『アントマン』
2015年10月14日

あらすじ・・・
妻から三行半を叩きつけられたお父さんが娘への想いだけを原動力に不可能を可能にします。 あと、負け組のレッテルを貼られた人たちが特技を活かしてでっかい敵に立ち向かいます。
・ この博士がひどい!
・ 【ひどさ その1】 娘と会話しない
・ 若かりし頃、妻と共にシールドのメンバーだったピム博士。 活躍中のある日、なんやかんやでソビエト連邦がアメリカに向け大陸弾道ミサイルを発射してしまいました。 博士は自ら開発したアントマンスーツを着込み、ミサイルを墜落させようとしましたが、アリサイズのスーツではミサイルの内部に入り込むことができません。 このままではミサイルがアメリカに到達してしまう・・・ その時、妻は自らのサイズ調節つまみを壊し、体を量子サイズまで縮小させることでミサイル内へ潜入。 第三次世界大戦の危機は回避できたものの、彼女の身体は永久に縮み続けることを余儀なくされ、ついにはそのまま宇宙の藻屑となってしまったのでした。
・ つまり、「お母さんはアメリカを救うため、大規模な戦争が起こるのを防ぐため、自らを犠牲にした」んですよね。 英雄ですよ。 二度と会えないことは哀しいけれど、無駄な死って訳でもないし、そこは教えてあげればいいじゃない。 きちんと説明してあげればいいじゃない。
・ ところが博士は一番大事なそこを省いちゃうんですよね。 「お母さんは飛行機事故で死んじゃった」ってモロバレな嘘をついてしまうんです。 なぜなら、本当のことを話すことでたったひとりの愛娘まで「かあちゃんスゲーうちもそれやるー」ってなったら困るから。 なにせ自分たちに似て正義感も我も強いタイプだし。
・ で、省かれた娘はというと、かなり早い段階で父親のウソを見抜き、「結局のところなぜ母は死んだのか」「なぜ父は本当のことを自分に教えてくれないのか」「父にとって自分は信用ならない存在なのか」「頼りにもならない存在なのか」「父にとってたいせつなのは研究(スーツ)だけなのではないか」などなど各種猜疑心にさいなまれつつ育つ羽目に。
・ 娘にまでスーツを着させて危険なミッションをさせたくない、という親心はわかりますが、会話は省いちゃいけませんよね。そこ省いてもなんもいいことないですよ。 娘の「知る権利」や「将来を選択する権利」より、自分が再び傷つきたくないって願望だけ優先しちゃう父ちゃんを、同じ親として是非反面教師に採用したい!
・ 【ひどさ その2】 息子の替わりを作る
・ 娘に本当のことを言えない博士は、そのモヤモヤを晴らすかのように、娘みたいに血が繋がって愛着のある子ではなく、自分が後腐れなく育てられる疑似息子のような存在を作ろうと思い立ちます。
・ そんな折、若い頃の自分を思い起こさせるような才能ある青年を見つけた博士。 渡りに船とばかりに、自社の跡継ぎとしてスカウトします。 これがのちにイエロージャケットを開発して謀反をこころみることになるダレンさんです。
・ 見立て通りメキメキと頭角を現してくるダレンさん。 会社の経営面でも技術の開発面でも超グイグイきて、博士なんだかちょっとダレンさんのことがウザくなってきちゃいます。 青年が胸に秘める野心は成長を促す燃料となるが、同時に功を焦って暴走してしまう危険性もある・・・。 ・・・かいつまんでいうと、青年の野心が暑苦しく思えてきた博士。 しょうじき嫉妬もあったんじゃねえの、とわしは思う。
・ そこで博士は自分の一番の発明であるピム粒子やアントマンスーツをなかったこととして、その存在をダレンさんにひた隠したり秘密にしたり蚊帳の外に置いたりないがしろにしたり、要するに知らぬ顔を決め込んでしまいます。
・ で、のけものにされたダレンさんはというと、かなり早い段階で博士のウソを見抜き、「結局のところ自分は博士から信用されていないのではないか」「なぜ博士は本当のことを自分に教えてくれないのか」「自分は博士から疎ましく思われているのではないか」「頼りにもならない存在なのか」「博士にとってたいせつなのは研究(スーツ)だけなのではないか」などなど各種猜疑心にさいなまれつつ育つ羽目に。
・ あれ・・これさっきもどっかで観たよ・・・!
・ 博士(父)に認められらたくて研究に打ち込み、博士(父)を越えるために悪党に魂を売り渡すことを決意したハゲかわいそう。
・ 【ひどさ その3】 ムシは使い捨て要員
・ だってムシだから。
・ 「小さくてパワフルで賢くて飛んだり浮いたりできるアリンコって、超便利な兵隊じゃね?」 ・・・ということで大量のアリンコを脳波でコントロールして任務を与える博士。
・ 最悪何匹か潰されても、なあに、代わりなら庭にいくらでもいるさ!(博士の心の声)
・ 謝れ!アントニーに謝れ!!
・ 【ひどさ その4】 娘以外なら犠牲にしてもいっか的なアレ
・ 大事な娘にスーツを与えて、みすみす危険なミッションに送り出す訳にはいかない。 そこで博士は、「理系の知識に優れて」いて、「義侠心」があって、「人の親だから情にも厚く」て、「フットワークが軽め」で、なおかつ「人生どんづまりであとがな」さそうなスコットをスカウト。
・ スコットが自らの意志で博士の邸宅に盗みに入るよう、すべて先回りしてセッティング。 難解なセキュリティシステムをどのようにクリアするかを別室でモニタリングしつつ、最終的にはアントマンスーツを着るという選択肢以外選べないトコまで追い込む算段です。
・ この博士はかわいい顔してわりとやる博士やで・・!
・ そもそも、博士が妻を亡くした時点で娘さんと真摯に向き合い、妻(母)の死について、自分にとって娘がどれだけ大切な存在かということについて、きっちり話し合っていればこんなややこしいことにはなっていなかったと思いますし、ダレンさんに関しても、スーツがはらむ可能性についてもっと早く共通理解をはかっていれば、暴走して物騒な機能のついた自己流スーツを開発することもなかったのではないでしょうか。
・ もっとハゲの能力を正当に評価してあげて・・・ 彼は褒められると伸びるタイプなんです・・たぶん・・・
・ 開発に関することもそうですけど、もっとこう、世の中のために出来ることというか、「自分たちが開発しうる技術は正義のために使えばいいものだけど、悪に手渡せば地球を滅ぼしかねない」っていう倫理観みたいなものも教えてあげればよかったんじゃないですかね。 ダレンさん、家族いなさそうだし、寂しかったんじゃないかな・・・。 やっと理想の父親的存在に出会え、しかも息子のようにかわいがられてその気にさせられたのに、さっさと梯子を外されるダレンさんかわいそう。
・ ブラックホールマシンみたいなのくっつけられてどっか消えちゃったダレンさんが、量子の世界で博士の奥さんに出会い一緒にこの世にカムバックしてまたひと悶着!みたいな話があっても、オレはいいと思う。
・ ということで、父ちゃん(博士)は毒親でしたが、ここのところ陰惨な空気になりがちだったMCU界に舞い降りた「とにかく明るいマーベルヒーロー」像はとても新鮮でたいへんおもしろかったです。
・ 前科持ちだけど義賊だからアリ!っていう居直り方もすごいし、そんなスコットを演じているポール・ラッドさんの全身から滲み出る「お人よし」感もすごい! あと、スコットのちょいワルな仲間たち! 再婚モノでは珍しい「いい義父」のおまわりさん! MCU作品は他のものもそうなんですけど、キャスティングやキャラクターの設定が本当に絶妙だと思います。
・ 子ども部屋を使った闘いも超たのしかった! 予告で使われていたトーマス脱線のシーンの膨らませ方もうまい! 細かいところまで手と気を抜かないってこういうことなんですよね!
・ バ・・・バッキーちゃん!!
・ まったく思いもよらないところからのバッキーちゃん登場に、本編以上に興奮してしまったことをご報告させて頂きます。 おお・・・なんという・・・・

