『アントマン&ワスプ:クアントマニア』
2023年02月17日

あらすじ・・・
サノスのあれやこれやでうやむやになったままだった、量子世界でおかあさん(ジャネット・ヴァン・ダインさん)が過ごした30年間の詳細があきらかになります。
公開まで一週間とせまったタイミングで急遽決まった「アントマンシリーズ三部作一挙上映」。
全国わずか14館のみでの開催ということで、どうせいつものアレやろ? ギロッポンとかブクロとかスンズクとかそういう大都会のみやろ? と思っていたらまさかの地元が含まれていたことを知ったので、万障繰り合わせの上さっそうと駆けつけて参りましたよ。
いやぁ、開きましたね! フェーズ5の幕が、華々しく開きました!
正直いうと、この十数年キャップ推し一筋でやってきたものですから、『エンドゲーム』で一つの終わりをむかえたどころか大半を終えた感はあったんですよね。
もちろん、その後のフェーズ4もせっせと追い続けてはいましたが、エンドゲーム前までのような熱狂が自分の中にわきおこってはこなかった。
ディズニー+で始まったスピンオフのドラマシリーズも、最初こそ配信開始日をいまかいまかと心待ちにしていましたが、本数が増えてゆくにつれ、純粋なたのしみに義務感が混じるようになり、「あのドラマがもうすぐ始まるなぁ」ではなく「やばいあのドラマももう始まってた」と思ったことがないかというと、じつはあった。めんぼくない。でもごめんけどまあまああった。
コロナ影響下、フェーズ4で公開される映画が劇場で観られるのか配信スルーになっちゃうのかなかなか決まらず翻弄されてしまったことも、熱をさませるひとつの原因になったかもしれない。
いうて『ブラック・ウィドウ』以外は劇場で観られたんですけどね。
なんだろう、マーベルだけではなくディズニー全体の問題として、そういう印象が強く残ったってことでしょうか。
また、次々と作られる豪華なドラマシリーズが、ディズニー+という配信サービスでしか観られないというのも、わたしの中ではしっくりきていなくてですね。
どのシリーズも映画とがっつり絡んでくる作りになっているにも関わらず、DVDやBlu-rayは発売されず、観たい人は契約してね!って、そりゃ商売としてはありなんでしょうけど、作品作りとしてはなんつうか不誠実じゃないですかね。
すべて含めての世界観として広げていくんですよね? そのわりに、ひとつの手段しか用意しないってどうなんでしょうか。
みたいなことがこの数年もやもやしていてですね、そこまでのめりこまないうちにフェーズ4は終わりをつげ、次なるフェーズの情報がいろいろと発表されるなか、満を持してのアントマンだったわけですよ。
トップバッターが、アリのおじちゃん。
もうこの判断がわたしとしては断然アリでですね。 ちがう、そういうんじゃない。 アリだからありとかそういう中年特有のやつじゃない。
神さま、ガンマ線を浴びて巨大化した人、高性能アーマー持ってる人、超人血清を打ってじょうぶな人、インフィニティ・ストーンのおかげでスーパーパワーを得た人、あとはふつうに強い人、という個性豊かな面々の中、「理屈はよくわからないけど大きくなったり小さくなったり出来るスーツ」を着ただけの子煩悩おじさんなアントマンは、ほんとうにふつうで、ほんとうに一生懸命で、ほんとうにやさしくて、歩く好感度みたいなおじちゃん。
その一方、そんなふつうのアントマンは決していたずらにふつうなわけではなく、フェーズ3において量子世界や時間の渦といった、今後のMCUにかかせないであろうキーワードにもがっつり関わっていた、いや、むしろアントマン主導で進んでいたといっても過言ではなかったりした。
圧倒的好感度と、かわいいマスクと、おもしろいギミックと、わけわからなすぎてなんでもありな世界観と、そこを行き来できる万能スキル。
アントマン以上に新たなフェーズの幕開けにふさわしいヒーローがいるでしょうか。 いや、いない。
そして観終わった『クアントマニア』。
今まで以上に壮大で、今まで以上に謎理論で、今まで以上に家族愛にあふれて、今までとおなじくらいふつうな子煩悩おじさんの、今までみたことのないくらいかっこいい大活躍が約2時間にぎっしり詰め込まれていました。
満足か? そりゃもう大満足ですよ。
アントマンもワスプもキャシーちゃんもピム博士もジャネットさんも見せ場たっぷり。
新たに加わった量子世界の面々も、一瞬「スターウォーズか?」と既視感にみまわれなくはないものの、これはこれでとってもキュートでとっても勇ましく、観終わることにはグッズがほしくなることまちがいなし。ちなみにわたしの推しはヴェブちゃんです。
量子世界とマルチバース、そうでなくてもややこしそうな世界が主戦場になり、ますます混乱を極めそうなフェーズ5。
今回過去一のたのもしさを見せてくれたスコット・ラングさんが、キャップにかわって新たなアベンジャーズを率いてくれるのか。
キャシーちゃんが加わるであろうヤング・アベンジャーズのお世話もしてくれるのか。
能力的にはストレンジ先生の方が強そうですが、人柄でいうと絶対的におじちゃんの方が信頼できると思いますので、ぜひ今後ともその豊かな愛情とユーモアのセンスとポジティブ姿勢で、みんなを束ねていってほしいものですね。
( ※以下ネタバレしています)
・ アントマンの過去作は観て行った方が断然たのしめますよ!
・ ロキのドラマシリーズは、「あっこれ観てなくてもなんとかなるやつだな・・・ なんとかなる・・・ うん・・なんとかなる・・・ なんとか・・・ ・・なんとかならなかったわ!」という立ち位置なので、ぜひ観ておいた方がいい。 というわけでますます配信サービスしか用意しないディズニーの殿様商売っぷりに喝だ喝!
・ 回を重ねるごとに設定がガバガ・・・おおらかになっているアントマンシリーズ。 ついに量子世界に行くときノースーツ・ノーマスクでもノーダメージというところまでたどり着きました。
・ ピム博士が「(量子世界にノーマスクで入ったのに)なぜ死なないんだ?!」というごもっともかつみんな知りたい疑問を投げかけていましたが、結局ゼロ回答でフィニッシュです。ええんかそれで。
・ 登場するたびに小さくなっていた量子トンネルですが、今回ついにドアくらいの大きさまで縮小されました。 これぞほんとのどこでもドア。
・ クマムシよりもちいさい亜原子粒子くらいの生き物がわんさか暮らす量子世界。 造形はおおむねスターウォーズ・ミーツ・ガーギャラ。 言語は通じないが、ほんにゃくこんにゃくみたいな生き物を摂取すると通じるようになります。 ついでにいうとアントマンがバイバインで増えた栗まんじゅうみたいになるシーンもあったりする。 藤子先生は偉大なのである。
・ 量子世界で征服者カーンと一戦交える話なので仕方ないっちゃあないんですけど、物語のほとんどが量子世界だったのがちょっとさみしかったですね。 サンフランシスコという日常の風景の中で縦横無尽にサイズを変えるアントマンの戦闘スタイルがだいすきなのでね・・・
・ あと、サンフランシスコが舞台じゃないせいで、ルイスが出てこなかったのも痛い、痛すぎる。 これだけでおもしろさ大幅減である。 ワザー!
・ キャシーの配役がこの3作目から変わってしまったのもさみしかったですね。 子役の成長を待てない以上、一人の俳優さんを使い続けるのはむずかしいとしても、10代の俳優さん同士で変更する必要ってあるのかな?
・ そもそもエンドゲームの時点で「5年でこんなでっかくならんやろ」とは思いましたよ? 思いましたけど、こちとら受け入れたわけじゃないですか。 みんなでなかよく空を見上げていたじゃないですか。 それなのになんでその時よりも若干若返ってるくらいのキャスティングになるんだっていう。
・ ケビン・ファイギともあろう人が、フェーズ4以降の展開を考えていなかったわけがないですよね。 今回めちゃくちゃアクションに全振りしてるから、『パラノーマル・アクティビティ』や『ザ・スイッチ』などのホラー映画などで数々の怪奇現象とたたかってきたキャスリン・ニュートンさんに変えたのかと思いきや、そこまで激しいアクションがあったわけでもないんですもん。 だったら『エンドゲーム』のときのエマ・ファーマンさんでいいじゃない。 今後の展開がさらにあるんだとしても、鍛えてもらえばいいじゃない。 だいたいの俳優さんが役に合わせてトレーニングさせてもらってるじゃない。
・ 百歩譲ってどうしても変える必要があったんだとしても、せめてキャラクターの性格に一貫性はもたせてほしかったなぁ。 見た目が違う上に、性格もガラッと変わってるんですもん。 いや確かに『エンドゲーム』のときのキャシーちゃんはちょびっとしか出演シーンなかったですけどね。 でも明らかに違う、違いすぎる。 陰キャと陽キャぐらいの違いがある。
・ 見た目だけでいうと、キャスリンさんの方が子役のアビーちゃんとじゃっかん似ているし、やんちゃで知恵が回って正義感の強いキャシー像を成長させたら今回のキャラクターの方がしっくりくるとは思います。 だったら『エンドゲーム』のときのキャスティングがどうだったんだって話になりますけどね。 とにかく、こんな短期間で重要な役どころの配役を変えるんなら、違和感が最小限になるようにやってくれないか。 という切なる願いです。
・ ふつうのおじちゃんことスコット・ラングさんが、フェーズ5のメインヴィランとされるカーンにからだひとつで立ち向かうシーンが熱すぎて震えました。 娘を、家族を守るため、蹴られても殴られても血だらけになっても何度でも、拳を構えて立ち上がるおじちゃん・・・ わたしには見えました・・・ おじちゃんのうしろに「I can do this all day.」の文字が・・・!
・ マジで、人格ランキングでいったらキャップの次くらいに尊そうですもんね、おじちゃん。 おれ、おじちゃん、だいすき!
・ マラソン上映で観たので、イエロージャケットさんことダレンさんの変わりようがすごすぎて感情が追いつかない・・・! 笑えば・・いいのかな・・・?かな??
・ ビル・マーレイの用法容量がとても正しくてよかったです。 もう彼はあれくらいでちょうどいい。 画面の端で見切れながら喰われるくらいでちょうどいい。
・ ドラマ版ロキに登場した征服者(またの名を“在り続ける者”)は、マルチバース上に存在するたくさんのカーンが自分勝手に侵略を始めた為、それらを剪定しひとつの時間軸を保持する役目を果たしていました。 わたしたちが観続けてきた「MCU」のタイムラインは、「在り続ける者」のおかげで成り立っていたというわけですね。
・ ただ、逆をいえばその時間軸から外れるような想定外のイベントはあってはならないということでもあり、その後のタイムラインを変えかねない出来事、たとえばうっかりソーを殺すような「ロキ」が現れた場合、そのイベントごと消し去らなければならなかった。
・ わたしたちが観てきたタイムライン、ドラマ版ロキでは「神聖時間軸」と呼ばれていたそれはたしかに重要だけれど、外れたという意識もないのに理由も聞かされず問答無用で剪定される人の身にもなってみろよ、というごもっともな怒りが登場人物からあがった結果、「在り続ける者」は殺害され、それまで彼が抑えていたマルチバース上の邪悪なカーンたちが活動を再開してしまうという物騒なエンディングで、ロキのシーズン1は終了しました。
・ 本作に登場する本カーンは「在り続ける者」とは別のカーンであり、自分勝手に時間軸を征服しまくっていたせいで、戒めの為量子世界へ追放されたカーンでした。 自分を僻地に追いやった別カーンたちをとっちめたい。 もっとたくさんの宇宙を手あたり次第征服したい。 そんな野望をもつ本カーンは、見事アントマンと仲間たちの活躍で仕留められたものの、他のカーンにとって脅威だった彼がなくなったことは、マルチバース上の全てのカーンがやりたい放題を始めるきっかけになってしまった。
・ 亡くなり方も亡くなった場所も存在意義も違うカーンではありましたが、彼がいなくなったことで全カーンが集結し、宇宙を破壊しようと立ち上がってしまうという展開は同じなわけです。 マルチバース、おもしろいですね。 どっちに転んでもどっちも同じ。 もしかしてこれもまた神聖時間軸なのか?
・ いやあしかしエンドロール後のおまけで、マルチバース上から集められた無数のカーンが決起集会するさまが映った瞬間、「うわあ! しんど!」ってシンプルなうなり声が出そうになりましたよね。 次のアベンジャーズ、アレ全部で攻めてくるのかー マジでかー 既にめちゃくちゃしんどいわー
・ とりあえずロキのシーズン2はよくれ!!!!
関連感想
『アントマン』(シリーズ1作目)
『アントマン&ワスプ』(シリーズ2作目)

