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『Banjo』(バンジョー)

2016年11月24日
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最近、血の気の多い映画の感想を書く機会がめっきり減っていたのですが、今回は久しぶりに鮮血がドヴァドヴァ溢れだすタイプの映画をお届けしたいと思いますよ。
なぜかと言いますと、実はこのたび、いつもたのしく拝見させて頂いている人気ブログホラーSHOX [呪]Hiro Fujiiさんと、倉林のはらわた倉林さんのご厚意により、日本未公開の竿竹(※隠語)映画のスクリーナーを鑑賞させて頂きましてですね。
新鮮なビッグマグナム(※隠語)ホラーがノーカットノーぼかしですよ。股間にまっくろくろすけがコピペされているような映倫さまお墨付きのヤツじゃない、ありのままのつくしんぼ(※隠語)ですよ。舶来もののシャウエッセン(※隠語)がオベリスク(※隠語)ってんですから、そりゃもう、「観るか?」っつって聞かれたら「観ます」って即答しますよね。
(※実際はもっと親切かつ丁寧にお声がけいただきました)

と、いう訳で、イギリス生まれトロマヴィル育ちのリアム・リーガン監督が実体験をもとに作られたという『Banjo』の感想、はじまりはじまり~。


あらすじ・・・
あるところに、ペルツァーという青年が恋人のディーツさんと暮らしていました。 
ペルツァーくんは、ロケットみたいなおっぱいを揺さぶり、一晩中でも振りつづけられる強靭な腰を持ち、予期せぬ妊娠に至らぬようきちんとピルを飲み、ペルツァーくんの弱気な発言を心理的・物理的というふたつの方面から戒めてくれる、強いディーツさんのことがだいすきでした。 ビンタ一発食らわせるだけでペルツァーくんの顔面を血で染め上げるような、鋭い手首のスナップもすきでした。 ちょいちょい仕掛けてくる地味な嫌がらせもすきでした。 はたから見たらただのDVだけれど、とにかくすきなのでした。 すきなはずだったのでした。

しかし、愛する彼女と夢の一軒家で同棲という、幸せ絶頂な生活を送っているはずのペルツァーくんの表情は、なぜか冴えません。

職場の上司が超いけすかないゲス野郎で、ことあるごとにディーツさんに色目を使ってくるからでしょうか。 
ちょっと遅刻しただけで、この世の終わりみたいに怒ってくるからでしょうか。
同じく遅刻の常連である同僚のクライドさんに、「今度会社に遅れてきたら死刑だからな!」と常軌を逸した脅しをお見舞いするからでしょうか。
目の前のデスクで、3年前気まずい別れ方をした元カノが仕事をしているからでしょうか。
その元カノの今カレが、支店の平社員であるペルツァーくんとは違い、本社のエリート社員だからでしょうか。
地位を利用し、部下と一緒にペルツァーくんを虐めてくるからでしょうか。
それとも、そのなにもかもが原因なのでしょうか。
会社、虐め、仕事、夜ごとの合体、だいすきなはずのディーツさん、それらすべてのことが原因なのでしょうか。

手に入れたものと求めていたもののズレに苦しむペルツァーくん。
今、彼のもとを懐かしい旧友が訪れようとしています。
彼が本当に求め、手に入れるべきものを与えるために・・・。



みなさんは「イマジナリーフレンド」をいう言葉を聞いたことがありますか?
外国映画などではちょいちょい耳にする言葉ですが、直訳すると「空想上の友達」。
そう、「イマジナリーフレンド」とは心のうす汚れた大人には見えない、天使のごとく純粋な子どもの頃にだけ触れ合うことができる、特別なお友達のことなのです。
実は我が家のちびっこ(現在中学三年生)にも、幼児の頃「メッフェーさん」という「イマジナリーフレンド」がおりまして、ごきげんで遊んでいる時などは頻繁にその名前を口に出していたものでした。
ちびっこ本人以外には見えない「メッフェーさん」。 ちびっこの笑いのツボを把握し、いつもちびっこを愉快にさせてくれていた「メッフェーさん」。語感だけで、勝手にヒツジのショーン的なラブリーな姿を想像していた「メッフェーさん」。ちいさいちびっこの、かわいらしい空想だと思っていた「メッフェーさん」。
しかしある日のこと、何気なくちびっこに「メッフェーさんって今どこにいるの?」と聞いたところ、彼女はなんのためらいもなく当然のようにスっと机の下を指さし、「そこだよ」と答えたのですよね。

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めっちゃ具体的に居場所特定できんのかい。 っていうかマジなやつやったんかい。 っていうかモロわしの足元ちゃうんかい。 なんやったら若干メッフェーさん踏んでるぐらいの位置関係になっとんかい。
もちろん、机の下を指さしただけで、その姿がヒト型だとかケモノ型だとか説明されたわけではないのですけども、もうこの瞬間わたしの中でヒツジのショーンから一転、美内すずえ先生の「白い影法師」になったのでした。メッフェーさんのイメージが。


で、本作の主人公・ペルツァーくんにも、幼い頃からずっとそばに「イマジナリーフレンド」のロニーがおりまして、気弱なペルツァーくんを時に励まし、時に勇気づけてくれていたわけですが、20年前に起きたとある事件をきっかけに、ペルツァーくんはロニーとの別れを決意したのですよね。
それ以来ペルツァーくんはロニーなしで生きてきた。 
しかしそれは、生きてこられたのではなく、生きるしかなかっただけ。
本当は心の奥底で、ずっとロニーの帰還を待ち望んでいたペルツァーくん。
そしてロニーもまた、ペルツァーくんが自分を呼び戻してくれる日がくるのを願っていた。

かくして、ストレスフルな生活に心が崩壊してしまったペルツァーくんは勢いでウィジャボードを使ってしまい、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンとばかりにロニ―参上! 
「おお!待ちわびていたぞ心の友よ!」と言ったか言わないか、大切なペルツァーくんを解放するため張り切るロニー。
レディース・エンド・ジェントルメン、3度のメシより切り株がすきという好事家のみなさまお待たせしました! 首チョンパあり、タテ割りあり、ミドリのゲロありの愉快な血祭り騒ぎのはじまりですよ! 

もうね、無邪気にたのしい! やっている方がものすごく楽しんでいるのが伝わってくるから、観ているこちらもたのしい! なんとも幸せな映画だなぁと思いました。 
しょうじき、アラは多いです。というかアラだらけです。 
とことんチープですし、話がポンポン飛んじゃうので「あれ・・?さっきのアレは・・?」みたいな戸惑いもある。 でも、キライになれないのですよね。 
それはきっと、わたしの中にある「一度でいいからケチャップをブチャーって部屋中にぶちまけて殺人現場を作ってみたい」心がこの作品に共鳴してしまうから。 
美術の授業中、先生の話そっちのけで自分の腕にいかに本物らしい傷をペイントできるかに延々チャレンジしていた、中学生のころのワクワク感がよみがえってくるから。
すきなものを作るたのしさ。 イケないことを題材にして、真面目にふざけることの背徳感。 たまんないですよね。 

子どものように残酷さに鈍感で、大人のように残酷さに無慈悲なロニー。
「イマジナリーフレンド」である彼は、ペルツァーくんが自らのフラストレーションを解き放つため用意したただの空想なのか。
それとも、空想から飛び出した超自然的な存在なのか。
アレだった人がまともになり、まもとだった人がアレになるという混沌のクライマックスを経て辿り着く、そこまでのイカレ騒ぎはなんだったのかと思う程クールなラストシーン。
ホント、なんだったのでしょうか。
そこに映し出されたものに心がザワザワと掻き乱され、ちょっともう一回見直したくなってしまう、とても味のある作品でした。

こんなたのしい映画が日本未公開、ソフト化すらされていないだなんて・・・

・・・・


・・と、嘆こうかと思ったのですが、なんと観れちゃうんです!日本で!しかも完全版が!!


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『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX

場所はサブカルの殿堂・阿佐ヶ谷LOFT A。
開催日は2016年11月26日。 今週の土曜日ですね。
OPEN 24:00 / START 24:30 で、チケットは前売¥3,000 / 当日¥3,500(共に飲食代別)だそうです。

詳しい情報はこちら↓
『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX – LOFT PROJECT SCHEDULE 『チンコリンピック2016』東京電撃映画祭 with HORRORSHOX – LOFT PROJECT SCHEDULE

当日はこの『Banjo』以外にもオモシロ痛そうなとんがりコーン(※隠語)映画が長編・短編あわせてわんさか上映されるそうですので、可能な方はジャンジャン足を運んでみてはいかがでしょうか。
ホントにね、東京ってトコロはこういうよさげな映画イベントがちょいちょい催されていて、超うらやましいですよね。
わたしは遥か彼方の岡山に巣食っているのでお邪魔できませんが、どうぞみなさまたのしんできてくださいませ!

Hiro Fujiiさん、倉林さん、ありがとうございました!



‐ 追記 ‐
・ 本作にはみんなだいすき『ムカデ人間』シリーズのローレンス・R・ハーヴィーさんも出演されていますよ! 不気味オーラを封印し、大きな瞳を潤ませながらかわいそうな遅刻魔クライドさんを可憐に演じるローレンスさん。 歩くシーンにいちいちどんくさそうな「ムギュッムギュッ」という効果音をつけられて、虐められっ子描写がハンパない。 雑すぎる退場の仕方も超気の毒。 役者冥利に尽きますね!やったねローレンスさん!

・ 主役(ペルツァーくん)がそこはかとなく河合我聞。

・ 主役(ロニー)が心なしか柔道の篠原信一。

・ 元カノがみんなだいすき『MAY』のアンジェラ・ベティスさん似で、ホラーファン心をくすぐります。 っていうか全般的にキャスティング絶妙!

・  Hiro Fujiiさんと字幕翻訳家のBrendan Wimsettさんが手がけた字幕も遊び心があっておもしろかったです。 中でも、煮え切らないペルツァーくんに呆れかえったディーツさんが放つ「again!」というセリフが「またか!」に訳されているシーンは、そのテンポの良さといい叫んでいるディーツさんとの表情のコンボといい、妙にツボにはまってしまいすごくすきでした。 女の人のセリフ字幕がおんなおんなした口調になっていないのって、ほんとうは当たり前のことなんですけど、新鮮でいいですね。

・ ペルツァーくんがどれだけ虐げられてもディーツさんにすがり続けていたのがとても謎(元カノの方が優しいしきれいだし未だにペルツァーくんを想ってくれているし)だったのですが、観ているうちに、わたしにはディーツさんと「イマジナリーフレンド」のロニーが似ているように思えてきてですね。 

・ ほお骨の主張が著しい顔の作りも、すっと切れ上がった眉も、性的魅力の過剰さも、攻撃的な性格も、どこか重なるロニーとディーツさん。 もしかしたらペルツァーくんは、自分でも意識しないままにずっとずっとロニーの面影を求めていて、それでディーツさんに一目ぼれしてしまったのではないかなぁ、と。 何が起ころうともペルツァーくんにはロニーが必要だった。 たとえいつの日にか、死が二人を分かつ時がこようとも。

・ まぁ、それはわたしの勝手な解釈ですが、ともかくあれこれ深読みするもよし、手作り感満載なゴアシーンをあっけらかんと楽しむもよし、様々な味わい方ができる作品なのではないかと思いましたよ。 土曜日の晩、お時間とおぜぜに余裕のある方はぜひ!




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