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『パッセンジャー』

2017年04月18日
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(※ 以下、いきなりネタバレしています)






あらすじ・・・
クリス・プラットが宇宙で死にます。


・ と、いうわけで『パッセンジャー』を観てきたのですけども、なんつうかすごい映画でしたよね。

・ ドラマの舞台は、地球を離れ別の星への移住を決意した5000人もの人々を乗せた宇宙船・アヴァロン号。 ある日その船に隕石のかけらがぶつかり、メインコンピューターがぶっ壊れるところから物語はスタートするのですが、とにかく恐ろしくテンポのいい本作ゆえ、誰がどう起きるんだろうなんてまどろっこしい前フリは一切省かれ、開始後3秒(※個人的体感)でクリス・プラットの冬眠装置が解除されてしまいます。

・ 120年間冬眠したまま惑星間移動するはずだったのに、たった30年しか眠らせてもらえなかったクリス・プラット。 最先端人工知能が試算してくれた結果、到着まで残す年数は90年。わかっとるわ。最先端じゃなくても小学生でも引き算できるわ。

・ この時点で既に館内で寿命をまっとうすること大決定です。 クリス・プラットかわいそう。 その後やらかす行動を思うとかわいそう心が激減するけど、まだこの時点ではじゅうぶんかわいそう。

・ で、技術者でもあるクリス・プラットは、なんとかもう一度冬眠ポッドに入ろうとしたり、乗組員たちを起こそうと奮闘するのですが、事故やエラーをまったく想定せずに作られたとしか思えない最先端ポンコツ船・アヴァロン号相手には、何をやっても糠に釘もしくは暖簾に腕押し。 万策尽きたクリス・プラット、ついには広大な宇宙に身を投じることで、人生から退場することをも考えてしまいます。 

・ わたしたちもね、ひとりぼっちだなぁ、と感じる瞬間って、決して少なくないと思うんですよね。 もしくは、一人でも生きて行ける、と言い切ってしまう瞬間。

・ 寄り添う人がいなくても、趣味に没頭していれば生きて行ける。 友達がいなくても、好きなことに打ち込んでいればそれだけで幸せ。 ほかになにもいらない。 

・ でも、もしかしたらそれは、ひとりのつもりでも実際はひとりではないから、耐えられているのかもしれないなぁ、と。 話し相手がいなくても、自分が生きている世界にはだれかがいる。 直接触れたり接したりしていなくても、そこここに人の気配を感じる。感じられる。 だってここはたくさんの人が生きるひとつの星だから。

・ そうではなくて、もしも本当に、自分以外だれ一人いない、生き物一匹いない世界だったとしたら、コンピューターしか存在しない世界だったとしたら、そんな中においても「ひとりで生きて行ける」と言い切れるのだろうか。 

・ わたしには無理だと思うのです。 ひとりでいるのはすきだけど、わたしがすきなのは、あくまで「自分で選んだ孤独」という状態だから。 

・ クリス・プラットみたいな状況に放り込まれたとしたら、と考えただけでおそろしいし、ホント耐えられない。 ああ、かわいそう。 早く起きてしまったのはクリス・プラットのせいではないというのに。 まぁ、追い込まれた結果彼がしでかしたことを思い起こすだけでお釣りがくるぐらい酷い展開があるのでかわいそうとか言ってられないんですけど、まだギリかわいそう。

・ すんでのところで死を思いとどまったクリス・プラット。 彼の目に映ったのは、この世のものとは思えないほど美しい女性の姿でした。 

・ 冬眠ポッドの中で120年(残り90年)の眠りにつく美女の名前はオーロラ。 調べてみると美しいだけはなく、知性も教養も申し分ない完璧超人だったことから、クリス・プラットは彼女の存在を勝手に生きるよすがとし、新たな生活を始めるようになります。

・ しかし、当然のことながら、ひとりぼっち生活を続けるクリス・プラットが理想の美女を見ているだけで満足できる期間なんてたかが知れており、悩みに悩んだ結果悪魔的所業を行ってしまったクリス・プラット。 そう、オーロラを勝手に冬眠ポッドから目覚めさせてしまったのです。 彼女が選んだ未来を勝手に書き換えたクリス・プラット。 過ごせるはずだった人生を自分の都合で奪い取ったクリス・プラット。 返せ!さっき浮かんだオレの「かわいそう」を返せ!おまえみたいなやつは、頭部をバールのようなもので殴られてしまえ!!そして宇宙で死ね!!

・ オーロラの人生を変えてしまったという事実をひたすらに隠し、「不運なふたり」としてアヴァロン号での共同生活を始めるクリス・プラットとオーロラ(ジェニファー・ローレンス)。 機械トラブルでたまたま起きてしまったのだと思っているオーロラは、自分より一年も早く目覚めてしまい孤独をこらえて生きてきたクリス・プラットを尊敬するようになり、尊敬はいつしか愛へと変わるのでしたが別の意味で目を覚ませジェニファー・ローレンス!機会をトラブらせたのはそいつだぞ!甘いマスクと「自分、不器用スから・・」みたいなシャイな笑顔に騙されるな!はやく!はやくバールのようなものをおみまいしておやんなさい!!

・ 予告を観た時には、ふつうにふたりともが事故で目覚めてしまうのだと思っていたわたしにとって、この非情な展開は本当に衝撃でした。 先に目覚めたクリス・プラットが、ジェニファー・ローレンスを道連れにするかどうかで迷いに迷いまくっている間中、「たのむから思いとどまってくれ・・!」と願わずにはいられませんでしたし、なんだかんだ言ったってまさかやらかしはしないだろうと思いましたし、いざ工具を携えてジェニファー・ローレンスの冬眠ポッドの横に膝をついた時ですら、きっとこの瞬間に別の隕石がぶつかるのだろうと信じていました。 いや、信じたかった。 だって、あまりに酷い行為だから。

・ のちに事実を知ったジェニファー・ローレンスも、「人生に対する殺人だ」、と責めていましたが当然ですよね。 自分で「よし、明日死ぬぞ」と決めるのと、他人に「おまえは明日死ぬ」と言われるのでは大違いですし。 たとえ「人は遅かれ早かれ必ず死ぬ」ということに違いはなかったとしても。 

・ と、いうことで、よくこんな酷なストーリーを思いついたなぁとビックリしながら観ていたのですが、実はわたしはドン引きすると同時に、この作品をべらぼうにおもしろいと感じていたのですよね。 

・ クリス・プラットの宇宙ひとりぼっち生活から、ジェニファー・ローレンスとの格差カップルいちゃいちゃ天国になり、そこからまた一気に緊迫感あふれる密室ホラーのような空気になったかと思うと、今度はサバイバルSFアクションのごとくスピーディな展開に。 バランスとアンバランス、心地よさと不快感、美しさと醜悪さが見事に混ざりあい、心のどこかにしっくりしない何かを抱えたまま最後まで突っ走ってしまう、この強引さ。 これは彼らの選択が正しいかどうかにジャッジを下す映画ではない。 彼らの数奇な運命を観ながら、「人生」というものについて考える映画だったのかもしれないなぁ、と思ったのです。

・ そもそも、アヴァロン号に乗り込むこと・惑星移住するという契約書にサインした時点で、彼らの人生は終わっていたのではないでしょうか。 だって、片道120年ですよ。 いわゆる「自分が一緒に生まれてきた時代」の移り変わりを見ることは叶わないわけじゃないですか。 往復240年かけて生まれ故郷に戻ったとしても、そこには「自分が居た時代」の痕跡など、もうないのですから。 仮に移住が成功していたとしても、それは彼らが一度「その時代の中で死んだ」のちに、別の時代で得た「別の人生」なのではないでしょうか。 

・ 人生って、時代を生きることでもあるんじゃないかとわたしは思います。 自分がたまたま生まれてきたこの時の流れの中で、自分という人間を構成した文化、価値観を共にした仲間、守ってくれた人、守りたい人、その始まりと終わりをつなぐのが、人生なのではないかと。

・ 家族や友人たちを捨て、アヴァロン号に乗り込んだジェニファー・ローレンスは、地球における自分の人生に見切りをつけたのですよね。 このままここにいても自分は生きていると言えない。 だから地球での人生をいったん終わらせ、過去から来た人間として未来に関わろうとした。 そこでなら、生きていられると思った。 

・ ところが、孤独のあまりあたまがおかしくなってしまったイケメンに目をつけられてしまったが為に、ジェニファー・ローレンスが思い描いていた人生設計は無残に破壊されてしまう。 彼女がもともと持っていた「地球で何不自由なく一生を終える」運命と、大枚をはたいて入手した「未来の世界でタイムトラベラー的なかっこいい人生を送る」運命は消え去り、手元に残されたのは「クズをバールのようなもので殴殺したのち、ひとりぼっちで死ぬまで生きる」運命か「むかつくクズをシカトしつつ広いようで狭い宇宙船の中死ぬまで生きる」運命か、もしくは「クズを赦していっしょに死ぬまで生きる」運命だけです。 自分で書いてみてアレだけどなかなかどうしてひどい選択肢だな。 やっぱり一回バールのようなもので殴っとこうぜ!なぁ、ジェニファー!

・ その後、ひとりの人物が(今度はホントに)偶然に目覚めてしまったことから、答えが出せないジェニファー・ローレンスと、彼女に対する罪悪感により孤独死を覚悟したクリス・プラットの運命は大きく動き出すことに。 その人物とは、甲板長のローレンス・フィッシュバーンです。 

・ 船長ではないものの、いちおうアヴァロン号の責任者のひとりであるフィッシュバーンは、先の二人よりももっと悲惨な目覚め方をしたせいで起床後まもなく死期を迎えてしまうのですが、いかにも年長の責任者らしい重大なふたつのことを残してゆきます。 若いもんへの小粋なアドバイスと、全アクセス権が与えられたIDパスです。

・ アドバイスはさておき、IDパスは死活問題だからよかったねー!! マジでこれなかったら全員死んでたからねー! 甲板長は結果的に長い人生、このタイミングでふたりにこれを渡すために歩んできたってことなんだなぁ・・・と思うと切なさが限界値突破するけど、人間の役割なんてそんなもんっていういか、脇役ってそんなもんっていうか、アンディ・ガルシア(※)に比べれば全然マシな気がするのでここはひとつドンマイってことにしときましょうかね!

・ アドバイスもね、ジェニファー・ローレンスにとっては重要だったのですよね。 クリス・プラットを赦せるはずがない。 答えなんて出しようがない。 でもあと90年間宇宙船にいるという現実も変えられない、という中、ジェニファー・ローレンスはすでに、うっすらと覚悟を決めていたのかもしれない。 

・ どうせどこかでいつか死ぬなら、いま生きているこの瞬間をすこしでもマシにしよう、と。 一生自分のテリトリーの中にこもり適当な人とつきあって死んでゆくのと、知ることのなかった世界でめちゃくちゃ波長の合う人とつきあって死んでゆくのでは、どちらがマシな人生だろうか。 彼との出会いは、たしかに自分が送るはずの人生では起こりえなかったけれど、それが起きたということにはなんらかの意味があるのではないか。

・ ジェニファー・ローレンスの中のたったひとつのわだかまり、スルーできない点は「勝手に起こされた」という点だった。 実際、それを知るまでは、宇宙船でのたったふたりきりの一生も悪くないと思い始めていたのだし。 赦せるきっかけがあれば・・・・当事者以外の目線からの一言があれば・・・ そんな時フィッシュバーンからかけられた言葉。 ありふれた言葉でしたが、ジェニファー・ローレンスにとっては十分だったのかなぁと思いました。

・ ジェニファー・ローレンスは、自分の身に起きた「目覚めるはずではなかったのに無理やりに起こされてしまった」という事実を受け入れることは出来なかった。 そこはやはりもう、どうしても無理だった。 

・ しかし、「何の落ち度もないのに、新天地で自分の技術を生かせると信じていたのに、誰かに必要とされる人生を夢見ていたのに、不幸な事故で起こされてしまい、孤独のままに死んでゆくことを宣告された」クリス・プラットの現実を受け入れたのではないでしょうか。 彼の現実を受け入れたから、彼とともに死ぬまで生きることを選んだ。 自分を必要とする彼と、彼を必要とする自分とで、今いる場所を一生過ごすのにいくぶん「マシ」な場所へと変えることを決めた。 そして次へとつないでゆくことを。

・ 彼女の決断はとても難しいことですし、この作品を観て最後まで「ないわー」という方も多いと思います。 それもまたひとつの選択ですよね。 わたしはアリだと思いました。 ロマンティックには程遠い、エグいハッピーエンドでしたが、そんないびつさもこの作品の魅力だと思いましたし、他人を赦したり、他人の運命を受け入れちゃうという壮大さがすごいなぁと思いました。 あと、しのごの言わせない勢いのエネルギー炉の暴走とか、宇宙こえーとか、把手がメチャあちいとか、木を植えるのはいいけど土どっから持ってきたんだよとか、アーサーかわいいとか、そういうのもよかったです。 ホント、ゾッとしたりホッとしたり忙しい映画でした!おもしろかった!

・ 土のこと書きましたけども、ホント最後のアレ、繁殖とか増殖とかしすぎじゃないですかね。 繊細な機器とか設備とかじゃないの? 根っこが伸びたらどうなるの? アスファルト突き破ってでてくるド根性大根みたいになっちゃうんじゃないの?

・ あと、やっぱりどう考えてもアヴァロン号を送り出し移住計画をおすすめしているホームステッド社のうさん臭さね!!

・ 移動中の船内から、本社があるであろう地球に送ったメールが届くまでに10数年て!送受信合わせたら70年弱ですってよ奥さん!誰に、何を聞けっちゅうねん!!それもう送った瞬間ダイイングメッセージになっとるやないか!!本社のやつもはなから読む気ないだろ!

・ わたしなんかはね、そもそもその移住計画自体ホントに成功してんのか?って思っちゃいますよね。 だって、往復240年かかるんですよ? 何年前から惑星を改造して居住に最適なよう開発して、実際人類が移住し始めている設定なのかわかりませんけど、ちゃんとそれ確認とれてるの? あっちで無事に暮らせてるって、衣食住整ってるって、証拠あるの? 最初に行って帰ってきた人から、話聞いてる?

・ 「着いたー?」って確認するまでに最短でなんぼほどかかるんだっていう話ですよ? こういっちゃなんですけど、送り出すだけ送り出して宇宙船どっかで爆発するようにしててもバレっこないじゃないですか。 で、移動と移住のために超高額な費用を先に回収しとけば、半分以上はまる儲けとかね。 そういや、劇中「ホームステッド社の資産が銀河的額」みたいなセリフ、ありましたよね。 謀ったな! ホームステッド社め!謀りよったな!!

・ 一切の機械トラブルを想定していない人工知能とか、なんかもう考えれば考えるほどにホームステッド社がヤバい会社なんじゃないかという不安がこみ上げてこないですか? 宇宙を120年も飛んでたら、隕石ぐらい当たるだろ。 なんで船員交代で冬眠させずに全員一気に寝させてんねん。 のんきな会社か。 ちょっと!まじめにやってよ社長!!(誰が社長か知らんけども)

・ とまぁね、言いたいことは山のようにありますが、アンディ・ガルシア(※)のことを思えばだいたいのことはマシなんじゃないかと思えるようになりますので、本作におけるアンディ・ガルシアの存在はマジで貴重ですよ! ということをお伝えして、今回の感想はおしまいにしたいと思います。 



(※)オスカーノミネーション俳優アンディ・ガルシアの雑すぎる扱いが拝めるのは『パッセンジャー』だけ!

  


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