットにも同じようなチェーンが巻き付けてあるではありませんか。
穏やかじゃない。 
ああ穏やかじゃないね。 
いいぞ監督。 
そろそろくるかな。
不穏な描写はさらに続き、クローゼットの中で市松人形を抱きしめる少女、その少女に「おまえは貞子の生まれ変わりだ!」と罵声を浴びせる女性が現れます。
女性は一転声をやわらげ、床に灯油をまくとマッチを擦り、「おかあさんもいっしょにいるからね・・・」とつぶやく。
その時です。 
生気が失われたように暗くなる室内。 恐怖を感じた少女に応えるように部屋の隅に立つ貞子。
やっぱりきた。
さあ、21年ぶりの『リング』祭り再開です!


■ 「たぶんくる」
と思ったら貞子、すぐいなくなっちゃいました。
あれ? まだだったのかな?
まあいいでしょう! 
くるから! 
たぶんこのあとくるから! 
それまでしばし、この気の毒な少女と彼女を見守る精神カウンセラー・池田エライザさんの麗しい御姿でもご覧あれ!
エライザさん、若く優秀なカウンセラーでありまして、なんとその担当患者の中には『リング』で友人のむごい死に顔を見たことから精神を病んでしまった佐藤仁美さんもいる模様。
『リング2』の頃は失語症とテレビをうろつく貞子に苦しんでいましたが、今ではすっかり元気な中年になり、医者としての優しさと友人としての優しさを取り違えてエライザさんに執着している佐藤さん。
パーソナルスペースどこ吹く風とばかりにエライザさんにくっつき、手を握り、食事に誘い、電話番号を聞き出そうとし、毎晩合鍵をつかって診察室に侵入し、花瓶の花を入れ替えるというガチのストーカーっぷり。
なかなかどうして堂に入っているではありませんか。
不法侵入を諫められ、手に持ったままのハサミをカチャカチャ言わせながら激昂する様子、今日一番の恐怖です!
恐怖なんですけど、そろそろ他の恐怖がきてもいい頃ですよね。
主役はあくまで貞子、仁美じゃないよ!


■ 「くるはず」
その後も、エライザさんに襲い掛かる仁美、エイラザさんを助けに割って入る少女、少女に共鳴してテレビから参上する貞子、とお茶漬け程度のホラー描写が続き、貞子をほぼおまけ扱いのままに、物語はエライザさんの弟失踪事件編へ突入してしまいます。
親に捨てられたあとエライザさんと共に施設で育った弟は、エライザさんに学費を出してもらい進学したものの、よくわからないウェブビジネスマンに誘われその気になり、学校を辞めてYouTuberへの道を歩むように。
「やってみた系動画」で頑張ってはいるものの、再生回数は伸び悩み、登録者数も当然頭打ちで完全に詰む弟に「だいじょうぶだいじょうぶ!バズれば一発だから!」と中身のないアドバイスを送るウェブビジネスマン。
自分で書いといてアレなんですけども、なんなんだよウェブビジネスマンて。
そもそも弟とはどういうきっかけで出会って、どういう流れでYouTuberになりなよって話になったんだよ。
再生回数数千ごときで食ってける訳ねえじゃん。
もうねー、ほんとにね、「すきなことして生きてゆく」を広めたYouTuberは罪作りですよ。そりゃ本人はそれで食えてるんだろうし、中には登録者数100万人超えてウハウハの人もいるんだろうし、そもそもYouTuberだけではなく歌手だって漫画家だって声優だってトップクラスになれるのなんて一握りなんだから、甘い見通しで飛び込んでくる方がバカなのかもしれませんけどね。
それにしたってね、ちょっと簡単になれるイメージが定着しすぎていますからね。 罪作りと言わせてほしい。 批判と受け取られてもいい。
YouTuberを目指すなとは言いませんよ。
ただ、動画を作り続けることの困難さ、常にバズり続けないと食ってけない厳しさは理解しておくべきだし、安直に再生数を稼ぐため、犯罪行為を含めどんどん過激な方向へと転がり落ちてゆく配信者も少なくない現実がね、絵空事ではないだけに恐ろしいですよね。
あれ? 
これなんの映画でしたっけ?
現代社会風刺?


■ 「くるよね?」
くるかくるかと思いながら鑑賞すること1時間(※体感)
「冒頭の団地で動画を撮影した後失踪した弟は、貞子の出身地である伊豆大島の洞窟にいるに違いない! なぜなら弟が残した動画を見ていたらやたらと大島の風景が出てくるから!」 という説明になっているのかいないのかよくわからない理由で大島に向かうエライザさんとウェブビジネスマン塚本高史。
エライザさんはともかくどうして無関係なはずのウェブビジネスマンまでついてくるのか?
そんなもんエライザちゃんがかわいいからに決まってるでしょうが!!そりゃ行くわ!用がなくても行くわ!
しかし忘れてはいけません。
きていいのはあくまで貞子であり、ウェブビジネスマンや謎の洞窟お供えババアではないということを。
昔、島民が育てられない赤子を捨てにきていた洞窟は、その後山伏の修行の場になり、いろいろ因縁がたまりすぎたため現在は封印されているそうです。
ちなみに少女を監禁して焼き殺そうとしていたお母さんも、その山伏の血を引く霊能者だったことが明らかにされますが、その話と娘を貞子の生まれ変わりと断定していた話と団地の部屋が罵詈雑言のビラや落書きで埋め尽くされていた話はその後全くつながらず、理由等もまったく明らかにはされません。
もしかしたら、同じく霊能者だったにも関わらず民衆からインチキ扱いされ亡くなった山村志津子とその娘・貞子になぞらえていたのかもしれませんが、「環境が一緒だったら生まれ変わり」っていう理論が謎すぎますし、「虐待受けてたから貞子が共感して出てきた」っていうんなら世の中の虐待児みんな貞子のズッ友じゃん! 適当なストーリー作んなよ! せめて「実はお母さんは高野舞だったのです!」とか、そういう歩み寄りくれよ!


■ 「ひょっとしてこない?」
このあたりからでしょうか、万が一の可能性を感じ始めていたのは。
これはひょっとしたらひょっとするのでは・・・ 
ひょっとしたら・・・ こないのでは・・・?????
少女とシンクロしている訳、テレビから出てくる条件、殺す基準、弟以外の配信動画にもガイコツ映像を差し込む理由、差し込むだけで特に害がない理由、山村志津子が赤ちゃんだった貞子を洞窟に置き去りにしていたという後だしジャンケン、最終的には劇団員になって井戸に落とされるから洞窟あんま関係ない説、次から次へと気まぐれに提示され、特に解説もないまま流されてゆく謎エピソードたち。
無念が怨念になり執念になったのが貞子であり、その「現世への恨みに自信アリ、お祓いしようたって問屋が卸さない」具合が恐ろしかったのではないかと思うのですが、今回の投げっぱなし&統一感ゼロ&つじつま?なにそれうまいの?的物語からはあまりにそれが感じられなかった。
それでも洞窟にさえ行けば・・・・
貞子の思い出の洞窟にさえ行けば、満月が洞窟に差し込んだらなんか起こるみたいに匂わせてたし、きてくれるはず・・・ 『リング2』みたいにペタペタと這い寄ってきてくれるはず・・・


■ 「きませんでした」
きませんでした。
結論からいうと、貞子のかわりに子どもがきました。
白塗りの子どもたちが洞窟内の水たまりからわらわらと登場、入院先の病院から幽体離脱して洞窟にきていた少女を水中に引きずり込もうとしました。
なぜ白塗りキッズなのか。 
貞子の話はどこに行ってしまったのか。
さながら神木(しんぎ)を取り合う西大寺会陽の男たちのように、少女に群がる白塗りキッズ。
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(※ イメージ) (※ 天下の奇祭・はだか祭こと西大寺会陽は岡山で毎年2月開催!みんな、きてくれよな!!)
エライザさんは水たまりに飛び込み、体を張って白塗りキッズから少女を奪い取ります。
「あなたはわたしが一生守るから!」 
必死の叫びが洞窟に響き、白塗りキッズは消えました。 
同時に、病室の本体も意識を取り戻しました。 
仕組みがわからん。
なぜか無傷で生きていて、なぜか洞窟の隅でガタガタ震えていただけの弟とも無事再会を果たすエライザさん。 
仕組みがわからん。
全て終わったのか・・・ なぜかどっと疲れながらエンディングを覚悟したその時です。 
みんなすっかりお忘れだったであろう満月の光が洞窟内に差し込み、水たまりから満を持して貞子が参上!!!
くるんかい。
今さらですよね。 あ、くるんだ? って思いましたもん。 もうお開きの時間だけど? って。
貞子が狙ったのはエライザさん。 それも意味不明。 動画見たから? ウェブビジネスマンも見てたじゃん。 っていうかめっちゃ拡散されて山ほど見られてるじゃん。
貞子に抱きつかれ悲鳴をあげるエライザさんですが、その真横で弟を介抱しているウェブビジネスマンは全く気づく様子がありません。
(ここに限らず、本作では真横で起きている貞子アタックや子どものいじめ行動に他の人たちが全く気づかないシーンがちょいちょいあり、緊迫感をあおりたいのかもしれませんが、状況が不自然すぎて興ざめもいいとこです)
で、やっとこさエライザさんの窮地に気づいた弟は、身を挺して姉をかばい、貞子に引っ張られた挙句哀れ水たまりへ。
このシーンの貞子&弟VSエライザさん&ウェブビジネスマンの引っ張り合いの、絶妙な間抜け具合といったらね・・・ 綱引きかよ・・・ 夜の洞窟で大運動会かよ・・・
 
21年ぶりに帰ってきてまでやりたかったのは、こんな肉弾戦だったのか貞子よ。
肉弾戦なら肉弾戦として、もっと派手な応酬が観たかったよ貞子。
方向性がね、ホントぶれまくっててなにがやりたかったのかさっぱりわからんのよ貞子。
結局弟ひとりだけを引きずり込んだ貞子は、満月の差し込みと共に消滅。 
仕組みがわからん。

「一生守るから」と啖呵を切っていたエライザさんでしたが、貞子ショックで心を病み入院。
一方すっかり元気になった少女は、エライザさんに感謝しつつ退院。
エライザさんのベッドに忍び寄る影。
カーテンを開けたら貞子。 
お馴染みの下向き三白眼をギョロつかせ、「だからくるっつったじゃん」とばかりに貞子。
わかった、わかったからもう帰ってくれ。


■ 「もう誰のことも信じられない」
まあね、貞子がああ(ネタキャラ扱いに)なった時から、もう復帰は無理かなと思っていましたよね。
今回だって、予告こそいい雰囲気だったものの、ポスター・ツイッターなどの宣伝方法はいつも通りのギャグ路線でしたし。
動画配信という設定も斬新などではなく『貞子3D』で経験済み。
目新しいものは特になく、ただ、監督が中田秀夫監督に戻るという、そこだけが希望だったような気がします。
中田監督ならやってくれる。 『劇場霊』はキツかったけど『スマホ』は手堅い出来だった。 この勢いで原点回帰をはかれるはず。 しかし、そうではなかった。
一体なにがいけなかったのでしょうか。
特に描きたいものもないまま、企画ありきでスタートしてしまったからなのでしょうか。
貞子の中にあった恐怖の影が、完全に消えてしまっているからなのでしょうか。
うまい子役が揃えられたわけでもないのに、子役をメインにしてしまったからなのでしょうか。(睨む演技はよくできてた部分と持続できてなかった部分が半々ぐらい。 それ以外は非常に残念な仕上がり。 終始緊迫感がない。 白塗りキッズと入院キッズにいたっては頭を抱えるレベル)
エンドクレジットの最後、「監督 中田秀夫」という文字が浮かび上がるスクリーン。 
そこにちょうどかぶせるようなタイミングで、主題歌の「もう〜誰のことも〜信じ〜られ〜ない〜」という歌詞が流れるの、なかなかどうしてパンチの効いたイヤミだったと思います。
もう!誰も!信じるな!!! 


最後に、観終わった後あまりにささくれだった感情を誰かと分かち合わずにはいられなくなり、たまたま出会った知り合いに「貞子観ました? ぜひ観てください! え?だいじょうぶ! 怖くない、ぜんぜんだいじょうぶです! とりあえずすぐ観てください! 悪いようにはしないから!!!」とごり押ししてしまうという、『リング』の松嶋菜々子的行動をしてしまったことをお詫び申し上げます。
なるほど・・・ ある意味「呪いのビデオ」だったのかもしれんな・・・

みんなもがんばって生き延びようぜ!!





関連感想
『リング』(シリーズ1作目)・感想
『らせん』(シリーズ2作目)・感想
『リング2』(シリーズ3作目)・感想
『リング0 バースデイ』(シリーズ4作目)・感想
『貞子3D』





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