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『牛首村』

2022年02月19日
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あらすじ・・・
北陸で最も有名な心霊スポットで姿を消した女子高生の謎を、彼女にそっくりな別の女子高生が解き明かします。

実在する心霊スポット・犬鳴トンネルを舞台に犬ニンゲンの恐怖を描いた『犬鳴村』、実在する国立公園・青木ヶ原樹海と有名な都市伝説・コトリバコを題材に樹海ニンゲンの恐怖を描いた『樹海村』に続く、実録・恐怖のニンゲン・・じゃなかった村シリーズ第三弾『牛首村』を観てきましたよ! 実録じゃないか!ほぼ創作実話か!
今回舞台となるのは、北陸では知らない人はいないといわれる心霊スポット・牛首トンネルと、平成の時代に一世を風靡したとある霊能力者が入るのを拒んだといわれる最恐スポット・坪野鉱泉。
牛首トンネルの方は寡聞にして存じませんでしたが、後者は数年前に見たニュースで記憶に残っていました。
地元で有名な心霊スポット。 そこに出かけたまま消息不明となった子どもたち。 数十年後に発見された遺骨。
どこの地元にもある心霊スポットですが、そこを危険な場所にしているのは霊のいるいないではなく、肝試しの場として多くの若者が集まる場所になっていることなのではないか。
不特定多数の若者が夜集まる場所がいつしかゴミだらけになり荒れ始め、徐々に治安は悪化、新聞に載らない程度の事件が起こり、誇張を加えられた事件はおもしろおかしく拡散され、新たな心霊ネタとして若者たちをを呼び寄せる蜜となる。
本当にこわいのは幽霊ではない、人間なのだ。 なんてよく耳にしますが、噂話や都市伝説ではない、実際に起こってしまった事件を目にしてしまうと複雑な気持ちになってしまいますね。
恐怖を消費してしまうことの愉悦。 
その恐怖を装飾する材料にされてしまっている誰かの痛み。
人間は怖いですよ。 そりゃもう、相当おそろしい。
そんなおそろしくもいたましい事件を引き起こした忌まわしき場所を舞台に映画を作るのですから、もしかしたら今回は過去二作と異なったアプローチのホラー映画になるのかもしれない。
今度はマジなやつになるのかもしれない。
そう思っていた時期が、わたしにもありました。

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蓋を開けたらまんま牛でやんの!ずばり牛ニンゲン!! 牛首村だから牛の首をかぶったニンゲン!それはもう偶然ではなく必然!笑うなよオレ真剣!hey!yo!

と、いうわけで、結局シリーズのお約束をきっちりと踏襲し、良くも悪くも裏切りのないいつものアレになっていたわけですが。
見方を変えれば、「いつものアレ」なんていえること自体がしあわせなことなんですよね。
毎回賛否をよびつつも第三弾ですからね! このご時世、ホラーをシリーズなんてそんなにできないって!「村」でくくっといてホントによかったね!日本なんてもうそこいらじゅう村だらけだもん!

毎度おなじみかわいい動画配信者のちょっとした大冒険で幕をあける本作。
いわくつきの心霊スポットにて撮影を開始するも、今回の「アッキーナ」はシリーズ最高に底意地がわるいと言うか、配信にもバズりにも興味のない友人を半ば無理やり参加させ、しかも「乗り込んだら最後、異次元空間へ送られてしまう」と噂されるエレベーターに押し込むという非道をはたらきます。 おまえそれほぼ犯罪やろ。
押し込まれた友人・詩音は噂のとおり姿を消し、その動画はまたたくまに拡散され、偶然それを目にした高校生・蓮の恋人・奏音が詩音にそっくりだったことから、物語は「なぜ・だれ・どうして」に突入してゆくわけなのですが、この導入部から序盤の展開はすこぶるよかったですね。
画面の端に見切れる人の影や、ガラスに映った顔が別人になるなど、今までもあった表現ではありますがとても効果的に使われていた。
誰もいないのになにかに反応する音声アシストなんてとても今風だし、シンプルだけどじんわりイヤな感じが醸し出されているじゃないですか。
なにか見えたらこわいけど、画面の余白を確認せずにはいられないことによる緊張感と、実際なにかがほんの一瞬映り込んだあときの心のザワつき。
こういう緩急のつけかた、わたしはとてもすきですね。 初演技とは思えない程ビビり上手な主演俳優・Kōki,さんも華があった。
ただ、自分と瓜二つな事件被害者を探しに富山へ向かうあたりから、雲行きはいつもどおりに怪しくなってきてしまいまして。

これはもう、すべてわたしの勝手な想像で、本当のところはわかりませんけどね。

なんつうか、「撮りたいもの」と「実際撮ることができるもの」のすり合わせがうまくいっていない印象なんですよ。
映画を撮る、っていっても今の日本映画で監督に与えられる裁量って、決して多くないのではないでしょうか。
俳優のキャスティング、レイティング、セリフの内容、撮影スケジュール、許された予算。
制約がないはずないし、本当にイメージしたものとはかけ離れてしまうこともあるでしょう。
撮ることを約束したものは抑えつつ、自分が撮りたかったものもどこかに残しておきたい。
清水監督の『こどもつかい』で唐突に登場した、有名連続殺人鬼に似たおばけなんて、まさにそれなんじゃないかと思ったのですよ、わたしは。 
まあね、まあね、あれはあれでいい映画でしたけどね。
タッキーのビジュアルやキャラクターとしての位置づけと、お客さんを怖がらせられるホラー描写とを両立させるという困難さをあえてぶつけあうことで、こわいとかこわくないとかいう次元を超えたエンターテイメントへと昇華した感ありますもん。
タッキーがいちいち衣装をフル紹介していくシーンとか、無駄に尺長くてさいこうでしたよ。
『こどもつかい』を一度も観たことのない方は、ぜひ一度ご賞味ください。 

だいすきな『こどもつかい』の話はさておき、あの辺りからみえはじめていたすり合わせの難しさが、恐怖の村シリーズではどんどん顕著になっており、今回マジでちぐはぐだったんですよね。 非常にきびしい状態でした。
やたらと多い顔面アップのせいで画面は単調になり、きれいな顔は拝めるものの起きていることが不明瞭に。
一人二役をほぼ合成なしで乗り切ろうとしたからなのか、生き別れた姉妹の十数年ぶりの再会は、互いに目も合わさないし会話もろくにしないし怪我した相手を支えにもいかないという不自然なシーンに。
撮影期間が長くなかったからなのか、舞台をほぼ富山に絞った結果、心霊スポットを訪ねる主人公と恋人には現地で次々と仲間が現れ、しかも合流のきっかけや理由づけは非常に薄く、しまいには主人公を置いて出張していたはずの父親や死んだはずの母親と祖父祖母まで富山に登場、彼らの生き死にも富山で完結するというオール富山決戦。
他の人は富山市民だからいいとしても、恋人は東京の子だし、高速バスで東京にもどっている途中で突然死したはずなのに、なぜか富山の病院(霊安室でもなく診察室)で家族ですらない主人公が身元確認という「そうはならんやろ」現象はどうにかならんかったんか。 バスで富山まで戻ったんか。 最悪そうだとしても親呼ぶやろ。

恋人の遺体を前に号泣するKōki,さんですが、そもそも彼女と恋人の関係もめちゃくちゃ謎で、初登場シーンからずっと冷たいんですよ、対応が。 ツンデレとかそういうじゃない冷たさ。 
いうても、要所要所では「もう彼氏くんったら・・・」みたいなのがあればね、恋人感もでるんですけどね、まったくべたつきがないですからね。 冬場の脛かっていうくらい乾燥してるから。 (そういうのがNGだったのかどうなのかわかりませんけど)
あとね、なぜか主人公も恋人も相手を待とうとしない。これホント謎でした。
こわい場所・見知らぬ場所に来ているのに、相手がそばにいるかどうかもついてきているかどうかも一切気にするそぶりはない。 
そしていちいち置いてゆく。
ホラーなんだから置き去りにしないとこわくないでしょ? っていう話かもしれませんけど、ふたりが別の場所にいなければならない状態にするのなら、きちんとした経緯があるほうがいいと思うんですよね。 それはね、丁寧さに欠けると思うんですよね。
ふたりの関係性があまりに不足しているのに、彼女のためにどこにでもついてくる献身と、彼氏を失った悲壮感だけみせられてもなぁって話ですよ。
呪われる原理も相変わらず謎ルール。
むかしむかしとある村で行われていた子殺しの風習(双子は忌み子だから一人しか生き残せない)が原因となり、人違いで穴の中に放置された双子の片割れちゃんが、自分以外の放置子を生食しつつ生き延びて、なんかシャクにさわるヤツらを呪い殺していたっぽい感じって、ずいぶんとずいぶんなルールじゃねえの。
坪野鉱泉が立っている場所が、もともと村のあった場所らしいので、生家を荒らす奴は許せねえ!みたいなアレなのでしょうかね。
まぁ、廃墟だからって屋上から排尿をかましちゃう蓮くんは呪われてもしゃーない気がしますが、その蓮くんがほぼ無傷の突然死なのに対し、主人公たちを乗せていってあげただけの富山市民はエレベーターで胴体まっぷたつって、失うものデカすぎんか? 
勝手に入り込んで撮影していた配信者が呪い殺されるのなら、今までこの場所でやらかしてきた若者全員抹殺しないといけない計算にならんか? だいじょうぶか? 双子ちゃん、肝試しの盛んな夏場は過労で倒れるんとちがうか?

まあね、まあね、毎回ストーリーは割とこんな感じですけどね。 
制約の範囲内で撮れたショックシーンとそれ以外のつなぎがバランス悪かったなぁって、それだけ言いたかったんすよ。 ごめんごめん、わがまま言ってごめん。
でもね、ホントこわいシーンはいっぱいあったし、その後の展開に絡むのかと思いきやなげっぱなしだった蜃気楼のシーンとかも、すごくよかったと思うんですよ。
映画初出演で初主演とは思えない程こなれた怯え顔をみせたKōki,さんもよかった。
とんでもなく悪天候な駅のシーンも、「もしかしたらこれ、めちゃくちゃく天気が崩れてきたから急遽よーしカメラを回せ―!ってなったのかな」と思ってしまう程不穏でうつくしかった。
実在する廃墟でロケをした点も、わたしの個人的モットーは「こういう場所は霊が実在するかしないかはさておき、面白半分で足を踏み入れるもんじゃない」なので、マジで胆力がすごいと思います。 よく撮影したなぁ。こわかったろうに。

村シリーズがもしもまた来年あるとするならば、謎システムの呪いや時間軸移動の謎ルールや謎因習にもう少し統合性をもたせていただけると、恐怖描写がより説得力を増すと思いますので、もしもまたあるとするならばよろしくおねがいします、あるとするならばですけど。
都市伝説(ネット怪談)では知らぬ者のいない有名作「きさらぎ駅」も別会社で映画化されるなど、認知度の高いネタの争奪戦は今後より激しくなっていくかもしれませんが、「洒落怖」でググりながら是非いい村づくりを! また観にいきますんで!


― おまけ ―

・ 双子=忌み子という風習なんですけど、子殺しをやっていた主人公の祖父母世代の服装が微妙に古すぎるし、貧困ゆえの子減らしっつったらだいぶ昔にさかのぼらないかと思うんですけど・・・

・ いや、そんなこたあねえ。田舎の貧しい農村は戦後もバリバリ子減らしやってたぞ。という情報をお持ちの方はおしえてくれなくてもいいのでそっと心にしまっておいてください。 ちなみにわたしは主人公の親世代の地方在住者ですが、そういう話は聞いたことねえですだ。

・ もしかしたら樹海村の村民の衣装再利用してたのかな・・・

・ ここぞという箇所だけはちゃんと特殊効果でダブルKōki,さんを実現させていましたが、本当にCGなしでお送りされた双子のシーンもありまして。 終盤、分裂するかのように、村民一人一人が二人へと増えるシーン。 合成とは思えないほど自然(微妙に髪がはねていたり口の傾きが違っていたり)だとは思ったのですが、エンドクレジットを観てビックリ! 同じ苗字がペアセットでぞろぞろ流れてゆくではありませんか。 

・ 老若男女の双子さんがこんなに・・・ よくそろえたなぁ! 種類は違いますけど、クロエ・ジャオ監督の『ザ・ライダー』のエンドクレジットを観た時のような良い驚きでした。

・ 今回のMVPは、車で接触してしまった罪悪感からか見ず知らずの若者を心霊スポットまで乗せて行ってあげて、ついでに有名な心霊トンネルも紹介してあげて、復路が困るだろうからと心霊スポットでのデートが終わるのを待ってあげて、屋上から尿をひっかけられても「おいなにやってんだよ」程度で許してやり、待ってる間の心霊スポットで自身も怪奇現象を目の当たりにするも逃げることなく、デート終わりの若者を自分の事務所に連れてきて話を聞いてやり、悩みの解決に尽力してあげる富山市民・松尾諭さんです。

・ あんたいったいなんなんだよ・・・ 新種のやさしい妖精か・・・? (そして派手に死んで映画にも貢献する)

・ 車での接触事故が発生した場合、負傷の有無は関係なく必ず通報しましょう。



前作の感想
村シリーズ第二弾『樹海村』



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