ブログパーツ

『エスケイプ・フロム・トゥモロー』

2015年04月13日
escape_from_tomorrow_ver2.jpg

「トゥモローからエスケイプする」だなんてタイトルだもんで、まさか「サザエさん症候群」みたいな映画じゃあるまいなぁ・・と思ってたらまさかのまさかでござった。


※ 以下ネタバレしています。



あらすじ・・・
さーて、今回のエスケイプ・フロム・トゥモローは?
平凡なアメリカのマイホームパパ・ジムです。 休暇を利用して家族で訪れたディズニーリゾート旅行も残すところあと一日。 明日のことなんて考えず、最終日もたっぷり楽しむぞ~!と意気込んでいたら、上司からのモーニングコールで思いっきり解雇されました。 寝耳に一斉放水です。 もちろん妻には言い出せません。 もう、明日なんてこなければいいのに! 
ということで今回は 「都市伝説は本当だった」 「出来れば妻以外も抱いてみたい」 「夢の国から出たくない」 の3本です!




■ 「都市伝説は本当だった」

「夢と著作権の王国ディズニーランド」で無許可撮影にチャレンジした意欲的な作品。という宣伝文句ばかりが目立っていたため、果たして内容の方はどうなっているんだ?といくばくかの不安を抱えつつ鑑賞に臨んだわたしだったのですが、いざ観てみたらなんつうか、すごくゲスくって、すごく憂鬱で、すごくディズニー愛が詰まっている怪作で、こりゃたしかにディズニーランド内でないと撮れないわなぁ・・と納得してしまったのでした。

一見相反しそうな、「ディズニー愛」と「ゲス」の結晶。 
それは何かというと、わたしたちにも馴染みの深い「ディズニーの都市伝説」でありまして。

かわいいトコロでは 
「カラス避けの謎電波が放出されている」 
というものから、ちょっとアダルティな 
「ディズニーの地下には会員制の秘密クラブがある」 
というもの、さらには 
「ディズニーでは臓器提供目的の児童誘拐が頻発している」
「スペ-スマウンテンの天井にはお札がビッシリ貼ってある」
「スモールワールドに幽霊が出た」 
といった物騒なものまで各種出回っているディズニーの都市伝説。
どうしてここまで、わんさかと伝説が湧き出るのか。
それは人々が「なんだかんだいってもディズニーランドは夢の国なのだ」と信じているからなのではないかと思うわけですよ。
「みんなが認める夢の国」だからこそ、その中におどろおどろしいものも潜んでいると言わずにはいられない。
たとえ夢の国でも、悪いことは起こるんじゃねーの、いや、起きてるんじゃねーの?というゲスい好奇心が、ディズニーの都市伝説の源なのではないか。

で、驚いたことに、どうやらこの手の都市伝説は本国アメリカにもバッチリ存在しているようで、本作には先ほど述べた都市伝説の一部がなんとそっくりそのまま登場します。 すごいよ都市伝説! やっぱ考えるこたぁみんな一緒なんだね!
その他にも、スモールワールドに幽霊は出ないものの、人形の中に怖い顔をしたヤツが混じっていたり、スペースマウンテンではなくビッグサンダー・マウンテンの方に死人が出たりと、日本でも流布しそうなネタが続々登場。
なお、オチに登場するネタは
「ストレスで精神崩壊したプリンセスの中の人がハグしていた幼女に鯖折りをお見舞いしたのち闇堕ちする」
というウルトラド級のネタです。 なるほど、ありそう・・・ ・・っていうかゴメン!さすがにこれは聞いたことない!
あと、
「現役プリンセスの正体は高級娼婦で、裏でアジアの富豪に抱かれている」
というネタも出てくるのですがなんかもう発想がおっさん! 

さまざまな都市伝説を本物のディズニーランド内で再現してみせた、というこの一点だけでも、その心意気やよし、と言いたくなりますし、ランディ・ムーア監督のディズニーに対する偏愛に胸が熱くなってしまいました。 オレはすきだよ、ランディのそういうとこ。


■ 「出来れば妻以外も抱いてみたい」 

ディズニーランドのような「夢と権利に厳しい国」の非現実的な甘さに浸れば浸る程、おのずと浮かんでくるのが現実への不満なのではないでしょうか。

そうでなくても「旅行中の夫婦喧嘩」というのは、犬が食わない一方弁護士のメシの種になりかねない危険なものですが、ここディズニーが舞台ですと、周りじゅうが浮かれまくっているだけに普段以上に些細なことが喧嘩のきっかけとなると思われます。 もはや魔法どころか黒魔術です。
本作の主人公・ジムとその妻エミリーもまた、まんまとその魔術にはまってしまい、これから入園しようというトコロでまずは子どものしつけを巡りひと悶着。
移動用のモノレールに乗れば、肌露出の多い同乗者のチャンネーを前に、鼻を伸ばしたり睨みをきかせたりで一触即発。
ランドに着けば、今度はアトラクションに乗る乗らないで子どもを交えピリピリムード。
思うような行動をとってくれない子どもへの苛立ちは、そのまま配偶者への不満へと変換され、徐々にお互いへの信頼感を失って行くジムとエミリー。
現実世界なら解決の糸口を探ろうとするところが、極彩色の立て看板とハッピーな音の洪水に思考を遮られ、「せっかくの旅行なのに」「たのしみにきたのに」というポジティブなプレッシャーで自分自身を追い込んでしまうことに。

「テンションあげなアカン」とばかりに妻にキスを迫るジムに、「子どもの前で何しとんねん」とばかりにマジ拒絶するエミリー。
「そういわんとダンスでもしようや」と手をつかもうとするジムに、「頭おかしいんとちゃうか」と冷やかな一瞥をくれるエミリー。
「こうなりゃ飲むしかない」と酒を浴びるジムと、最初こそたしなめようとするもバカバカしくなり完全に放棄するエミリー。
「テンションの差」という一言で片づけるには、あまりにあんまりな極寒地帯!
もうこの夫婦のヒリヒリとした空気感がすごい!
ぼんやりしてたら 「ブルーバレンタイン」並に削られるぞ!気をつけろ!


妻にとっては、毎日繰り返しているだけでごくごく当たり前になっている育児のマイルールが、ジムにとっては理不尽な命令としか感じられないとか、なにもここまでリアルに描かんでも・・・と戦慄してしまうような夫婦あるあるネタがギュっと詰められており、「きっとこれはこの旅行に限ったことではないのだ。そして数年前から既に、この夫婦にはズレが生じていたのだ。夜の営みの方もアレなのかもしれない。なんだったらジムはアッチの方の機能が(ry」というゲスパーまでも刺激してくれるのですが、もしやランディ・ムーア監督は過去にディズニーでイヤなことでもあったのでしょうか。
いいんだよランディ、オレに話してごらん。悪いようにはしないから。

ということで、家族に安らぎを見出せないジムは、必然的にそのリビドーを「パーク内で目についた女性相手の妄想」という形で放出させることに。 もうギャルから熟女まで手当たり次第の様相ですよ。
あのさ、ランディさ、ディズニーランドは夢の国だけど、そういう意味の「夢」じゃないからね!
いちいち射精やエレクチオンのイメージ挿入してくるのもね、「高く吹き上がる噴水」っていう抽象的なものならまだしも、「チェンネーがかぶりつくバナナ」とか、しまいには「白い物体でBUKKAKEプレイ」なんつう身も蓋もない描写になっちゃったりしてホント繰り返すようだけど発想がおっさん! ランディの愛読書は週刊現代か!


■ 「夢の国から出たくない」

都市伝説とリアルすぎる夫婦生活の危機を詰め込んだ本作ですが、それらをまとめる柱となっているのが「明日なんてこなけりゃいいのに」というサザエさん症候群、いや、ブルーマンデー症候群でありまして。
ただでさえ憂鬱な「休暇の最終日」に「解雇通告」が加わり、休みが終わらないどころか休みの終わりが見えないという究極の鬱状態陥ってしまうジム。
ジムが体験する都市伝説や、ジムが直面する夫婦の危機や、魅惑のチャンネールームのどこからどこまでが現実なのかわからないような作りになっているため、観ているわたしまでジムの戸惑いを強制的に共有させられます。
一部分だけが妄想なのか。 パーク内で起きたことが妄想なのか。 もしかしたら、冒頭モーニングコールを受けて以降のすべてがジムの妄想なのかもしれない。
夢とは決して美しいものでもたのしいばかりのものでもない。 不愉快な出来事が延々と続くのもまた夢なのですよね。
それでもジムは、その夢から出たくなく。 
なぜならどれだけ不快でも、どれだけ自分を傷つけても、しょせんそれは夢だから。 
現実ではないから。

物語の中盤、地下に設けられた秘密基地でのやりとりの中で、ディズニーランドはジムにとってずっと昔から特別な場所だったのだ、と思わせるシーンがありました。
ジムはディズニーランドを愛していた。 ジムにとってディズニーランドは文字通り「夢の国」だった。 
わたしは、旅行先にディズニーリゾートを選んだのもジムなんじゃないかと思うのですよ。
自分がたのしみたいがために来たジムと、子どもをたのしませるために来たエミリーが揉めるのは無理もありませんし、あれが妄想だったとしても、ジムの中に「オレはおまえよりもディズニー好き」という意識があったのならいろいろと頷けるのですよね。

妄想なのか現実なのかわからないまま、ジムは家族が眠る寝室の隣で毛玉を吐き、猫化して息絶えます。
ジムを回収に来た白いバンは、ジムがモーニングコールを受けていた時と日中ホテルに戻った時目にしていたのと同じ車で、助手席から降りてくる男がとる仕草も同じです。
男は仲間の作業員とともにジムの痕跡を丁寧に消し、ジムを見殺しにした息子の頭にたのしいアトラクションの記憶を植え付けます。
エミリーもまた、夫を失った悲しみに暮れていたものの、手に握ったスーベニアのベルを無意識に振り始める。
彼らに訪れた不幸が、みるみるうちに美しい思い出へと書き換えられてゆく。
この辺の、「ランドで死亡事故があっても特殊作業員が事故そのものをなかったことにする」というエピソードもまた、いかにも都市伝説っぽくていいですよね。 ランディは最後の最後までねじ込んでくるねー!強気だねー!

クライマックス、作業を終えたバンとすれ違うようにホテルにやってきた車から降り立つのは、秘密基地の中でジムが見た妄想の中の自分です。
ネズミの天敵・猫の姿で不本意な人生を終わらせた、つまり、ミッキーと自分にとっての「悪」を抱え込み一緒に排除したジムにもたらされるのは、永遠に終わらない夢なのでしょう。
ただし、今度は都合のいいことしかない癒しの夢。 
だいすきなディズニーランドと共にある夢。

おめでとうジム! おめでとうランディ!
本人たちにとっては最高のドリームズカムトゥルーだけど、観ているわたしにとっては「疲れをとりたくて寝たのにイヤな夢ばっか見て余計に疲れた」みたいな居心地の悪いひとときを与えてくれてありがとう! 


■ おまけ

・ だいたい、ディズニーランドが夢の国だなんて誰が決めたんだって話ですよね。 うちのいもうとちゃん(10歳)なんて、最初に乗った白雪姫のアトラクションが謎の「魔女ばあさん推し」だったせいで、そのあとはもうどのアトラクションも「やだ!こわい!」と完全拒否状態でしたからね。 まさしくリアルナイトメアですよ。 いまだに「もうディズニーランド行きたくない」と語るいもうとちゃんにとっては、ジムさんの妄想は現実なのかもしれません。 っていうか本編のしょっぱなにも同じ白雪姫のアトラクションが出てきてオラなんだかドキドキしたぞ!(こわがるポイントって万国共通なのでしょうね)

・ 結局シーメンス社の陰謀ってなんだったの。 ジムさんの妄想パワーが欲しかったのか、ジムさんの息子が狙いだったのか全くわからん。その割にはさらわれたの娘でしたし。 なんや、辻褄合わせる気ゼロか。 ぜんぶ妄想ってことで乗り切る気満々か。

・ シーメンス社の担当者が、ジムさんの妄想パワーをこともあろうにウォルト・ディズニーと並べて絶賛するシーンもすごいですよね。 だって、ジムさんの妄想ってことはつまり、ランディの妄想ってことですよ。 遠まわしにランディはウォルト・ディズニーと同じレベルだって言っちゃってるんですよ。 これほどまでに壮大な自画自賛がかつてあっただろうか!いや、ない!

・ あんなに愉快なアトラクションの数々が、その色調をモノクロに変換されただけで、ここまでたのしくなさそうな乗り物になるとは予想外でした。 こんなつまらなそうなハニーハント見たことないもん! なにあのハリボテ感! 返せ!オレのハッピーな刷り込みを返せ!

・ 詰め込みすぎてごちゃごちゃしてしまった感もありますが、悪夢ってそういうもんだろ?という気もしますし、ザックリでしたが本場のディズニーの雰囲気も味わえて、わたしはたのしく鑑賞しましたよ。 

・ 最後のシーンをティンカーベルが飾ることから、ジムは彼だけの「ネバーランド」に辿り着いたのだろうなぁと思いました。 「救いがないのが救い」みたいなオチですが、これはこれでアリなのではないでしょうか。 まぁもうジムにはすきにしてもらうとして、奥さんと子どもさんたちには幸せになって頂きたいものですねぇ。




     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。