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『竜とそばかすの姫』

2021年07月19日
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あらすじ・・・
幼いころ、目の前で母親をうしなって以来心を閉ざして生きてきた少女・すず。
ずっとすずを見守ってくれている幼馴染のしのぶくんに恋心を抱いているが、学年一のイケメンである彼に想いを伝えられるはずもなく、クラスメイトのヒロちゃんだけが唯一の理解者。
母と一緒に歌をうたったり作曲したりするのがだいすきだったすずは、深い悲しみから歌に拒絶反応を示し、しかし込み上げてくる感情を吐き出すすべは曲作りしかなく、毎日苦しい日々を送っていた。
そんなある時、世間で話題だった仮想世界Uへの招待状がヒロちゃんから届く。
ここでは誰でも何度でも生まれ変わることができる・・・。
そんな言葉にひかれ、美しいアバターを手に入れたすずは、仮想世界に一歩踏み出す。
現実世界でかすれていた歌声が、Uのなかでは伸び伸びと響き渡った。
みるみるうちに、すず(ベル)のパフォーマンスに魅了される50億人のアバターたち。
最初こそアンチが沸いたものの、人気のものや流行りのものには乗っかるマジョリティの特性通り、ベルはUで一番注目を集める歌姫となり、その話題は現実世界にまで浸食を始める。
ある日、ベルがU内でコンサートを開こうとすると、インターネット自警団に追われた竜が乱入してくる。
背中に痣をもつ竜は、最近Uに現れた謎のアバターだが誰に対しても乱暴・陰気・没交渉なため、多くの人々から嫌われていた。
コンサートをぶち壊しにされたすずだったが、なぜか竜のことが気になり、ヒロちゃんとともにその正体を探りはじめる。
日に日に増してゆくベルの人気。 日に日に増してゆく竜へのヘイト。
一体竜の中の人は誰なのか。
すずは母親の喪失を受け入れることができるのか。
しのぶくんとの恋は実るのか。
ベルの身バレは回避できるのか。
お父さんとの関係は改善されるのか。
学校一の美少女・ルカちゃんの恋のお相手は誰なのか。
すずはベルではなくありのままのすずとして、ふたたび歌をうたえるようになるのだろうか。


(あらすじだけみるととっちらかったように思えるかもですが、思ったほどではありません)


ご家族からご友人、老いも若きもみんなそろってたのしめる、この夏いちばんの話題作『竜とそばかすの姫』は、細田守監督による勝ち筋がすべて詰め込まれた、よくばりセットだった!!


※ 以下ネタバレしています


勝ち筋その1・・・サマーウォーズふたたび

開始早々映し出されるのは、仮想世界OZの上位互換版のような仮想世界U(ユー)のご紹介動画、というサマーウォーズをまんまなぞったオープニング。
もちろん、サマーウォーズからは10年以上経っているので、「仮想」の描写もよりピコピコしていっそうヌルヌルしています。ワクワクしますね。

OZの頃は10億人ほどだった利用者数も、なんとUでは50億人に増加。
しかもこのU、登録時に専用のデバイスで各個人の生体情報を読み取り、本人とアバターはつねに同期される仕組みなので、ネット社会を汚くて暗くてジメジメしていて常に罵り合いの絶えない場所にしてしまっている根源、いわゆる「裏垢(サブアカウント)」が作成できないのです。 
サブ垢さえなければ自作自演もできないし不正投票もおこなわれない、イナゴのごとき集団個人攻撃もうまれないし、逃げ場を用意したうえでの誹謗中傷も半分に減るに違いないじゃないですか。(※偏った意見)
ひとり一アカウントの安全安心な仮想世界、それがUなのです。
作ったのは、この世の知性を司る5人の賢者「Voices」だそうですが、自らのことを「この世の知性を司る賢者」となんの臆面もなく言えちゃうあたり、超天才かド狂人のどちらかにふれている感じがしてゾクゾクしますね。言うかそんなこと。 おそらくラリー・ペイジとかセルゲイ・ブリンとかジェフ・ベゾスとかそういう感じの人たちなんじゃないでしょうか。
50億人の人びとは日夜Uに入り浸り、思い思いのアバターでプカプカ浮いたり個人攻撃をしたりセレブアカウントを取り巻いたりしているようです。
というか、実際はもちろん、もっとたくさんできることはあると思います。
だって10年前のOZですら、お買い物から地方自治体の業務、はては核ミサイルの発射までできていたのですから、利用者数が5倍にまで膨れ上がったUにはそれ相応の利便性や中毒性があるに違いありません。 
ただね、ただ、そこはあえて省きました。
だって、サマーウォーズの時多機能描写を盛り込みすぎて、散々「んなアホな」って言われたから。
同じ轍は踏まない。 細かい機能性は語らず、いかに利用者がUを満喫しているか、いかに年齢性別人種を問わず多くの人がログインしているか、そこに注力すれば余計なつっこみも受けない。 とにかくUはすごい。 とにかくUはめちゃくちゃ人気。 OZにもいたっぽいアバターがうじゃうじゃいるんだからわかるでしょ?的姿勢。
これこそが、細田流勝ち筋なのです。



勝ち筋その2・・・全力で社会派メッセージ

「ネットを肯定的に描く」という細田監督大号令のもと作られた『竜そば』、ただ単に「インターネットはいいよ!離れた人とも繋がれるし、ネットで自己表現をすることによってリアル世界での殻を打ち破るきっかけに作りにもなるよ!」なんて脳みそフラワーなことが盛り込まれているわけではありません。
いや、それも盛り込まれていますよ、特に後半。
ただ、そこに至るまでに胸焼けがするほど愚直な「ネットはクソ」論がこれでもかとぶちこまれているのです。 
ネットはクソ。 
ネットで徒党を組んで誹謗中傷してるイナゴどもはクソ。 
些細な粗を探して炎上に持ち込むネットユーザーはクソ。 
過去の失言を鬼の首でもとったかのように掘り起こし執拗に非難するネット、容姿を貶し、加齢を劣化といい、独特の隠語に書き換えた差別用語で相手をラベリングするネット、有名人相手のクソリプを「有名税」で片づけられると思っているネットはクソ。 
被害者の言葉を勝手に代弁し、加害者やその関係者を灰になるまで焼き尽くすインターネット正義マンもクソ。
ネットの誕生により可視化された人々の善意という悪意、素直さという愚かさに人生を狂わされる恐怖。 これを社会派メッセージと呼ばずしてなにを呼べというのか、いやない。
Uのごとき仮想世界の存在はともかく、わたしたちの現実世界がすでにインターネットから切り離せない状態であることは確かであり、SNSの種類は違えど、誰しも一度や二度のネットトラブルは経験済みでしょう。
ふとわが身を振り返り、ぞっとしたりあるあると頷いたり胸を痛めたりしてしまう『竜そば』のリアリティ。気づけば没入間違いなし。
これこそが、細田流勝ち筋なのです。



勝ち筋その3・・・天下のネズミを仕込む

サマーウォーズにもいたじゃないか、ネズミ。 そう、たしかにその通りです。
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(言い逃れようのない円型がふたつ)

しかし今回のネズミは見た目の話ではなく、世界で最も稼ぐネズミの話。
『おおかみこどもの雨と雪』以来、試行錯誤を重ねてきたキャラクターデザイン。 
しかし、どれだけ時が過ぎようとも、未だに一部ファンからは「貞本さんデザインがよかった」と指摘される現状に、細田監督が頭を悩ませていないなどと誰が言えるでしょうか。実際のとこはしらんけど。
そこで、今回細田監督が本作のメインキャラクターである仮想世界のヒロイン・ベルのデザインを依頼したのは、かの『アナと雪の女王』でキャラデザを担当したジン・キムさん。
もうキャラデザがうんぬんかんぬんなんて誰にも言わせない、という強い意志を感じます。 
お金の話をするのもイヤらしいですけど、1と2合わせて世界興行収入27億ドルの姉妹ですからね。日本円で3000億円ぐらいか。なんやねん3000億って。ゼロ多すぎてもう意味わからん。
名前はビッグだけど実際のデザインはどうなのか、といいますとこれがとてもすばらしくて、貞本さんっぽさを感じさせる日常パートの女子高生すずとは正反対の魅力を感じさせるはっきりとした目鼻立ちに、レリゴーなメリハリボディ、強すぎないけれどしっかりとした芯を感じさせる表情のバリエーションなど、今までの細田監督作品にはなかったなにかを感じさせてくれました。ワールドワイドな勝負を視野に入れたようななにかを。

そして、仕込まれたネズミは一匹だけではありません。
今までさんざん悪いインターネットに書き込まれてきた「脚本家が変わってからうんぬんかんぬん」にまっこうから立ち向かわんとばかりに、ストーリーにもみんなだいすきディズニーの名作を匂わせてきたに細田監督。
ポスターのビジュアルからして一目瞭然ではあったのですが、なんと本編自体に「自分のコミュニティで孤立する美しい少女が乱暴者だけど陰のある竜と出会い、竜のお城でともに時を過ごすうちに惹かれあう」と、匂わせ行為を超えた分量の『美女と野獣』成分を配合。
さらに、ガストンを思わせる正義マンが手下を連れて竜のお城を急襲するくだりまで再現する念の入りようですから、これ実質ビューティエンダービーですよね。 でっかいホールでくるくるダンスもしますし、バラの花あげますし、姿を変えられた忠実な竜の手下も出てきますし、竜はだんだん弱ってきますし、少女の抱擁で救われますしって書いてるうちに不安になってきたな。ほんまにええんかこれ。
とにかく、デザインは本家に頼んだ。 ストーリーも本家をなぞった。 これ以上の約束された勝利があるでしょうか、いやない。
自分(監督自身)が愛せる作品と、万人に愛される作品を結びつけるディズニーパワー。
これこそが、細田流勝ち筋なのです。



勝ち筋その4・・・前前前世からではなく現世の50億人から君を探しはじめる

さて、ネズミばかりを連呼してしまいましたが、海外の名作だけを盛り込んだと思われたら心外なので、今回非常にエモいポイントだったそれ以外の展開もご紹介しておきましょう。

仮想世界で交流を深めていく竜とベル。
しかし、あまりに世間から嫌われた竜はネット自警団につけ狙われ、ついには謎の権限を持つガストン的アバターにより身元を特定されそうになります。
ガストンより先に竜の身元を知っておきたかったすずとヒロちゃんは、膨大なネット情報の中からひたすら竜の手がかりを探しはじめるのですが、Uの登録者はおよそ50億人。
干し草の中の針どころではない、壮大すぎる「君」探し。
前前前世のあっちも、時空を超えていた分かなり難題でしたが、こちらは50億人ですからね。
国籍も年齢も性別もわからない中、ノーヒントで50億分の一個人を特定するとか無理でしょ。 どう考えてもムリゲーでしょ。 でも、できるんですよ!だって特別な少女だから!そもそも50億の中でいきなり初登場1位みたいなポジション勝ち取る少女ですからね!持ってるモノがそこいらの一般ピープルとは違うんだよ!(※偏った意見)
大切な人を守るためならどんな困難でも乗り越えてみせる、という信念が奇跡を呼び寄せることのエモさは、『君の名は。』をあそこまでのバケモンヒット作に育てた要因のひとつでしょうし、何かを信じて走ったり転んだり泣いたりされたらそりゃもうこっちもアガりますわな、気分が。
50億も利用者がいるのに、その中の有名人ふたりがどちらも日本人でなおかつ同世代である確率てナンボや? などと考えるのはヤボってもんですよ。
琴線をビシビシ刺激する珠玉の名曲と、会えそうで会えない少年少女。
これこそが、細田流勝ち筋なのです。



勝ち筋その5・・・シークレット声優・佐藤健

ポスター上でも伏せられていた竜の声優を、公開10日前の完成報告会見場でサプライズ発表。
しかも中の人は佐藤健。
やったな?細田監督!!

なんでしょうね、そりゃあ佐藤健さんいい役者さんですからね、別にいいんですよ、いいんですけどね、そこはかとなく「やったな?!」感があるんですよね。
確実に勝ちを手に入れられるなにかをつかみにきているな、という。 動員的ななにかを。
これこそが、最後の細田流勝ち筋なのです。



みんながすきそうなあれやこれやをパンパンに詰め込んだ、細田流よくばりセットとも言える『竜そば』。
これがそのまま興行収入につながるかどうかは、細田キャリアにおける未来のミライのダメージを加味すると正直わかりませんが、作品のクオリティは極めて高いと思いますし、いたましい経験をしたひとりの少女による喪の作業は胸を揺さぶりますし、クールで顔面の造形がよくてサラサラ前髪で運動神経バツグンで女子にモテまくるけど本人は主人公一筋という別マ(別冊マーガレット)的王子様キャラの完成度もすばらしいですし、成田亮力(ぢから)は声だけでも健在でしたし、とにもかくにも中村佳穂さんの歌声の説得力が異様なので最後はなしくずしで「ええもん観たな」というトコロに落ち着くのではないでしょうか。
国内での公開は始まったばかりですが、早くもプレミア上映されたカンヌ映画祭では14分間のスタンディングオベーションを受けたということで海外での成功も上々のよう。 
もしかしたら、この先予定されている北米での上映こそで勝ち筋の本領が発揮されるのかもしれませんし、多くの人々の記憶に残る作品となるといいですね!



・・・と、ここで終わってもよかったのですが、わたしが『竜そば』大絶賛みたいにみえていたらそれは本意ではないので、以下本気で無理だった点も書いておこうと思います。


わたしが無理だった点、それは「虐待が舞台装置にしかみえなかった」点。

背中に痛々しい痣をもつ竜。
偶然みつけた動画配信から竜と思しき人物に辿り着くすずたちでしたが、なんとその動画に映っていたのは、実の父親から日常的に暴力を受ける兄弟の姿。
竜の正体は、暴力的なシングルファーザーに苦しめられている子どもだったのです。
画面越しに手助けを申しでるすずたちでしたが、過去に幾度も同情の目を向けられては裏切られた経験をもつ竜は、すずたちも彼らと同じ偽善者であると切り捨てる。
そして同時に、その配信に気づいた父親の手が兄弟に伸びて・・・

竜の配信動画に映りこんでいた景色や物音などの情報から身元を特定したすずは、福祉局の保護を待っていては兄弟を救えないと、夜行バスで単身彼らの住む東京に向かいます。
住んでいる高知の山奥から、東京へ。
その時周囲の大人たちはどうしていたかというと、彼女の決断を尊重し、単独行動を支持するんですよね。
物語としては正しいのかもしれない。
なぜならすずの母親も、幼い子どもを助けるため、下手したら命を失うかもしれない危険な状況へ単身飛びだしていたから。
その母の行動を受け入れられなかったすずが、母と同じ行動をとることで母を理解し、母を受け入れ、喪失を乗り越える。
たったひとりで向かうことこそが、すずの人生には必要なことだった。
わかりますよ、わかりますけどね、それではあまりにも「虐待がただの舞台装置」的ではないですか。
虐待児の存在は水難事故ではない。
主人公の成長のため、被虐待児のもとに彼らと年端の変わらないすずを向かわせることに、正当性はあるのでしょうか。

虐待は、現実世界において無視できない大きな社会問題であり、だからこそ大人から子どもまで幅広くターゲットにしているであろう本作にガッツリと虐待描写をいれたことは、勇気ある決断だったと思います。
ただ、だったらきちんと兄弟の行く末も示してほしかった
暴力で脅しても支配できないどころか、自分を正面から見据えるすずに恐れをなした加害父が泡食って逃げ出すシーン。
一見よかったね、みたいじゃなですか。
すずと兄弟が肩を抱き合って雨の中支えあう姿は感動的、みたいじゃないですか。
ダメですからねこれ。 包丁でも持って戻ってきたら一巻の終わりですからね。
もっとダメなのは、お兄ちゃんがすずに「君の姿を見て、自分も父親に立ち向かう勇気をもらったよ」です。
細田監督は子どもになにを言わせてるの。 こんなのダメに決まってるじゃん。

あのね、子どもは立ち向かわなくていいんです。
これは大人がきちんと立ち向かわなければならない問題なんです。
すずのコーラス仲間だった熟女グループが、高知から東京の福祉局に連絡を入れるも「保護までには最短で48時間かかります」と言われて撃沈するシーンがありますが、なんでそれだけで諦めるの。 
ダメでしょ。 子どもが命を危険にさらされている事案なんだから、すぐ110番するでしょ。もっとがんばれよ大人なんだから。
父親に暴力をふるわれるのは自分が悪いせい、自分さえ我慢すればいいこと、そんな風に植えつけらえた考えを竜がすずとのやりとりで払拭できたならそれはよかった。 
でも、きれいな精神論で子ども自身に虐待を乗り越えさせようとするのは受け入れられません。
舞台装置ではなく、本気で問題だと思っているのなら、兄弟についての後日談は必要だったのではないでしょうか。
助かったのかな、ふたりとも。 
まさかすずのおかげで父親が改心、とかそんな脳みそミラクルファンタジーを思い描いてんじゃないですよね、監督。


もうひとつの無理だった点は、すずと父親の関係です。
というか、すずが東京に向かうくだりでの父親の反応ですかね。

亡くなった母の友人でもあった熟女グループは、すずを見送ったあと彼女の父親に事の成り行きを伝えてくれました。
バスに乗るすずに父から送られてきたメッセージは、「がんばれ」というもの。
「わたしは君の選択を尊重するよ、だからお母さんのように君もその子たちを救ってあげなさい」
耳障りいい~~~!!!めっちゃ耳障りがいい~!!

母の死以来、心を閉じてしまった娘を、父はひたすら見守っていました。
無理に話をしようとするでもなく、距離を置きすぎるでもなく、彼女から求められるまでは干渉しまい。そう思っていたのかもしれません。
わたしも親なので、物語の途中まではおとうさんかわいそうすぎて苦しかったです。
おとうさんだって最愛の家族を亡くして深いかなしみの最中にあるだろうに、娘の前で落ち込んではいられなかったのかなぁ。
娘の方がもっとショックだったろうから、といつか傷が癒えるまでやさしく見守ろうと決意していたのかなぁ。
自分のかなしみはどこかに閉じ込めて、一生懸命踏ん張っていたのかな。
おとうさんかわいそう。 
おとうさんの背中は傷だらけだ。 
おとうさんも荒れたくなることあるだろうな。
おとうさん救われてほしい。
おとうさん・・・  あれ・・? おとうさん・・・ もしかしておとうさんが竜・・・??!!


(演じるのは役所広司さん。 これはワンチャンありうる・・か・・・?)

そう思っていた時期がわたしにもありました。 
ベルが竜にキスしそうになった瞬間「あ、ねえわ!」って正気に戻りましたけども。

で、そんな自分を押し殺しても娘を見守る父親なもんですから、娘が被虐待児を救うため単身東京に行くといっても「がんばれ」と理解を示すわけなんですが、ダメだろそれ。
もちろん子どもはいつか独り立ちします。 
そのためには、怖くても不安でもたったひとりで立ち向かわなくてはいけないこともある。
けれど、この物語の設定下での東京は、ちょっと無理ですね。 わたしには無理。
相手は子どもに暴力をふるう大人の男性ですよ。 
成長を試す場にもTPOってもんがあるだろ。なんで行かせるの。なんかあったらどうするの。実際あったし。
電話かけるだけで得心いっちゃってる熟女グループも、スマホで応援するだけの父親も、マジでどうかしてますよ。
そういうの、理解ではないと思う。 
理解っぽいけど、やってることは無責任に近いと思う。


で、お待たせしましたわたしが一番無理だった点、すずが東京から帰ってきた時の父親の反応。

加害親と対峙したあと、兄弟がどうなったのか、父親にどんな報告をしたのかさっぱりわかりませんが、とにかくすずは駅に着きました。
顔には傷がありました。
暴行じゃん!これ完全に暴行うけてんじゃん!!刑事事件じゃん!おまわりさんこっちです!!
もうね、心配した通りの展開すぎてゾっとしますよ。 
ひとりで行った先で大人の男性に暴行受けて、女の子が顔に傷つけられるとか正気か細田監督?
ほんでこの父親はどうすんのかと思ったら、開口一番「おかえり、晩ごはんどうする?」ですよ??!!!

晩ごはん!!!!

どうする!!!!

じゃねえだろ!!!!!


「ようし、今夜はカツオのタタキだ!」じゃねえよ!! おまえには今すぐカシラを叩き割りに行かねばならぬ相手がいるだろ!!
あいつを絶対に許すなよ! 娘に暴力ふるわれて黙ってる親なんてあるかよ!

オレがリーアム・ニーソンだったら今ごろマッハで東京向かってんぞ!!!





- おまけ -

・ すばらしい映像美やたぐいまれなる歌声と同様、いやそれ以上に心に残ってしまうのが、虐待を受けていた兄弟のこれまでとこれからであったのが残念でした。

・ だから最後、フォローがあるのとないのでは全然違うと思うんですよ。

・ 予告だけだと仮想世界メインのような印象を受けるのですが、実際はきっちりと青春映画していましたし、またその部分がとても甘酸っぱくてすてきだったので、夏休みの若者にも観てほしいですね。 ルカちゃんとカミシンのくだり、すごくいいよ!

・ 父親から過度の抑圧、暴力を受けていた兄弟でしたが、Uを使用するためのデバイス一式は買ってもらえてたんだな・・・たぶん二人分・・・ うん・・よかった・・・

・ 結局のところ、Uの仕組みがいまひとつわからなかったのですが、あれはデバイスを装着したら視界がU内に切り替わるってことなんですよね? で、リアルでしゃべった言葉がアバターの口から出てくる、と。 身振り手振りはどうなのかな? 歩いたり走ったりは?

・ ベルが歌っているとき、すずもスマホを握って歌ってたってことなんですよね? 声もそのままなんですよね? だったら熟女グループとしのぶくんが身元特定できたのもわかる。 そりゃ声聞いたら一発でわかるわ。

・ なんぼなんでもみんな普通にアカウント持ちすぎじゃねえの?と思わなくもないですが、登録者数50億人なのですずの周囲の人たちが(リアルイケメンのしのぶくん以外)全員Uを使っているのも当然なのです。 だってFacebookで28億人、インスタですら10億人、ツイッターなんかあれだけ「世界のトレンドはわしにお任せあれ!」みたいに幅を利かせといて3億人しか利用者数ないんですよ。 50億つったらもうほぼ全員ですもん。 デバイスの所持は必須。 運営会社のCEOはスペースシャトル乗りたがるタイプのやつに違いない。

・ そんな極めて現実世界とリンクしているU内で、兄弟を助けるためとはいえ自ら身バレをしてしまったすずの今後が気になります!! 絶対ワイドショーやネットで「奇跡の女子高生!」ってやるだろ。 っていうか、世界中で人気だったんだから海外からもオファーくるかもしれん。 もう・・普通には暮らせない・・・

・ あのスピーカー搭載クジラはなんだったの? ベルの囲いなの? 重課金によってスピーカーを手に入れたガチ勢なの? スパチャで花びら飛ばしてんの?

・ 冒頭で描かれるすずのおかあさんの事故シーンが本当につらく、それが繰り返されるクライマックスではつらいながらも感動に昇華されてゆくのがすごい。 こんなん泣かずに観られるわけないよ。 ていうか、すずがひたすら曲を書いてそれをゴミ箱につっこむとことかもホントよかったんですよね。 橋の上の嘔吐とかね。 いたましい心の機微が繊細に描かれていて引き込まれました。 なんで虐待のくだりではガバガバになっちゃうのかな・・・

・ メガネのヒロちゃんさいこうだろ。



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