FC2ブログ
ブログパーツ

わたしのしらない東映ポルノの世界、とインティマシー・コーディネーター。

2021年04月30日
最近めっきり、NetflixやPrime Videoなどの動画配信サービスに押され気味(弊社比)だった我がライフライン・WOWOWが、深夜にひっそりと東映ポルノを特集してくれていたことに気づきました。
観たことはなかったけれど、どの作品もタイトルがふるってるし監督の名前も超ビッグ。
と、いうことで三本ほど観てみましたよ。

『徳川女系図』
女系図

天下のメジャー映画会社東映が、自慢の時代劇ノウハウを駆使して作った東映ポルノ(実質)第一弾。
ノウハウはうそ。
ただし、東映時代劇の華々しい歴史を飾ってきた衣装はいうまでもなく潤沢だったので、脱ぐ人脱がない人端から端までそりゃもうええおべべ着せてもうてます。
メガフォンをとったのは『網走番外地』シリーズでブイブイいわせていた石井輝男監督。
いやぁ、びっくりしましたね!
初めて観た昔の「ポルノ」、めちゃくちゃおとなしいのなんのって!
大人の世界、というイメージだったのでもっと刺激の強いエロが目白押しなのかと勝手に想像していましたが、上半身があらわになる程度で、体の動かし方が具体的なわけでもない。
もちろん当時はかなり攻めた表現だったのでしょうし、物議を醸したというのも納得はいきますが、なんつうか、昔がおとなしかったのか現在が過激すぎるのか・・・。
帯を引かれてクルクル回りながら「あーれー」ってやつ、もしかしたら本作が初登場だったのかなぁ。 エポックメイキング!

内容はというと、将軍綱吉が本妻と側室の二大派閥から送り込まれた女性に翻弄され、自分は何のために生きているのか、自分を世継ぎ用の子種ではなくひとりの男として愛してくれる人など本当に存在するのか、などと自問自答するまあまあ真面目なお話でした。
ほんとにね、まあまあ重かったですよ。
この時代の大奥が「誰がお世継ぎを産むか」という女の戦場だったことはその通りでしょうし、将軍は将軍で「やったぜハーレム!」なんて生易しいものではない生殖行為の無間地獄を生きていたこともその通りだったのでしょう。
制約だらけで誰も得をしない殺伐とした狭い世界。
裾除けいっちょでおっぱい丸出しの女相撲大会にはエロスなどみじんもなく、ただただ虚しさだけが満ちていました。


『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』
元禄

大成功をおさめた東映ポルノでしたが、「意外とおとなしい」と感じたのはわたしだけではなかったようで、言い出しっぺの岡田茂(東映のボス)さんがさらに過激路線を求め、作られたのがこちら『元禄女系図』。
タイトルやけくそか。
しかし、実際観てみるとそのむちゃくちゃなタイトルを裏切らないセンセーショナルな内容がてんこ盛り。
まず、てんこを盛るためにかストーリーが一本ではなく三本立てになりました。(この前作『徳川女刑罰史』からオムニバス方式になった模様)

一本目は、初体験の相手であるドクズに騙され遊郭に売られた女性が骨の髄まで吸い尽くされた挙句、最後までクズに尽くしたまま、医者の治療の甲斐なくお腹の子ともども死に、クズもまた女性を失って初めてその愛の深さに気づいてしまう、という胸クソ話。
なにしろ舞台が遊郭ですから、意にそぐわない性交と果てしなく続く搾取に始まり、男の裏切りと逃亡失敗からの拷問などなど不幸のつるべ打ちです。 
ようわからんのんですけど、なんぼ濡れ場の連続とはいえこんな悲惨な話で興奮するかぁ?

二本目は、ええとこのお嬢様が醜く顔の焼けた男に強姦されたことから自らも異常性愛者になってしまうというお話。これまた胸クソ。 
初体験が強姦、しかもそのまま監禁、凌辱という地獄の責め苦。 
精神を壊されてしまったお嬢様は、夜な夜な使用人に命じて見た目の「異様」な男性を屋敷に招き入れます。
お嬢様を慕っている使用人は、悩んだ末町医者に相談。
町医者は聞きかじった程度の知識でカウンセリングと催眠療法を施し、使用人の気持ちを知ったうえで「お嬢様にお前のすべてをぶつけるのだ」と指南します。 無責任にもほどがあるだろ。
医者のいうことなんだから間違いないと踏んだ使用人は、薬で意識のないお嬢様を強姦。 全員クズか。
そんな性交に愛など感じるはずもなく、お嬢様は多人種性交を続行。 
思い余った使用人はお嬢様を刺殺してしまうのですが、なんぼ濡れ場の連続とはいえこんな悲惨な話で(以下略)

かなり胸焼けしてきましたが、やっと締めの三本目なので続けて鑑賞。
最後に待ち構えていたのは最も胸クソな暴君のお話でした。 もうおなかいっぱいだというに。
生粋のサディストであるとある暴君が、周りの女性すべてを蹂躙するだけ、ただそれだけ。
暴君を演じていたのが刑事コロンボの吹き替えでお馴染み小池朝雄さんだったので、あの声で発せられるドクズラインのキツイことキツイこと・・・。 
顔はね、馴染みがなかったのでいいんですけどね、画だけ観ていればね。 耳から入る情報がエグイ!
物語のクライマックスは、散々ひどい目にあわされてきた本妻が明かす『オールド・ボーイ』ばりの新事実と、その場に立ち会った町医者が暴君の愛妾に施す『屋敷女』ばりの即席手術という、タイトルに偽りなしの堂々たる残酷絵巻が繰り広げられるのですが、なんぼ裸の連続とはいえこんな(略)

ストリーテラーの町医者を演じていたのは、『徳川女系図』で気の毒な綱吉を演じていた吉田輝雄さん。
話に絡んでくる町医者とはいえ、ほぼ誰も救えていないので、だいたいアンニュイな表情で佇んでいます。
なんでもいいけど、「これが元禄なのです・・・」でまとめるのはいくらなんでも雑すぎやしないか。


『徳川セックス禁止令 色情大名』
色情

でました!色情大名! 響きがいいですよね!色情大名! 一生使うことなさそうだけど!
石井輝男監督の連発に続き、本作はのちにトラック野郎シリーズなどを送り出す名匠・鈴木則文監督が演出。
先の二作品とはガラリと雰囲気の変わったコメディ路線で、めちゃくちゃおもしろかったです。
綱吉の時代から引き続き、江戸城ではお世継ぎ確保のための生殖が日々行われていたわけですが、その結果、当然ながら女児もたくさん生まれることに。
で、継げない女児はあらゆるところに嫁に出されるしかなく、本作の主人公である九州唐島藩城主のもとにも、将軍家斎34番目の娘である清姫が送られてきます。
田舎大名に嫁がされるのが無念でたまらない清姫と、女嫌いで通っていた城主。 
周囲の懇願の末、なんとか枕を共にしますが、清姫は完全体のマグロで挿入以外のおさわり行為の一切を禁止。
だってこっちは将軍の娘ですよ? まがりなりにも姫ですよ? カッペごときが愛撫だなんて頭がたかいですわよ?
そもそも女性経験もないし興味もなかったのに、ねそべった女体にがんばって種をつけろと言われた城主は当然興奮できるはずもなく性交は失敗。
プライドをズタズタにされた城主をなんとか励まそうと、家臣たちは町で噂のポン引きに性の指南を依頼します。
そこでポン引きが用意したのは、なんとフランス人遊女のサンドラ。 
マグロの日本人女性から性に奔放な白人女性という極端な二例を経験させられてしまった城主は、変な感じに覚醒してしまい、なんとサンドラを側室として迎える宣言をしてしまいます。
めちゃくちゃ怒る姫。 幾分引いちゃう家臣。
しかし、性の悦びに目覚めてしまった城主はもう止まりません。 
今まで自分が知らなかった悦びを堪能するだけではなく、それを知っていた世の中全てに嫉妬し、以降一切の人々(オレを除く)による性交を禁じる御触れを出してしまうのでした。 よっ!色情大名!!

とにかくテンポがいい。
木で鼻をくくったような姫のすましっぷりもよければ、信長リスペクト童貞城主のポンコツっぷりもいい。
経験のない城主にうまいことピストン運動させるため、隣の部屋で太鼓をうつ殿山泰司さんの家老さいこう! っていうか、「腰に合わせて太鼓」の原点ってここだったのか。
なんとか姫とちぎらせたいだけだったのに、色欲に(へんな風に)目覚めてしまったせいで悪政が敷かれてしまい、真面目な家臣から処刑されてしまう悲劇。
性の指南役として出てきただけだと思っていたサンドラが抱えていた、悲しい過去と終わらない苦しみ。
みんなに愛を与えたサンドラが迎える最期は、スコセッシの『沈黙』ばりに壮絶でした。 突然しんどいやないか。 あれ・・・ おかしいな・・これ・・コメディと思ってたのに・・・

豪華キャストの中に混じっていたミスターチョメチョメ(昭和用語)こと山城新伍さんが、イメージ通りの山城新伍さんとして出てきて、話に一切不必要なチョメチョメだけを披露し、知らない間に退場していた件はずっと忘れない。 
完全にいらんパートやろ、おもしろかったけど。
新伍の「ほらほら、体は正直だぜ~」メソッドよ永遠に。


で、おもしろかったり微妙な顔つきだったりで観ていた東映ポルノですが、やはり気になったのは「俳優さんたちはどこまで納得の上でこの演出を受け入れたいたのだろう」という点でして。
このブログでも、おっぱいさいこう!みたいな感想は数多書いてきたと思いますが、わたしはロマンティックなキスシーンもエロティックなあいまみえるシーンもあらわになる柔肌もすきですよ。 
ただ、娘を持つ親だからなのか、いろんな情報を知るようになったからか、以前のように目に映ったものをそのまま無邪気に受け入れられなくなったのも事実でして。

すきだったあのシーンは俳優さんに内緒で用意された不意打ちの撮影だった。
胸をときめかせたあのシーンは女優さんの同意を得ないアドリブによるキスだった。
高揚していたあのシーンをとった監督は裏で俳優を虐待していた。
涙を流したあのシーンを作った製作者は多くの人を搾取していた。

後だしジャンケンのように明かされていく新事実を前に、あの時純粋に感動していた気持ち、素直に感銘をうけていた自分をどう受け入れればいいのかわからなくなったことが、この数年間何度あったでしょうか。
現場で苦しんでいた人たちがいたのに、喜んで観ていた自分を許していいのか。
未だに傷を負っている人がいるのに、見て見ぬふりをしたまま「作品は別だから」と気持ちを切り離していいのか。
若い俳優さんの初々しいキスシーンを観ると、その行為が彼らの「思い出したくない過去」になっていなければいいなぁと思ってしまうし、生々しいベッドシーンを観ると、この撮影が無関係なスタッフや下世話な視線の飛び交う環境で行われていなければいいなぁと思ってしまう。
もうね、そういう視点なしで作品を観ることは不可能なんです。
わたしが観たいのは、本物の感情をうみだしてくれる「作り物」だから。 
誰かの犠牲の上に奇跡的にうまれた瞬間ではなく、プロがきちんとした用意・準備のもと安全に製作した瞬間だって、立派な奇跡じゃないですかね。



インティマシー・コーディネーターというお仕事が、話題になっているようです。
数年前からハリウッドでは取り入れられ始めている専門職で、親密な関係を描く場面(主にラブシーン)において、俳優や製作スタッフの間に入り齟齬を埋め、スムーズで安全な撮影ができるようフォローする役割だそう。
先日Netflixで公開された「彼女」というドラマの撮影でも取り入れられたらしいのですが、早速、というべきか残念ながら案の定、苦言というテイの横やりをいれる業界人が出てきているようであきれてます。
昔自腹で映画を観て批評していた監督のコメントは、「彼女」の主演俳優そのものに対するただの悪口であり、自分が以前撮った作品の「武勇伝」に終始していて、まぁなんつうか、その、だいじょうぶかないろいろと。
たくさんの作品に出演してきたという俳優さんが、様々なファクターが発生する現場にコーディネートという職業が割って入ることに懐疑的な意見を述べているのも目にしたのですが、当人同士だと立場の上下もあるし意見だって言いにくい。思い切って言い出せば角が立つこともあるじゃないですか。
だからこそコーディネーターが入ることに意味があるんじゃないかと思いますけどね。
演じる人、演出する人、用意する人にそれぞれの想いがあるのは当たり前で、きっといい作品を作りたいという部分は同じだろうけど、そのアプローチが違うこともあるでしょう。
想いが強いだけに、我を押し通したくなってもおかしくない。
むしろ、その押し通そうという行為で、自分の想いの強さ・やり方の正しさを証明しようという人だっているんじゃないか。
過去にそうした「情熱」が誰かに消えない傷をつけた例などいくらでもありそうな気がします。 
だからこそ、今、過去(現在も含めてですが)のそうした事例が問題であると認識され、解決する一つの方法としての職業がうまれたんじゃないでしょうか。
それって、喜ばしいことなんじゃないですかね? 双方にとってありがたいことなんじゃないですかね?
どうしても自分の想いだけを優先したい人にとっては、邪魔な職業でしょうけど。

あと、もうこれは自分勝手な意見で本当に申し訳ないですけど、観る立場として安心できるんですよ。
誰かだけの独断で作られていない、意思の疎通がきちんと行われたうえで作られている、と知らされることは、この作品を素直に受け止めていいという安心につながるんです。 
例えがただしいかわかりませんが、映画の最後に「この作品で動物は傷つけられていません」と出るのと同じ安心感かもしれない。 
「この作品で俳優やスタッフは傷つけられていません」 
それが大前提かつ当たり前になってほしい。
なにも健全な映画ばかりになってほしいというわけではなく。
不健全な映画も、健全な現場から生み出せると思うから。
一歩ずつ変えて、進んでいきたいじゃないですか。

あと、余談ですがそんなNetflixの「彼女」観ました。
安心して鑑賞した結果、素直におもしろくなかったです。
安っぽい、きれいすぎる、バランスが悪い、キャラクターの行動に感情が入っていかない、とラストカットを除いてまんべんなくいまひとつでした。
いいじゃないですか。 コーディネーターありで、作品はいまいち。 
それでいいじゃないですか。 それでいいんだと思いますよ。


     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

『野球少女』

2021年03月30日
yakyu.jpg
『母親残酷物語』

初めての子ども、初めての子育て、夢見がちで生活力のない夫、泣きつけない実家、たったひとりで生きているような感覚。
あの時、電車から降りようとしない娘にアイスを買ってあげなかったのは、アイスを買うお金がなかったわけじゃない。
買うお金が惜しくなったわけでもない。
目的駅についたから降りようと呼びかけた娘が、自分に見向きもしなかったからだった。
慌てて追ってくるだろうと先に電車を降りたのに、変わらず自分ではなくよそのこが持つアイスを見つめ続けていたからだ。
ほしいものを見つめる目。
あの目は、なぜ自分ではなく他の物に向いているのだろう。
自分はなにをさておいても、娘のことを第一に思っているのに。
そのために自分の人生を捧げたのに。

親になったものが子育てに不安を感じたり、愚痴を吐いたりするとき、よくこんな風な正しさを突き付けられることがある。
「自分たちがすきでつくったくせに」
すきで産んだくせに。 勝手に産んだくせに。 自分の都合で産んだくせに。
自分たちがつくったんだから、文句言わずに育てなさい。
それがあなたたちの責任ですよ。
もちろんそうだと思う。
命は勝手に芽生えない。 
そのための行為があって初めて芽生えるし、ある程度の苦しい期間を経ないと大きくならないし、100%出産できるとも限らない。
前向きか後ろ向きかの違いはあれど、なにがしかの「産む」という意志がはたらかなければ胎外に出てこられない以上、いざこの世界に出てきた子どもは、最低限育てなければならない、とわたしは思う。
最低限、とは子どもが親の支えなしでも生きゆける状態を指す。 
自立、と呼んでもいい。
自立に必要なもの、たとえば精神的な強さは甘えさせているだけでは育たないし、経済的な安定は夢見ているだけでは手に入らない。
最低限、を子どもに与えるため、親が見極めなければならない課題は多い。
子どもの性質、子どもの性格、子どもの才能、子どもの可能性。
いったいどれだけの親が正確にそれらを判断できるだろうか。
答え合わせなど、どこにも用意されていないのに。

親、と書いてきたのは、この悩みが本来性別にとらわれるべきではない事柄だから。
しかし、残念ながら現実その多くは女性にのしかかっている。
本作『野球少女』に登場する母親、シン・ヘスクの上にも。

シン・ヘスクはこういった「夢をおいかける子ども」の物語に出てきがちな親の典型のような女性だ。
口うるさく、頭ごなしで、子どもの才能を信じず、現実的なことばかり押し付ける、理解のない大人。
このような大人は、そうではない大人(やさしく、理解があり、子どもの才能を信じ、夢を後押しする)との比較のために出てくるようなものなので、本来いちいちひっかかるべきではないのかもしれない。
ここは本筋ではない、それはわたしもわかっている。
しかし、精神的に追い詰められたシン・ヘスクが娘にかけた言葉が、どうしてもわたしの胸に突き刺さって、つらくてくるしくて、結局最後までむくわれることのなかったシン・ヘスクを想うとやるせないのだ。
「諦めることは恥ではない」、彼女はそう言ったのだ。

リトルリーグ時代から一目を置かれていた娘は、たしかに他の子どもよりも才能があるのかもしれない。
天才野球少女としてマスコミに取り上げられ、シン・ヘスクも最初は誇りに思っていただろう。
しかし、本来男子しか入部を許されていなかった高校の野球部に入ることを目標にしたころから、誇りの中に不安が混じるようになってきたのではないか。
この子は野球をいつまで続ける気なのか? と。
慣習を土下座で打ち破った父親はさておき、シン・ヘスクはプロ野球界に女子がいないことを忘れなかった。
娘がその歴史を塗り替えるほどの才能を持っているかどうか、自分の目で確かめようとしなかったのは、決して褒められたことではない。
見てもわからなかったから見なかったのかもしれないし、見るのが怖かったのかもしれない。
いずれにしても、女子がプロ選手になれるわけはないのだから、判断しようとするだけ無駄じゃないか。
その偏見が、わたしからみればシン・ヘスク唯一のしくじりだ。
なれるわけがない。 自分の子が第一号になるわけがない。
そう思うしかないような価値観の中育ってきたシン・ヘスクが、我が子にまで偏見を押し付けようとした。
そのことだけは明確に間違っている。
そして、他のことはほとんど全部間違いじゃない。

娘の才能が本物がどうかの線引きを、シン・ヘスクは高校卒業までと定め、それまではなにがあっても見守ろうと決めていたのだろう。
それはひとつの目安としてありうると思う。
結果、卒業が迫ってもスカウトされない娘に、そろそろ夢を追うのをやめて就職しなさいとすすめるのもおかしくない。
とはいえ、娘は野球しかやってきておらず、勉強そっちのけの生活だったから普通の就職すら難しいかもしれない。
そこで、自分が勤める工場のえらいさんに話を通して、特別優遇で入社できるよう取り計らってもらった。
あなたはよくがんばった。 
たくさんいる野球少年・少女の中では才能もあった。
世間に注目され、高校の野球部にも入れた。
もう充分じゃないか。 これ以上望んでも手に入るものはないじゃないか。
夢を追うのは尊い。
でも、諦めるのもまた恥じゃない。
そう、諦めてきたことを恥じる必要などないのだ。

安定した収入を得るため、資格取得を目指す夫。 
大いに結構な計画だけれど、その間の収入はない。
娘にもせめて高校卒業までは野球という夢を追わせたい。
まだ幼いほうの末娘は手がかかる。
シン・ヘスクが彼らすべての生活を支えるため、これまで諦めてきたものは、一体どれぐらいあったのだろうか。
工場の食堂で身を粉にして働き、疲れ果てた体では帰宅後食事を作る余力もなく、けれど幼い娘にも育ち盛りの娘にも腹いっぱい食べさせたいから、残った食材を持ち帰る。
そこに刻まれたプライドはなかったのだろうか。 わたしはあったと思う。
本当はかわいい我が子のために温かい手料理をこしらえたい。でも無理。ごめんなさい。出来合いのおかずでごめんなさい。栄養はあるからしっかり食べて。
責めるべきでも責められるべきでもないのに、ひとつひとついろんなものを諦め、そのたびに自分を恥じてきたのではないか、シン・ヘスクは。
せめて夫にもっと生活力があれば。 
娘が母の苦労にほんのわずかでもいい、理解を示してくれれば。
けれど、娘から帰ってきた言葉は「お母さんはお金のことしか頭にない」という強烈な一言。 
あまりにつらい。わたしだったら徹底的にブチ切れてる。ちょこっと言い返すぐらいでやめたシン・ヘスクえらい。

与えるばかりで与えられることのなかったシン・ヘスク。
でも、失敗だったと思いたくない。 自分の人生を悔いたくない。
「諦めることは恥じゃない」
その言葉は娘ではなく、彼女自身に向けられた、彼女自身が己を肯定するため向け続けた言葉だったのではないだろうか。
本当は彼女だって、諦めなくていいよ、と言われていい人間のはずなのに。
母親の人生はあまりに残酷だ。

本作のラスト、見事プロ球団の二軍入りが決まった娘の契約のため、コーチとともに球団責任者のもとを訪ねるシン・ヘスク。
「娘さんの契約金は6000万ウォンです」、と責任者。
隣に座るコーチは、「おかあさん、この金額は決して悪くない金額ですよ」とささやく。
複雑な表情を浮かべるシン・ヘスクは、意を決したように、絞り出すような声で「わかりました、ただ、うちにはお金があまりないので、すぐには用意できないのです。どうか二か月くださいませんか?二か月でなんとか工面しますので・・・」と申し出る。
それはあなたが払うのではない、球団が娘さんに払うのですよ、とほほえむ責任者とコーチ。
これはハートウォーミングなシーンなのだろうか。
契約金というものすら知らない無知な母親。 
あらあら、かわいそうに。そんなことも知らないの。おかしいね。かわいいね。

じゃねえだろ。

わたしは、このシーンで隣に座っていたのが娘だったらよかったのに、と思った。
偏見を改め、応援すると決めた娘のため、6000万ウォン(日本円だと580万ぐらい)もの大金を二か月で工面しようとするシン・ヘスク。
娘だったら笑わない。 きっと笑ってない。
反発し、軽蔑したことすらあった母親に、過去自分が吐いてきたひどい言葉を振り返り、母親がどれだけお金のことを考えてきてくれたのかということに気付いてくれればいい。
今までの家族の暮らしは、母親がこんな風にして作ってきてくれたものなのだ、と気付いてくれればいい。
そして、「おかあさん、そのお金は払わなくていいんだよ、わたしがもらうお金なんだよ」と呼び掛けて、シン・ヘスクが長年ひとりで背負ってきたものをおろしてあげてほしかった。
もしそういうラストだったら、わたしはこの作品を手放しでほめていたかもしれない。
そんな直接的なやりとりを描かなくとも、この先母親と娘の関係が明るいものになることなど想像に難くないけれども、だ。
あくまで本作の主役は娘であることはわかった上で、だ。
女性が自由を得る映画はいい。
だが、母親残酷物語はもううんざりじゃないか。




     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

2021年だけど2020年映画ベスト10を決めてみたよ!

2021年01月30日
あけましてあめでとうございます。 そしてご無沙汰しております、アガサです。
なんかもう、ブログを書くのが久しぶりすぎてハンドルネームを改めて書くという行為すらこっぱずかしい今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか、
そして今更あけましてもへったくれもないだろうというお気持ち、わかります。でもまだ1月なのでギリあけおめということで何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、ちょうど一年ほど前から世界を騒がせてきた新型のアレ、その後じっくりと確実に混沌を極めさせた結果、数々の分断や絶望のみをわたしたちに与え、未だ収まる気配すら見えないわけですが、映画はちゃっかり観ていたわたしですよ。
不要不急の外出自粛が叫ばれるなか、映画館に出かけるという行為を不謹慎をとらえる方もおられるでしょう。
不安で映画館に行く気になれないという方もおられるでしょう。
もちろん、映画館は密ではあっても、感染の危険性という意味だとそんじょそこらのパブリックスペースとは種類が違うだろうから、普段通り行くよという方も。
わたしはというと、映画館は安全だーい!とたかをくくるつもりはないけれど、会話もしないし換気も万全な以上、自分が設定した基準をクリアさえできていれば映画館に行ってもいいのでは?、というスタンスでこの一年間を過ごしてきました。
自分が設定した基準、これに尽きます。
行くも行かないも個人の判断次第。
無理強いするのは筋違いですし、批判もナンセンス。
規模の大中小かかわらず、映画館には生き残ってもらいたい。
だから無理のない範囲で応援する。 それでいいのではないでしょうか。
幸い(といっていいのかわかりませんが)なことに、近年は上映後ソフト化・配信される期間もどんどん短くなり、映画館に行くことのできない方でも比較的少ないタイムラグのもと、新作を鑑賞できる環境が整ってきました。
かたちはどうあれ、映画を観続けたいものですよね。
だってそれがわたしたちにできる、唯一のことだと思うから。

で、昨年した唯一のことをまとめたものを以下貼り付けようかと思ったのですが、スクロールするのがダルい量になったので数字だけ記してみます。

2020年劇場で鑑賞した作品数(新作)・・・73本
2020年劇場で鑑賞した作品数(旧作)・・・14本
2020年おうちで鑑賞した作品数・・・60本

唯一って量じゃねえな?

いや、数でなにかを誇示するような気持ちはさらさらないですし、これを多いとか少ないとかいう話にもっていって「たったそれだけでドヤるのか」というむきや「どうせじぶんはそれ以下ですよ」というむきを呼び集めたいわけでもないですよ。
ただ、感染に気を付けて自重したつもりだったわりには意外といっとるやん、と己につっこみたい。
あと、昨年はおうちで過去に観た映画を何回も観返したり、今更ながら「メンタリスト」にはまって全話マラソンとかしていたので、この数字も概算です。 仕事しておさんどんして残った時間はテレビの前か。 どうかしてるぜ。 そりゃ家事もおろそかになるわな。

と、いうことで、全タイトルの内訳はこのブログの一番下にある「続きを読む」部分にはりつけておきますので、興味のある方はよろしければご覧ください。
これより本題である2020年ベスト10の発表に移ります。 前置きなっが!!!



1位 『ミッドサマー ディレクターズカット版』
mid.jpg

クマー!!!!

2020年初頭を飾った、説明不要の大ヒット作。
あらすじとしては、「これでもかと傷ついた女性が、恋人とその友人たちと秘境に出かけた結果、新世界の扉を開いちゃうお話」ですが、もう「よくぞこれをシネコンでやってくれたな!!」という歓喜しかなかったですよね。
とことん不穏でとことんやけくそな情緒不安定ホラーを、流行にめざとい人々が見逃さないようなオシャンティなパッケージに包むという策が功を奏し、普段映画館でこの手の映画を観ないようなみなさんが大挙して押し寄せたという。 さいこうじゃないか。
秘境の奇祭ホラーがこれまでになかったわけではない(かの有名な『ウィッカーマン』のように)ですし、エグさでいってもそこまで刺激がつよすぎるものではないのですが、なんつうか、冒頭シーンからクライマックスのクマー!!まで上等なお酒に酔いしれるような心地よさがあり、ええもんみせてもろた感がこの上なかったのでおまえがオレの一等賞だぜ!!
ちなみに、本作には通常版とディレクターズカット版がありますが、チンコが真っ赤だったのがとても好印象だったで、ディレクターズカット版を選ばせていただきました。 走りにあわせてビターンビターンなってたのもよかった!!


2位 『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
02eae04366011ee7c1f09d34e6793637.jpg

高校3年間を勉強に捧げ、あそびほうけるクラスメイト達を見下すことで自分たちの「正しさ」を信じてきたモリーとエイミーは、念願かなって超一流大学に合格し、あとは明日の卒業式を迎えるのみ。
私たちは勝ち組、あそんでたお前らはバカ。
底辺学校か底辺企業か、下手したらフリーターか?まぁせいぜいがんばるんだな! と思っていたら、なんとクラスいちのヤリマン(たぶん)もモリーと同じ超一流大学への進学を、しかもモリーよりも先に決めていたことが判明。
その他の(たぶんバカっぽい)クラスメイトたちもみな、有名大学や超一流企業への合格を手にしていて、愕然とするモリー。
必死で勉強だけをしてきたのに、勉強以外もしてきたみんなと同じ結果しか手にできてなかった・・・ 
・・ならば・・・ ならば今からでもあそばにゃ損だろが!!!
ということで、高校生でいられる最後の一日、というか一晩をパーティ漬けにして3年間の遅れを一気に取り戻そうとするお話な訳ですが、本作はここからが本当におもしろかった!

ただ単にモリーとエイミーの優等生コンビがパーティに乱入して羽目を外し一皮むける、なんてありきたりな一晩ではなく、ふたりが周囲に抱いていた勝手な偏見が次々に覆され、彼女たちも含め、見た目と印象だけで中身を決めつけることの無意味さや愚かさが、ゴキゲンな音楽とハイなテンションと胸にささる甘く苦いトゲと共に描かれていくのですよね。 ほんとうにすばらしかったです。 
わたしの高校生活とはまるで違うけれど、彼女たちの友情、信頼、クラスメイトの(いい意味での)フラットさはとてもまぶしくて、それでいて心地よかった。

きっと全く同じではないだろうけど、この世界はわたしの身近にもあるかもしれない。 
受け入れられなかったときのことを勝手に想定して気付かないふりをしてしまうけど、傷つきたくないから深く知ろうとしないけど、気づこうとすればあるかもしれない。 ないかもしれないけどあるかもしれない。
だから彼女の名前はホープなんですよね。

100%肯定しあえるふたりの関係、さいこう。 
お金持ちだけど友達がいないジャレッドの金言、さいこう。 
憧れていた男の子がハリポタ知識を披露しただけで「あっ!こっち側だ!この人パリピだと思ってたけどこっち側だった!やったー!これもうイケんじゃね?カップル誕生じゃね?」と盛り上がっちゃうトコとかもらい泣きですよね。 わかる、わかるけど違う!今なら違うとわかる!(学生の頃だとわからなかった)
2年前にカミングアウトしたものの誰とも交際できていなかったエイミーが、ジェンダーレスな見た目のクラスメイトに勇気を出して告白しようとしたら、名前と見た目がジェンダーレスだっただけで性的指向はヘテロだったことがわかるシーンは、その残酷さとはうらはらに本当に美しくて涙があふれたし、なんてたって「わたしたちが実はおもろいやつだってことみんなに知らしめてやろうぜ!」という趣旨が実は「みんなも実はおもしろいやつだって彼女もみんなもお互いに気付きあうお話」だったことがさいこう! 
みんなだいすき!抱きしめたい!!


3位 『アングスト/不安』
angst.jpg

製作されたのは1983年なので、正確に言うと新作ではないのですが、何の因果かこの時代に公開されるというありがた展開のおかげで劇場鑑賞できました。そしてめちゃくちゃおもしろかった!
異常者が刑務所から出されて即再犯しちゃうという、身もふたもないお話なのですが、これはなんなんだろうか。
ホラーでもないし、サスペンスでもないし、もちろんスナッフフィルムでもないんだけど、異様なものを観てしまっている落ち着きのなさだけがずっと続くんですよね。
本編開始そうそう、所在なさげに歩道をゆく主人公の足取りとその姿をおかしなカメラワークでとらえるのがすでに不穏度MAXな上、その後適当にピンポンしたおうちの人に、「殺しますね」という犯行宣言を「おはようございます」ぐらいのニュアンスで告げるトコで、「あ、これやばいヤツや」と確信させるのが本当に秀逸。
その後も主人公の行動のすべてが観る者の気持ちを落ち着かせない。
カフェに入ってごはんを食らうだけなのに、とんでもない緊張感。
全編通して、主人公がナレーションで彼の行動の理由や主義主張を説明してくれるのですが、視覚からの情報と聴覚からの情報の乖離具合がすごい。 
耳からは「超余裕だぜ」というナレーションが入ってくるのに、目に映るのはもたついて雑でへたくそな侵入しかできない様子で、しかもそれが延々続くので脳がバグるんですよね。 
計算尽くなんだとしたら(もちろんそうなのでしょうが)この監督さんは相当切れ者ですよね。 
そうでなくても異様な犯罪をおかしているのに、訳の分からんナレーションでそれを彩るとかなんのいやがらせなんだよ。 天才か。
映画が終わり、劇場内に灯りがともったときあんなに安心したのは『羊たちの沈黙』以来かもしれません。


4位 『ジョジョ・ラビット』
jojo.jpg

おかあさんの明るさ・前向きさとか、ヨーキーのあいらしさとか、キャプテンKのかっこよさとか、ジョジョのいさましさとか、ポジティブにみえる描写が多い作品ですが、そのポジティブさはすべてあの戦争とあの迫害に狂わされた人々の生活の上にあるのだ、という容赦ない現実を思うと、たとえようもなく心がいたみます。
後半はそのポジティブさも姿を消し、ひたすらにつらい展開が続くのですが、待ち続けたラストのあのダンスに救われたし、そこにいることができなかった人たちを思うとさらに涙が流れたりしました。 キャプテンKとフィンケルの関係性もすてきだった。
本当にすばらしい作品だった。


5位 『透明人間』
TheInvisible.jpg

『ソウ』で時の人となり、『インシディアス』シリーズでホラー映画の牽引者となったリー・ワネルさん最新作。
職場でも映画好きを公言しているので、よくおすすめ映画を聞かれるのですが、去年一番周囲におすすめしたのがこの作品でしたね。(アングストは人を選ぶので相手をみてすすめます)
DV彼氏に見切りをつけ、命からがら逃げだした女性が姿見えぬストーカーにつきまとわれ、あまつさえ殺人容疑までかけられ社会的にも殺されそうになるお話ですが、まあよくできてたのなんのって!
一切セリフがないのに100%状況が把握できる超おっかない冒頭シーン(めちゃ秀逸)に始まり、引くことのない悪意と殺意がこれでもかと打ち寄せ続けるので、観ているだけで神経がゴンゴン衰弱していきます。
なんせ相手は透明人間ですから、周囲の誰も信じてくれない。 
もっとも信頼していた家族や友人からも白い眼を向けられ、その上DV彼氏がじぶんに隠していた秘密さえ明らかになり万事休すの主人公。 
っていうか捨てられることも見越して、数々抜かりのない作戦を用意しておく彼氏の執着心すごすぎだろ。 
その胆力、もうちょっとほかのところに使えばいいのに・・・
『アップグレード』もそうとう冴えわたる映像美でしたが、本作でワネルさんの演出力が半端ないことが証明されましたね。
ちゃんと怖い映画はいいなぁ・・・ と映画のよろこびをかみしめた1本でした。


6位 『TENET テネット』
6e909026637faec140123e244892d002.jpg

ノーランゆるさんぞ・・・!

詳しい感想はこちら・・・『TENET テネット』


7位 『マティアス&マキシム』
matthias.jpg

幼馴染のふたりがいやいや出演した自主映画でのキスシーンをきっかけに、じぶんのセクシャリティや将来や互いへの気持ちと向き合う青春映画。
シンプルにズキューンときました。 
この、キラキラと輝く青春(と呼べる時期)の最後の季節を、ああだこうだ悩んで無駄に過ごすしかないけど本当は一瞬たりとも無駄にできない感じが胸をしめつけて、映画館でもだえました。
あんまりにもマティアスがはっきりしないので、最後の紹介状のくだりで「どうして彼はぼくにわたしてくれなかったんでしょうか」とマキシムが泣くシーンで、「ほんまよね・・・なんでわたしてくれんのんや・・・あいつのかんがえとることはわからんわ・・・」と一緒に泣いていたわたしですが、その後友人と本作について話していて「あれはマティアスもマキシムに行ってほしくなくて渡せずにいたんでしょ」と言われてオレはアホか・・・と己の読解力のなさを小一時間責めました。
もう・・・マティアスったら・・・ だったら素直にそう言っちゃなよ・・・!!
パーティでいじけるマティアスからの温かい友人からの嵐の中のキスシーンがくるおしいほどすきなので、2020年の10本に入れちゃってもいいと思いました。入れました。


8位 『1917 命をかけた伝令』
34104ed20e7e63624a8e9faf58db390b.png

とにかく映像がすごい。 
どうやって撮ったんだろう&よく撮ったなぁの連続で、誇張ではなく戦場に放り込まれた気持ちになり、観終わった瞬間深いため息をつかずにはいられなかった。
「最後の一人になるまでやめられない」戦争の、決して過去の事とは言い切れない恐ろしさ・虚しさ・かなしさを疑似体験させられたような気がする。
とても真摯な映画でした。


9位 『シカゴ7裁判』
TrialChicago7poster.jpeg

1968年、シカゴで行われた民主党大会で実際に起こった暴動事件と、その裁判を描いた硬派なサスペンス。
平和的なデモを行おうと全米各地から集まった人々のうちの数人が、暴動の先導者として起訴されるのだけれど、司法省ははなからその数人をスケープゴートにしてその場をおさめようと目論んでいるわ、判事はコッテコテの人種差別主義者だわ、起訴されている者同士はいがみあっているわで、有罪判決まったなしの状態。
そこからいかにして裁判をひっくり返すかがテンポよく描かれ、専門用語や時代背景など理解の及びきっていない部分もきっとあるのだけれど、とにかく物語に没頭してしまいました。
エンターテイメントだけど真実。 フィクションだけど現実。
こういう作品を観るたび、色々な事柄が異常な世界に反吐を吐きそうになり、でもその異常さから目を背けず物語として語り継ごうという人々の気迫にうち震える。
うらやましい、と言ってしまうのは情けないけど、正直うらやましいですね。


10位 『海辺の映画館―キネマの玉手箱』
umibe.jpg

大林監督への思いを書き綴ろうとすると、何から書けばいいのか、と、ととめどなくあふれる思いに手が止まってしまいます。
特に、この監督の最後の長編映画を観たあとでは。
監督の過去作をどれだけ観ているか、どれだけ思い入れがあるかで本作の印象も評価も大きく変わってくるのではないかと思います。
それぐらい、大林節が全開で、監督の人生のすべてがつまっているような熱量の塊でした。
映像で、セリフで、テロップで、音楽で、あらゆる表現方法でスクリーンに焼きつけられた監督の想い。
過剰?いや、これは「絶対に伝えたい」という気持ちのあらわれであり、「絶対に伝わるはず」という信頼でもある。
受け止めよう、これを。
みんなに知ってほしい。 映画はすばらしいのだと。
映画を観るだけで終わらせないでほしい。 それを人生に反映させてほしい。 未来を、変えてほしい。
自ら出演されていた監督。 その背中が映った瞬間、昔お会いした時とまるでちがう、あまりのちいささに涙がとまらなくなり、ピアノを奏でる指にまた涙がとめどなく溢れました。
すばらしい作品たちをありがとうございました。
未来を、かえましょう。



以上10作品がわたしの2020年ベストです。

おしくも選外となったのは、『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』でしょうか。
honka.jpg
これもね、実録犯罪映画として『アングストト』に肩を並べるぐらい、気持ちの落ち着かないいい映画でしたね。
画面から匂いがしてくる映画はいい映画だ。(4DX的な意味ではなくて)

あとは、新作ではないものの、大正義WOWOWで観たデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』がとてもよかったです。
ギルティ
警察の緊急通報受付室のみで起こる犯罪サスペンス。
通話だけでここまで物語はスリリングになるのか、と驚嘆しました。
あなたの先入観や想像は、きっと心地よく裏切られることとなる・・・! ラストカットもすばらしい。

ということで、過去数年間ほぼ休眠状態に近かった幣ブログなのですが、SNSが普及し、個人ブログなんて化石と化しつつある今だからこそ、今年はもう少し多くの感想を書きたいと思います。 
なんかね、大げさですけど、こういうのも生きた証なんですよね。

また、みなさまのひとときの時間つぶしにでもおつきあいいただけると幸いです。



続きを読む "2021年だけど2020年映画ベスト10を決めてみたよ!"
     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

すきもの主婦が選ぶ映画映画ベストテン2018

2018年12月16日
おひさしぶりですアガサです。
いつもお世話になっております大人気ブログ・男の魂に火をつけろ! 様による年末恒例企画に今年も参加させていただく所存です。




今年はわりと早い段階で「おっ!今年は映画の映画か~」と思っていたはずなのに、気づけば参加締切日当日、しかもタイムリミットまであと2時間ですよ。
人生ってば不思議なことだらけ!この世はでっかい宝島!!

ワッシュさんによる対象作品の基準を拝見しますと、本年大ヒットしました『カメラを止めるな!』のように「映画の撮影」をテーマとした作品以外にも、劇中映画が登場するような作品や映画のスタッフが主人公の作品、映画館を舞台にした映画やドキュメンタリーなどもオッケーとのこと。
これは難航しますね・・・・ (※のこり2時間で難航を余儀なくする人生観)


と、いうことで、悩み始めるとキリがないのでパッと思いついた作品を10本選んでみました。
以下、わたしが選んだ「映画」の映画ベストテンどうぞ~!!





  1. カイロ紫のバラ (ウディ・アレン監督 1986年)
  2. エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア ( ウェス・クレイヴン監督 1995年)
  3. ニュー・シネマ・パラダイス ( ジュゼッペ・トルナトーレ監督 1989年)
  4. ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲 (ケヴィン・スミス監督 2003年)
  5. インランド・エンパイア (デヴィッド・リンチ監督 2007年)
  6. ブリグズビー・ベア (デイヴ・マッカリー監督 2018年)
  7. セルロイド・クローゼット (ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン監督 1997年)
  8. 地獄でなぜ悪い (園子温監督 2013年)
  9. ROOM237 (ロドニー・アッシャー監督 2014年)
  10. スクリーム3 (ウェス・クレイヴン監督 2000年)







1位の『カイロ紫のバラ』は、「映画」の映画というくくりでなくても、ウディ・アレン作品の中でベスト3に挙げてしまえるぐらいすきな作品です。 とにかくロマンティック。そしてせつない。 「映画の映画」と聞いてまっさきに思い浮かぶのはこれ!

2位の『エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア』は、高校時代どっぷりはまったエルム街の7作目にして最後の作品。(このあとリメイクされていますがそれはカウントしたくない・・・) エルム街の女神ヘザー・ランゲンカンプさんやミスター・エルム街ロバート・イングランドさんが体験したであろうエルム街あるあるネタがちりばめられ、過去作品のオマージュもてんこもりのザッツ・エルム街テイメント。 長年のファンにはたまらない一本となっております。 初見の方はどうかだかわかりません。

3位の『ニュー・シネマ・パラダイス』も、ベタといわれようとなんといわれようと絶対にはずせない一本です。 というか、この作品と『ショーシャンク』が色々な場所でなにかにつけバカにされるの、すっげえ納得いかないんですよね。 アブラカダブラ・・・! 音楽もさいこう。

4位の『ジェイ&サイレント・ボブ』はですね、ほんっっっっっとにくだらない映画です。最大級の褒め言葉としての「くだらなさ」。 おおまじめにおおふざけをやることのすばらしさ、そしてケヴィン・スミス監督の映画愛に胸をうたれます。

5位の『インランド・エンパイア』は、この作品に出てくる映画セットのまがまがしさがだいすきなので入れてみました。 話はまったくわかりません。 そして、わからないなりにあれこれ考えてますます迷宮にまよいこむ。 なんどでもおいしい映画をありがとうございます監督。

6位の『ブリグズビー・ベア』のいとおしさは異常です。 ひさしぶりに「いい映画の映画を観たぞ!」という気持ちになりましたし、この作品に出てくるひとたちをぜんいんまとめて抱きしめたくてたまりません。 とくにグレッグ・キニアさん!

7位の『セルロイド・クローゼット』は、それまでぼんやりと観ていた映画の見方についてガツンと頭を殴られたような作品でした。 長いハリウッドの歴史の中で、性的少数者とその愛はどんな風に隠され、どんな風に描かれてきたか。 今こそ多くの方に観ていただきたいすばらしいドキュメンタリーです。

8位の『地獄でなにが悪い』も、「いい映画の映画」でした。 血が噴き出し、手足がとぶ撮影現場、しかしそこは反社会的組織がスタッフを務める現場だった・・・。 悪趣味で過剰で、「すきな映画が撮りたいんだよ!」というどうしようもない衝動があふれかえった怪作。 ラストも感動。

9位の『ROOM237』も、記憶に残るドキュメンタリーです。 どう残っているかというと、これを観て以来キューブリック監督の『シャイニング』を観るたびに役者さんのうしろに映りこんでいるものやホテルの間取り、空に浮かぶキューブリック監督の顔などが脳裏をよぎって本編どころではなくなるレベルの残り方です。 いい迷惑です。 いい迷惑なんですけど、なんつうか、ひとつの映画をここまで愛せるのってどうかしてる いいもんだなぁと思いますね。 とても面白いので興味がある方はぜひ。

10位の『スクリーム3』は、そもそも『スクリーム』シリーズが「映画の映画」であり、1作目がべらぼうにおもしろいことを踏まえたうえであえての『3』です。 そりゃもうさいこうなのはだんぜん1作目なのですが、キャストご一行さまが訪れた撮影スタジオの主として登場するキャリー・フィッシャーさんに敬意を表し10位に入れました。



以上です。
それではワッシュさん、集計の方大変でしょうがどうぞよろしくお願いします!






     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

2018年上半期えいがまとめ

2018年06月23日
ご無沙汰しております、アガサです。

はやいもので2018年ももう半分が終わろうとしているようです。
このブログの更新も、月2だったのが月イチに変わり、いまではそれすら叶わぬように・・・

そこで今回は、なんとか更新頻度を水増ししようと回復させるための臨時企画「2018年上半期えいがまとめ」をお送りしようと思います! まとめに入ろう!困ったときはまとめに入ろう!ババッとまとめてサクっと更新しよう!!

・・・と軽い気持ちでパソコンを開いたのですが、ふだん鑑賞のメモを残しているのはFilmarksというスマホアプリでして、そこのデータをブログに貼る方法がどうにもこうにもわからないのですよね。(できないのかも)
ひとつひとつ手入力で書きうつすしかないのかよ!ぜんぜんサクれてない!むしろ根気との勝負!
とはいえ他に更新するネタもないのでがんばります!
あ、上半期ランキングは最後に書きます!

参考・・・フィルマークス/アガサ

【2018年一月に観たえいが】
■ バイバイマン
「バイバイマン」第1弾ポスター
あらすじ・・・「バイバイマン」という単語を声に出したり頭に思い浮かべるだけで続々と死にます。

・ よりによって新年一発目がコレとかどうなん自分? と思わず真顔にならずにはいられない2018えいがはじめの一本。
・ 生まれと育ちの一切が謎に包まれたさよならおじさんが、具合の悪そうなワンコを連れて人々の恐怖を貪りにやってくる意欲作です。
・ 概念や量子力学などのくすぐりワードを散りばめつつ、人を狂わせたり死に至らしめたりするのは果たしてなんなのか、と考えさせるおもしろホラー。
・ 霊感少女の使い方が勿体なかったり、銃で撃っても血が出なかったりと、パンチが足りない部分も多々あるけれど、脇役がめちゃ豪華で得した気分でした。

■ アイム・ノット・シリアルキラー
69634.jpg
あらすじ・・・近所のおじさんが異形のものでした。

・ 自分はなんであるか、と自問自答し続けるふたりの主人公。
・ 社会に溶け込むため定めたマイ・ルールを守り、必死で生きていく姿が痛ましい。
・ 「アイム・ノット・シリアルキラー」という互いの心の叫びを理解し合えるのは、ふたりだけだったのかもしれない。
・ 主人公の男の子の暗い瞳が印象的でした。 いまだについ「ドク」って呼んじゃうクリストファー・ロイドさんの繊細な演技もすばらしかった。

■ エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街
37031.jpg
あらすじ・・・『スター・ウォーズ エピソード 4』の出演者や関係者に話を聞きに行くドキュメンタリー。

・ エキストラを含むいわゆる「中の人」へのインタビューだけで一本映画が作られる。 これがスター・ウォーズ。 これぞスター・ウォーズというほかない作品。 わたしはたのしく鑑賞しました。

■ 皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』キーアート
あらすじ・・・ひょんなことからスーパーパワーを手にしたチンピラが、大いなる力にともなう大いなる責任の意味を知ります。

・ ヒーローが高いところに登りたくなるのは、神の目線に近いからなのだろうか・・・ とぼんやり考えました。
・ 落ちても死なないとわかっているからなのかなぁ。 まあ、たぶんわたしもヒーローになったらどっか高いところ登っちゃうと思うけども。 そしてかっこよく落下したい。 最終的にヒーロー着地をキメたい。
・ と、いうことで、「真似したくなる映画はいい映画だ」が持論なわたしにとって、これもとてもいい映画でした。
・ 超人的な力を手にした冴えないおじさんが、強盗で自分の生活を救い、近所に住む身寄りのない女性を救い、目の前にいた見知らぬ親子を救い、離れたサッカー場の観客を救い、これから救ってゆくのであろう街を見下ろすラストシーン。
・ 大いなる力に宿る責任と向き合い、愛した女性との約束を守るべくマスクを被るその姿にたまらなくグッときました。 これすごいすきなやつですね。
・ スーパーヒーロー、純愛、マフィア、アクション、貧困、いろんな要素がてんこ盛りで、なおかつバランスもとれている優れた映画だったと思いました。

■ キングスマン:ゴールデン・サークル
km_jp_poster.jpg
あらすじ・・・だからオレは言ってたんだよね!「どっこい生きてた」パターンでもぜんぜんオッケーだよ?ってさ!

・ おじいちゃん風、ドジっ子風、すご腕エージェント風、おとうさん風、スタイリッシュ紳士風などなど、多種多様なコリン・ファースさまをこれ一本で摂取できる夢のような作品でした。
・ ハイになれるし中毒性もあるし、合法ドラッグと言ってもいいのではないだろうか。もっとくれよ。いろんなコリン・ファースさまもっとくれよ。
・ 今もっとも入りたい隙間ナンバー1 「スーツ姿のハリーの肘の内側と腰のくびれ」
・ コリン・ファースさまとタロンくんの絡みはほぼ泣いた。
・ わたしが前作のラストで観たかったのはこれなんですよ! エージェントとして成長したタロンくんとコリン・ファースさまの共闘!なのにあんな退場の仕方させるんだもんなー! あの頃は怒りのあまりひどいこと言ってごめんね・・監督・・・ もう怒ってないから・・ぜんぶゆるすから・・・かえすがえすもセンキュー・・
・ テイタムの扱いはあれでいいのか。
・ 本作に限らず、かっこいい組織が出てくる映画は軒並みそうなんですけど、優秀な組織のはずなのに主人公以外のエージェントがポンコツばっかなの、そろそろどうにかなんないんですかね。
・ 円卓(じゃなくて長机)にずらりと雁首並べてバーチャル会議してた他のエージェントなにしてるんだよ。 「わーミサイル飛んできた」じゃないだろ。 危機管理どうなってんだよ。 使えるエージェントが若手とベテランふたりだけって組織として不安多すぎだろ。
・ あと、本作における「女性への関心のなさ」はかなりひどい。
・ なんやねんポピー。 あまりにどうでもいい描かれ方で盛大にしらけてしまいました。
・ ポピーはまだ悪役として見せ場らしきものがあったものの、ジンジャーなんかは完全に空気でしたよね。 マーリンに並べるためだけに出したのかっていう雑な出演シーン。
・ しかし彼らはまだましな方で、さらに上を行くぞんざいさだったのがロキシー。 ただ、わたしは絶対ロキシー死んでいないと思っていて、爆撃の瞬間ベッドの下に飛び込んでいたので、そのまま脱出シューターかなにかでひそかに逃げおおせていると信じています。 そうだよな監督?ええ?わかってんだろうなアアン?
・ マーリンのかわゆさ大爆発!
・ 萌えの刺激が致死量を超え、力尽き果てた全世界のマーリン・ファンが各劇場のスクリーン際に打ち寄せられた模様です。
・ そのうえで、マーリンの見せ場をあんなことにしたマシュー・ヴォーンを、おれは絶対にゆるさない。 絶対にだ。

■ シング・ストリート 未来へのうた
32842.jpg
あらすじ・・・いじめられていた少年が音楽の力で未来を切り開きます。

・ おにいちゃんがすごくすてき。
・ どんよりとした海原に漕ぎ出すラストシーンにすこし『卒業』を思い起こしましたが、荒波でびしょ濡れになりながらもまっすぐに前を見据える主人公はきっとだいじょうぶ。 音楽の才能を、自分を信じて進めばきっとだいじょうぶ。 女の子とはたぶん数か月で別れると思いますが、まぁ、些細なことですよ! どどんまい!
・ バンドメンバーもほんとキラキラしててすばらしかった。 少年の頃のコリー・フェルドマンに似た男の子、めちゃくちゃよかった。

■ ノクターナル・アニマルズ
63847.jpg
あらすじ・・・十数年前に別れた夫から猛毒小説が送られてきます。

・ 小説は、文字は、時として凶器になる。 
・ 目に飛び込んだ瞬間神経を切り裂き脳に焼き付き、目を閉じても鮮明に、何度も何度もおぞましいシーンを再現させてしまう。
・ すぐれた小説は一度読んだら最後、忘れることを許してくれない。 読者の心に一生消えない跡を残してゆくものなのだ。
・ 別れて以来19年間連絡を断っていた元妻に、元夫が小説を送ってきます。 
・ 小説の主人公は、妻と娘を無法者に嬲り殺された弱々しい被害者。 
・ 被害者に寄り添うのは、彼に法に則らない正義を果たさせようとする男らしい保安官。
・ このふたりはどちらもが、元夫自身なのだろう、と思いました。
・ そして、無法者に惨殺された妻は元妻であり、娘は彼女が勝手に堕胎した彼の子ども。 さらに、作中妻と娘を彼の人生から奪っていった無法者もまた、小説の受け取り主である元妻なのではないか。
・ 登場人物はみな、彼と、彼から見た彼女の分身。 そう、この小説は彼から彼女への復讐なのだ。 彼の希望を潰し、人生を修復不可能なほどに壊した元妻への。
・ もしかしたら、元夫もまた保安官のように、末期ガンを患っているのかもしれない。
・ 「自分には先がないからケリをつけたい」という保安官の言葉は彼の原動力でもあり、持てる力のすべてを込めて書かれたこの小説の一文字一文字はきっと、いつまでも彼女の中から消えることはないだろう。
・ 彼の中にひそんでいた激しさを、彼女がもう少し早く見出だせていれば、ふたりは幸せなカップルになっていたのでしょうか。
・ 夫婦だった頃には気づかなかった元夫の一面に心を掻き乱され、劣情を抱くようにすらなってしまう元妻が、いそいそと彼好みなようにメイクをなおし出かける姿はどこか滑稽でした。
・ そして、彼が来るはずのないこととその理由に彼女が気づいた時、この復讐は完成したのでしょう。 
・ ただ、元妻もまたある種の犠牲者であることも忘れることはできません。
・ エバーアフターな未来を夢見る彼女に理想を押しつけ、「幸せ」という名の不幸になる呪いをかけた、悪い魔女のような母親に、なんらかの報いがあってほしいと願わずにはいられませんでした。
・ すべてを失った小説の主人公は、元夫自身だが元妻でもあるのかもしれない。
・ 手放してしまった愛も見捨ててしまった過去も、もう取り戻すことはできないんだ、という現実を受け入れることで、彼女は新たな人生を歩き始められるのではないでしょうか。 なにものにも縛られない人生を。
・ ・・・みたいなことを思いながら、帰宅後ずっと反芻していました。 すごくおもしろかったです!

■ 新宿スワン
21180.jpg
あらすじ・・・チンピラがドチンピラになります。

・ 歌舞伎町はこわいなぁ。

■ アニー・ホール
223.jpg

・ 午前十時の映画祭で数十年ぶりに鑑賞しました。 「途中入場は絶対にやなんだよ!」とウディ・アレンがまくしたてるシーンで、現実のおばあちゃんがスクリーンを横切って途中入場してきてちょっとおもしろかったです。

■ シングルマン
13915.jpg
あらすじ・・・愛する人を亡くし死を決意した大学教授のもとに新たな愛が訪れます。

・ 死を決意した途端生が輝いて見え始め、生を受け入れようとした途端死が訪れる。 なんとも皮肉で不条理だけど、それが人生なのかもしれません。 それは、タイミングが異なるだけで、必ず誰もに訪れる未来。
・ ラストが本当にショックで、観た瞬間声にならない悲鳴が漏れてしまったほどでした。 つらい。 めちゃくちゃつらい。
・ けれども、生涯愛し続けられる唯一無二のパートナーに出会え、死が二人を分かつまで濃密に愛し合い、そのわずか数ヶ月後に、今度は美しく魅力的で自分に想いを寄せてくれている人たちと出会い、彼らとかけがえのない時間を過ごしたのち、心臓発作で亡くなるという結果だけみれば、主人公の人生は幸せなものだったといえるのかもしれないなぁ・・とも。
・ それはある意味、奇跡だと思うから。
・ コリン・ファースさまマジ至高。
・ ホルトくんもその他の俳優さんも衣装も美術も超美麗。 なんやここは。スチール写真のみで構成された高度なパラパラ漫画か。(※ほめ言葉)
・ どうせどうあがいてもいつか失うものなのだから、世界の美しさに気づけるよう、ひとときひとときをいつくしみながら過ごしたいものですね。

■ ジオストーム
IMG_20180122_081602_874.jpg
あらすじ・・・天候を操る衛星がバーンってなって地球がドーンってなります。

ブログに書いた感想

■ I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー
51l76UEcBHL.jpg
あらすじ・・・もしかしたら世界で一番有名かもしれないスーツアクター、デヴィッド・プラウズに密着したドキュメンタリー。

・ 製作者の目線がプラウズさん側に寄りすぎて、音楽の使い方を含め公平性に欠けた部分もあるドキュメンタリー。
・ けれど、「中の人」に対するリスペクトがひしひしと感じられるので、最終的には「これもありかなぁ」という気持ちになりました。 情にほだされて、ついうっかり「ルーカスフィルムはプラウズさんゆるしてあげればいいのになぁ」と思ってしまう有様です。 わかりやすい人間です。
・ 幻のプラウズ版アナキンシーン。 権利の関係で本作中ではフッテージが使えないことがわかっていながら「こんなん作ったんスよ!」とがんがんアピールしてくるのは、もしかしなくてもそれを観たがるファンが山盛りいることがわかっていての所業だと思うので、なんつうか、いやらしい監督やで・・・ 闇売買するつもりちゃうか・・・そらもうえらい高値がつきまっせ・・・

■ ダークタワー
320.jpg
あらすじ・・・選ばれし少年が救世主を探すため、夢に出てくる世界を旅します。

・ よくまとめたなぁ、と素直に感心しました。 とびぬけておもしろくはなかったけれど、おどろくほど退屈なわけでもない。そつない映画という印象。
・ キングの世界ではおなじみなアレコレが出てきてにんまりしました。
・ しかし、これだけいい役者さんをそろえたのにこれだけっていうんじゃあもったいないですね。 どうすんだろこのシリーズ。

■ ゲット・アウト
GNBR-4093.jpg
あらすじ・・・白人の恋人の実家にはじめて招待された黒人男性がさんざんな目に遭います。

・ 交際期間わずか5ヶ月にして彼女の両親に会いに行く、今時なかなか筋の通った若者クリス。
・ ただひとつ気になるのは、クリスが黒人で彼女が白人だという点。
・ 果たして、「リベラル」を自認しているという彼女の実家は、娘の初めての「有色」の恋人クリスを受け入れてくれるのでしょうか? というおはなし。
・ こいつはすごい映画ですね! 不穏さが徒党を組んで押し寄せてきた!! 逃げて―!みんな逃げてー!!
・ ちょっとした顔見せ程度のはずが、彼女の両親を含めたエスタブリッシュメントな白人の集いに強制参加させられてしまうクリスくん。
・ そこで飛び交う「オバマ最高」「ウッズ最高」といった黒人賛美を、彼らの差別意識をカバーするためのいわゆる「I have black friends」なのだろうと思わせておいてからの裏切りがとにかく秀逸でした。
・ 尊敬ありきの黒塗りどころではない、ガチもんのなりきりですからね。 執念というべきか怨念というべきか。 よく作ったなぁこれ。
・ ストーカーにありそうな「自分がほしいものはなんとしてでも手に入れたい」心理なのかもしれませんが、なんともありがたくない話ですね。
・ そして、そんな老人たちとは少し異なり、トロフィーハンティング感覚で獲物(黒人)を狩るクリスの白い恋人。 実はいちばん恐ろしいのは彼女なのかもしれないなぁと思いました。
・ 老人コミュの中に日本人がひとりだけいたけれど、彼の黒人への憧れは白人が持つ「白人様からあえて黒人へ」ではなく、アメリカ社会において「黒人>アジア人」という位置関係がある上での変身願望なのだろうか。
・ こっそりスマホの充電コードを抜いておく、という地味ながら効果抜群な嫌がらせがよかった。
・ あれ、マジで困るからね! 我が家も寝る前にさしておいた充電器が夜中の内にこっそり抜かれていて、朝になっても充電できてへんやんけ!って時々なるんですよ! 犯人ですか? 自分の充電器をどっかになくしちゃって、探す代わりにおかあさんのに目をつけた娘の仕業です!
・ シンメトリーな邸宅が逆にそこに住む人々の歪さを強調していたり、白人に差別された時黒人がみな手に手を取って助け合うわけではなかったり、すみずみまでホントによく出来たホラーだったと思いました。





はい、というわけで、途中でうすうすお気づきの方もいらしたかもしれませんが、1月分だけでこんな分量になってしまったので続きはまたの機会ということで・・・。
次回「2月に観たえいが」でお会いしましょう!





     ♪♪どちらのバナーでもどうぞご遠慮なく♪♪ →   にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

 | HOME | Next »

※当ブログで使用しているイラスト等の著作権は、全てはアガサにありますので、転載、二次加工、再配布の際は一言ご連絡下さいませ。