『マレフィセント』
2014年07月14日
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(※ 不気味の谷へようこそ!)
ねえお母さん。マレフィセントにはこういう事情があったんだとしたらさ。
そしたら、シンデレラのまま母にも、何かあったのかもしれないよね。
だって、シンデレラのお父さんと結婚する前は、ドリゼラとアナスタシアのお父さんと結婚してたんでしょ?
・・そのお父さんって、どんな人だったんだろ・・?
― ちびっこさん ・ 12歳 ・ 中学一年生 ―

(※ 未知なる
あらすじ・・・
オーロラ姫が16歳の誕生日を迎える前日まで、比較的ゆるやかに監禁されます。
(※ 以下ネタバレしています)
でっかい角とでっかい翼とでっかい頬骨で、アンジェリーナ・ジョリーことジョリ子さんが八面六臂の大活躍です!

(※ 荘厳な角が印象的なジョリ子さん)(※ イメージです)
■ 第一章・千の仮面をもつジョリ子
ディズニー映画の古典にして、映画史に輝く名作 『眠れる森の美女』 が生まれ変わりました!
「出産祝いのパーティに招待してもらえなかった魔女が、妬み・嫉み・僻みの末、何の罪のない赤ちゃんに呪いをかけるも、たまたま通りかかった王子さまにバッサリ退治される」
という気持ちのいいほどの勧善懲悪ストーリーを、新たな視点で練り直し、心温まる愛情物語へと模様替え!
悪い人も、悪そうに見えて実は悪くない人も、悪そうに見えて実際悪いんだけど根っからのワルっていう訳でもない人も、悪そうに見えて実際悪くてもその裏には諸事情が隠されていて嫌々ワルぶっているだけの人も、いい人も、とにかくなんでもござれな演技派・ジョリ子さんをタイトルロールのマレフィセントに据えれば、もう大方準備は万端です。
脇に渋めの俳優さんをキャスティングしたらば、ストーリーのカギを握るのはすべてジョリ子さんにお任せ!
オーロラ姫の栄養管理をするのもジョリ子さん、
オーロラ姫に愛情を注ぐのもジョリ子さん、
オーロラ姫に王子様を調達するのもジョリ子さん、
オーロラ姫を守り抜くのもジョリ子さん、
おいしいトコロは全部残さずジョリ子さんというこだわりっぷり!
なんつったって、原作童話やオリジナルアニメでは「いい妖精」の見せ場だった「呪いの解き方説明」まで、ジョリ子さんに言わせちゃうっていうんですからね。
そしてそして、途中で見ている観客のほとんどが薄々感づいてしまっていたと思いますが、例のあのお役目をかっさらうのも勿論ジョリ子さんです! うん! そうだと思った!
もはや、ジョリ子とその他のみなさん、と呼んでもそんなに差し支えないのではないかと思うほどの「劇団アンジェリーナ・ジョリー」っぷり。 ありがとうジョリ子さん!ぼくたちみんな、お腹一杯です!
■ 第二章・痴話ゲンカ
物語を一新させたとはいえ、基本的な
「誕生 → パーティ → マレちん激おこ → 軟禁 → 糸車 → キス」
という流れ自体は、広く知られたオリジナルストーリーそのまま。
では、何が大きく変化しているのかというと、いうまでもなく、マレフィセントの半生についてでして。
映画の冒頭、美しい妖精の国・ムーアをめくるめくスピードで縦横無尽に飛び回る、幼き日のマレフィセントが画面いっぱいに映し出され、彼女の中に悪意などは微塵も存在しないということや、「支配者」のいないムーア国ではあるものの、彼女が周囲から特別視されていることがみっちり描かれます。
そして突然訪れた、運命の出会い。
隣国である人間の国から迷い込んだ貧しい少年・ステファンが、ムーア国の宝石をポッケにナイナイしようとしたのです。
盗人と気高き妖精という噛み合わない事この上ない間柄でありながらも、お互い孤独を抱えていたことなどからみるみるうちに惹かれあう、ヤング・ジョリ子とステファン少年。
そう、宝石こそ速攻で返却したものの、少年は大変なものを盗んでいきました・・・ ジ ョ リ 子 の 心 で (ry (←ホントにこういうナレーションがある)
しかし、結局「欲深い」人間であるステファンは、成長と共に「国盗り」への野心を強く募らせてゆくことになり、一方のジョリ子さんはというと、そんなステファンが再び自分のもとに返ってくる日を、人間たちの侵略を阻止しながらひっそりと待ち続ける日々。
そんなこんなで数十年が経過し、出来ればジョリ子さんとの直接対決は避けたかったステファンの前に、千載一遇のチャンスが舞い込みます。
それは、「ムーア国の守護者であるマレフィセントの命を奪った者に王位を授ける」というもの。
「別にキライになったわけじゃないんだけど、出世のためだし、しょうがないよね?わかってくれるよね?」とばかりにジョリ子さんを裏切る決意を固めるステファン。
結果、愛情と信頼を踏みにじられ、彼女の尊厳の象徴でもあった翼を切り取られてしまったジョリ子さん。
・・・あのさぁ・・・出世のためっつったって、もうちょっとやり方あったんじゃねえの・・・
長いことつきあってたんだしさぁ・・・
なにも翼切っていかなくてもいいと思うんだよね・・・・ しかもすげえ雑・・・切り口・・・ ・・超おおざっぱだし・・・
消毒とかの概念・・ないよね・・・? ・・ばい菌とか・・・ マジ勘弁・・・
てかさぁ・・おまえさぁ・・・白雪姫とか読んだことないの・・・? ・・姫を殺す代わりに鹿の肝持っていこうとか、そういうトンチは働かなかったわけ・・?
・・・なに・・? やんの・・? 全面的にやるつもりなの・・? ほんならやったろうじゃねえの!!

(※ そしてここに至る)
で、一番怒らせてはいけない妖精に火をつけてしまったステファンですが、彼にしてみれば、本来なら命をも奪える状況下でありながら翼だけで勘弁してあげたオレ超マーシー(※元シャネルズのあの人ではなくて慈悲深い方のmercy)ぐらいの解釈でいたのですよね。
なので、そんな自分の誠意を理解してくれないどころか、勝手にパーティに押しかけるわ、お客さんの前で恥はかかせるわ、自分ではなく娘に呪いをかけるわの元カノに対し、素直にアイムソーリーを通り越してすっかり「貴様何してくれてんの」状態ここに極まれりという感じなわけで。
お互いに互いへの恨みで目の前が濁りまくっている二人が進む道は、どうなることか。
おわかりでしょうか。
そう、国の存続をかけた、壮絶な痴話ゲンカです。
元カノへの執念で、国中の兵隊や鍛冶職人に無茶ぶりを繰り返すステファンも王様としてどうかと思いますし、ステファンへの復讐心で、触るものみな傷つけるオーラをばしばし出して妖精たちをビビらせまくるジョリ子さんも、はたから見ればかなり困ったタイプの妖精だとぼかぁ思いますね。
ムーア国のみんなも人間のみんなも、いい加減「コラー!」って言ってもいいんじゃないかな!かな!
■ 第三章・真実の愛
ということで、誕生早々、呪いを恐れたステファンによって、3人の妖精に丸投げされた不憫なオーロラ姫。
そんな彼女を物陰から見つめる1人の妖精。
そう、ジョリ子さんです。
子育て経験も子育て意欲もない妖精トリオの体たらくっぷりに業を煮やしたジョリ子さんは、お供のカラス人間と一緒に、陰日向となりつつオーロラ姫の全面フォローを開始。
かくして15年の歳月は、ジョリ子さんをオーロラ姫にとっての親友、そして師匠、そしてなにより、母のような存在へと成長させていったのでした。
もちろん既に、ジョリ子さんは気づいてしまっていました。
元カレが憎いからといって、その子どもには何の罪もないことを。
無垢な子どもの微笑みよりも美しいものなど、この世には無いということを。
しかし、一度Twitter上に書き込んだ
どれだけ彼女がそれを悔いても。
自分が犯した過ちを、なかったことにしたくても。
わたしはこのくだりが、本作で一番強く伝えようとされていたコトだったのではないかと思ったのですよね。
人は、まちがう。
感情が抑えられず、やらなくていいことをしでかしてしまう。
残念ながらその行為は、自分や周りの人たちの人生に、二度と消えない痕を残してしまう。
ならば私たちは、どうすればいいのだろう?
開き直って、他人に責任転嫁しながらやり過ごしてゆく?
一生自己嫌悪に苛まれながら、我が身を呪って生きてゆく?
いや、大切なのは、過去と向き合い、あやまちを認めたうえで、二度と同じ愚行を繰り返さないことなんじゃないだろうか?
何もかもなかったことにしてスタート地点に戻ることはできない。
けれど、反省し、新たな道を進むことはできるはず。
傷つけてしまった人や、傷ついてしまった自分自身を癒すことは、できるはずだし、してもいいんじゃないだろうか。
死の眠りについたオーロラ姫の呪いを解く、「真実の愛」。
マレフィセントによってもたらされたそれが、オーロラ姫だけではなく、マレフィセントをがんじがらめにしていた呪縛をも解放したシーンは、なんだかとても希望に満ち溢れていて、「そうだそうだ!これからのディズニーには王子なんか必要ない!男なんかいなくてもいいんだい!」みたいな脊髄反射的な感想を言う気になど、とてもなれなかったのでした。
■ 第四章・華やかな雑魚キャラ
雑魚キャラ・その1 「王子様」
って言ってはみたものの、やっぱりヒドイ! ディズニーさん「王子なんかいらね」色強すぎ! ステファン王に会いに行く道中、ムーア国で迷子になっていたフィリップ王子は、たまたまそこに居合わせたオーロラ姫に一目ぼれ。 で、「お城ならあっちですよ」と教えてくれた姫を「じゃあ帰り道でまた会おうね!」とかなんとかちゃっかり口説きつつ、とりあえずその場を後にするのですが、結局ずっと迷子のままで、オーロラ姫がマレフィセントと揉めて、お城の父ちゃんに会いに行って、奥の部屋で糸車にグッサリ指を刺されてる間も、がっつり森の中さまよってましたからね、あいつ! 結果的にオーロラ姫にキスはできるものの、自力で辿り着いたわけではなく、ジョリ子に搬入してもらっただけという! 残念! 超空気!
雑魚キャラ・その2 「オーロラ姫のおかあさん」
なんぼ「ジョリ子とオーロラの真実の愛」がメインやいうても、オーロラ姫のお母さん(王女さま)の扱いが鬼ヒドイ! 鬼畜な父ちゃん(王様)に自らの婚姻を戦果のエサにされ、野心家のステファンと愛のない結婚。 挙句、産んだばかりの娘は取り上げられ、失意にうちに病を患い、婿(ステファン)に看取られることもなくひっそり死亡て! そりゃ生きていたら、呪いが解けた娘を巡って、 「あたしの子よ!」「なによ!育てたのはあたしよ!」っつって、ジョリ子さんと揉めること確実でしょうから、退場願われるのも致し方ないのかもしれませんけどね! ひゃあー!大人の事情はこわいでおますなぁ!
雑魚キャラ・その3 「妖精トリオ」
先にも書きましたが、オリジナルアニメでオーロラ姫を愛情たっぷりに育て上げた、勇気と愛とまごころの三色妖精の扱いがマジでヒドイ! マレフィセントがかけた呪いを中和させる役目を取り上げられるのみならず、乳飲み子のオーロラ姫がおなかをすかせて泣いていても、耳に綿を詰めて就寝しちゃう鬼畜設定を施されちゃう三色妖精! なんかつったら仲間内でディスり合い、常に不平不満をまき散らし、足を引っ張り合う三色妖精! 内輪もめはオリジナルでもあった描写なのですが、圧倒的な可愛げのなさで、観ているうちに心が荒んでくることまちがいなス!

(※ 晩ご飯はクモの丸焼きですよ~!)
ちなみに、冒頭のシーンでは、妖精のうちの一人がマレフィセントにヤッカミを抱いていたことまで描かれるという念の入りようですから、いかに本作において三色妖精が「ワルモノ」として扱われていたか、よくわかりますよね。 あのね、マレフィセントをいい人にするのは、別に構いませんよ。 ただ、マレフィセントを引き立たせるために、三色妖精を下げる必要は無いんじゃないでしょうかねぇ。 わたしは昔から三色妖精もマレフィセントもどちらも大好きだったので、ちょっとこの改変は納得いきませんでした。 (まぁ、いちおうオリジナルとは別の名前がつけられていましたけどね)
雑魚キャラ・その4 「木の髭」
ムーア国の武闘派代表として、中つ国のエント族にそっくりな木のおじいさんが登場し、人間どもを蹴散らすのですが、どうみてもジョリ子さんにアゴで使われている感が否めない。 初戦闘シーンでこそ、出動を乞うジョリ子さんに応えた形になっていましたが、彼女がステファンにヒドイことをされピリピリムードになった途端、空気を読んで「しもべ妖精」と化していましたからね! まぁ、ジョリ子には逆らわんほうがええとは思うけども! 特に怒った時のジョリ子にはね! でももうちょっと威厳とかさぁ・・・そういうニュアンス出していこうよ・・・ 人生経験多そうなんだし・・・
■ 第五章・表と裏
初めての恋に浮かれ、初めての恋に破れ、心が醜くゆがんでしまたジョリ子とステファン。
その後彼らが選んだ道は、彼らの人生をまったく異なる方向へと導いていきましたが、もともとはジョリ子さんもステファンも、コインの表と裏のようにひとつながりな存在だったのではないかと思うのですよね。
未知の世界への興味、情熱的な性格、尊大さ、傷つきやすさ、気性の荒さ、そして「愛」への不信感・・。
オーロラ姫の純真な魂に触れることで、ジョリ子さんが自らを縛り付けていた呪いから解き放たれたように、ステファンもまた、もしもオーロラ姫を手元から遠ざけず一緒に暮らしていたならば、「愛とはなにか」ということに気づいたかもしれない。
まぁ、そもそもの二国間の争いに対し、「中立の態度を貫き仲裁にまわる」という方法を選ばなかったステファンには、ジョリ子さんのような「高潔さ」はなかったのかもしれませんけどね。
似ている所もありながら、真逆の結末を迎えてしまったジョリ子さんとステファンの姿から学ぶべきモノは、決して少なくないのではないかと思いました。
なにはともあれ、ちびっこたちもわたしも大満足です!
ああおもしろかった!
― おまけ ―
・ オーロラ姫の純度100%な笑顔に、まんまとしてやられました! これは説得力あるわー!いい人になってまうわー!
・ カラス人間ちょうかっこいい!
・ たとえ相手がジョリ子であろうと、行き過ぎた時には勇気をもって諌め、くじけている時には真摯な心で励まし、窮地に陥れば命がけで守ろうとするカラス人間は、映画 『マレフィセント』 の良心です!
・ 赤ちゃんの頃からオーロラ姫を見守ってきたカラス人間もまた、純粋に姫を愛して(恋愛的な意味ではなく人として)のではないかと思いますので、ひょっとしたらオーロラ姫にかけられた呪いはカラス人間の熱いベーゼでも解けたのかもしれませんよ! ためしてガッテン!
・ なんかこれ、前にも書いたような気がする・・・! ガッテンガッテン!!

