『アーミー・オブ・ザ・デッド』(Netflix独占配信)
2021年05月23日

一部の人はだいすき、そのさらに一部の人はとってもだいすき、そのまたさらに一部の人はザックの作るものならなんでもどんなんでも多少アレなトコがあろうともだいかんげい、という愛され監督ザック・スナイダーさんの長編映画復帰作となる『アーミー・オブ・ザ・デッド』を観ましたよ!
映画ファンのみなさんは、ザックさんが『ジャスティス・リーグ』を降板せざるを得なかった当時の事情などはご存じでしょうし、改めてご説明する必要もないでしょうが、とにかく世界じゅうのザックファンはこの日がくるのを待っていました。
内容や代役監督によるハラスメントなどで、結局評価がパッとしなかった『ジャスティス・リーグ』を、ザックが再編集して本来の形でリリースするというニュースにも心躍りましたが、やはり観たかったのはオリジナル長編。
急がせる気はないけど、ザックの気持ちが落ち着いたらいつでもまた映画作ってね・・・みんな待ってるから・・・ という静かな願いが、「Netflix独占配信のゾンビ映画で戻ってくる」という吉報で満たされた日のことを、ファンは忘れないでしょう。
忘れないですよね? ・・・えっ?観るまではわからない? だって相手はザックだから?
あなたのよみはおおむねただしい!
あらすじ・・・
始まりはひとりだった。
アメリカ軍が厳重な警備のもと輸送していたコンテナ。
その中に、それがいた。
不運な事故からコンテナが破損しそれが世に解き放たれた時点で、人類の命運は尽きていたのだろうか。
瞬く間に広がるゾンビ禍を食い止めようと、都市を火の海にするアメリカ軍。
しかし死者の群れには効果がない。
死んでいる彼らは歩みを止めず、ただひたすらに目の前の肉を貪り食う。
人類は、彼らを囲うしかなかった。
高い壁を築き、生きたものから隔離するしかなかった。
しかし、隔離されたのは本当に彼らだったのだろうか。
自由を奪われ、政府に監視され、生と死のあいまいな境で一日一日を過ごすしかないのは誰なのだろうか。
我々の命運は、やはりすでに尽きているのだろうか。

AKIRAっぽいマントのゾンビが出てくるよ!名前はゼウスだよ!
(※ 以下最後までネタバレしています)
いやぁ、観るまでわからないといいましたが、これが観たらさいこうにおもしろかったんですよね! 最初のオープニングが!
軍隊がコンテナを運び、コンテナから最初のひとりが外に出てあっという間に軍隊を全滅させると、その眼下にはきらびやかなラスベガスのイルミネーションが一面に広がる。
オッケーエブリワン、それでは聴いていただきましょう、ビバ・ラスベガス!
粋な音楽とともに描かれるのは、ザック印ともいえる美麗なスローモーションによるゾンビ禍。
そこから主な登場人物の紹介とラスベガス封鎖までを一気にダイジェストで魅せてしまうこのオープニングの、なんと贅沢でなんと濃厚なことか。
もうこの時点で、「おかえりザック!今回も優勝だね!」と思いましたよぼかぁ。
いや、この時点では。
なんでしょうね、ザックはね、いっつもオープニングだけなら優勝なんですよ。
めちゃくちゃに状況説明がうまいし、はちゃめちゃにかっこいいし、どちゃくそワクワクするんです、オープニング。
ちがうちがう、それ以外がダメなんて言ってない。 むしろわたしはザックだいすきですからね。最初に書いたやつのなかだと三番目のアレですもん。
実際、べつに悪くはなかった。 オープニングからあとも、悪くはなかった。
鑑賞前にはおたのしみ倍増要素でしかなかった2時間半弱の本編時間が、観終わる頃には「中身薄々なのにどうしてこんなに長くなってしまったのか・・・」というマイナス要素に変わっていた哀しみがあったぐらいで。
まず、物語のエンジンである動機がうすい。
封鎖されてしまったラスベガスにカジノを所有していたブライ・タナカこと真田広之は、腕に自慢アリな人たちに声をかけ、地下の金庫に置いてきたままの現金2億ドルの回収を依頼します。
ちなみにこの2億ドルは保険会社で補償済みなので、別に回収しなくても痛くないんですよ。
ただ、存在しないことになっているお金なので、もし手元にあれば非課税だわ申告不要だわでウハウハじゃないですか。濡れ手に2億ドルじゃないですか。日本円で210億ぐらいじゃないですか。一億でいいからわけてほしい。わるいようにはしないから。
で、無事回収できたら4分の一の5000万ドルをくれるという話にのり、以前ラスベガスからのサバイバルに成功していた猛者たちが、ゾンビがうじゃうじゃいるかの地へと戻ることになるのですがおやこれなんか観たことあるな。
得体のしれないものどもがわんさかいる危険な場所に腕自慢たちが乗り込まされるやつ・・・あるじゃん・・ 対エイリアンとか対無法者とか対ゾンビとか対おばけとか・・・すげえありがちなやつじゃん・・・
まぁね!舞台はありがちでも、大事なのはそこに向かう理由ですからね!そこにドラマがあるわけですから!
よし、じゃあチーム猛者のごきげんなメンバーを紹介していくぜ!
猛者その1・ウォード(取り分1500万ドル)
ラスベガスを脱出してから飲食業でほそぼそやってたけど、あんまりやりがいないし私生活もどん底だし、たとえ回収に失敗して死んでもこのままバーガー焼いてるよりはマシだから。
猛者その2・ウォードの仲間のマリア(取り分1500万ドル)
ラスベガスではめちゃくちゃ人助けしてたから、たまには自分の一攫千金のために動いてもいいかなって。
猛者その3・ウォードの相棒のヴァンデルローエ(取り分1500万ドル)
せっかく命からがら脱出したラスベガスに戻ることの意味はわからないけど、同じ人間をゾンビというだけで殺しまくってきた自分の魂を浄化するチャンスかも。
猛者その4・ヘリ操縦士のピーターズ(200万ドル)
今の人生に心底うんざりしているし、大金があれば人生が一変するはず。
猛者その5・YouTuberのグーズマン(50万ドル)
ゾンビを撃ち殺す様子を動画配信してるけど、もっとお金がほしいから。
猛者その6・鍵屋さんのディーター(25万ドル)
超尊敬する金庫職人が作った伝説の金庫を開けてみたいから。
猛者その7・グーズマンの仲間のチェンバーズ(要相談)
グーズマンがお金をわけてくれるから。
猛者その8・カジノの警備責任者のマーティン(無給)
タナカさんの部下だから。
猛者その9・隔離区域に住むコヨーテ(不明)
ラスベガス真横に作られた隔離区域で暮らしていてかなりの事情通だから。
猛者その10・隔離区域の監視員のカミングス(2万ドル)
お金がほしいから。
理由うっすいな! っていうかこれほんとに猛者の集まり?最初の3人ぐらいしか猛者いなくない?こんな装備でだいじょうぶか?
あと、5000万ドルの割り振り方はウォードに一任されていたのですが、だいぶ気まぐれに決めとるな。
ヘリが高額なのはわかるけど、金庫破るのも相当大役じゃないですかね。
観客はこの内訳を知っているので、あとあとこの偏りのある配分が猛者たちにバレてひと悶着起きるのではないか、いや、むしろ起きてほしいと心配で胸がワクワクしてしまいました。
(※ バレませんでした)
お金が欲しいというならそれだけで充分な気もしますし、仲間を失いながらもせっかく脱出できたラスベガスに戻るにはまったく足りない気もしますが、とりあえずヴァンデルローエさんの「自分の魂を浄化できそうだから」は完全に意味がわからん。自分でも「戻る意味がわからない」って言っちゃってるし。あれかな?一種の連れション感覚なのかな?友達みんな行くし・・・みたいな?
さてさて、「やばい、このままじゃあドラマが薄すぎる」、そうお考えのみなさんご安心ください。
ここからが本作一番のドラマ、いやむしろ本作唯一のドラマであり、きっとザックさんがもっとも伝えたかった部分ですよ。
ウォードさんには娘のケイトさんがいました。
ケイトさんはゾンビ禍で危機一髪のところをウォードさんによって救い出されました、が、その方法というのは「ゾンビとなり自分を襲おうとしていた母を父であるウォードが撃ち殺す」というとても非情なもので、しかもウォードさんは愛する妻を手にかけたショックと、妻に似ている娘を直視できないという理由から、脱出以降娘と距離を置くようになっていたのです。
本当なら、父親として、唯一の肉親として、母を失った娘をそばで支えるべきだったでしょう。
しかしウォードさんは弱さから逃げてしまった。 向き合うことを恐れてしまった。
現金回収作戦実行にあたり、死を覚悟していたウォードさんは自分の取り分をケイトさんに与える約束をします。
それは彼なりの罪滅ぼしであり、純粋に現金だけではなく彼の命がけの行為そのものが、親として子に与えられる最後の財産だと思ったからなのではないでしょうか。
正しいかどうかわからないし、誰に判断できるものでもない。
命ある限りそばに居続けること、愛情や言葉やいろいろな記憶をともに作ることこそが、のちのちの財産になるのではないかとわたしは思いますが、ザックさんがこの父親に重ねた想いは理解できます。
クライマックス、劇中ほぼずっと反発していたケイトさんは、ゾンビに噛まれ瀕死の重傷を負ったウォードさんに駆け寄り謝罪しようとします。
しかしウォードさんはそれを遮り、彼女を肯定するのです。
「おまえは自慢の娘だ、愛しているよ。今まですまなかった。わたしは臆病だった」
この最後のやりとりは、ザックさんが娘さんにかけたかった、交わしたかった言葉だったのかもしれない。
ウォードが死ぬことを恐れなかったのは、主人公であるウォードが最後に死んでしまうのは、自分は死んでもかまわないから娘に生きていてほしかったというザックさんの悲しみのような気がして、とても胸がいたみました。
わからんではない。
その想い、その願い、わからんではないがザックよ、そういう方向にもっていきたいならもうちょっと、ケイトさんのキャラ描写にやりようがあったのではなかろうか、なあザックよ。
父から娘への悔恨の念、娘に託したかった未来は充分伝わってくるものの、いかんせんケイトさんの我が強すぎるんですよ・・・! マジで強い・・・! ぜんぜん取りつく島などなし!島があったとしても波が激しすぎて接岸不可!
支えてほしかった時、父親に避けられるというのは相当つらいと思いますが、かあちゃんとラブラブだったんだからとうちゃんもとうちゃんなりに落ち込んでるって想像してほしいし、謝って歩み寄ろうとしているとうちゃんにチャンスをあげてほしい・・・根は悪い人じゃないんだし・・・(※ あくまで想像)
初登場シーンから正義感の強さが全面に押し出されるのはいいものの、やりすぎて独善的になっちゃってるケイトさん。
シングルマザーの友達が、お金を集めにラスベガスへ忍び込んだまま帰っていないことを知った時なんて、案内役だったコヨーテさんをグーで殴り飛ばしますからね、問答無用で。 事前の質問など無論ない。
ケイトちゃんはアレかな?考える前に拳が出るタイプなのかな?
子どもがいる人を危険な場所に案内したことを責めるケイトさんですが、のちにシングルマザー本人がコヨーテさんに「子どもはいない」と噓をついていたことが判明。
もちろん、コヨーテさんも子どもを残す可能性がある人を案内する気などありませんでしたからね。
よし、ケイトちゃん、謝ろう、謝っちゃおう、コヨーテさんめっちゃ血吐いてるし、下手したら歯も折れてるかもだし、勇気出して謝っちゃおう?
(※ 謝りませんでした)
現金回収に向かう父親に、自分も友達救出のためラスベガスに行くと宣言するケイトさん。
当然のことながら反対され、「友達の特徴を教えてくれたらオレが助けてくるから」と提案されますが、「信用できないから却下」とけんもほろろなお返事。
「お前が連れて行かないというならわたしはひとりで行くだろう。 ただしわたしがひとりで行ったらどうなるかわかるな? そこにあるのは確実な死だ。 守りたいか? 娘を守りたいなら一緒に行くしかあるまい」
言い方は遠回しですが、要するに「これは依頼ではない、命令だ」っていういつものやつですよね。
ケイトちゃんはアレかな? アクション映画に出てくる政府高官なのかな?
選択肢を用意されないウォードさんは、渋々「ラスベガス内では絶対自分の目の届く場所から離れないこと」を条件にケイトさんの同行を許可するのですが、もちろんその後離れます。
なんつうか、ここにきてまたこれなのか、という失望がありましたよね。
過去に散々作られてきた「子どもを持ち上げたいのか落としたいのかわからんシリーズ」なのか、と。
またもや「言うことを聞かない生意気な子どもが大人たちの計画を狂わせ大惨事」のやつなのか、しかもそれがザックの新作なのか、と遠い目になりました。
弱い存在である子どもを助けて、未来ある存在である子どもに託すという物語に異論はないんですけど、本作の場合ケイトさんさえついてこなければ成功してた可能性大じゃないですか。
単独行動の末、生きたまま捕まっていた友達を見つけますけども、なんで生かされていたのかもわからない(その後捕まったカミングスはすぐ食べられちゃった)ですし、「助け出すために生きていた」だけ、必然性もなにもないただの「物語の都合上」じゃないですか。
実際、ケイトさんがお父さんの仲間の命を犠牲にして助け出した友達は、無事救出用のヘリにこそ乗り込むものの、結局ヘリ自体墜落してしまいあっけなく死亡。
奇跡的に助かったケイトさんが友達の安否を確認する様子はなく、カメラも友達の生死をきちんと映しません。
だってもう必要ないから。 友達の存在意義は「助け出した」時点でその役割を終えていたので、その後生き続ける必要がない。
それはそうかもしれないけど、引き換えに失った命を思うとあまりに無意味すぎてゾっとしますね。
ということで、動機もうすい、キャラクターの掘り下げ方も浅い、既視感あふれる舞台設定の中、観たことあるような奮闘や犠牲がなんとなく繰り広げられ、これまた観たことあるようなオチで幕を下ろした『アーミー・オブ・ザ・デッド』。
冒頭のあたりで「オープニング以降もわるくはなかった」としたわりには、いまひとつな感想しか書いてきませんでしたが、マジでこれ多くの可能性に満ちた作品だったとは思うんですよ。
チーム猛者を集めるくだりなんかテンポよくて出てくる面々もかっこよくて期待があがりましたし、二種類のゾンビの描き分けも興味深かった。
日光を避けるほどの知恵がなく、とにかく肉を食うだけのゾンビ・通称シャンブラーが長年太陽にさらされた結果干からびていたり、日陰にいたやつも休眠状態に陥っているという設定なんていいじゃないですか。
しかも、その日干しのシャンブラーはひとたび雨が降ろうものならものの数時間で復活するそうですし。
これはきっと物語終盤雨が降るに違いない。
やっとこさ動いてるやつをやっつけたと思ったら雨が降っちゃうんだ! ほんでめちゃくちゃな量のシャンブラーがムクムク起きだして万事休すになっちゃうんだ! たのしみだなぁ!
(※ 降りませんでした)
もうひと種類の知能を持つゾンビ・通称アルファ。
最初のひとりに噛まれることで、人はアルファになり、アルファが噛んだ人はシャンブラーになるというゾンビヒエラルキー、いいじゃないですか。
アルファは知能があるので、ラスベガスに忍び込む人間をゾンビ化したトラに監視させたり、生贄を捧げて従順さを示した人間にはある程度の散策を認めたりと、ラスベガスの秩序を保つ活動をしているんですよね。 すごいなぁ!食って寝るだけのシャンブラーとはわけが違う! もはやヒト!
で、最初のひとりはアルファを作る際、パルクール経験者とか格闘技経験者とかそういう人をスカウトしてるのか、とにかく彼らはものすごく俊敏で、普通に頭なぐっときゃ死ぬみたいな戦闘にならないんですよね。 クルクル回ったりすんの! 銃弾もよけるし!
必要とあらば統率された軍隊のように働くとされ、一度それらが始まれば地獄と評されたアルファたちですから、これはきっと物語の終盤には号令をかけられたアルファたちがザックの代表作である『300』ばりに総攻撃をかけるのだろうなぁ! 胸がおどるなぁ!!
(※ 『ドーン・オブ・ザ・デッド』程度でした)
アルファの生みの親である最初のひとりはゼウスといい、オリンポス(というホテル)に居を構えています。
万能の神ゼウスはひとりのアルファを女王とし、彼女との間に子をもうけます。
死んでいるのにどうやって子をもうけたのか、もしかしたら子を孕んでいる女性を噛み、疑似家族になろうとしたのか。
コンテナから出てきたときには短かった髪がそこそこ伸びていたので、ゼウスはゾンビに感染させる要素をもつ特殊な生き物なだけかもしれません。
いかんせん、せっかく謎の特色の謎の生き物として出てきたのに、知能を駆使してヒトを欺くだとか、アルファを率いて頭脳戦をしかけるだとか、ゼウスだけは死なないだとかそういうかっこいいやつは無く、もっぱら嫁だいすき描写しか出てこないので実質ただの愛妻家でしたから、まあその、もったいなかったですね。 あ、そういえばゼウスだけ頭撃ち抜かれないように鉄のお面つけてた! すごいねぇ!ゼウスくんはかしこいねぇ!!!
多くの「可能性」を普通にバンバン殺して終わってしまったことが、正直残念です。
まさか続編狙っててその辺の要素温存してるんじゃないよな・・・
その答えになるかどうかわかりませんが、すでに前日譚はアニメーションと実写で準備中だったりするんですよね。
前日譚とスピンオフなので、今回の要素がどこまで回収されるのかわかりませんが。
Vegas is about to run out of luck. Brace yourself for Army of the Dead: Vegas, a prequel anime series based on the upcoming Zach Snyder film pic.twitter.com/UgsnI8GFv7
— Netflix Geeked (@NetflixGeeked) September 3, 2020
(※ アニメ版のテレビシリーズ)

(※ 実写の方。 ネトフリにタイトルだけはありました。 役名の中にグウェンドリンとあったので、ディーターさんの勤める鍵屋さんがメインになるのかな?)
ザック監督の作る映画はだいすきですし、復帰も大歓迎です。
ザック版『ジャスティス・リーグ』も首を長くして待っています。
本作がわたしにとってがっかりな部分の残る作品だったことも事実ですし、勝手に期待しすぎたのかもしれませんが、それでもおもしろい部分はオープニング含めありました。
景気のいい人体破壊も、人体の仕組みそんなんと違うやろ?というレベルで過剰に湧き出る血液もよかったです。
ゾンビ虎とゾンビ馬の、顔半分白骨化した造形のかわいいことよ・・・
ゼウスのビジュアルはAKIRAワナビーなのかな?ぐらいでいまひとつパッとしませんでしたが、女王の女王然とした面構えはすごくよかったですね。
全盛期の吉田沙保里さんをほうふつとするような重心の低さと股関節の柔軟さ、機会があったらぜひ真似したいものです。
充分な予算と権限を与えられてゾンビ映画が作られる状況は喜ばしい限りで、あくまでわたしにとって尻すぼみだっただけですので、本作を心から気に入る方が多ければいいなぁと思いますし、これからも変わらずザック監督を応援していきますよ!
なにはともあれ、おかえり、ザック!!
- 追記 -
・ 雨降らないのかよ!!(本日二度目)
・ 核爆弾で都合の悪いことを消し去るというバタリアン方式だったので、もちろん最後もバタリアン方式で雨が降ると思うじゃないですか! ちゃんとしてよザック!!
・ その作戦実行日を独立記念日(7月4日)に決めて、「究極の花火をぶちあげたるで~!」と発言しちゃうアメリカ大統領、相当ヤバい。 脚本を書いた人、誰か特定の人でも思い浮かべてたのかな? 髪の毛の分け方が独特な誰かかな?
・ で、さすがに人権団体の抗議活動が活発化しちゃうんですけど、計画を止められない前に実行したれ! とばかりに計画を大幅に繰り上げて、あと90分で爆弾が落ちます。 っておかしいやろ。アメリカの指揮系統おかしいやろ。 特定の誰かを思い浮かべてたとしてもはげしすぎるやろ。
・ アルファの説明の時、「最初のひとりに噛まれたらアルファになるんだけど、なぜだかオリンポスに連れていかれた人はみんなアルファになって出てくるのよね」って言ってたやつおったけど、なぜもなにもそれゼウスがオリンポスにおるってことやないか。 脚本を書いた人、疲れてたのかな・・・?
・ 金庫破りに成功し、みんなでお金をバッグに詰め大いに盛り上がっているさなか、突然ウォードさんにブチ切れるマリアさん。 「わたしはお金目当てでついてきたんじゃないわ!まぁお金ももらうけど・・・ わたしはあなたとの間に特別な何かを感じていたのよ!なのにずっと私を避けてたじゃない!」
・ いや、気持ちはわかるけどなんで今キレた? 主人公との恋愛を匂わせたこのあとすぐゾンビに殺されちゃうので、エモさを醸し出したかったのかもしれないですけど、退場の仕方あんまりじゃない? 脚本を書いた人、疲れてたのかな・・・?
・ 実はマーティンはただの護衛ではなく、アルファの女王の血液サンプルを持って帰ることが目的で、コヨーテさんも隔離区域から避難キャンプに連行されていった仲間たちを救うのと引き換えに、マーティンに協力していたんですけど、捕獲した女王の首を切り落としたマーティンに「血だけだって言ったじゃん!」と怒ってて、いやそれ捕獲した時点でめっちゃ女王叫んでたし、なんだったら護衛のアルファもそばにおったし、仲間呼ばれて終わりじゃね? と小一時間問いたい。 脚本を書いた人、疲れてたのかな・・・?
・ 映像の作り方に贅沢さを度々感じた本作でしたが、もっとも贅沢だったのは真田広之さんの使い方だったかもしれません。 真田広之が、あの真田広之なのに、ソファーにガウンでテレビ見てるだけなんですよ? そんなことあります? いかにもケン・ワタナベがやりそうな、白スーツ着て前フリだけする謎の日本人をやらせて終わりだなんて。 ある意味すごいですよ、真田広之なのに。
・ 脚本を書いた人(略


『バイオハザード:ザ・ファイナル』
2017年01月17日

ポールが!やるだろうやろうだろうとは思っていたけど!案の定!やっぱりまた!シリーズ最大レベルで!盛大にやらかした!!
過去シリーズのおさらいはコチラで・・・
5分くらいででわかる『バイオハザード』のおはなし。(シリーズまとめ)
はい、というわけで、ついに、というかやっとその広げ過ぎた風呂敷が畳まれる運びとなった『ポールの嫁自慢』こと『バイオハザード』最新作を観てきましたよ。
15年という決して短くはない時間をかけ、アンブレラ社の支離滅裂な計画を幾度となく描くことで、現代社会が抱える闇やそう遠くない未来に訪れるかもしれないカタストロフィを容赦なくスクリーンに映し出してきた、SF映画界の旗手ポール・W・S・アンダーソン監督。
すみません、うそです。 速攻で謝っちゃいますが、「支離滅裂」からあとの文章はだいたいうそです。
なんかね、最後ですし、ちょっと賢そうなこと書いてみようかなーと思っただけなんです。 でも、無駄ですよね。 だって、この映画ばかなんですもん。
この映画、すっげえばかなんですもん。(最大級の賛辞)
「結局アンブレラ社は何がしたかったんだ」「どうやってゾンビ禍を収束させるつもりなのか」「シャワールームで目覚めたミラジョボの右肩についていた傷あとはなんだったのだ」という、(どうせ有耶無耶にされるだけなんだから)気にしていてもしょうがないけど、すっきり忘れてしまうには物語の肝の部分すぎてどうにも無視しきれない謎。
今回、一点を除いてそれらの謎はすべて解決しました。 残された一点については、「たぶんポールも忘れている」説を強く推していきたいと思いますが、さておき、とりあえずほとんどは解決しました。
『マッドマックス』のような世紀末アクションに、『ミスト』のような人間心理の脆さが生み出す恐怖に、ゾンビ映画の
数々の名作映画のエッセンスを散りばめつつポールが9か月かけて練り上げた回答は、観客の心の中に斬新な感情をかき立てるものでした。
そう、「か・・・過去シリーズとのつじつま、全部放棄しよった・・・!」という感情を!
「シリーズ5本分の前フリも、世界観も、ウィルスの設定も、あれもこれもぜーんぶ一旦忘れようぜ!な?いいだろ?!」と言わんばかりの豪傑な脚本でお送りした『バイオハザード:ザ・ファイナル』。
最後だからなんでもありだとでも思ったのかポールよ。
とにかく終わらせとけばいいんだよね、いう誘惑にかられたのかポールよ。
いや違う。 ポールは最終章を考えるにあたり、ある境地に達したのです。
「せっかくだから、美しい思い出を残しとこう」という、あふれんばかりの家族愛に。
要するに、今回のバイオハザードはこんな映画だったのでした。

うそだと思うでしょ?! まさかと思うでしょ?! 「これただのたのしそうな家族団らんじゃん」と思うでしょ?! だいじょうぶ、マジでだいたいこんな感じですから!
ここのとこ描写が少なかった「ゾンビの大群」を出し、絶望的な状況下においても勇猛果敢なサバイバーたちを出し、ゾンビいぬもわんさか出し、宿敵ウェスカーとの腐れ縁に終止符を打ち、お馴染みクレア・レッドフィールドの見せ場も用意し、アリスたちを「ハイブ」という最終章に相応しい舞台に誘えば、最低限すべきことは成し終えた、とばかりにあとはもう延々、
「うちの嫁どう?」
「今回も抜群に強いうちの嫁どう?」
「うちの嫁、老けてもいけるっしょ?」
「うちの嫁に世界がひれ伏すトコ、観たくない?」
「うちの嫁さいこうだけど、実はうちの娘もかわいいってっ知ってた?」
「てなわけで、うちの娘どう?」
「かわいいだけじゃなく演技もいけるクチのうちの娘、どう?」
「うちの嫁とうちの娘のツーショット、ガチでさいこうっしょ?」
というポールの家族自慢が続く『ザ・ファイナル』。 最後の最後にぶちかましてくれたポールに、どうして怒りなど湧こうものでしょうか。
よくやった、ポール。 今までも「嫁のクローンがオリジナルの嫁と渋谷に殴り込み」といった、ある意味(ポールにとっては)夢のような画を世界中にお届けしてくれたけれど、今回は「自慢の嫁 博覧会」だけではなく愛する娘の成長アルバムまで劇中に盛り込むとは、ポールは親バカの鑑なのではないでしょうか。 まさか、全世界公開の映画で、自分ちのホームビデオを使っちゃうとは! 親バカ・オブ・ザ・ワールドの称号はぶっちぎりでポールに決まり!
ラクーンシティから始まったアリスの旅は、ネバダから渋谷、アラスカからラスベガス、そしてロシアのカムチャッカを経てついに出発点であり終着点でもあるハイブへ。
数奇な運命に踊らされ続けたアリスと、行き当たりばったりの展開に翻弄され続けたわたしたちは、15年という月日の中、それぞれが成長し、この壮絶に矛盾した物語をつべこべいわずあるがままに受け入れるようになりました。
いろいろあったけど、おもしろかったです。
これで本当に最後なのかと思うと、ちょっぴり寂しい気もしますが、あのポールのことですから、きっとこれからもミラジョボさんの美しさや逞しさを余すことなく世界に知らしめるための布教活動に精を出されることでしょう。 ええ、もちろんそうでしょう。
わたしとしては、「最終章とは言ったけど、最終回とは言ってない」としレッとした顔でポールがシリーズをリブート(もしくは再開)させる可能性を全く期待せずに、待たずにいようと思っております。 マジで。 待ってないから。 もうお腹いっぱいだから。
なにはともあれ、ありがとうポール! おつかれミラジョボ! これからも家族なかよくね!!
(※ 以下ネタバレしています)
・ 「シリーズ最終章! すべての謎が明らかに!」と銘打っているにもかかわらず、過去のシリーズでやってきたことをほとんどスルーしているという大胆すぎる映画なので、なんとシリーズを一本も観ていなくてもなんとかなります! やったねポール!画期的!
・ なにせ、T-ウィルス誕生秘話からして、今回初出のエピソードになってますからね! T-ウィルスを開発したのはジェームズ・マーカス教授! 理由は、娘が患っていたプロジェリアという難病を治療するため!

(マジか・・・!)(画像はシリーズ2作目でT-ウィルスを作った張本人とされていたアシュフォード博士)
・ マーカス教授はシリーズ3作目でニチアサ怪人と化していたアイザックス博士と共に、アンブレラ社の設立に携わっていた、いわば創設者のひとりでもありまして、娘のために作った細胞再生ウィルスが世界中の病気の人々を救っていることにホクホク顔でした。 意識の高いお父さんでよかったですね。 しかし、順風満帆かに見えたアンブレラ社に、大きな問題が立ちはだかります。 ウィルスの副作用の発覚です。
・ ウィルスを使用した男の子が、ある日突然心拍停止となり、その直後アンデッドとしてよみがえるという症例がアンブレラ社に報告されました。 T-ウィルスは魔法の薬ではなかった。 悪魔の薬だったのです。 マーカス教授は問題を公にし、ウィルスの使用停止を訴えました。 意識が高いままのお父さんでよかったですね。 しかし、相棒のアイザックス博士は、マーカスとは別の方向に意識が高い人間だった。 悪魔のウィルスからアイザックス博士が読み取ったメッセージ。 それは「地球のゴミを一掃するチャンス」というもの。
・ 聖書とT-ウィルスを無理やり結び付け、自分が現代版「ノアの箱舟」を作るんだ、と息巻くアイザックス博士。 意識が高いようにも見えますが、じっさいは一部の富裕者層から「箱舟」の乗船料として巨額のおぜぜを受け取りたかっただけなのかもしれません。 めんどくさいおっさんです。
・ と、いうね! 今までおくびにも出してこなかった新設定を、最終章で突然ぶちこんでくるポールね! ええんか! それ出して来たら、過去のアリスの設定とかもぜんぶへんな感じになってまうけど、ええのんか!
・ 「アンブレラ社の一介の特殊部隊員かと思われていたアリスが、実はプロジェリア病を患っていたマーカス教授の娘のアリシアのクローンだった」とかいう新設定! 嫁だらけだったバイオハザードをさらに嫁まみれにするためだけの新設定の、このやらかした感ね! すげえよポール、おまえホントにすげえ男だよ・・・!!
・ ためしに、今回新たに加わったアンブレラ社の成り立ちを過去シリーズに当てはめてみましょうか。
「マーカスの娘・アリシアは一旦ウィルスが効いて老化の進行が食い止められたものの、ふたたび発症して急激に老化し始めた」
→「アイザックス博士が独断で、難病の遺伝子だけを取り除き若い女性の状態にしたアリシアのクローンを作成」
→「クローンをアリスと名付け、なんとなくハイブの警備員に任命」
→「老アリシアはそのままアンブレラ社の大株主として会社に残り、アイザックス博士は念のため自分のクローンも数体作成」
→「オリジナルである自分は低温保存装置に入り、腹心の部下であるウェスカーにすべてを託し、満を持して箱舟計画を発動させる」
→「同じく低温保存済みのアンブレラ社幹部数千人を除いたすべての人類を滅ぼすため、アンブレラ社の警備を担当していたスペンスにT-ウィルスを拡散させる」
→「成り行きでアリスもハイブ行き」
→「アリスが思っていたよりも強かったおかげでハイブから脱出」
→「クローンのアイザックス博士が、せっかく生き残ったからという理由でアリスをとことん強化させる」
→「T-ウィルスによって世界の人口がバンバン減少する」
→「アンブレラ社の社員もバンバン減少する」
→「地球上の生き物がヒト以外もバンバン感染する」
→「クローン・アイザックス博士がゾンビを飼いならそうとして失敗する」
→「アンブレラ社の秘密基地がバンバン壊滅する」
→「ウェスカーがアリスみたいに強くなろうとした結果口から触手を出せるようになる」
→「ヒトがただゾンビになって静かに死んでゆくのではなく、あっちこっちを火の海にしながら死んでいったので、都市機能や文明が死んでゆく」
→「ヒトも地球も死んでゆく」
→「そんな中、絶対生き残るアリス」
→「強くなりすぎたのが原因と、アリスのウィルスを無効化させるウェスカー」
→「最後っぽさを演出するため、やっぱりもう一度強化させる」
→「でも本当は他の生存者たちと一緒に殺すつもりだったので、強化させたというのは嘘で、実は無効化されたままだった」
→「無効化されていても普通に強すぎて生き残るアリス」
→「なんどゾンビの中に放り込んでも生き残っちゃうのは、ウィルス云々のせいではなくアリスが自分をオリジナルだと思っている、その揺るぎないアイデンティティにあると考えたオリジナル・アイザックス博士が、アリスをハイブに呼び戻して彼女のオリジナルであるアリシアと対面させてガッカリさせる案を思いつく」
→「どっこい、アリスはたいしてガッカリしないし、アリシアも死にゆく自分の人生をアリスに託そうと決意を固めちゃって、何もかも裏目に出るオリジナル・アイザックス博士」
→「アリシアにアンブレラ社の幹部を皆殺しにされちゃうアイザックス博士」
→「自分のクローンに反撃されちゃうオリジナルのアイザックス博士」
→「なんだかんだで結局生き残るアリス」
・ (自分で書いててアレですけど)なんかもうやだ。
・ 要するに、「人類がT-ウィルスで滅びるのを10年ぐらいじっと待っていたら、自分のクローンが勝手に色んなプロジェクトを立ち上げてアリスを強化させちゃって、ウェスカーに仕切らせようと思ったらウェスカーも強くなりたがっちゃって、爆弾で一気に終わらせようと思ったらアリスに殴り込みかけられて死んじゃったアイザックス博士の壮大なしくじり人生」を描いていたのが本シリーズだったわけですね。 しくじりすぎだろ。 っていうかどこに勝算があったんだよ・・・
・ アンブレラ社の幹部の数千人も、「インフラはキレイに残したまま、T-ウィルスで人類だけを死滅させますので、そのあときれいになった地球で人生やり直しませんか?」ってアイザックス博士に持ち掛けられて「イイネ!」してる場合じゃないでしょうよ。 「で、おいくら万円?」って乗り気になってんじゃないですよ。 頭働かせないさいよ。 百歩譲って、奇跡的にインフラが無事だったとしても、ヒトが何億人も死んでるんですよ。 あっちこっちガイコツだらけだし、畑はボーボーだし、水は汚染されているし、動物も感染してるし、食料とかどうすんですよ。 何もかもいちから開墾ですよ。 いいか、おまえらのその世界にTOKIOはいないんだからな!!
・ ということで、ストーリーに関してはホントにもうきりがないのでおしまいにします。
・ ローラが予想以上にローラだったので、早々の退場はしょうがないと思う。 だって、画面に映るだけでローラなんだもん。 出ても出てなくても全く支障ない役割ではありましたが、セリフもあるし死に顔も2秒ぐらい映してもらえたし、もういう事ないですよね! よっ!ハリウッド女優!
・ ストーリーに関してはおしまいってさっき書きましたけど、前作のラストを経ての、今作冒頭のマンホールパカーはあんまりだと思います。 おい!マンホール! マンホール!おい!!
・ 馬の鼻先にニンジン戦法とばかりに、ゾンビの鼻先にぶらさげられたヒトを、死者たちが素直にテクテク追いかける姿がかわいかったですね。 すぐそばに新鮮なヒトがいても、装甲車に引っ張られる弱りかけのヒトの方についてっちゃうゾンビ。 走らされているのはヒトなのかゾンビなのか。 あ、どっちも人間だった。
・ ほとんどのシーンがやけくそみたいなノリで作られていてとてもたのしかったです。 今までもそうでしたが、今回はマジもんでやけくそですよ。 「最後」って人を
・ シリーズ4作目の頃だったか、来日したミラジョボさんが「まだまだずっと続けるよ!うちには娘もいるし、次世代にバトンタッチするまでやるよ!」と語っていた記憶がありまして。 今回残念ながらシリーズは一旦の終幕を迎えてしまいましたが、家族ネタ満載であった本作を観てみると、ミラジョボさんの目標はあながち未達成というわけでもないような気がしますので、ええと、その、なんだ、ミラさんよかったですね!!(←投げやり)


『パラノーマン ブライス・ホローの謎』
2013年11月14日

(※ 以下ネタバレ)
あらすじ・・・
幽霊となら談話できるけれど、生きた人間とは会話が成り立たない少年・ノーマンが、300年前に不幸な死を遂げたご先祖様と対話します。
■ 子どもたちの感想
おかあさん 「さあ、どうでしたか?パラノーマンは」
いもうとちゃん(小3) 「おもしろかった!」
おねいちゃん(小6) 「おもしろかった!」
はは 「どんなところがおもしろかったですか?」
小3 「あのね、トイレにおじさんがでてくるシーンがさいこうだった!」
小6 「ノーマンをいじめてた男の子が「オレの親友だ」って言ってるとこがおもしろかった!」
小3 「わたしもあそこおもしろかった!」
小6 「「脳みそたべられちゃう?」「君には無いから大丈夫だよ」っていうとこがおかしかった!」
小3 (思い出し笑いしながら激しく頷く)
はは 「ゾンビはどうでしたか?」
小3 「おじさんのいえにいったらゾンビがおいかけてくるシーンは、ちょっとこわかった」
小6 「わたしも、実はこわくて毛布にかくれちゃった・・」
はは 「ストーリーはいかがでしたか?」
小3 「えっとね、まじょのおんなのこがでてきたとき、ノーマンのいもうとだとおもった」
はは 「ああ、似ていたもんね」
小6 「全体的におもしろかった」
はは 「全体的って・・・ もうちょっと具体的におねがいします」
小6 「あのね、おかあさんは泣いてたでしょ? なんで泣いてたの?」
はは 「そうさのう・・・ とにかくアギーがかわいそうだったよね。 大人に責められて、理解してもらえなくて、まだ子どもなのに魔女として処刑されて・・。 それがつらかった。」
小6 「うーん、それはそうだと思うよね。 でも、わたしはね、悪い人は出てこなかったから、そこがよかったな」
はは 「えっ? 悪い人がいない?」
小6 「うん」
はは 「いじめっこは?」
小6 「ノーマンにかくれてたから」(※はは補足・要は弱い人間だから」という意味らしい)
はは 「お姉ちゃんは?」
小6 「途中で助けてくれたし」
はは 「アギーを裁いた人たちは?」
小6 「あれはよくないけど、でも、あの人たちもこわかったんだよね」
はは 「でも、殺しちゃうことはないよね?」
小6 「もちろんそうだけど・・。 でも、ジャンルダルクとか、魔女狩りってホントにあったんだもんね」(※はは補足・ちびっこは歴史好き)
小6 「あの人たちもゾンビにされたでしょ。 ホントは助けて欲しいのに、村人におそわれてかわいそうだと思った。」
はは 「そっか・・・。 アギーはどんな気持ちだったんだと思う?」
小6 「腹が立ってたと思う。 あと、かなしかったと思う。 復讐をやめたいけど、やり残したことがあるからやめられなかったんだと思う」
はは 「やり残したことって?」
小6 「誰かに「あなたは悪くないよ」って言ってもらいたかったんじゃないかな」
■ 300年の孤独
「周りの人たちと見えている世界が違う」ということから、恐れられ、忌み嫌われ、まだたった11歳だったにも関わらず「魔女狩り」に遭ってしまったアギー。
あまりに不条理で、あまりに残酷な現実を、「怒り」で受け止めるしなかったアギー。
そして、自分を裁いた人たちに対する憎悪の心は、煤のようにアギーにこびりついてゆき、美しかった心を覆い隠してしまう。
わたしは「憎しみ」が愚かなことだとは思いません。
ときにそれは、生きる支えになるのではないかと思うからです。
誰かに対する怒りや憤りは、哀しみを誤魔化し、感情という釜にくべられた薪のように心の中でごうごうと燃えつづけ、「自分」を走らせる原動力になるのではないかと。
同時に「自分」を激しく苦しめ疲弊もするのだけれど、自己嫌悪は抑止力ではなく、新たな燃料となって自分に降り注ぐ。
愚かではない。 ただ、とてもしんどい「憎しみ」。
本当はもう、おしまいにしたい。
けれどもう、自分でも止まられない。
そんな風に心を引き裂かれ、もがき苦しむアギーの姿に、涙が止まりませんでした。
幼い娘を魔女として裁かれ、問答無用で処刑されたアギーの母親はきっと、ひっそりと埋葬された娘の亡骸の上で、彼女がすきだったおとぎ話を毎日読んであげていたのでしょう。
しかし、母親も亡くなり、おとぎ話を読み上げる声は、悼みではなく恐れを帯びるようになった。
母親以外の誰が、アギーの死を心から悲しんでくれたのか。
アギーの魂に優しい言葉をかけてくれたのか。
誰もいなかったのではないか。
そして、勝手なレッテルを貼られ、勝手に怯えられ、誤解されたままのアギーのもとに、やっと彼女を理解してくれる唯一の人間が現れます。
彼女の手を握り、あたたかな世界へと引き戻してくれる人間。
300年の孤独に、終止符を打ってくれる人間が。
本作を観て、アギーが受けた仕打ちがあまりにむごたらしい為、彼女が迎える結末に納得がいかない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この作品が伝えたいことは、「報復」や「復讐」ではなく、「赦し」と「救済」なのではないかと思うのですよね。
長すぎる年月を苦しみと共に過ごしてきたアギーに必要だったのは、怒りへの同調ではなく、ただそっと寄り添い、身体をあずけ、安らかに眠らせてくれる人だったのではないでしょうか。
■ 世界を変えることはできないけれど
アギーの遠い子孫で、奇しくも彼女と同じ能力を持って生まれたノーマンもまた、その力ゆえ周囲の人間に敬遠され、からかわれ、忌み嫌われます。
アギーが残した呪いにより、ゾンビパニックに陥り暴徒と化した街の人によって、あまつさえ、アギーと同じ火あぶりの刑に処されそうにさえなる。
しかし、ノーマンの周りには、彼を助けようとする人間がいた。
ノーマンはその瞬間、はじめて自分が一人ではなかったことに気づくのです。
共通することが多ければ多いほど、人は絆を感じ、親睦を深め、信頼し、かばい合うようになるものです。
一方、「自分たちとは違う」ポイントを目にした瞬間、いとも簡単に疎外し、レッテルを貼り、見下し、なんだったら憎みさえする。
そういう目に遭ったとき人間は、自分を守るため「孤独」を選ぶことがあります。
「誰にもわかってもらえないなら、一人でいいや。」と割り切ってしまえば、生きるのが一気に楽になるからです。
そして、孤独に慣れてゆくと、いつの間にか周りにいた、もしかすると最初から傍にいてくれた人の存在すら、気づかないふりをするようになることがある。
「話したってどうせわかってもらないから」
「胸襟を開いたところで、結局去って行かれるかもしれないから」
一人なら傷つくこともないけれど、二人だと傷つけたり傷つけられたりするかもしれない。
それがこわいのです。
失望させたくないし、したくない。
だから、「友だちにになれるかもしれない人」の存在に気づかないふりをする。
たしかにそうしていれば、そんなに傷つかずに生きて行けますよね。
生きて行けるのだけれど。
一番理想なのは、周囲の人たち(レッテルを貼ってきた人たち)が偏見を捨て、「自分とは違う」人間を受け入れてくれるようになることです。
それはもう、そうに決まってます。
しかし、残念だけれど世界は簡単には変わらない。
ブライス・ホローの住民たちが同じ過ちを繰り返しかけたように、時代は流れても、人の本質は変わらないのです。
そんな現実を踏まえて、本作は「でも、ちょっとね、もういちど周りを見てみようよ」と問いかけてくれる。
「自分たちとは違う世界を見ている(愛している)あなた」が、世の中全体で広く受け入れられたり理解してもらうことは難しいかもしれない。
けれど、「まわりとは違う世界が見えているあなた」を受け入れてくれる人は、きっといるよ。 と、優しく語りかけてくれるのです。
ノーマンの能力を「彼は変人なんかじゃないよ、死んだ人と話せるだけだよ」と、個性のほんのひとつとして自然に受け止めてくれたニールのような人が、きっといる。
あなたはそれに、気づくことができるはずだよ、と。
だいじょうぶ。 気づいてもいいんだよ、と。
わたしのような、気づこうとする勇気すら持てない人間にとっては、ほんとうに柔らかで心強いメッセージでしたよね。
あと、これは子どもたちにも伝えておきたいことでもあります。
あなたたちはひとりじゃないんだよ。
この世の中は、まだ絶望するには値しないんだよ。
あなたたちを理解してくれる人は、かならずいるんだよ。と。
■ ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!
とまぁ、くどくど書きましたが、わたしの心の柔らかい場所を直撃したストーリーはもとより、冒頭シーンから炸裂するゾンビ愛もまた超たまらない作品だったわけでして。
目覚まし時計からスリッパに至るまで、ありとあらゆるゾンビグッズに埋め尽くされたノーマンくんの部屋は、今いちばん住みたい場所ナンバー1に即決必至。
トラディショナルなのろのろゾンビと、彼ら以上に凶暴な(というか彼らはちっとも凶暴ではない)(もちろんそうに決まってる)人間たちの一方的すぎる攻防戦は、胸を焦がすこと請け合い。
ちなみに、わたしがいちばんグっときたのは、劇中劇であるB級ゾンビ映画の1シーンで、逃げる女の子が床に落ちている脳みそを踏んづけたときのグニュっと感の再現度です。
なんちゅうこだわりなんや・・!
ゾンビに限らず、とにかく全編通して物凄い繊細な所まで作りこまれており、死んだ人がいない世界(普通の人が見ている世界)から一転、死んだ人で溢れかえる世界(ノーマンが見ている世界)に切り替わる際の鮮やかさや、ストップモーションアニメとは思えないような凝った演出など、技術の進歩に驚嘆するとともに、気の遠くなるような作業を完遂された製作者のみなさんに心からの敬意を表したいと思います。
オレもう、アメリカの方角に足を向けて眠らないよ!
80年代ホラー、80年代アドベンチャーをこよなく愛する方必見の大傑作でした。
「チャンク」リスペクトな超かわいいニールくんをはじめ、ノーマンを取り囲む人たちも、ええ顔揃いの憎めないキャラクターばかりでしたよ!
ああ! もう全然言い足りない!
わたしは『パラノーマン』がだい、だい、だいすきです!!
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『ワールド・ウォーZ』
2013年09月19日

「僕が魅力を感じたのは、この主人公が普通の男という点だ。 超人的な能力の持ち主でもないし、武芸の達人でも特殊部隊の出身でもないが、家族を守るためならどんなことでもする愛情深い父親なんだ」
・・・ブラッド・ピットさん[主演・製作]談
あらすじ・・・
「それ」はある朝突然始まった。
いつものように朝ご飯の支度をし、娘たちを学校へと送るブラッド・ピット。 普通の父親ブラッド・ピット。
市内のメインストリートは渋滞、上空ではヘリが旋回。
その時、いち早く異常に気づき、通りの様子を見ようとしていたブラッド・ピットの真横を、一台の暴走トレイラーが猛獣のような唸り声を上げて通り抜ける。 押しつぶされてゆく車や人。
間一髪で事故を回避したブラッド・ピット一家は、トレイラーが「作った」車道をうまく利用し、渋滞から抜け出すことに成功したものの、市街地はどこも「暴徒と化した」人間たちで埋め尽くされ、娘の薬を購入するため向かった街角のスーパーは、生活必需品を手に入れようと我さきにとなだれ込んだ「暴徒ではない」人間たちでひしめき合っていた。
一体ここで、何が起こっているのか。
そう、彼らの街は、世界は、今まさに「それ」に飲み込まれようとしていたのだ。
ゾンビ禍という「世界の終わり」に。
・・・という訳で、万事休す!な状況ではあったのですが、何を隠そうついこないだまでスゴ腕の国連調査員だったブラッド・ピットさんなもので、さっさと救出のヘリが手配され、一家全員まとめて避難所代わりの航空母艦で保護して貰い、美味しくはないけれど充分な食事を与えられます。その後、復職を求められたブラッド・ピットさんは、家族を人質にとるという軍のやり方に若干カチンときつつも、世界を救うためゾンビ禍の発生源を突き止める旅に出て、韓国のアメリカ軍基地では頼みの綱だったウィルス研究者を失ったり、謎のCIA職員から次なる手がかりをもらったり、襲いかかるゾンビから無傷で逃げ切ったり、イスラエルでは「国連職員」という印籠片手に特別待遇を受けたり、有力者に次なる手がかりをもらったり、襲いかかるゾンビから無傷で逃げ切ったり、ついでに自分の警護を担当していた美人兵士をゾンビ化から救ってみたり、丁度通りかかった民間機に乗せてもらったり、機内で発生したゾンビパニックには手榴弾で対処したり、機体に穴が開いたので不時着するしかなかった飛行機から奇跡的に生還したり、飛行機が落ちた場所が丁度次に向かおうとしていたWHOの研究機関の傍だったり、お腹に金属片が刺さっているけど徒歩でその研究機関に向かったり、不審者であるにも関わらず傷の治療を施してもらえたり、「国連職員」の印籠片手にWHOを懐柔したり、根拠はないけど思いついちゃったからやってみよう!みたいなノリでゾンビうごめく研究棟へ乗り込んだり、自信はないけどイチかバチかで摂取してみよう!みたいなノリで注射した病原菌がまんまとゾンビに効いたり、ペプシを飲んだり、ゾンビの前で海を割るモーゼの真似をしてみたりとなんやかんやしながら、ものの数日でゾンビ禍の対処法を見つけるのでした。
・・「主人公が普通の男」
・・
_人人人人人人人人人人人人_
> 「主人公が普通の男」!!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
・ 本作のいちばんの教訓は何だったのか。 それはもう、誰の目にも明々白々ではありますが、とりあえず書いておきましょう。 いいですか。一度しか書きませんよ。 「仕事中は携帯の電源を切ろう」
・ もうこれ、映画館のマナー動画で鷹の爪とかの代わりに上映しとけばいいのではないでしょうか。 ちょっと長いけどおすすめですよ。
・ わたしは三度の飯よりゾンビがすきなものですから、本作も非常に楽しみにしておりまして。 なんてたって史上最も大勢のゾンビが出るっていうじゃないですか。 そんなもん傑作に決まっとるわ。
・ で、先日やっとこさ鑑賞してきたのですが、なんというか・・・どうもねぇ・・ ええとですね・・・こんな風にいうとちょっと語弊があるかもしれませんが・・・ ・・いや、回りくどい言い方はよそう! イマイチだった!オレ、いまひとつノレなかったわ! ごめん、ブラピごめん!
・ もちろん、空前絶後のゾンビ禍シーンはどれも迫力満点だったのですよ。 組体操みたくひとりひとりが重なって壁を越えるトコロなんて、なにわ小吉先生のマンガみたいでおもしろかったですし。 でもね、「おもしろいなー」と思うと同時に、「ああ、これじゃなかったんだ」とも思ってしまったのですよね。 わたしが求めていたのは、これじゃなかったんだ、と。
・ あまりに数が多すぎたのかもしれませんし、あまりにひとりひとりが小さすぎて「人間」として感じられなかったこともあるかもしれません。 ウジャウジャーっと集まるゾンビのみなさんには、悲壮感も絶望感も痛みもなくて、そこにはただ、コンピュータで増やされた「コマ」に対する、「わあ、多いな」というあっけらかんとした感想があるだけで。 なので、冒頭のフィラデルフィア壊滅シーンも、中盤のイスラエル崩壊シーンも、ものすごく冷静な気持ちで観てしまったのです。 心がザワザワとざわめくことも、ギュウッと締め付けられることもなかった。
・ 「ゾンビによる世界崩壊」を、間接的ではなく直接的に描いてもらえたのはものすごくよかったのですが、実際観てみてわかりました。 一部の土地や街や人々が崩壊してゆくさまだけで、絶望は伝わるんだ。 数は多くなくてもいいんだ。 ていうか、多いと薄っぺらく感じてしまうんだ。
・ これはあくまでわたしの好みの問題ですし、なにはともあれ、大手の制作会社が巨額の予算を投じてこのようなスケールの大きいゾンビ映画が作ってくれるということは有難いにも程が有ると思います。 聞くところによると、本作は3部作として企画されており、既に続編の製作準備にも着手しているとかしていないとか・・・。 実現するといいですね!
・ あとね、主人公だから生き延びて当然とばかりにサクサク世界旅行しちゃうブラッド・ピットさんが、どうしても「普通」に見えなかったというのも大きかったかもしれませんね。 いくらなんでも「普通じゃなさすぎる」じゃん! 「普通」の概念変えちゃうナツかもね!
・ もうね、モデルさんにね、「美貌の秘訣は?」って聞いた時に「えー普通のお手入れしかしていませんよー」って言われた時のごとき釈然としなさですからね! 「普通」って言いながら毎日水4リットルとか飲んでたりするんだもん! っていうか普通ってなに?先生、もうぼくにはなにが「普通」でなにが「普通でない」のかわかりません!
・ そもそも、オープニングシーンで子どもたちに「あさごはんパンケーキがいい!」と言われた後、ブラッド・ピットさんがキッチンに立っている時点でガツンとやられましたし。 「ああ、自分で焼いちゃうタイプのアレか・・」みたいな。 「“おーいおかあさん、パンケーキだってさー”とか言わないアレなのか・・」って。 これ日本のご家庭の大多数の場合ですと、下手したら「朝からパンケーキやだなーオレだけ味噌汁とごはんにしてよ」ぐらい飛び出すパターンですからね。 いいなー! ブラッド・ピットさんちの「普通」いいなー!
・ まあね、SFですし、フィクションですし、百歩譲って主人公ならではの不死身のパワーはいいとしましょうよ。 「パンケーキ焼いてくれるいい夫」も大いに結構。 ただ、ゾンビ対策法を見つけるまでがあっさりし過ぎなのはちょっとどうなんですか、って話なのですよ。 努力と根性だけでなんとかなるのなら苦労はしないよ、と。 世界がめちゃくちゃに荒らされてゆく反面、ブラッド・ピットさん一家だけは何のダメージも受けない。 「ああ、彼らは特別なんだなー」としか思えませんて。
・ 主人公が世界のあちこちを旅し、ゆく先々で物分りのいい人に出会えて、都合のいい展開だけが待ち構えていて、ほとんど苦労せずにハッピーエンドを迎える、という流れだけみると、同じくプランBエンターテインメント製作の『食べて、祈って、恋をして』みたいだなー。 ・・とまでオレは言う。 まぁ、それぐらいの軽い気持ちで観ればいいのかもしれませんし。
・ それにしても、“ゾンビは自らの「ゾンビウィルス」を増やすにあたり、イキのいい宿主だけを選ぶ習性があるため、致死性の病原菌を持つ人間は華麗にスルーする”という設定は非常に斬新な一方、「アレ・・・?じゃあ病院には生存者がいっぱいいるの?」という疑問がぶくぶくと湧き上がってきましたね。 「どこまでの病気ならスルーされるのか?」とかね。 糖尿病は? 痛風は? 足を引きずっていた在韓アメリカ兵は何の病気だったの? ていうか痛風なの? おせーてブラピ先生!
・ 韓国から入った「ゾンビ」という第一報がアメリカ本国でスルーされたのは、受け取った担当者がアレだったんじゃね? 「ゾンビと感染者は違う!」っていうアレだったんじゃね? 「28日後・・は感染者!ロメロはゾンビ!別モノなの!」っていちいち言うタイプの!
・ ちなみにわたしもそのタイプでごわす!
・ わざわざヘリ飛ばしてまで連れてきたブラッド・ピットさんを調査員として出張させるだけさせておいて、途中経過報告に全くこだわらない国連事務次長。 絶対仕事できないタイプだろ!
・ とはいえ、いつもの「ちわっす!ワールドポリス・アメリカっす!」ではなく、一応「国際連合」を表に出した点はよかったと思います。 ま、仕事はできてなかったですけど。
・ すきな要素はたくさんあったはずなのに、いざ観てみるとノレない・・という状態は、『ゾンビランド』を観た時のそれに似ているかもしれません。 うまく説明できませんが。
・ 成す術なく広がってゆく感染の恐ろしさなら『コンテイジョン』の方がゾっとするし、「人間らしさを失ってゆく」という意味で感染者と非感染者の境が曖昧になってゆく様なら『28日後・・・』という傑作がある。 では本作の存在意義というか、見所は何なのか・・というと「とりあえずすげえいっぱいゾンビ出しとくわ!」に尽きるのかなぁ、と思った次第です。
・ 重い病気を持っている人はゾンビ化しないけれど、結局病で亡くなってしまう、というのがものすごくつらかったです。 「ゾンビ化しない」というスペシャルポイントは、命そのものを救ってくれるわけではない。 ゾンビになろうとなるまいと、結局待ち受けている運命は同じなのか。 健康な人を「病気」にしてしまう「偽装ワクチン」の存在が、とても残酷なモノに思えてしまったわたしです。
・ ブラッド・ピットさんが手当たりしだい、試験管やサンプルなんかを空き缶に詰め込むシーンのガサツさ加減がよかったです。 あそこで「あかん・・・アイツ・・・エボラウィルス持ってきよったで・・・!!」つってなっていたら超おもしろかったのになぁ。


『バイオハザードV リトリビューション』
2012年09月15日

(※あんな嫁いいな!増えたらいいな!)
前作までの感想
第1作『バイオハザード』 の感想
第2作『バイオハザードⅡ アポカリプス』 の感想
第3作『バイオハザードⅢ』 の感想
第4作『バイオハザードIV アフターライフ』 の感想
ポールが、壮絶に、やらかした!
はい。というわけで、「バイオハザード」と書いて「嫁自慢」と読む例のシリーズ最新作を観てきましたよ。
足掛け10年で描き続けてきた史上最強の女子・アリスの活躍もいよいよ佳境に入り、というか、そもそもずっと佳境の手前くらいで止まっていたものがやっと動き出してくれたというか、いやちょっと待てよ、じゃあ今まではまだ佳境に入っていた訳じゃなかったってコトなの?! ちょっとぉ!まじめにやってよアンダーソン!

(※ペラっとした布っきれ一枚で、見えるか見えないかの限界に挑戦する嫁)
とはいえ、劇場に足を運び続けているこちらとしては、実はもうとっくにご存知だったりしますので、むしろ「やっと佳境に入ってくれてありがとう!」と声を大にして言いたいくらいなんですよね。
その上パンフレットを見ていたら「次で終わるよ!」と閉会宣言までしてくれているじゃないですか。
マジで? そんな事言いながら5年後ぐらいにリブートすんじゃないの? なんて意地悪な事を思ってみたりもしますが、ともかくポールいわく「終わりの始まり」的位置づけだったらしい本作。
過去のキャラクターや原作ゲームの人気キャラなどをわんさか盛り込んで、ちょっとしたバイオ祭りのような様相を呈しており、観続けてきたファンにとってはたまらない内容となっていたのでした。


(※ みんなだいすきジル・バレンタインも大復活! ・・・ってアレ・・ジルさんってこんなだっけ・・・・)

(※ イメージ的にはこちらがジルさんだと言われる方がしっくりきます)(※ ちなみにこの方はエイダ・ウォンさん)
シリーズ2作目でファンを虜にしたものの、その後まったく姿を現さなかったジルさんは、原作ゲームの設定を踏襲し
まあね、まあね、ジルさんは「死亡」していませんでしたからね、何も問題はありませんよね、雰囲気は激変しましたけどね!

(※ そうそう、ミシェルさんもね、三白眼が緑の芝生によく映えるわー ・・って死んでませんでしたっけ!1作目で!)
なあんてビックリした体で紹介しちゃいましたけども、そもそも3作目の段階で「アンブレラ社のクローン技術は世界一ィィィイ!」と開き直られていましたので、全部想定の範囲内ですよ。過去に死んでいようと死んでいまいと関係ない。関係ないからホントに。ホントに。怒ってないですよ。・・・怒ってませんってば!!

(※ という事で、同じく1作目からサイコロステーキ隊長も再登板。)

(※ こちらは前作から引き続き出演の、バスケットの人ことルーサーさん。 ひとつの作品に似たようなハゲをツーペアで仕込むとか、アンダーソンってばハードル高い事するよね!)(※時々見分けがつきませんでした)

(※ おまえ誰やねん!)
今回はなんと、原作ゲームの超人気キャラであるレオン・ケネディさんも満を持しての登場・・・ ・・と思いきや、絶妙におっさん臭いわ大した活躍はしないわで、正直わしはこんなレオン見とうなかった!

(※ オレっすか? ウェスカー!)
もちろん、バイオハザードのいちばん悪いヤツことウェスカーさんも、CGなのか実写なのか判別しにくいご尊顔を披露。 ていうか、金髪でサングラスだったらもう、その人がウェスカーさんって事でいいんじゃないかという気がしてきました。
もしも次回作辺りで中の人が竹内力になっていても、誰も気づかないと思います。
もしもの話ですけどね。 もしもというか、願望ね。 そんで、エンディングテーマも竹内力にしちゃいなよもう!
1作目でT-ウィルス撒き散らして以降、ずっとのんきに研究を続けてきたアンブレラ社。
みんなその真意を知りたくて、アンブレラ社は正味の話、何をどうしたいのかを知りたくて、きっとアリスもそこんトコをハッキリさせたくて闘ってきた訳ですが、今回ついに明らかとなったその真実。
蓋を開けてみれば「ああ・・・うん・・まあそうなんだろうけども・・・」くらいのリアクションしか出来ない真実ではありましたが、広げすぎて端っこの方がビロンビロンになってしまった風呂敷をポール・アンダーソン監督がどう畳んでくれるのか、貧乏な家のカルピスみたいにシャバシャバの味だった本作の汚名をうまいこと返上してくれるのか否か、早くもちょこっと心待ちにしている私がいます。
いや、汚名ってサクっと書いちゃいましたけど、きらいじゃないですよ!ぼくは!
きらいだったら今まで飽きずに観続けてこないもん!
ていうかむしろ好きですよ! ポールとならおいしいお酒が飲めそうな気がします!
ただし、過去シリーズの早い時点で飽きた方には全くおすすめ出来ませんので、そういう方は出来れば我々をそっとしておいてあげてください。
よいこのみんなは、文句を言う為に観るのとか悪趣味だからやめようね!アガサからのお願い!
という事で、いつものように(嫁とバイオシリーズへの)愛情あふれる、ほほえましい作品だった『バイオハザードV リトリビューション』。
来たるべき「すべての終わり」まで見届ける覚悟のある方は是非劇場へ。
なお、3D効果は(武器が何度か飛んでくる程度で)ほとんど実感できませんでしたので、もしもご鑑賞される場合は2Dでも充分かと思いますヨ。
(※ 以下ネタバレ)
■ 『バイオハザードV リトリビューション』のすきだった点
・ なんだかんだ言っても、ゲームのキャラがスクリーンを闊歩する姿は観ていて気持ちがいいものですなぁ
・ 特にエイダの再現率はすばらしい
・ カルロスも再登板!(しかもアリスの旦那さま役)
・ チェーンソーおじさんも登場!
・ 鎌みたいなのを持ったアリスと竹やりみたいなのを持ったジルの一騎打ち
・ スーパースロー映像で飛んだり跳ねたりする嫁。
・ 意識が朦朧としている時特有の「アワワ・・・」演技をこれでもかと披露する嫁。
・ 出会って5秒で即母性を発揮する嫁。
・ オスプレイ墜ちてるじゃん!
・ 細菌兵器の宣伝の為に作られた「世界」をT-ウィルスがすさまじい勢いで飲み込んでゆく情景が、とても絶望的でとてもよかったです
・ いたずらに大きい事で有名なパンフレットも、今回は過去シリーズの丁寧な解説本となっていて非常にありがたかったですよ

(※ 左がバイオのパンフ。右は一般的なサイズ。 よっ!収納泣かせ!)
■ 『バイオハザードV リトリビューション』のすきではなかった点
・ ウェスカーがなんとなくええ人っぽい!
・ おい!クレアとクリスどこ行った!
・ アンブレラ社っていくつ支店持ってるの
・ オスプレイ墜ちてるじゃん・・・
・ クローンを量産しすぎて、人の命の重みが全く感じられなくなってしまった
・ 当然「生死をかけた闘い」にも説得力が無くなってしまった
・ 世界の名だたる都市を舞台に派手な事をしているのに、ものすごいスタジオ感(まぁスタジオなんだけど)
■ 『バイオハザードV リトリビューション』まとめ
・ 「アリスはT-ウィルスに対する抗体を持った特殊体質みたいだよ!」→「丈夫そうだからもっとキツい菌を植えてみるよ!」→「強くなりすぎたよ!」→「薬で中和させるよ!」→「やっぱ強い方がいいからもっかい菌を植えるよ!」 ウェスカーはアレか!アホの子か!!
・ 前作のおしまいの辺りまでは、たしかアンブレラ社でひみつの研究に携わっていたはずのウェスカーが、アリスがアンブレラ社に捕まってちょこっと寝てる間に、アンブレラ社から寝返って、レジスタント組織を作って、エイダやレオンに指令を下して、アリス奪還の段取りを整えるとか・・・ アリスが寝すぎたのかウェスカーの仕事が早すぎるのかさあどっち!
・ 「アリスのアグレッシブすぎる細胞に治療薬のヒントが隠されている」という事はかなり最初の頃からわかっていた筈なので、本来だったら「めんどくさいから人類みんな絶滅な!」とか言わずさっさとアリスに協力を仰いでお薬の開発を進めていればよかったんですよね。 「アリス計画」ってのも、結局「アリスをとことん強くしたい」計画なのか「アリスをつかって人類を救いたい」計画なのかよくわかりませんでしたし・・・
・ でも、開発のキモであるはずのアシュフォード博士もアイザックス博士も死んじゃって、もうあたまがいい人残ってないんですよね・・・残ってるのは脳筋タイプばっか・・・じゃあしょうがないか・・・
・ あれ・・でも2作目の時点で、治療薬完成してませんでしたっけ・・・前作の途中でもアリスに中和剤注射してたし・・・ レッドクイーンはアレか!アホの子か!!

