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『劇場霊』

2015年11月25日
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あらすじ・・・
事故死したのちに、すご腕の人形師だったお父さんから人形の身体を与えられちゃった長女が、なんやかんやいろいろと欲しがります。




・ スペースバンパイアかと思ったらヘルレイザーだった!
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(※ いろいろ欲しがる長女)(※ イメージ画像)

・ と、いうことで、浅口郡(岡山県)が生んだJホラーの巨匠・中田秀夫監督の最新作『劇場霊』を観てきましたよ。

・ 主人公の島崎遥香さん(通称ぱるる)はデビュー5年目の新人女優。 キャスティングされるのは、既に死んでいる役やこれから死ぬ役ばかりという鳴かず飛ばず状態。

・ 見えぬ将来への不安を事務所に訴えかけたぱるるは、とある舞台のオーディションを紹介されます。  そのお芝居とは、実在した残虐非道な伯爵夫人をモデルにした「鮮血の呼び声」。 オーディション自体は完全な出来レースだったものの、無事端役をゲットしたぱるるは新ジャンルへの挑戦に意気揚々です。

・ 一方その頃、舞台の小道具担当者は道具倉庫で運命的な出会いを果たしていました。 どこから、いつからそこにあったのか誰も知らない人形の頭。 不思議な魅力に取りつかれ、その頭を持ち帰った小道具担当者。 欠けていた身体部分は人形担当者が仕上げてくれました。 結構なクオリティの球体関節人形だと思うんだけど、舞台のスタッフさんってなんでもできるんだナー。

・ てな訳でついに迎えた「鮮血の呼び声」の稽古初日。 見るからに胡散臭そうだけど設定としては「大物」な演出家も、首にこじゃれた布っきれを巻いて気分上々です。

・ しかし、早速トラブル発生。 なんとぱるると同じ事務所の先輩でもある主演女優がセリフを暗記していなかったのです。 っていうかいきなり実際の舞台使って衣装もメイクも本番そのもので稽古すんのな。 本読みとか、しないのな。 ジャージとか、着ないのな。 灰皿、飛ばないの(略

・ 北島マヤばりの記憶力で台本を全て覚えていたぱるるは、気をまわしたつもりで急遽先輩女優のプロンプターを務めます。 しかし、先輩にしてみればいい面の皮。 スタッフとキャストの前で「セリフ失念」をばらされて怒り心頭の先輩女優。 稽古の中断を告げる演出家。 これは降板か。 はやくも降板なのか。

・ ところが、オーディション時から失態続きの先輩女優は降板どころか高圧的な態度を増すばかり。 なぜなら先輩女優は既に演出家に抱かれていたのです!

・ このね、「ドラマなんかで脇役を演じることの多い役者さんが大物としてキャスティングされている時の、その役に与えられる小物感と案の定なイヤラシイ展開」ね! 小市慢太郎さんのことを悪く言っているんじゃないんですよ! 「やっぱりな」というか、「流石は小市さん!想像通りに小物な役だったな!」というか、とにかく期待を裏切らないとこがすごい! 確実に殺されるであろうラストもハッキリクッキリ見えるしすごい!

・ 枕営業で仕事を手にしてきた先輩女優でしたが、コネクションだけではどうにもならない事態に直面してしまいます。 お待たせしました、球体関節人形のおねだり開始です。

・ 小道具担当の女性を既に取り込んでいたおねだり人形。 一人で残業していた女性に近づき、彼女の生気を吸い取ることに成功しました。 しましたっつったって、要は殺人ですよ。 っていうか、吸われた女性は死蝋化してしまうので変死事件ですよ。 当然やってくる刑事さんたち。 しかし演出家はあくまで強気の態度を崩しません。 「あなたたちは事件を解決してください。わたしは演出に戻ります」ってかっこいい台詞を吐いて舞台復帰です。 ほんでもって「そっか・・じゃあしょうがないな」みたいな雰囲気で、特に引き留めもせず署に戻る刑事さんたち。

・ いいのか。 それでいいのか。 いや、よくないだろ。

・ 現場検証も鑑識作業もそこそこに稽古が再開される、異常な「鮮血の呼び声」現場。 まぁ、もっとも異常なのはおねだり人形のおっぱいのデカさなんですけどね。 

・ 再び稽古場。 先輩女優がお芝居のクライマックスパートを演じている最中、それは起きました。 身の毛もよだつ、前代未聞のショック体験! 先輩女優戦慄! 失神者続出! なんと、おねだり人形が目を動かしたのです!

・ 地 味 か !

・ あまりに地味な攻撃だったため周りは誰一人気づかなかったものの、バッチリ目が合ってしまった先輩女優は完全に動揺してしまいます。 楽屋に戻った先輩女優。 そこに忍び寄る黒い影・・・

・ 等身大のおねだり人形が、そこにいました。 なにせ亡くなった長女を模し、職人のお父さんの手によってそのまま作られた人形(まぁ、身体は舞台のスタッフさんが勝手に作ったんですけどね)なもんですからね。 ともかく、でっかいのですよ。 ズバリ成人サイズなのです。 『輪廻』の「いっしょだヨ」人形ちゃんや『サスペリア PART2』のまちゃまちゃ人形みたいなスモールサイズじゃないの。 しかも、ちょっといかついの。 アメフトとかやってそうな感じなんでやんの。

・ 華奢な先輩女優と、ギコギコと追いかけてくるアメフトにんg・・・ おねだり人形。 緊張感もへったくれもないチェイスが繰り広げられ、はやくもわたしのお腹は満腹状態です。 うそみたいだろ・・・まだ始まったばかりなんだぜ・・・

・ テラスに追い詰められた先輩女優は、そのまま手すりに乗り上げ落下。 丁度その場を通りがかっていたぱるるの目の前でべシャっと散ります。 慄きながら上を見上げるぱるる。 そこには手すりから見切れるおねだり人形の姿が・・・!

・ あのね、このシーンはホント不満だらけでしてね、まずは、なんで手すりからそのままスルっと落ちるの?!っていうね。 ここは天窓とかはめ込みのガラスとかをドガシャーンってど派手に割って落っこちてくるべきじゃないですか! ぱるるが下にいようといまいと関係ないですよ! そんなもんはなんとでもなりますよ! 「映画の嘘」ですよ! 人形が主張の激しいサイズなんだから、死に様も派手にしてほしかった! 一人目の小道具スタッフの死に様が寂しかっただけに、ここはもっとやりすぎてほしかった!

・ そして次は、ぱるるが見上げた先にある顔ですよね。 自分が落とした女優を見下ろすかのように覗くおねだり人形の顔。 目玉ぐらいは下を向けてほしかった! 先輩女優をびっくらさせた時も、目ん玉ギロって動かしてたじゃないですか! なんで落とした時は平常心なんですか! 思いっきり下目遣いにすればいいじゃないですか! 「それリングの時に使ったから」? 大丈夫大丈夫! いい表情は何度使ってもオッケー! それにほら、あっちは幽霊でこっちは人形だし!

・ そんなこんなで、ついに二人目の死者を出してしまって絶賛曰くがつきまくり中の「鮮血の叫び声」。 もちろん今回も刑事さんたちは捜査らしきことをしようという微かなオーラは出しますが、そこまで本気という訳でもないのか、ぱるるを呼び出し事情を聴くだけの簡単なお仕事に終始。 「何か知ってる?」という刑事さんの質問に安定の塩対応のぱるる。 いいぞ・・・それでこそオレたちのぱるるだぜ・・・!

・ って、ぱるる推しのみなさんなら仰るんじゃないでしょうかね。 わしはぱるる推しじゃないから知らんけど。

・ 一体誰が小道具スタッフさんや先輩女優の命を・・・? という疑問を抱くぱるる・・と見せかけて、実はぱるるの中では既に正解は越後製菓犯人はおねだり人形ということで、完全に答えが出ていたので、刑事さんと別れたあと劇場に戻り人形と向かい合ってみるぱるる。 しかし、人形をじっと見つめているうちに、ぱるるの表情には何かに魅了されていくような不思議な笑みが・・・

・ ちょうだい・・・ ちょうだい・・・ ・・愛をちょうだい・・ ウォウウォウ・・愛をちょうだい・・ZOO ZOO イエー・・・

・ 愛は「ください」だった。

・ まぁ辻仁成さんのヒット曲のことはいいとして、危うく人形に取り込まれそうだった所を、人形担当スタッフの青年に救われたぱるる。 翌日、またしても強気に稽古の再会を宣言する演出家から、先輩女優の代役に大抜擢されます。 つまり主役です。 理由は「セリフが全部入ってるから」。

・ こ・・れは乙部のりえが北島マヤに変わって「シャングリラ」の巫女リーラ役をゲットした時のアレや・・・!
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・ 人形のことは気になるものの、初めての大役にテンションがあがるぱるる。 テンションが上がっているようには見えませんが、塩が塩キャラメルになっている程度にはハイテンションです。 きっとそうなんです。

・ しかし、かなしいかな、テンションや演技力以前に、ぱるるが主役を張る為には乗り越えなければならない大きな壁がありました。 すなわち、「枕営業」の壁です。

・ 「今晩ザギンでシーメーでもクーイーしながら役の解釈についてじっくり話そうじゃないか・・・」という演出家のスケベ心に、毅然とした態度でNOを突き付けるぱるる。 っていうか、露骨に嫌そうな顔をするぱるる。 演技なのか・・いや・・演技なんだ・・・超自然体にしか見えないし握手会ってこんな感じなのかなって否が応にも想像しちゃうけどけれど、これはあくまでぱるるの演技力なんだ・・・

・ 新人女優に拒絶された演出家は、翌日の稽古からあからさまなイビリを開始します。 ちっちぇえ男だな・・・さすが小市慢太郎さん・・・! そして、おねだり人形の方もアグレッシブに黒目を動かすもんだから、大事なシーンで大失敗をしでかしてしまうぱるる。 ダメ出しに対するショックも少なくないですが、それよりも人形に対する危機感の方が断然強く、舞台の関係者一同にお芝居の中止を猛提案。

・ しかし、二人死人が出ても中止されない舞台が、ぱるる一人の懇願でお開きになる訳もなく、主役はぱるるが仲良くしていた同じく新人女優の香織(足立梨花さん)に変更され、ぱるる抜きでの稽古が始まります。 これだけの大事故が連続して起こっている不吉な舞台なのに、芸能レポーターも週刊誌もまったく嗅ぎまわりに来ないところをみると、ぱるるの所属事務所の取締役はよっぽどアンタッチャブルな存在なのだろうか。 そう、たとえばあらゆる業界人にコネクションを持ち政府とのパイプもがっちりキープしオリンピックにまでいっちょ噛みしている芸能界の超大物プロデューサーのような・・ おやこんな時間に誰だろう

・ そして迎えたゲネプロ(通し稽古)当日。 招待されたマスコミたちを前に、お芝居に熱が入るあだっちぃー。 一方、ぱるるは心配して駆けつけてくれた人形担当スタッフの青年と共に、おねだり人形の謎をあきらかにすべくアマゾン奥地へ向かった。 違った、関東近郊へと向かった。

・ おねだり人形の生みの親である人形師に話を聞くぱるると青年。 「わたしも人形が動くトコみたんです」と叫ぶぱるるに、人形師は重い口を開く・・・

・ 「長女がむごたらしい死に方をしたからキレイな人形にしてあげたら次女と三女を殺されたんですよ」

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・ つまり、「人形にしてあげたら思ったより高クオリティで、そりゃ魂も宿るわなぁ!」という話でとうちゃんビックリな訳ですな。 わかりましたか? わからなくてもいいですよ。 要はスペースバンパイアの人形版ってことですよ。(大雑把に言うと)

・ で、「もういいから人形の処分方法だけおしえてつかあさい」というぱるると青年の問いに、とうちゃんが潔く「しらん」とドヤったら、あとはもう怒涛の死体祭りに雪崩れ込む訳ですね。 

・ ゲネプロ真っ最中の舞台に乱入して「人形に殺られるからみんな逃げてー!」と電波を放出するぱるる → ドン引きの関係者 → 刑事さんも乱入 → 逃げるマスコミ → 訴訟も辞さない激オコっぷりの演出家とあだっちぃー → おねだり人形ドーン! → 死の接吻バーン! → ぱるるガーン! とトントン拍子に進む死体祭り。 尺が足りていない訳ではないと思うのですが、ここまでのスローペースが嘘のような駆け足っぷりです。

・ ただ、じゃんじゃん死んでゆく登場人物のほとんどが効果音だけの出演で、肝心要の死に様は映してもらえないという扱いのぞんざいさはいかがなものか。 女性たちがズンズン(生気を)吸われていくんですよ。 男連中は適当に〆られて終わりですけどね。 でも、吸うのも〆るのもきちんと映してほしかった。 もしかしたら、「血は出すな」と言う制約がA先生から出されていたのかもしれませんが、壁に叩きつけるなり、首をへし折るなり、血を見せずしておねだり人形にその剛腕を奮わせることは出来たのではないか。

・ きっと中田監督もそういうのやりたかったんじゃないかと思うのですよ。 勝手な想像ですけどね。 なんつうか、大変ですよね。 何の制約もなく自由にのびのびと作ることが出来たら、すごいパンチのあるホラーになっていただろうになぁ・・・。

・ 「血は出すな」とは言っても人形は例外だったのか、中盤、おねだり人形の顔から血が滴り落ちるシーンがあったのですが、ここもね、どうせならもっとありえないぐらいドンガドンガ放水させた方がおもしろかったと思いますよね。 うそだろ?っていうぐらいに。 出し惜しみすることなく序盤からぐいぐい人形を出していた割に、ショックショーンはめちゃくちゃ配慮のあとが見えて、すごく消化不良でした。 もちろん、監督は悪くない。 なにもかもA先生が悪い。 ぼくはそう思うことにします。

・ もうひとつだけ勝手な事を書かせていただくと、ぱるるがおねだり人形の頬に剣山みたいな鉄片を突き刺すシーンも、「そこは刺すんなら頬じゃなくて脳天だろ!」って心の中で叫んでしまいましたよね。 確かにズル剥けフランク(fromヘルレイザー)みたいな中身が覗いていたのは頬だけど、なんつうか、絵的に地味なんですよね。 脳天ブッ刺しからの血のシャワーっていう方が絶対に派手じゃないですか。 っていうかね、わたしが脳天ブッ刺しが好きなだけなんですけどね。 ホラーで刺すなら脳天! ホラー以外の場合は知らん!

・ という訳で、いろいろとえらそうなことを書いてきましたが、わたしはこの映画を断然支持します。 ぱるるをはじめとする若手の女優さんたちの「いっちょやったるで」感は劇中の女優たちとリンクしていてたのしかったですし、おねだり人形は歩いているだけで愉快でしたし、「家族思いの長女だったはずが、人形になった途端超邪悪になる」というドス黒い設定も、クライマックスでぱるるが叫ぶ「ちょうだいちょうだいって、あげないんだからー!」という小学生みたいなセリフも、全く嫌いになれないです。 むしろすきです。 実は今までぱるるのこと苦手だったのですが、これからは応援しようという気にすらなりました。

・ 「あげないだからー!」の一撃で、人形に引導を叩きつけたぱるる。 その後、「凄惨な現場から生還した女優」として一躍スターダムに躍り出た彼女は、新作の撮影現場でなにものかの視線を感じ振り返ります。 その先にあるのはおねだり人形の首。 

・ ぱるるの目は、ヤツの顔をとらえたのでしょうか。 彼女の姿をもの欲しそうに眺める人形。 それはまるで、スターであるぱるるに羨望と嫉妬の眼差しを向ける数多のアイドル志望者たちのようにも見え。 

・ 死屍累々なこの世界で、ぱるるはくるりと踵を返し、人形に背を向け未来に顔を向けます。 誰かが倒され、引きずり降ろされるまで終わらない闘いに挑もうとするぱるるの表情はあまりに凛々しく、悲しげで、しかし力強く、わたしはなんだかもうめちゃくちゃグっときてしまったのでした。  この表情を導き出した中田監督はすごいし、応えたぱるるもすごいと思います。 ホラーと呼ぶには厳しい映画でしたが、「若さ」や「美しさ」ばかりが「女性」としての価値とされることの怖ろしさは充分感じられましたし、実録業界モノとして観てもなかなかゾッと出来るおもしろい作品だったのではないでしょうか。






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