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2021年だけど2020年映画ベスト10を決めてみたよ!

2021年01月30日
あけましてあめでとうございます。 そしてご無沙汰しております、アガサです。
なんかもう、ブログを書くのが久しぶりすぎてハンドルネームを改めて書くという行為すらこっぱずかしい今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか、
そして今更あけましてもへったくれもないだろうというお気持ち、わかります。でもまだ1月なのでギリあけおめということで何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、ちょうど一年ほど前から世界を騒がせてきた新型のアレ、その後じっくりと確実に混沌を極めさせた結果、数々の分断や絶望のみをわたしたちに与え、未だ収まる気配すら見えないわけですが、映画はちゃっかり観ていたわたしですよ。
不要不急の外出自粛が叫ばれるなか、映画館に出かけるという行為を不謹慎をとらえる方もおられるでしょう。
不安で映画館に行く気になれないという方もおられるでしょう。
もちろん、映画館は密ではあっても、感染の危険性という意味だとそんじょそこらのパブリックスペースとは種類が違うだろうから、普段通り行くよという方も。
わたしはというと、映画館は安全だーい!とたかをくくるつもりはないけれど、会話もしないし換気も万全な以上、自分が設定した基準をクリアさえできていれば映画館に行ってもいいのでは?、というスタンスでこの一年間を過ごしてきました。
自分が設定した基準、これに尽きます。
行くも行かないも個人の判断次第。
無理強いするのは筋違いですし、批判もナンセンス。
規模の大中小かかわらず、映画館には生き残ってもらいたい。
だから無理のない範囲で応援する。 それでいいのではないでしょうか。
幸い(といっていいのかわかりませんが)なことに、近年は上映後ソフト化・配信される期間もどんどん短くなり、映画館に行くことのできない方でも比較的少ないタイムラグのもと、新作を鑑賞できる環境が整ってきました。
かたちはどうあれ、映画を観続けたいものですよね。
だってそれがわたしたちにできる、唯一のことだと思うから。

で、昨年した唯一のことをまとめたものを以下貼り付けようかと思ったのですが、スクロールするのがダルい量になったので数字だけ記してみます。

2020年劇場で鑑賞した作品数(新作)・・・73本
2020年劇場で鑑賞した作品数(旧作)・・・14本
2020年おうちで鑑賞した作品数・・・60本

唯一って量じゃねえな?

いや、数でなにかを誇示するような気持ちはさらさらないですし、これを多いとか少ないとかいう話にもっていって「たったそれだけでドヤるのか」というむきや「どうせじぶんはそれ以下ですよ」というむきを呼び集めたいわけでもないですよ。
ただ、感染に気を付けて自重したつもりだったわりには意外といっとるやん、と己につっこみたい。
あと、昨年はおうちで過去に観た映画を何回も観返したり、今更ながら「メンタリスト」にはまって全話マラソンとかしていたので、この数字も概算です。 仕事しておさんどんして残った時間はテレビの前か。 どうかしてるぜ。 そりゃ家事もおろそかになるわな。

と、いうことで、全タイトルの内訳はこのブログの一番下にある「続きを読む」部分にはりつけておきますので、興味のある方はよろしければご覧ください。
これより本題である2020年ベスト10の発表に移ります。 前置きなっが!!!



1位 『ミッドサマー ディレクターズカット版』
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クマー!!!!

2020年初頭を飾った、説明不要の大ヒット作。
あらすじとしては、「これでもかと傷ついた女性が、恋人とその友人たちと秘境に出かけた結果、新世界の扉を開いちゃうお話」ですが、もう「よくぞこれをシネコンでやってくれたな!!」という歓喜しかなかったですよね。
とことん不穏でとことんやけくそな情緒不安定ホラーを、流行にめざとい人々が見逃さないようなオシャンティなパッケージに包むという策が功を奏し、普段映画館でこの手の映画を観ないようなみなさんが大挙して押し寄せたという。 さいこうじゃないか。
秘境の奇祭ホラーがこれまでになかったわけではない(かの有名な『ウィッカーマン』のように)ですし、エグさでいってもそこまで刺激がつよすぎるものではないのですが、なんつうか、冒頭シーンからクライマックスのクマー!!まで上等なお酒に酔いしれるような心地よさがあり、ええもんみせてもろた感がこの上なかったのでおまえがオレの一等賞だぜ!!
ちなみに、本作には通常版とディレクターズカット版がありますが、チンコが真っ赤だったのがとても好印象だったで、ディレクターズカット版を選ばせていただきました。 走りにあわせてビターンビターンなってたのもよかった!!


2位 『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
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高校3年間を勉強に捧げ、あそびほうけるクラスメイト達を見下すことで自分たちの「正しさ」を信じてきたモリーとエイミーは、念願かなって超一流大学に合格し、あとは明日の卒業式を迎えるのみ。
私たちは勝ち組、あそんでたお前らはバカ。
底辺学校か底辺企業か、下手したらフリーターか?まぁせいぜいがんばるんだな! と思っていたら、なんとクラスいちのヤリマン(たぶん)もモリーと同じ超一流大学への進学を、しかもモリーよりも先に決めていたことが判明。
その他の(たぶんバカっぽい)クラスメイトたちもみな、有名大学や超一流企業への合格を手にしていて、愕然とするモリー。
必死で勉強だけをしてきたのに、勉強以外もしてきたみんなと同じ結果しか手にできてなかった・・・ 
・・ならば・・・ ならば今からでもあそばにゃ損だろが!!!
ということで、高校生でいられる最後の一日、というか一晩をパーティ漬けにして3年間の遅れを一気に取り戻そうとするお話な訳ですが、本作はここからが本当におもしろかった!

ただ単にモリーとエイミーの優等生コンビがパーティに乱入して羽目を外し一皮むける、なんてありきたりな一晩ではなく、ふたりが周囲に抱いていた勝手な偏見が次々に覆され、彼女たちも含め、見た目と印象だけで中身を決めつけることの無意味さや愚かさが、ゴキゲンな音楽とハイなテンションと胸にささる甘く苦いトゲと共に描かれていくのですよね。 ほんとうにすばらしかったです。 
わたしの高校生活とはまるで違うけれど、彼女たちの友情、信頼、クラスメイトの(いい意味での)フラットさはとてもまぶしくて、それでいて心地よかった。

きっと全く同じではないだろうけど、この世界はわたしの身近にもあるかもしれない。 
受け入れられなかったときのことを勝手に想定して気付かないふりをしてしまうけど、傷つきたくないから深く知ろうとしないけど、気づこうとすればあるかもしれない。 ないかもしれないけどあるかもしれない。
だから彼女の名前はホープなんですよね。

100%肯定しあえるふたりの関係、さいこう。 
お金持ちだけど友達がいないジャレッドの金言、さいこう。 
憧れていた男の子がハリポタ知識を披露しただけで「あっ!こっち側だ!この人パリピだと思ってたけどこっち側だった!やったー!これもうイケんじゃね?カップル誕生じゃね?」と盛り上がっちゃうトコとかもらい泣きですよね。 わかる、わかるけど違う!今なら違うとわかる!(学生の頃だとわからなかった)
2年前にカミングアウトしたものの誰とも交際できていなかったエイミーが、ジェンダーレスな見た目のクラスメイトに勇気を出して告白しようとしたら、名前と見た目がジェンダーレスだっただけで性的指向はヘテロだったことがわかるシーンは、その残酷さとはうらはらに本当に美しくて涙があふれたし、なんてたって「わたしたちが実はおもろいやつだってことみんなに知らしめてやろうぜ!」という趣旨が実は「みんなも実はおもしろいやつだって彼女もみんなもお互いに気付きあうお話」だったことがさいこう! 
みんなだいすき!抱きしめたい!!


3位 『アングスト/不安』
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製作されたのは1983年なので、正確に言うと新作ではないのですが、何の因果かこの時代に公開されるというありがた展開のおかげで劇場鑑賞できました。そしてめちゃくちゃおもしろかった!
異常者が刑務所から出されて即再犯しちゃうという、身もふたもないお話なのですが、これはなんなんだろうか。
ホラーでもないし、サスペンスでもないし、もちろんスナッフフィルムでもないんだけど、異様なものを観てしまっている落ち着きのなさだけがずっと続くんですよね。
本編開始そうそう、所在なさげに歩道をゆく主人公の足取りとその姿をおかしなカメラワークでとらえるのがすでに不穏度MAXな上、その後適当にピンポンしたおうちの人に、「殺しますね」という犯行宣言を「おはようございます」ぐらいのニュアンスで告げるトコで、「あ、これやばいヤツや」と確信させるのが本当に秀逸。
その後も主人公の行動のすべてが観る者の気持ちを落ち着かせない。
カフェに入ってごはんを食らうだけなのに、とんでもない緊張感。
全編通して、主人公がナレーションで彼の行動の理由や主義主張を説明してくれるのですが、視覚からの情報と聴覚からの情報の乖離具合がすごい。 
耳からは「超余裕だぜ」というナレーションが入ってくるのに、目に映るのはもたついて雑でへたくそな侵入しかできない様子で、しかもそれが延々続くので脳がバグるんですよね。 
計算尽くなんだとしたら(もちろんそうなのでしょうが)この監督さんは相当切れ者ですよね。 
そうでなくても異様な犯罪をおかしているのに、訳の分からんナレーションでそれを彩るとかなんのいやがらせなんだよ。 天才か。
映画が終わり、劇場内に灯りがともったときあんなに安心したのは『羊たちの沈黙』以来かもしれません。


4位 『ジョジョ・ラビット』
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おかあさんの明るさ・前向きさとか、ヨーキーのあいらしさとか、キャプテンKのかっこよさとか、ジョジョのいさましさとか、ポジティブにみえる描写が多い作品ですが、そのポジティブさはすべてあの戦争とあの迫害に狂わされた人々の生活の上にあるのだ、という容赦ない現実を思うと、たとえようもなく心がいたみます。
後半はそのポジティブさも姿を消し、ひたすらにつらい展開が続くのですが、待ち続けたラストのあのダンスに救われたし、そこにいることができなかった人たちを思うとさらに涙が流れたりしました。 キャプテンKとフィンケルの関係性もすてきだった。
本当にすばらしい作品だった。


5位 『透明人間』
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『ソウ』で時の人となり、『インシディアス』シリーズでホラー映画の牽引者となったリー・ワネルさん最新作。
職場でも映画好きを公言しているので、よくおすすめ映画を聞かれるのですが、去年一番周囲におすすめしたのがこの作品でしたね。(アングストは人を選ぶので相手をみてすすめます)
DV彼氏に見切りをつけ、命からがら逃げだした女性が姿見えぬストーカーにつきまとわれ、あまつさえ殺人容疑までかけられ社会的にも殺されそうになるお話ですが、まあよくできてたのなんのって!
一切セリフがないのに100%状況が把握できる超おっかない冒頭シーン(めちゃ秀逸)に始まり、引くことのない悪意と殺意がこれでもかと打ち寄せ続けるので、観ているだけで神経がゴンゴン衰弱していきます。
なんせ相手は透明人間ですから、周囲の誰も信じてくれない。 
もっとも信頼していた家族や友人からも白い眼を向けられ、その上DV彼氏がじぶんに隠していた秘密さえ明らかになり万事休すの主人公。 
っていうか捨てられることも見越して、数々抜かりのない作戦を用意しておく彼氏の執着心すごすぎだろ。 
その胆力、もうちょっとほかのところに使えばいいのに・・・
『アップグレード』もそうとう冴えわたる映像美でしたが、本作でワネルさんの演出力が半端ないことが証明されましたね。
ちゃんと怖い映画はいいなぁ・・・ と映画のよろこびをかみしめた1本でした。


6位 『TENET テネット』
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ノーランゆるさんぞ・・・!

詳しい感想はこちら・・・『TENET テネット』


7位 『マティアス&マキシム』
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幼馴染のふたりがいやいや出演した自主映画でのキスシーンをきっかけに、じぶんのセクシャリティや将来や互いへの気持ちと向き合う青春映画。
シンプルにズキューンときました。 
この、キラキラと輝く青春(と呼べる時期)の最後の季節を、ああだこうだ悩んで無駄に過ごすしかないけど本当は一瞬たりとも無駄にできない感じが胸をしめつけて、映画館でもだえました。
あんまりにもマティアスがはっきりしないので、最後の紹介状のくだりで「どうして彼はぼくにわたしてくれなかったんでしょうか」とマキシムが泣くシーンで、「ほんまよね・・・なんでわたしてくれんのんや・・・あいつのかんがえとることはわからんわ・・・」と一緒に泣いていたわたしですが、その後友人と本作について話していて「あれはマティアスもマキシムに行ってほしくなくて渡せずにいたんでしょ」と言われてオレはアホか・・・と己の読解力のなさを小一時間責めました。
もう・・・マティアスったら・・・ だったら素直にそう言っちゃなよ・・・!!
パーティでいじけるマティアスからの温かい友人からの嵐の中のキスシーンがくるおしいほどすきなので、2020年の10本に入れちゃってもいいと思いました。入れました。


8位 『1917 命をかけた伝令』
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とにかく映像がすごい。 
どうやって撮ったんだろう&よく撮ったなぁの連続で、誇張ではなく戦場に放り込まれた気持ちになり、観終わった瞬間深いため息をつかずにはいられなかった。
「最後の一人になるまでやめられない」戦争の、決して過去の事とは言い切れない恐ろしさ・虚しさ・かなしさを疑似体験させられたような気がする。
とても真摯な映画でした。


9位 『シカゴ7裁判』
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1968年、シカゴで行われた民主党大会で実際に起こった暴動事件と、その裁判を描いた硬派なサスペンス。
平和的なデモを行おうと全米各地から集まった人々のうちの数人が、暴動の先導者として起訴されるのだけれど、司法省ははなからその数人をスケープゴートにしてその場をおさめようと目論んでいるわ、判事はコッテコテの人種差別主義者だわ、起訴されている者同士はいがみあっているわで、有罪判決まったなしの状態。
そこからいかにして裁判をひっくり返すかがテンポよく描かれ、専門用語や時代背景など理解の及びきっていない部分もきっとあるのだけれど、とにかく物語に没頭してしまいました。
エンターテイメントだけど真実。 フィクションだけど現実。
こういう作品を観るたび、色々な事柄が異常な世界に反吐を吐きそうになり、でもその異常さから目を背けず物語として語り継ごうという人々の気迫にうち震える。
うらやましい、と言ってしまうのは情けないけど、正直うらやましいですね。


10位 『海辺の映画館―キネマの玉手箱』
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大林監督への思いを書き綴ろうとすると、何から書けばいいのか、と、ととめどなくあふれる思いに手が止まってしまいます。
特に、この監督の最後の長編映画を観たあとでは。
監督の過去作をどれだけ観ているか、どれだけ思い入れがあるかで本作の印象も評価も大きく変わってくるのではないかと思います。
それぐらい、大林節が全開で、監督の人生のすべてがつまっているような熱量の塊でした。
映像で、セリフで、テロップで、音楽で、あらゆる表現方法でスクリーンに焼きつけられた監督の想い。
過剰?いや、これは「絶対に伝えたい」という気持ちのあらわれであり、「絶対に伝わるはず」という信頼でもある。
受け止めよう、これを。
みんなに知ってほしい。 映画はすばらしいのだと。
映画を観るだけで終わらせないでほしい。 それを人生に反映させてほしい。 未来を、変えてほしい。
自ら出演されていた監督。 その背中が映った瞬間、昔お会いした時とまるでちがう、あまりのちいささに涙がとまらなくなり、ピアノを奏でる指にまた涙がとめどなく溢れました。
すばらしい作品たちをありがとうございました。
未来を、かえましょう。



以上10作品がわたしの2020年ベストです。

おしくも選外となったのは、『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』でしょうか。
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これもね、実録犯罪映画として『アングストト』に肩を並べるぐらい、気持ちの落ち着かないいい映画でしたね。
画面から匂いがしてくる映画はいい映画だ。(4DX的な意味ではなくて)

あとは、新作ではないものの、大正義WOWOWで観たデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』がとてもよかったです。
ギルティ
警察の緊急通報受付室のみで起こる犯罪サスペンス。
通話だけでここまで物語はスリリングになるのか、と驚嘆しました。
あなたの先入観や想像は、きっと心地よく裏切られることとなる・・・! ラストカットもすばらしい。

ということで、過去数年間ほぼ休眠状態に近かった幣ブログなのですが、SNSが普及し、個人ブログなんて化石と化しつつある今だからこそ、今年はもう少し多くの感想を書きたいと思います。 
なんかね、大げさですけど、こういうのも生きた証なんですよね。

また、みなさまのひとときの時間つぶしにでもおつきあいいただけると幸いです。



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すきもの主婦が選ぶ映画映画ベストテン2018

2018年12月16日
おひさしぶりですアガサです。
いつもお世話になっております大人気ブログ・男の魂に火をつけろ! 様による年末恒例企画に今年も参加させていただく所存です。




今年はわりと早い段階で「おっ!今年は映画の映画か~」と思っていたはずなのに、気づけば参加締切日当日、しかもタイムリミットまであと2時間ですよ。
人生ってば不思議なことだらけ!この世はでっかい宝島!!

ワッシュさんによる対象作品の基準を拝見しますと、本年大ヒットしました『カメラを止めるな!』のように「映画の撮影」をテーマとした作品以外にも、劇中映画が登場するような作品や映画のスタッフが主人公の作品、映画館を舞台にした映画やドキュメンタリーなどもオッケーとのこと。
これは難航しますね・・・・ (※のこり2時間で難航を余儀なくする人生観)


と、いうことで、悩み始めるとキリがないのでパッと思いついた作品を10本選んでみました。
以下、わたしが選んだ「映画」の映画ベストテンどうぞ~!!





  1. カイロ紫のバラ (ウディ・アレン監督 1986年)
  2. エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア ( ウェス・クレイヴン監督 1995年)
  3. ニュー・シネマ・パラダイス ( ジュゼッペ・トルナトーレ監督 1989年)
  4. ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲 (ケヴィン・スミス監督 2003年)
  5. インランド・エンパイア (デヴィッド・リンチ監督 2007年)
  6. ブリグズビー・ベア (デイヴ・マッカリー監督 2018年)
  7. セルロイド・クローゼット (ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン監督 1997年)
  8. 地獄でなぜ悪い (園子温監督 2013年)
  9. ROOM237 (ロドニー・アッシャー監督 2014年)
  10. スクリーム3 (ウェス・クレイヴン監督 2000年)







1位の『カイロ紫のバラ』は、「映画」の映画というくくりでなくても、ウディ・アレン作品の中でベスト3に挙げてしまえるぐらいすきな作品です。 とにかくロマンティック。そしてせつない。 「映画の映画」と聞いてまっさきに思い浮かぶのはこれ!

2位の『エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア』は、高校時代どっぷりはまったエルム街の7作目にして最後の作品。(このあとリメイクされていますがそれはカウントしたくない・・・) エルム街の女神ヘザー・ランゲンカンプさんやミスター・エルム街ロバート・イングランドさんが体験したであろうエルム街あるあるネタがちりばめられ、過去作品のオマージュもてんこもりのザッツ・エルム街テイメント。 長年のファンにはたまらない一本となっております。 初見の方はどうかだかわかりません。

3位の『ニュー・シネマ・パラダイス』も、ベタといわれようとなんといわれようと絶対にはずせない一本です。 というか、この作品と『ショーシャンク』が色々な場所でなにかにつけバカにされるの、すっげえ納得いかないんですよね。 アブラカダブラ・・・! 音楽もさいこう。

4位の『ジェイ&サイレント・ボブ』はですね、ほんっっっっっとにくだらない映画です。最大級の褒め言葉としての「くだらなさ」。 おおまじめにおおふざけをやることのすばらしさ、そしてケヴィン・スミス監督の映画愛に胸をうたれます。

5位の『インランド・エンパイア』は、この作品に出てくる映画セットのまがまがしさがだいすきなので入れてみました。 話はまったくわかりません。 そして、わからないなりにあれこれ考えてますます迷宮にまよいこむ。 なんどでもおいしい映画をありがとうございます監督。

6位の『ブリグズビー・ベア』のいとおしさは異常です。 ひさしぶりに「いい映画の映画を観たぞ!」という気持ちになりましたし、この作品に出てくるひとたちをぜんいんまとめて抱きしめたくてたまりません。 とくにグレッグ・キニアさん!

7位の『セルロイド・クローゼット』は、それまでぼんやりと観ていた映画の見方についてガツンと頭を殴られたような作品でした。 長いハリウッドの歴史の中で、性的少数者とその愛はどんな風に隠され、どんな風に描かれてきたか。 今こそ多くの方に観ていただきたいすばらしいドキュメンタリーです。

8位の『地獄でなにが悪い』も、「いい映画の映画」でした。 血が噴き出し、手足がとぶ撮影現場、しかしそこは反社会的組織がスタッフを務める現場だった・・・。 悪趣味で過剰で、「すきな映画が撮りたいんだよ!」というどうしようもない衝動があふれかえった怪作。 ラストも感動。

9位の『ROOM237』も、記憶に残るドキュメンタリーです。 どう残っているかというと、これを観て以来キューブリック監督の『シャイニング』を観るたびに役者さんのうしろに映りこんでいるものやホテルの間取り、空に浮かぶキューブリック監督の顔などが脳裏をよぎって本編どころではなくなるレベルの残り方です。 いい迷惑です。 いい迷惑なんですけど、なんつうか、ひとつの映画をここまで愛せるのってどうかしてる いいもんだなぁと思いますね。 とても面白いので興味がある方はぜひ。

10位の『スクリーム3』は、そもそも『スクリーム』シリーズが「映画の映画」であり、1作目がべらぼうにおもしろいことを踏まえたうえであえての『3』です。 そりゃもうさいこうなのはだんぜん1作目なのですが、キャストご一行さまが訪れた撮影スタジオの主として登場するキャリー・フィッシャーさんに敬意を表し10位に入れました。



以上です。
それではワッシュさん、集計の方大変でしょうがどうぞよろしくお願いします!






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2018年上半期えいがまとめ

2018年06月23日
ご無沙汰しております、アガサです。

はやいもので2018年ももう半分が終わろうとしているようです。
このブログの更新も、月2だったのが月イチに変わり、いまではそれすら叶わぬように・・・

そこで今回は、なんとか更新頻度を水増ししようと回復させるための臨時企画「2018年上半期えいがまとめ」をお送りしようと思います! まとめに入ろう!困ったときはまとめに入ろう!ババッとまとめてサクっと更新しよう!!

・・・と軽い気持ちでパソコンを開いたのですが、ふだん鑑賞のメモを残しているのはFilmarksというスマホアプリでして、そこのデータをブログに貼る方法がどうにもこうにもわからないのですよね。(できないのかも)
ひとつひとつ手入力で書きうつすしかないのかよ!ぜんぜんサクれてない!むしろ根気との勝負!
とはいえ他に更新するネタもないのでがんばります!
あ、上半期ランキングは最後に書きます!

参考・・・フィルマークス/アガサ

【2018年一月に観たえいが】
■ バイバイマン
「バイバイマン」第1弾ポスター
あらすじ・・・「バイバイマン」という単語を声に出したり頭に思い浮かべるだけで続々と死にます。

・ よりによって新年一発目がコレとかどうなん自分? と思わず真顔にならずにはいられない2018えいがはじめの一本。
・ 生まれと育ちの一切が謎に包まれたさよならおじさんが、具合の悪そうなワンコを連れて人々の恐怖を貪りにやってくる意欲作です。
・ 概念や量子力学などのくすぐりワードを散りばめつつ、人を狂わせたり死に至らしめたりするのは果たしてなんなのか、と考えさせるおもしろホラー。
・ 霊感少女の使い方が勿体なかったり、銃で撃っても血が出なかったりと、パンチが足りない部分も多々あるけれど、脇役がめちゃ豪華で得した気分でした。

■ アイム・ノット・シリアルキラー
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あらすじ・・・近所のおじさんが異形のものでした。

・ 自分はなんであるか、と自問自答し続けるふたりの主人公。
・ 社会に溶け込むため定めたマイ・ルールを守り、必死で生きていく姿が痛ましい。
・ 「アイム・ノット・シリアルキラー」という互いの心の叫びを理解し合えるのは、ふたりだけだったのかもしれない。
・ 主人公の男の子の暗い瞳が印象的でした。 いまだについ「ドク」って呼んじゃうクリストファー・ロイドさんの繊細な演技もすばらしかった。

■ エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街
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あらすじ・・・『スター・ウォーズ エピソード 4』の出演者や関係者に話を聞きに行くドキュメンタリー。

・ エキストラを含むいわゆる「中の人」へのインタビューだけで一本映画が作られる。 これがスター・ウォーズ。 これぞスター・ウォーズというほかない作品。 わたしはたのしく鑑賞しました。

■ 皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』キーアート
あらすじ・・・ひょんなことからスーパーパワーを手にしたチンピラが、大いなる力にともなう大いなる責任の意味を知ります。

・ ヒーローが高いところに登りたくなるのは、神の目線に近いからなのだろうか・・・ とぼんやり考えました。
・ 落ちても死なないとわかっているからなのかなぁ。 まあ、たぶんわたしもヒーローになったらどっか高いところ登っちゃうと思うけども。 そしてかっこよく落下したい。 最終的にヒーロー着地をキメたい。
・ と、いうことで、「真似したくなる映画はいい映画だ」が持論なわたしにとって、これもとてもいい映画でした。
・ 超人的な力を手にした冴えないおじさんが、強盗で自分の生活を救い、近所に住む身寄りのない女性を救い、目の前にいた見知らぬ親子を救い、離れたサッカー場の観客を救い、これから救ってゆくのであろう街を見下ろすラストシーン。
・ 大いなる力に宿る責任と向き合い、愛した女性との約束を守るべくマスクを被るその姿にたまらなくグッときました。 これすごいすきなやつですね。
・ スーパーヒーロー、純愛、マフィア、アクション、貧困、いろんな要素がてんこ盛りで、なおかつバランスもとれている優れた映画だったと思いました。

■ キングスマン:ゴールデン・サークル
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あらすじ・・・だからオレは言ってたんだよね!「どっこい生きてた」パターンでもぜんぜんオッケーだよ?ってさ!

・ おじいちゃん風、ドジっ子風、すご腕エージェント風、おとうさん風、スタイリッシュ紳士風などなど、多種多様なコリン・ファースさまをこれ一本で摂取できる夢のような作品でした。
・ ハイになれるし中毒性もあるし、合法ドラッグと言ってもいいのではないだろうか。もっとくれよ。いろんなコリン・ファースさまもっとくれよ。
・ 今もっとも入りたい隙間ナンバー1 「スーツ姿のハリーの肘の内側と腰のくびれ」
・ コリン・ファースさまとタロンくんの絡みはほぼ泣いた。
・ わたしが前作のラストで観たかったのはこれなんですよ! エージェントとして成長したタロンくんとコリン・ファースさまの共闘!なのにあんな退場の仕方させるんだもんなー! あの頃は怒りのあまりひどいこと言ってごめんね・・監督・・・ もう怒ってないから・・ぜんぶゆるすから・・・かえすがえすもセンキュー・・
・ テイタムの扱いはあれでいいのか。
・ 本作に限らず、かっこいい組織が出てくる映画は軒並みそうなんですけど、優秀な組織のはずなのに主人公以外のエージェントがポンコツばっかなの、そろそろどうにかなんないんですかね。
・ 円卓(じゃなくて長机)にずらりと雁首並べてバーチャル会議してた他のエージェントなにしてるんだよ。 「わーミサイル飛んできた」じゃないだろ。 危機管理どうなってんだよ。 使えるエージェントが若手とベテランふたりだけって組織として不安多すぎだろ。
・ あと、本作における「女性への関心のなさ」はかなりひどい。
・ なんやねんポピー。 あまりにどうでもいい描かれ方で盛大にしらけてしまいました。
・ ポピーはまだ悪役として見せ場らしきものがあったものの、ジンジャーなんかは完全に空気でしたよね。 マーリンに並べるためだけに出したのかっていう雑な出演シーン。
・ しかし彼らはまだましな方で、さらに上を行くぞんざいさだったのがロキシー。 ただ、わたしは絶対ロキシー死んでいないと思っていて、爆撃の瞬間ベッドの下に飛び込んでいたので、そのまま脱出シューターかなにかでひそかに逃げおおせていると信じています。 そうだよな監督?ええ?わかってんだろうなアアン?
・ マーリンのかわゆさ大爆発!
・ 萌えの刺激が致死量を超え、力尽き果てた全世界のマーリン・ファンが各劇場のスクリーン際に打ち寄せられた模様です。
・ そのうえで、マーリンの見せ場をあんなことにしたマシュー・ヴォーンを、おれは絶対にゆるさない。 絶対にだ。

■ シング・ストリート 未来へのうた
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あらすじ・・・いじめられていた少年が音楽の力で未来を切り開きます。

・ おにいちゃんがすごくすてき。
・ どんよりとした海原に漕ぎ出すラストシーンにすこし『卒業』を思い起こしましたが、荒波でびしょ濡れになりながらもまっすぐに前を見据える主人公はきっとだいじょうぶ。 音楽の才能を、自分を信じて進めばきっとだいじょうぶ。 女の子とはたぶん数か月で別れると思いますが、まぁ、些細なことですよ! どどんまい!
・ バンドメンバーもほんとキラキラしててすばらしかった。 少年の頃のコリー・フェルドマンに似た男の子、めちゃくちゃよかった。

■ ノクターナル・アニマルズ
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あらすじ・・・十数年前に別れた夫から猛毒小説が送られてきます。

・ 小説は、文字は、時として凶器になる。 
・ 目に飛び込んだ瞬間神経を切り裂き脳に焼き付き、目を閉じても鮮明に、何度も何度もおぞましいシーンを再現させてしまう。
・ すぐれた小説は一度読んだら最後、忘れることを許してくれない。 読者の心に一生消えない跡を残してゆくものなのだ。
・ 別れて以来19年間連絡を断っていた元妻に、元夫が小説を送ってきます。 
・ 小説の主人公は、妻と娘を無法者に嬲り殺された弱々しい被害者。 
・ 被害者に寄り添うのは、彼に法に則らない正義を果たさせようとする男らしい保安官。
・ このふたりはどちらもが、元夫自身なのだろう、と思いました。
・ そして、無法者に惨殺された妻は元妻であり、娘は彼女が勝手に堕胎した彼の子ども。 さらに、作中妻と娘を彼の人生から奪っていった無法者もまた、小説の受け取り主である元妻なのではないか。
・ 登場人物はみな、彼と、彼から見た彼女の分身。 そう、この小説は彼から彼女への復讐なのだ。 彼の希望を潰し、人生を修復不可能なほどに壊した元妻への。
・ もしかしたら、元夫もまた保安官のように、末期ガンを患っているのかもしれない。
・ 「自分には先がないからケリをつけたい」という保安官の言葉は彼の原動力でもあり、持てる力のすべてを込めて書かれたこの小説の一文字一文字はきっと、いつまでも彼女の中から消えることはないだろう。
・ 彼の中にひそんでいた激しさを、彼女がもう少し早く見出だせていれば、ふたりは幸せなカップルになっていたのでしょうか。
・ 夫婦だった頃には気づかなかった元夫の一面に心を掻き乱され、劣情を抱くようにすらなってしまう元妻が、いそいそと彼好みなようにメイクをなおし出かける姿はどこか滑稽でした。
・ そして、彼が来るはずのないこととその理由に彼女が気づいた時、この復讐は完成したのでしょう。 
・ ただ、元妻もまたある種の犠牲者であることも忘れることはできません。
・ エバーアフターな未来を夢見る彼女に理想を押しつけ、「幸せ」という名の不幸になる呪いをかけた、悪い魔女のような母親に、なんらかの報いがあってほしいと願わずにはいられませんでした。
・ すべてを失った小説の主人公は、元夫自身だが元妻でもあるのかもしれない。
・ 手放してしまった愛も見捨ててしまった過去も、もう取り戻すことはできないんだ、という現実を受け入れることで、彼女は新たな人生を歩き始められるのではないでしょうか。 なにものにも縛られない人生を。
・ ・・・みたいなことを思いながら、帰宅後ずっと反芻していました。 すごくおもしろかったです!

■ 新宿スワン
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あらすじ・・・チンピラがドチンピラになります。

・ 歌舞伎町はこわいなぁ。

■ アニー・ホール
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・ 午前十時の映画祭で数十年ぶりに鑑賞しました。 「途中入場は絶対にやなんだよ!」とウディ・アレンがまくしたてるシーンで、現実のおばあちゃんがスクリーンを横切って途中入場してきてちょっとおもしろかったです。

■ シングルマン
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あらすじ・・・愛する人を亡くし死を決意した大学教授のもとに新たな愛が訪れます。

・ 死を決意した途端生が輝いて見え始め、生を受け入れようとした途端死が訪れる。 なんとも皮肉で不条理だけど、それが人生なのかもしれません。 それは、タイミングが異なるだけで、必ず誰もに訪れる未来。
・ ラストが本当にショックで、観た瞬間声にならない悲鳴が漏れてしまったほどでした。 つらい。 めちゃくちゃつらい。
・ けれども、生涯愛し続けられる唯一無二のパートナーに出会え、死が二人を分かつまで濃密に愛し合い、そのわずか数ヶ月後に、今度は美しく魅力的で自分に想いを寄せてくれている人たちと出会い、彼らとかけがえのない時間を過ごしたのち、心臓発作で亡くなるという結果だけみれば、主人公の人生は幸せなものだったといえるのかもしれないなぁ・・とも。
・ それはある意味、奇跡だと思うから。
・ コリン・ファースさまマジ至高。
・ ホルトくんもその他の俳優さんも衣装も美術も超美麗。 なんやここは。スチール写真のみで構成された高度なパラパラ漫画か。(※ほめ言葉)
・ どうせどうあがいてもいつか失うものなのだから、世界の美しさに気づけるよう、ひとときひとときをいつくしみながら過ごしたいものですね。

■ ジオストーム
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あらすじ・・・天候を操る衛星がバーンってなって地球がドーンってなります。

ブログに書いた感想

■ I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー
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あらすじ・・・もしかしたら世界で一番有名かもしれないスーツアクター、デヴィッド・プラウズに密着したドキュメンタリー。

・ 製作者の目線がプラウズさん側に寄りすぎて、音楽の使い方を含め公平性に欠けた部分もあるドキュメンタリー。
・ けれど、「中の人」に対するリスペクトがひしひしと感じられるので、最終的には「これもありかなぁ」という気持ちになりました。 情にほだされて、ついうっかり「ルーカスフィルムはプラウズさんゆるしてあげればいいのになぁ」と思ってしまう有様です。 わかりやすい人間です。
・ 幻のプラウズ版アナキンシーン。 権利の関係で本作中ではフッテージが使えないことがわかっていながら「こんなん作ったんスよ!」とがんがんアピールしてくるのは、もしかしなくてもそれを観たがるファンが山盛りいることがわかっていての所業だと思うので、なんつうか、いやらしい監督やで・・・ 闇売買するつもりちゃうか・・・そらもうえらい高値がつきまっせ・・・

■ ダークタワー
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あらすじ・・・選ばれし少年が救世主を探すため、夢に出てくる世界を旅します。

・ よくまとめたなぁ、と素直に感心しました。 とびぬけておもしろくはなかったけれど、おどろくほど退屈なわけでもない。そつない映画という印象。
・ キングの世界ではおなじみなアレコレが出てきてにんまりしました。
・ しかし、これだけいい役者さんをそろえたのにこれだけっていうんじゃあもったいないですね。 どうすんだろこのシリーズ。

■ ゲット・アウト
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あらすじ・・・白人の恋人の実家にはじめて招待された黒人男性がさんざんな目に遭います。

・ 交際期間わずか5ヶ月にして彼女の両親に会いに行く、今時なかなか筋の通った若者クリス。
・ ただひとつ気になるのは、クリスが黒人で彼女が白人だという点。
・ 果たして、「リベラル」を自認しているという彼女の実家は、娘の初めての「有色」の恋人クリスを受け入れてくれるのでしょうか? というおはなし。
・ こいつはすごい映画ですね! 不穏さが徒党を組んで押し寄せてきた!! 逃げて―!みんな逃げてー!!
・ ちょっとした顔見せ程度のはずが、彼女の両親を含めたエスタブリッシュメントな白人の集いに強制参加させられてしまうクリスくん。
・ そこで飛び交う「オバマ最高」「ウッズ最高」といった黒人賛美を、彼らの差別意識をカバーするためのいわゆる「I have black friends」なのだろうと思わせておいてからの裏切りがとにかく秀逸でした。
・ 尊敬ありきの黒塗りどころではない、ガチもんのなりきりですからね。 執念というべきか怨念というべきか。 よく作ったなぁこれ。
・ ストーカーにありそうな「自分がほしいものはなんとしてでも手に入れたい」心理なのかもしれませんが、なんともありがたくない話ですね。
・ そして、そんな老人たちとは少し異なり、トロフィーハンティング感覚で獲物(黒人)を狩るクリスの白い恋人。 実はいちばん恐ろしいのは彼女なのかもしれないなぁと思いました。
・ 老人コミュの中に日本人がひとりだけいたけれど、彼の黒人への憧れは白人が持つ「白人様からあえて黒人へ」ではなく、アメリカ社会において「黒人>アジア人」という位置関係がある上での変身願望なのだろうか。
・ こっそりスマホの充電コードを抜いておく、という地味ながら効果抜群な嫌がらせがよかった。
・ あれ、マジで困るからね! 我が家も寝る前にさしておいた充電器が夜中の内にこっそり抜かれていて、朝になっても充電できてへんやんけ!って時々なるんですよ! 犯人ですか? 自分の充電器をどっかになくしちゃって、探す代わりにおかあさんのに目をつけた娘の仕業です!
・ シンメトリーな邸宅が逆にそこに住む人々の歪さを強調していたり、白人に差別された時黒人がみな手に手を取って助け合うわけではなかったり、すみずみまでホントによく出来たホラーだったと思いました。





はい、というわけで、途中でうすうすお気づきの方もいらしたかもしれませんが、1月分だけでこんな分量になってしまったので続きはまたの機会ということで・・・。
次回「2月に観たえいが」でお会いしましょう!





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『スリー・ビルボード』

2018年03月04日
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■ 「母」 ミルドレッド・ヘイズ

朝起きて、朝食を食べ身支度を整え家を出て街に向かう。
そのたびに、娘はレイプの末殺され遺体に火をつけられた、という現実を突きつけられる。
なぜなら、娘が発見されたのは、家から1キロも離れていない目と鼻の先ともいえる場所だったから。
毎朝、毎朝、道路を走るたびに、娘の不在とそのむごい最期を思い出す。
そして、仕事を終え、家に帰るとき、再びそれは繰り返される。
娘があげたであろう悲鳴と、助けを求める声と、肉の焼ける臭いが耳と鼻から離れない。
実際に聞いてはいないのに。
実際に嗅いではいないのに。
実際に聞いていれば、助けることができたのに。
実際に嗅ぐ前に、クズどもを撃ち殺すこともできただろうに。
いや、それ以前に、娘をひとりで出かけさせたりはしなかった。
反抗的な娘との激しい言い争いの際、売り言葉に買い言葉でつい発してしまった「レイプでもなんでもされればいい」という一言。
絶対に取り消せない悪魔との契約のようにそれは実行され、犯した間違いから救ってくれるはずの神はひたすら沈黙する。

どう過ごせばいいのだろう。
そんな悪夢のような毎日を、どう生きてゆけばいいのだろう。

ミルドレッド・ヘイズが悪夢から抜け出るただひとつの道は、犯人が捕まることだった。
娘を殺したのは自分ではない、と自分自身を赦すことのできる唯一の道。
到底受け入れられない現実を受け入れ、前に進むことのできる唯一の道。
怒りや哀しみや後悔や喪失感や、ありとあらゆる不条理な感情をぶつけられる相手が明らかとならない限り、ミルドレッドの地獄は終わらなかった。
だからミルドレッドは待ち続けた。
玄関のドアがノックされ、出てみるとそこには信頼できる警察署長がおり、「犯人を逮捕しました」と告げてくれる日が訪れることを願っていた。
一か月、二か月、三か月。
捜査が進展しないまま月日は残酷なほどさりげなく過ぎ、黒く焦げた遺体のあった野原には青々とした草が生い茂る。
かろやかに季節が移りゆく中、人々の記憶の中から陰惨な事件の影は消える。
七か月後、残っていたのは「かわいそうなミルドレッド」だけだった。
「あの」、「例の事件の」、「気の毒なミルドレッド・ヘイズ」。

どう過ごせばいいのだろう。
そんな悪夢のような毎日を、どう生きてゆけばいいのだろう。

ミルドレッド・ヘイズは、もういちど街の連中を事件の渦中に引き戻すことを選んだ。
自分だけが取り残されているのなら、やつらもここに引きずり込めばいい。
嗅ぎたくない臭いを嗅がせ、忘れ去りたい暗闇を見せつける。
「あんたたちは思い出したくないだろうけど、娘はレイプされ、殺され、焼かれ、そしてどうしたことか犯人はまだ捕まっていないんだよ。 それ、どう思う? あんたたちが住む街で起きたことなんだけど、どう思う? もしかしたらあんたたちの隣人かもしれないけど、それでも平気なわけ?」

人は見たくないものは見たくないし、知りたくない事実は知りたくない。
「かわいそうな人」には同情するけれど、自分の「道義」に反する人には敵意を抱く。
いまやミルドレッド・ヘイズの周りは敵だらけだ。
けれど、それがどうしたというのだ。
敵だらけだったのは、今に始まったことではないじゃないか。
それに、彼女の一番の敵は、自分自身ではないか。


■ 「父」 ビル・ウィロビー

朝起きて、朝食を食べ身支度を整え家を出て街に向かう。
そのたびに、自分の余命はあとわずかなのだ、という現実を突きつけられる。
あと何回、愛する妻と愛し合えるだろう。
あと何回、かわいらしい娘たちの額におやすみのキスをできるだろう。
病院で採血をし、結果を待つすこしの時間がたまらなく無意味でこの上なく苦痛な数十時間にも感じられる。
どうせ結果は同じだということを、自分も医者も看護師も街の人たちもみんなわかっている。
もしかしたら神様がもたらす奇跡の兆しがどこかに現れやしないかと、目を凝らして前を見つめるけれど、24時間はビル・ウィロビーの命を少しばかり削り取り、いつもと変わらぬスピードで過ぎてゆく。
ベッドに入るのがこわい。
明日も同じように瞼を開け、朝の光を眩しく思えるかわからないから。
まだ死なないかもしれないけれど、もう生きられないかもしれない。
堂々として威厳に満ち、誇りをもった「父親」として生きられないかもしれない。
もはや「眠り」はビル・ウィロビーにとって安らぎではなく、ロシアンルーレットのようなものだ。
カチリ、今日は目覚めた。 
カチリ、明日はどうだろう。

どう過ごせばいいのだろう。
そんな悪夢のような毎日を、どう生きてゆけばいいのだろう。

ビル・ウィロビーが悪夢をやり過ごすただひとつの道は、平穏に暮らすことだった。
やさしい妻に癒され、子どもたちと出来る限り食卓を共にし、街の平和に貢献する。
みなに尊敬され、信頼される警察署長として、最後のひとときまで誇りをもって過ごす。
トラブルばかり起こす出来の悪い部下もいるし、やる気のない部下もいる。
けれど、街の人々はみなビル・ウィロビーに好意的で、事件や事故も田舎町に相応な程度のものばかり。
自分が身を置いているここは悪夢の中ではない、幸せな夢の途中なのだ、と思い込むことで、このまま何事もなく静かに暮らし、静かに人生を終えたい。
見たくない現実からは目を逸らしたっていいじゃないか。
だって自分はもうすぐ死ぬんだから。

しかし、本当はビル・ウィロビーもわかっていた。
逸らそうと気づかないふりをしようと、生きている限り現実からは逃げられないことを。
大切な娘を無残に殺された母が、自分たちからの実のある報告を待ち続けていることを。
生い立ちと成長過程に問題を抱えた部下が、このままではきっとこの先も成長することなく人々から憎まれ続けるであろうことを。
警察署のリーダーとして、父親代わりの上司として、ビル・ウィロビーは彼らに対し責任があった。
ああ、できることならゆるしてほしかった。
だって自分はもうすぐ死ぬんだから。

被害者の母親が、警察署長を個人攻撃するかのような看板を事件現場近くに立てたとき、ビル・ウィロビーが抱いたのは、怒りでも恐れでもなく罪悪感と悔しさだったのではないかと思う。
そして、卑怯なやりかただということは承知の上で、捜査の滞りの裏には自分の病気があった、という個人的事情を話した。
自分でもそれとこれとは別だとわかっているけれど、街のみんながそうであるように、彼女も同情的な眼差しを向けてくれるかもしれないと期待する部分があった。
すがるように見つめるビル・ウィロビーに被害者の母がかけたのは、「そんなの知ってる」というひとことだった。
彼女は、知っているからこそ、宣戦布告をしたのだ。
逃げ切らせない、という覚悟。
たしかにあなたは死ぬのかもしれない、ベッドの上で、家族に囲まれて。
でも、うちの娘はもうとうに亡くなっているんだよ、よっぽどのまぬけか道に迷った者しか入ってこないような田舎道で、助けもなく、たったひとりで、凌辱され、焼かれて、という怒り。
それらを突きつけられたビル・ウィロビーは、残された時間の中もういちど事件に向き合い、なんとか成果をあげようとするが、手がかりも解決の糸口もないということもまた、変えようのない現実。

捜査に行き詰った事件と、治療の施しようのない病。
逃げられようのない現実、直視しないようにしてきた現実と向き合ったビル・ウィロビーは、はじめて自分と被害者の母との間にある共通点に気づいたのではないかと思う。

「かわいそうな母」と「かわいそうな父」に街の人々が向ける憐れみの眼差し。
最初のうちは、そのやさしさをありがたいと思うこともあっただろう。
みんな自分の味方なんだ、と心強く思うこともあっただろう。
けれど、その言葉や視線は徐々に煩わしいものへと変化してゆく。
なぜなら、同情は犯人を見つけてくれないし、病巣を小さくしてもくれない。
「だいじょうぶよ」 「お気の毒にね」 「応援してるよ」 「がんばってね」
必死に闘う彼らの上に、文字通り、毒にも薬にもならない言葉の数々が虚しく降り積もる。
自分が感じている孤独と被害者の母のそれが同じものなのだと悟ったビル・ウィロビーは、彼女の共犯者になった。

ビル・ウィロビーが家族に残したつもりで、実際置いて行ったものは、深い悲しみと自責の念と一生消えない心の傷だけだった。
いつ終わるとも知れない闘病生活で苦労をかけたくないなんていうのはただの言い訳で、苦しみたくないし無様なさまを見せたくないというのが本音だったのだろうから、いっそそう書き残してくれた方が家族は受け入れやすいように思うけれど、ビル・ウィロビーは最後まで「威厳のある父」でいたかったのだろうから仕方ない。
被害者遺族の「罪」を後押しすることで、彼女はより一層苦境に立たされるし、街の人々の感情を訂正しないまま逝ってしまったせいで、いがみ合いは続く。
ある部分ではどんでもなく迷惑なことをし、ある部分ではひとりの人間の人生を転換させる重大なことをし、街に大きすぎる影響を与えたまま、ビル・ウィロビーは自ら人生を終えた。
それがどうしたというのだ。
オレはすきにする。
君らもすきにしてくれ。


■ 「息子」 ジェイソン・ディクソン

朝起きて、朝食を食べ身支度を整え家を出て街に向かう。
そのたびに、母を頼もしく思い、母を疎ましく思い、母をいとおしく思う。
不幸な事故で父を亡くし、女手一つで育てられたジェイソン・ディクソンの価値観は、おもに母によって定められている。
母が否定するものは、自分も否定すればいい。
母が予想したことはたいがい当たっているし、母のアドバイスには得るところがたくさんある。
だからといって、母に支配されているわけではない。
母は自分がいないと生きてゆけないのだから、自分の方が立場は上なのだ。
言いなりになんかなっていない。
自分が母を守っているのだ。
男なんだから当然じゃないか。

ジェイソン・ディクソンと母の関係はかなりいびつで、街の人々もみなそれを知っている。
おまけに、ジェイソン・ディクソンがもっとも知られたくない個人的な情報も筒抜けだ。
「ほらみてごらん、バカのジェイソン・ディクソンだよ。 あの強烈なおかあさんに首根っこおさえられてるんだよ、気の毒にね。 それにほら、男なのに男がすきなんだってよ、かわいそうにね」
ジェイソン・ディクソンに向けられる眼差しにもまた、同情と憐れみが混じっている。
そしてそれらは彼を救ってはくれない。

ジェイソン・ディクソンは鈍くて、ある意味純粋で、彼なりの正義を持っていたのだろうと思う。
気に食わないやつは殴っていいという正義であり、尊敬する人を守るためなら他人を傷つけても構わないという正義。
母に教わった価値観で暴力を振るい、父のように慕っている署長がそんな彼の独善を戒めてくれるのが常だったので、その片方が欠けたとき、ジェイソン・ディクソンの正義が暴走するのは、至極当然なことだったのかもしれない。
周囲からの同情と憐れみに、恐怖までもが加わってしまった今、ジェイソン・ディクソンは職を失い酒浸りになって周りから敬遠され、木がうっそうと生い茂る高台の小さな家で、母親とふたり生きてゆくしかないのか。
自業自得と言い切るにはあまりに救いがないジェイソン・ディクソンの人生。
それを変えたのは、「父」からの手紙だった。

そんな一通の手紙で、人生は変わるものなのだろうか。
たった一通の手紙で、価値観が動かされることなどあるのだろうか。
ふつうは、そう簡単なことではないと思う。
けれど、きっとジェイソン・ディクソンの中には、「父」だけが気づいていた善き部分があったのではないか。
警察署に火がつけられ身体が炎に包まれる中、ジェイソン・ディクソンはいちど灰になった。
ジェイソンの表面を覆っていた「独善」や「虚勢」の殻が燃やされたことで、黒く焦げた土壌から再び芽が生えるように、彼の奥深くにあった善き部分が表に出てきたのではないか。
憑き物が落ちたかのように、ジェイソン・ディクソンは善き部分、「弱いところ」「素直なところ」「悪をゆるせないところ」「人を愛するところ」を隠さないようになる。
罪悪感から泣き、感謝から泣き、母を想い泣き、目の前の悪に怒り、自分の無力を嘆き、他人の痛みに苦しむ。
ジェイソン・ディクソンは再生した。
そして、「父」の期待と「母」の想いに応えるため、起死回生の勝負に出る。
これが実れば自分は救われる。
これが実れば自分は赦される、と信じて。


■ 三枚の看板

娘の弔い合戦とばかりに街を敵に回すミルドレッドは、他人の痛みをかえりみないモンスターかあちゃんのように振る舞っているけれど、そのかたく結んだ唇を見れば、本当は常にギリギリのところを歩んでいることがわかります。
夫に対しても娘に対しても「自分の信念」を貫いてきたゆえに、その両方を失ってしまい、それでもまだ、彼女が信じるやり方でけじめをつけるしかないミルドレッド。
看板は彼女にとって怒りの表明であるとともに、娘の墓標でもあったのではないでしょうか。
赤い花の寄せ植えを看板に手向け、そこに現れた鹿に話しかけるミルドレッドの穏やかな表情。
あの看板は娘が殺された証で、生きた証で、誰にも忘れさせないという決意の証だった。
燃えあがる看板はミルドレッドの目に、まるで娘がもういちど燃やされているように映ったのかもしれない。
いや、わたしの目には、そう映りました。
もうやめて! あの子の火を消して! どうしてこんなひどいことを!
(消火を)もうあきらめなよ」と声をかける息子・ロビーに懇願するように「ロビー!」と叫ぶミルドレッド。
なんど娘をうしなえばいいのか。
なんど娘を救えない無力さに打ちのめされなければならないのか。
悲痛すぎる声に、涙がとまりませんでした。

ずっと誠実に生きてきた正しい人・ビルは、「明日朝起きたらパパがいる」と信じていた娘の気持ちや、夫の苦しみを分かち合い寄り添い続けてくれた妻の想いを裏切り、ミルドレッドが責められることを承知の上で逃げ切った。

粗野で愚かで差別主義的なディクソンには、自分の母を想い、娘を失った母を想うやさしい部分があった。

息子に悪影響しか与えてなさそうな毒母は、暴行を受けボロボロになった息子を前におろおろと狼狽え、「手当をさせておくれ」とただ泣きじゃくる。

人は見たくないものは見たくないし、知りたくない事実は知りたくないものです。
同時に、「こう見られたい」自分と「こんな風にだと思われたくない」自分があるのが人でもある。
ある場面では寛容で、真逆の場面では不寛容。 他人に攻撃的だけど、自分が打たれると弱い。
かっこいところや勇ましいところは見られたいけど、情けないところや臆病なところは見られたくなかったり、いい人間だと思われたいけど、本当はエゴのかたまりであることは知られたくなかったり。

世の中には人の数だけ看板があるのでしょう。
どちらかの面だけで人を判断できないし、するべきではない。
裏も表もひっくるめてのわたしであり、あなたなのだから。


■ 車の中

放火事件の加害者であるミルドレッドと被害者であるディクソンが同乗する車の中。
罪を告白するミルドレッドにディクソンは赦しを与えますが、そんなディクソンもまた、別の事件では加害者で、ミルドレッドは被害者であったりもする。
誰かを傷つけ、誰かに傷つけられたふたりが、互いを赦し合い、同じ目的に向かって進んでゆく。
まだ気持ちは同じではないし、またどこかで反発し合うかもしれないけれど、その先の行動について「時間はたっぷりあるから、おいおい考えよう」と話し合う。
憎み合っていたとは思えないほど、おだやかな表情をみせるミルドレッドと、焦る様子はなく遠くを見つめるディクソン。

この社会で生きているわたしたちもまた、ひとつの車に乗り合わせたようなものなのかもしれませんね。
時に共感し合い、時に批判的になり、傷つけたり、傷つけられたりを繰り返すわたしたち。
でも、降りる訳にはいかないんですよね。
どんなに気に食わない人がいようと、どこかの惑星に移住でもしない限り、この時代、この世界で一緒に生きてゆくしかない。
だったら、見えていない、見せられていない看板の裏があることを意識し、思いやったり歩み寄ったりする方がいいじゃないですか。
ふたりの姿は、わたしたちが持つ可能性そのものなのではないかと思いました。
そして、そんなラストを用意してくれたこの作品を、心からすばらしいと思いました。

フランシス・マクドーマンドさんの前を見据える眼差し、サム・ロックウェルさんの瞳からこぼれる涙、ストローをたてられたオレンジジュースをわたしは忘れない。 
墓標にたむけられた赤い花を。
眠っている母の髪をやさしくなぜる指を。
怒りをあらわにする勇気を。
誰かを赦す勇気を。



― 追記 ―

・ 母と姉のやりとりを見ていた息子は、母の後悔や罪悪感を誰より理解していたから、どれだけ母が暴走しても(反発はすれど)見放さなかったのですよね。 きっと学校では相当ひどい扱いを受けていただろうに。

・ 父が家に乱入してテーブルをひっくり返した瞬間の、包丁を手にして背中を取る一連の動きもあまりにスムーズで、母と父が一緒に暮らしていた頃、こういったやりとりは幾度となく繰り返されていたんだろうし、そのたびに息子は母を守ってきたのかなぁと思いました。 息子、えらいね。 やさしいね。 家族を一度にうしなったのは、息子も同じなのにね。

・ やさしいといえば、看板屋さんのレッドですよね。 そんなに正義に燃えるタイプではないけれど、ミルドレッドの素性を知った瞬間きちんと仕事をして、おまわりさんの脅しにも屈さないし、バーで煽ってくるディクソンも上手にかわすし、あんな酷い暴行を受けたにも関わらず、相手が加害者と知っても親切をやめないし、包帯だらけのディクソンからよろよろと離れ、ぶるぶると震える姿からのオレンジジュースには打ちのめされました。 しんどかったよね・・・トラウマがよみがえって、ホントは呼吸するのもしんどかったんだよね・・・ レッドつよい・・・ レッドはエビングの良心やで・・・

・ レストランで看板放火の真犯人が明らかとなった時、シャンパンを手にとったミルドレッドは元夫をぶち殴りに行くのだろうと思ったんですよね。 そりゃそうだ、あいつはそうされて当然だ、って。 でも、自分が見下していた元夫の若い恋人の口から「怒りは怒りを来す」という言葉がでたことを知り、たとえそれがただの偶然だったとしても、ミルドレッドにとっては天啓みたいに感じられたのではないか、と。 期待していない場所からふいにあらわれた神様からのしるし。 自分は彼を赦さなければならないし、彼は彼女の人生に責任を持つべきなのだ、娘にできなかった分まで。 

・ もちろん、その直前、彼女が同じく心の中で見下していたジェームズからかけられた一言も、なくてはならない言葉だったと思いますけどね。

・ 自分が目星をつけていた男が犯人ではなかったとミルドレッドに報告するディクソン。 迷うようにすがるようにショットガンを抱きかかえていたのは、もしもミルドレッドが自分を赦してくれなければ命を断とうと思っていたからなのではないか。 署長の期待にも応えられず、遺族の願いも叶えられないクソ野郎の自分には、生きている価値はない、と思っていたのではないか。 もしかしたら、母親も道連れにしようとしていたのではないか。 このシーンは、ディクソンが電話を切るまで本当にどきどきしました。 

・ 燃やされた看板を消火させられなかったミルドレッドは、炎の中から事件のファイルを命がけで救い出したディクソンをとっくに赦していたのかもしれませんね。 自分の代わりに娘を助け出した。 灰にさせなかった。 だから、結局進展しなかった捜査について、ミルドレッドはディクソンを責めず、静かに耳を傾けたのかもしれないなぁと思いました。

・ 娘の事件とは無関係だったけれど、似たような犯罪をおかしている可能性は濃厚であった男に対し、私的制裁を匂わせるディクソン。 ミルドレッドはしばしの沈黙の後、同意を示しました。 受話器を頬にあて涙を流すディクソンと、もういちど鹿が現れてくれないかと願うように野原を見回すミルドレッドの姿が、いまだに頭から離れません。 どうか、彼らに救いを。 彼らが目的地まで突き進んでしまうのか、どこかで引き返すのかはまだわからないけれど、そこでかわされる会話から希望がうまれることを願っています。
  



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すきもの主婦が選ぶ映画オールタイムベストテン 2017

2017年12月14日
大人気ブログ・男の魂に火をつけろ! 様による年末恒例企画、「映画ベストテン」。
2007年の「オールタイムベストテン」から今まで、多くの映画ファンやワッシュさんのブログのファンが思い思いのベストテンを投票し、毎年さまざまなジャンル別ベストテンが選ばれて来ましたが、今年は10年という節目を迎えられたということで、再びオールタイム・オールジャンルのベストテンをあげてみようじゃないか、という運びとなったそうです。

と、いうことで、ここ数年タイミングが合わず気づいたら投票締め切り後だった、ということの多かったわたしも、今年はなんとか参加させて頂ければ・・と思った次第ですよ! どういうことだよ! そういうことだよ!


改めまして、以下がマイ・オールタイム・ベストテンです。
過去にジャンル別ベストで選んだことのある作品も混じっており、正直、毎回同じ作品ばっか選んでねえかオレ・・?という気持ちもなくはないのですが、ここは細かいことは一切気にせず、「いかに自分がその作品から影響を受けたか」「定期的に摂取せず(観直さず)にはいられないほどすきである」を基準に、これぞわたしのオールタイムベスト!という10作品を挙げてみました。 ご査収のほど、お願い申し上げます。



  1. インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(1984年日本公開)
  2. グーニーズ(1985年日本公開)
  3. ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還(2004年日本公開)
  4. スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還(1983年日本公開)
  5. ゾンビ(1979年日本公開)
  6. ウェスト・サイド物語(1961年日本公開)
  7. バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年日本公開)
  8. グレムリン(1984年日本公開)
  9. 恋人たちの予感(1989年日本公開)
  10. パラノーマン ブライス・ホローの謎(2013年日本公開)







『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984年、アメリカ、スティーヴン・スピルバーグ監督)
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アクション、アドベンチャー、ユーモア、ロマンス、オカルト、適度なグロ、キー・ホイ・クァン、と映画に必要なものがすべて詰められた完璧な作品。
中だるみのシーンは一切なしの、ノンストップ娯楽作。
インディとショーティの関係には親子・師弟・バディとしての愛情も込められており、高飛車ウィリーとのロマンスにいまひとつノレなかった人もそっちで大満足できることうけあいです。
御大スピルバーグの天才的な画作りも、巨匠ジョン・ウィリアムズの音楽も最高オブ最高。
インディ・シリーズはレイダースも最後の聖戦も大傑作ですが、人生で一番影響をうけたといっていい本作がオールタイム・ベストワンです。


『グーニーズ』(1985年、アメリカ、リチャード・ドナー監督)
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魔宮の伝説が完璧な作品なら、こちらもわたしにとっては完璧な一本。
小学6年生だった年の暮れ。 たくさんの人でごった返す劇場内。
友だちとはぐれないように、母にもらったお金を落とさないように、と気をつけながら席に着くと、徐々に暗くなってゆくスクリーン。
画面に浮かび上がるドクロ。カメラがドクロの目に吸い込まれてゆくと、スピルバーグとドナーの名前。
いまでもあの瞬間の心臓のドキドキは忘れられません。
子どもが憧れた「冒険」のすべてがそこにあり、しかしそれは単純な「遊び」ではなく、大人でもどうにもできないような「生活に関するのっぴきならない事情」を大人に代わって子どもたちが回避するための「戦い」でもあるという。この優れたドラマ性。
「はみだしもの」たちが見せる一発逆転劇に、彼らと同年代だったあの頃も、親かそれ以上の年齢になった今でも、同じように胸が熱くなります。
心の中では『魔宮の伝説』と同率ナンバーワンですし、もしも年代性別問わず誰かに一本自分の一番すきな映画を紹介するとするならば、わたしは『グーニーズ』を選びますね!


『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(2004年、ニュージーランド・アメリカ、ピーター・ジャクソン監督)
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『旅の仲間』も『二つの塔』も最高ですが、どれか一本選ぶならわたしはやっぱり『王の帰還』。
王である以前に、小さい人たちの勇気と決意と覚悟に人生観を変えられた馳夫さんとして、勝ち目のない闘いにのぞむアラゴルン。
おのおのの能力を認め合い、種族間に存在し続けてきた遺恨を二人でぶちこわしたレゴラスとギムリ。
ホビット庄での平和な日々とはあまりにかけ離れた、血なまぐさい戦闘に放り込まれ、人間たちの愚かさや弱さに翻弄されながらも、友だちの使命を支えるため奮闘するメリーとピピン。
死にかけたおかげでツヤツヤストレートヘアを手に入れたガンダルフ。
報われない愛を指輪にそそぐゴラムとスメアゴル。
その他のみんなもホント最高。エオウィンもファラミアもエオメルもセオデン王もみんな最高。何度観ても、後半ほぼ泣きます。
フォー・フロド!


『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』(1983年、アメリカ、リチャード・マーカンド監督)
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ルークのかっこよさなら『新たなる希望』、ハンソロのかっこよさなら『帝国の逆襲』、毛玉ちゃんのかわゆさなら『ジェダイの帰還』ということで、シリーズ3本の中で一番繰り返し観た『エピソード6』を選んでみました。 
後悔はありません。
毛玉ちゃんを差し引いても、レイアがジャバ・ザ・ハットにエロい恰好をさせられたり、砂漠で派手な闘いがあったり、ヨーダが成仏したり、森の中でのスピーダー・バイクを使ったチェイスがあったり、ハンソロがこんがり焼かれそうになったり、ルークとベイダー卿が親子でタッグを組んだりと、かなり盛り沢山かつ見どころの連続みたいな作品だったと思いますね。
ちなみに、特別篇はわたしの中でなかったことになっていますので、評価はあくまでオリジナル版の『ジェダイの復讐』に向けたものです。


『ゾンビ』(1979年、イタリア・アメリカ、ジョージ・A・ロメロ監督)
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死ぬまでに一度は行ってみたいモンロービル・モール。


『ウェスト・サイド物語』(1961年、アメリカ、ロバート・ワイズ監督・ジェローム・ロビンズ監督)
ウエスト・サイド物語
ミュージカル映画もだいすきなので、どうしても一本いれずにはいられない。
でも、一本には絞れない。さあどうしよう、とだいぶ考えたのですが、迷ったときは、一番繰り返し観た作品を選べ、ということで『ウェスト・サイド物語』です。
天才バーンスタインの音楽も最高、ジェローム・ロビンズの振り付けも最高、俳優たちの迫力あるダンスも最高、社会風刺の込められた悲劇的なストーリーも最高。
本作のトニーとリフは、数十年後に『ツインピークス』の住人としてカムバックしました。色んな意味で感慨深いです。


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年、アメリカ、ロバート・ゼメキス監督)
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マーティとドクとデロリアン。
今さらこの傑作について何を言えばいいというのか。
「映画」の喜びがそこにある。


『グレムリン』(1984年、アメリカ、ジョー・ダンテ監督)
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世にクリスマス映画は数あれど、わたしの中で不動の一位はこれ!『グレムリン』!
モグワイの凶暴なまでのかわいらしさと、グレムリンたちの邪悪な立ち振る舞いが幾重にも層になった、娯楽のミルフィーユのような傑作ファンタジー。
最終的にはグレムリンもかわいいなぁと思えてきます。 一緒に映画館でハイホー歌いたい!
ただし、小動物たちの心癒される光景に油断していると、フィービー・ケイツの地獄のクリスマス話に横っ面を張らますので、くれぐれもお気をつけください。
キー・ホイ・クァン(ショーティ)を模した少年が出てきたり、スピルバーグがカメオ出演していたり、悪魔のいけにえリスペクトなチェーンソーが出てきたり、隅々まで楽しさが詰まっています。
わたしが本格的に映画をすきになったきっかけの作品です。


『恋人たちの予感』(1989年、アメリカ、ロブ・ライナー監督)
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男女間の友情は成立するのか?をテーマに、美男美女でもない、お金持ちでもない、特別に不器用なわけでもない、ごくごく「ふつう」の男女の10数年間を描いたロマンティック・コメディ。
もうね、わたしはこの作品がだいすきなんですよね。
たぶん恋愛映画の中で一番すきだと思います。
どこを切り取っても絵になってしまうニューヨークの景色、ステキな音楽、メグ・ライアン史上最もキュートなメグ・ライアン、通じそうで通じないふたりの気持ち、最高にモジモジします。
心の栄養補給にぴったりです。
男女間の友情、って日本のドラマや漫画でも一時期流行った気がしますが、ずっと一緒にいるカップルの間にあるのって、恋愛感情だけではなくなると思うのですよね。
すきという気持ちと同じぐらい、助け合いたいとか笑い合いたいという気持ちもあって、それはとても友情に近いもので。
パートナーのことを「一番身近にいる親友」と呼べるのって、幸せなことなのだなぁと、この歳になるとしみじみ思うのでありますよ。


『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2013年、アメリカ、サム・フェル監督・クリス・バトラー監督)
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ストップモーションアニメーションの金字塔。
もしも、まだ観たことがないという方がおられましたら、どうかわたしにあなたの92分間を預からせてください。
きっとどこのお店にも置いてあるはずです。
ソフトを手にとり、デッキに入れ、お気に入りの飲み物を用意し、画面に映し出される物語に耳と目と心を傾けてみてください。
手書きでもCGでもなく、一コマ一コマ気の遠くなるような作業の積み重ねによって作られた繊細な物語は、きっとあなたの感情を揺り動かしてくれるはずだと、わたしは信じています。

以前書いた感想・・『パラノーマン』





年代を見て頂ければわかるように、ほとんど1980年代になってしまいました。
まぁ、しょうがないですよね。 
一番多感な時期に観た作品ほど、一番影響を受けるものですし、なによりも深いところに刻まれるものですよ。
それにしても、毎回思いますが、すきな映画を10本に絞ることも難しさよ・・。
過去に選んだことのある作品を極力除いてもこれですよ!
できることなら、最近観た作品の中でピカイチだった『新感染』やキャプテン・アメリカ3部作、欧州ホラーや韓国のえげつないやつとかも入れたかったです。 

また十年後ぐらいに考えたとき、80年代の作品を外さずにはいられないほどのめりこめる作品に出会えているといいなぁと思います。
それではワッシュさん、集計の方大変かとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします!



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